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獅子と醜いあひるの子 [クリスティ・マッケラン]

SHALOCKMEMO1472
獅子と醜いあひるの子 Unlicking Her Boss's Heart 2016」
クリスティ・マッケラン 川合りりこ





 原題は「ボスの心の鍵を開けて」
 ヒロイン:カーラ・ウィンストン(27歳)/役員秘書/黒髪,ほっそりした肩,アーモンド型の明るいブルーの目/
 ヒーロー:マックス・ファイアブレイス(?歳)/経営コンサルタント/チョコレートブラウンの髪,はしばみ色の瞳,「若獅子」のような男性/
 いわゆる秘書ボスものです。従姉のポピーの紹介でむりやりに近い状態で自分を秘書に売り込んだカーラ。前任の会社でちょっとしたトラブルで辞表を出してしまいますが,自活するためにはなんとしても高給が必要です。同時に住む家も・・・。訪ねたのはロンドンの高給住宅地にあるヴィクトリア様式の四階建ての屋敷でした。「秘書の経験は六年ありますので,いちいち指示を与える手間は取らせません。仕事は自主的に進められますし性格で完璧です。私の力がどれくらいのものか見せるチャンスを,今日一日いただけないでしょうか。もちろん報酬は要りません。」と,かなり強引に自分を売り込み,マックスの元に1日だけ留まる許可を得ます。妻が亡くなってから一年半しか経っていないマックスは女性との深い関係はもう二度とゴメンだと思っています。というより妻の死に自分を責めていたのです。屋敷での仕事が中心のマックスと同居し,秘書業務を始めたカーラですが,マックスの方は自分のプライベートを知られたくなくて,カーラと距離を置こうとします。しかしながら逆に彼女の私生活についてもまったく尋ねたことがなかったのです。働き始めて2週間も経つ頃にはカーラは日に日にマックスの存在を敏感に意識するようになっていきます。マックスもまた,次第にカーラの存在を意識せざるを得なくなっていくのでした。この気詰まりな状況を共通の友人である医師ポピーに相談したいと思っても,遠くアフリカの地で緊急援助医として働くポピーは遠い存在になってしまっています。「ここまで極端に避けなくてもいいだろう。二人の気性がまったく違うのは確かだが,それだけが原因ではないはずだ。まるで言葉の意味が間違って伝わる不思議な力がカーラとぼくの間に働いているみたいだ」という思いをマックスが持っていることなど,カーラには及びも付きませんでした。「奥様がいらしたなんて一度も・・・」と亡妻ジェマイマの存在を知ってしまったカーラは余計マックスを意識せざるを得なくなってしまいます。「仕事関係を除けば,君は妻を失った後で最初に知り合った,今までの人生とはなんのつながりも無い,まっとうな人だったから」とジェマイマの亡くなるまでの経緯を打ち明けるマックス。「ぼくがもっと彼女に注意を向けて何かの兆候に気づいていたら」とくも膜下出血で亡くなったジェマイマへの後悔を打ち明け,それ以降罪悪感を抱き続けていたマックスの心に,カーラが寄せた同情の気持ちは,まっすぐにマックスに刺さっていったのでした。そんなとき,取引先とのトラブルが発生し,マックスはマンチェスターに数日出張しなければならなくなります。カーラに留守中の仕事を任せていいのだろうかという迷いに,カーラは大丈夫だから取引を成功させてきてとマックスを送り出します。懸命の努力で取引も成功し,ロンドンに戻ってみるとカーラはすっかりマックスの仕事を代理し,さらにはマックスの母親に彼の名前で誕生日の花を贈る手配までしてくれていたのでした。そんなマックスの態度に「恋をするわけには行かないのよ。マックスは今でもジェマイマを愛しているのだから。亡くなった人と張り合うなんてできるはずがないもの。苦しんだあげくに失恋するのが落ちだわ。」とカーラはマックスに惹かれる思いを懸命に振り切ろうとするのでした。仕事が成功したお礼に二人で芝居を見に行ったとき,カーラは退社せざるを得なかった前任の会社の関係者と出会ってしまいます。必至に隠れようとするのですが,自分を徹底的に虐めていた女性と対決せざるを得なくなります。その時マックスはとっさにカーラの有能さを強調し,恋人だと宣言して彼女を守ってくれたのでした。二人の間に団結心が生まれ,マックスは「カーラが必要なのだ」と思わせられます。そしてマックスは自分の出自と複雑な親子関係を打ち明けるのでした。「ああ,わたしはいったいどうなってしまったの? 私はマックスを愛しているんだわ。」という自分の気持ちに気づいたカーラは,そんな思いでいる中,あるきっかけからついにマックスと結ばれてしまいます。「ぼくは過去に何をした? 一人の女性の愛を勝ち取っておきながら,自分の不注意のせいですべてを失ってしまった。そんなぼくが別の女性と恋におちるなんて到底ゆるされることではない。」とジェマイマに対する罪悪感に縛り続けられているマックス。「つまり,それがあなたの結論なのね。あなたの心は決まっていて,わたしにはどうすることもできない。そういうことなの?」とマックスにストレートに気持ちを伝えるカーラですが・・・。さて,カーラはマックスを過去から立ち直らせることができるのでしょうか。二人の愛が結ばれるのはさらに一年後になるのですが・・・。
 過去の心の傷から立ち直るために互いを必要としてしまったカーラとマックスの葛藤と愛を勝ち取るまでの物語を歌い上げた秀作です。


タグ:イマージュ
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公爵の秘密の世継ぎ [メイシー・イエーツ]

SHALOCKMEMO1471
公爵の秘密の世継ぎ The Spaniard's Pregnant Bride
(天使のウエディング・ベル 1) 2016」
メイシー・イエーツ 中 由美子





 原題は「スペイン人の妊娠した花嫁」
 ヒロイン:アレグラ・ヴァレンティ(22歳)/富裕な貴族の令嬢/黒髪,小麦色の肌,黒い大きな瞳/
 ヒーロー:クリスチャン・アコスタ(30歳)/スペイン公爵/黒曜石のような黒い瞳,長身,肩幅が広い/
 予期せぬ妊娠を共通設定にしたメイシー・イエーツのシリーズ第1作です。ちょっとSなヒーローのクリスチャンと,それに負けずに勝ち気な貴族令嬢アレグラのコンビがドタバタを繰り広げます。サンタ・フィレンツェ大公であるラファエル・デサンティスとの結婚を目前に控え,親の言いなりになってきた令嬢アレグラは独身最後の一夜の冒険を仮面舞踏会で実行します。階段から降りてきた悪魔の仮面をかぶった正体を知らない男性と廊下で交渉をもってしまいます。互いに名告らずそれきり別れてしまった二人ですが,一カ月後に妊娠に気づきます。その相手こそ,自分が嫌悪していた兄の親友でスペインの公爵だったクリスチャンであることを知ると,アレグラはパニックに陥ってしまいます。やがて大公との婚約を解消しなければと母親に打ち明けますが,そんな破廉恥な行動をとってしまったアレグラを両親は恥としか思いませんでした。そんな彼女を慰めるのはいつも兄のレンツォでした。しかし相手がクリスチャンだったことはなかなか兄にも言いだせずにいます。嫌悪していた相手との間の子供を産むかどうかはアレグラの決意一つにかかっています。MB版,邦訳版の表紙のアレグラのイメージモデルは,やや顎の張った豊満な女性ですが,令嬢としてはちょっとイメージが違うなと言う気がします。もう少し華奢な美女をイメージしているのですが,ただ気の強さだけは正直に表しているかと思われます。さて,クリスチャンに気づかれてしまったアレグラは,自分の爵位を継ぐ跡継ぎを必要としているという言葉に仕方なくクリスチャンとの結婚を承諾せざるを得ませんでした。婚約を解消した大公の方も早々とアメリカ人の学生ベイリーとの交際が発覚し,しかも相手も妊娠していると言うではありませんが。元々意に沿わない婚約だったにもかかわらず自分と大公との関係はなんだったのかと,そんなに自分は選ばれていなかったのかと自分勝手な気持ちも残っていました。しかも自分より子供が大切,夫婦として愛のない一生を送る気もないとクリスチャンに宣言されてしまい,少なくとも子供が産まれて一年間は親としての務めを果たし,あとは離婚しようとまで言われては,大公と愛のない結婚をしていた方がよかったと後悔の念を抱かざるを得ません。件に究極の選択を迫られたアレグラですが,兄の親友であるクリスチャンに実は憧れに近い気持ちをもっていたこと,そして実はクリスチャンに愛されたいと思っていたことを自分に認めるのはしゃくに障ります。しかもクリスチャンには結婚歴があり,亡妻シルヴィアのことを忘れていないのではないかという恐れも感じていました。それならなんとかしてクリスチャンと自分の関係を修繕できないだろうかという願いも持ち始めるのですが・・・。
 上流社会では未だに女性は家のために犠牲になるという風習があり,大公との婚約もそんな関係だったのですが,傲慢なスペイン人公爵との間に衝動的な一夜の関係を持ってしまったことから次々に変化していくアレグラの状況をうまく生かし,遂に愛を獲得していくまでの顛末を描いた作品です。しかし,どうにもこうにも都合の良すぎる二人の心理変化の説明がお粗末で,良作とは言えない感じの作品です。シリーズ次作が9月に出るようですのでそちらに期待です。


タグ:ロマンス
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尖塔の花嫁 [ヴァイオレット・ウィンズピア]

SHALOCKMEMO1470
尖塔の花嫁 The Man She Married 1982」
ヴァイオレット・ウィンズピア 小林ルミ子




K-479
17.06/¥670/156p

I-2179
11.07/¥690/156p


 原題は「彼女が結婚した男」
 ヒロイン:グレンダ・ハートウェル(?歳)/エディス・ハートウェルの養女/琥珀色の瞳,ウエールズ系の透き通るような白い肌,赤褐色の髪,ハート形の顔/
 ヒーロー:マルロー・アルマン・デアス(30歳)/製鉄会社経営者,ノワール城主/長身,褐色の肌,鋼のような冷たい目,頬に残る火傷の跡,黒い髪と眉/
 許嫁になりすまして傲慢な富豪の元に嫁いでしまったグレンダ。いつ正体が知られるかビクビクしながらも,次第にデアス家の人々の中に溶け込んでいくのですが・・・。マルロー家の尖塔をもつノワール城に連れてこられたグレンダですが,かつての恋人との間に身体関係はなく純潔のままでした。しかし初夜を仄めかされたグレンダは,いかにも恋人との間に深い関係があったかのように話し,さらに夫の火傷の跡が恐ろしいと感じているかのようにも誤解させてしまいます。「十年前のきみは夢見がちの少女だった。でもいまのきみは大人の女性になり,ぼくを怖がっている」というマルロー(マル)の指摘に,「愛しても居ない女性と結婚したんだから」と言い返します。実は結婚式の時からグレンダはベールを挙げず,本来の花嫁になるはずだった亡くなったグレンダが緑色の瞳であり,自分の琥珀色の瞳に周囲の人もマルも気づかないでくれることをひたすら願っていたのです。この一点が本来の花嫁とグレンダを区別する相違点だったからです。亡くなったエディスが,終末の時にグレンダにひたすら言い残したことば,それは亡くした本来の娘の代わりにマルと結婚することでした。10歳で孤児院から引き取られ,金に糸目を付けずに自分を育ててくれたエディスの頼みを無駄にすることはグレンダにはできなかったのです。
 ノワール城にはマルの家族たちが同居しています。姉のジーンと息子のロバート,マルを狙っている従妹のレネと義妹レイチェル。そしてジーンは夫を失った悲しみから立ち直れずに精神を病んでいるのです。グレンダとロバートがお茶を飲んでいるだけでジーンは嫉妬のあまりパニックに陥り強い雨の中を飛びだしてしまいます。使用人たちも含めて大勢の人たちが探しに出てやっとジーンを発見しますが,母を心配したロバートも後を追って飛びだしてしまい,全員がずぶ濡れのまま悲惨な夜を過ごしたのでした。あまりのうろたえぶりにマルは遂に決心し入院先の病院からジーンをパリの療養所に,そしてロバートはイギリスの母方の祖父母の元に預けてしまうのでした。城に残された叔母エロイーズがエディスに似ていることから親しみを感じたグレンダはついに本当のことを告げてしまうのですが,エロイーズには事実を知ったマルの心を翻させるだけの力はないと言われてしまいます。そしてマルが育てられた家業のことや屋根裏部屋で発見した古いアルバムに映っていた少年時代のマルを見て,いつの間にかグレンダはマルを愛してしまっていることに気づきます。はたしてマルはグレンダをゆるし愛してくれるのでしょうか。最後のクライマックスまで盛り上げるウィンズピアの手法は本作でも健在です。オススメの作品。


タグ:イマージュ
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ナニーの身分違いの恋 [サラ M アンダーソン]

SHALOCKMEMO1469
ナニーの身分違いの恋 The Nanny Plan
( Billionaires and Babies 57 ) 2015」
サラ・M・アンダーソン 藤峰みちか





 原題は「ナニーの計画」
 ヒロイン:トリッシュ・ハンター(25歳)/大学院生,慈善団体代表/身長175センチ,長い黒髪,褐色の肌と高い頬骨,意志の強そうな容貌と引き締まった身体,深い茶色の目/
 ヒーロー:ネイト・ロングマイア(28歳)/ロングマイア財団代表/身長190センチ,茶色の目に金色の斑点,カンザスシティで育つ/
 前月は本当に読了冊数が少なくなってしまいました。いろいろ要因はありますが,別ジャンルに嵌まってしまったことが最大の要因でしょう。それと時間不足。どうも5月のように集中して読むことができなかったことが残念です。さて,今月最初の読了本は,7月5日刊の最新作品の一つです。作者サラ・M・アンダーソン邦訳作品は3冊目になりますが,やや年齢的に上のヒロインが登場し等身大の姿がいつも素敵な作品群で,本作もその期待を裏切らない良著でした。シリコンバレー出身の,ということはIT長者の一人ネイト・ロングマイアは「ボーイミリオネア」と呼ばれ,若くして事業を成功させ,すでに第一線からは退いたものの,蓄積した10億ドルの財源をもとに財団を興し,寄付を続けている独身男性です。過去に恋人が兄と浮気をしている場面に遭遇してしまい,以来女性との深い付き合いを一切封印してきました。ところが,その兄夫婦が事故で亡くなってしまい,母親も障害を持つ弟の世話で一粒種の孫を養育することができません。兄はネイトを後見人に指名しており,生後半年の女の子赤ちゃんを預かることになってしまいました。通いの家政婦も子供の世話についてはほとんど知識がなく,数日間睡眠が取れないほど困惑の日々を過ごしています。そこにやって来たのがヒロインのトリッシュ。ネイティヴアメリカンの居留地出身の大学院生のトリッシュですが,どんどん生まれる弟妹,そして次々に変わる母の夫に翻弄され,高校時代から休学を繰り返しながらもやっとのことで大学院2年目を迎えた今はすでに25歳になっています。そして居留地に住む貧困にあえぐ子供たちのための慈善団体を主宰し,学用品等の寄付をし続けてきました。今回多額の寄付をしてもらおうとネイトの講演会に出かけ,目立つ行動をとってネイトの注目を引くことに成功し,ネイトの屋敷での商談をしようと玄関に立ったところです。ところが玄関で彼女を出迎えたのは家政婦のロジータ。ナニーの面接にやって来た女性と勘違いし,さっさと赤ん坊のところに連れて行かれてしまいます。トリッシュにはなんと9人もの弟妹がおり,10代から養育をしない母に替わって一手にきょうだいの世話をしてきており,さらに社会福祉学の学位の持ち主でもあり,ネイトとロジータが赤ん坊のミルクに牛乳を入れていたことを知って,クスリと笑いながらも正しいミルクの作り方から初めてベテランのナニーとしての手腕を遺憾なく発揮するのです。すっかり驚愕しながら,トリッシュに引かれてしまったネイトは,1カ月間,赤ん坊の世話の仕方を教えながらナニーをしてくれと,高額な報酬とトリッシュの主宰する団体への25万ドルの寄付を約束するのでした。その金額に驚くと同時に,ネイトに頼ってしまっては自分の自立の計画ができなくなると警戒心を抱きます。そんなトリッシュの言葉に,普通の女性であれば与えられる金額で満足するところを,自分をしっかりもち妥協しない自立心に尊敬の念と魅力を感じるネイトでした。しかし二人は互いに異性との交際には身長にならざるを得ない過去の経験を持ち,近づく機会が何度も訪れますが,互いの気持ちを尊重し,決して一線を超えようとはしません。そこに読者は爽やかさと愛らしさを感じます。そして約束の1カ月後,二人はそれぞれの道を行くことにするのですが・・・。
 どんな条件を出してもネイトに頼ろうとしない潔いトリッシュの姿勢と,そんなトリッシュの言い分を尊重して決して意に沿わないことをしないネイト。こんな完璧なカップルの姿は,男女としてだけではなく互いの人間としての存在を尊重する素晴らしい姿といって良いでしょう。さて,二人の再会はトリッシュの大学院の卒業式となるのですが・・・。ハートフルな暖かさに包まれた爽やかなイチオシの作品です。


タグ:ディザイア
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