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プレイボーイ・プリンス [MIRA文庫]

SHALOCKMEMO617
プレイボーイ・プリンス The Playboy Prince 1987」
ノーラ・ロバーツ  Nora Roberts  noraroberts.com 秋野ユリ





愛の国コルディナ・シリーズの第3弾です。シリーズ第一作・第二作に登場し,シリーズのストーリー展開に重要な役割を果たしてきた次男でプレイボーイと噂され,自らもそれを否定することなく平然としているプリンス・ベネットがヒーローです。第二作から二年が経過し,コルディナ公国の宿敵デュボクがいよいよ牢獄から解放されようとしていたとき,第二作でヒロインを務めた皇太子妃イヴの友人ハンナ・ロスチャイルドがヒロインです。
ハンナは,イヴの話し相手としてロンドンからやってきたのですが,ハンナにはある秘密があるのでした。冒頭ではデュボクの隠れた手下でコルディナ宮殿に潜入しているように描かれます。これではプリンスであるベネットと接点がなくなってしまうのですが,そこに,ノーラ・ロバーツは驚くべき役割をハンナに負わせているのです。
ネタばれになるので,それは書けませんが,自分の勤めを懸命にこなそうとし,またそれだけの力量を持ったハンナに,ベネットは強く惹かれていきます。あえて地味な服装を通しているハンナの裏の本当の姿を見抜いたベネットは,ハンナに次第に惹かれていきます。同様にベネットに好意を持たれていると感じるハンナも,次第にベネットの魅力から離れられなくなります。
終結部分で宿敵デュボクとの対決。ロマンスとサスペンスにあふれた作品です。


華麗なる幕開き [MIRA文庫]

SHALOCKMEMO616
華麗なる幕開き Command Performance 1987」
ノーラ・ロバーツ  Nora Roberts  norarobaerts.com 木色 佳名





「愛の国コルディナ」シリーズの第二弾で再読です。
今回のヒーローはコルディナ国の皇太子アレクサンダー・ビセット。ヒロインには前作のヒロイン,コルディナ国王女エリザベス(ブリィ)の親友の妹で,劇場プロデューサーのイヴです。前作から七年後。前作ですでに本作のヒーローとヒロインは出会っているのですが,その後,二人が会う機会はありません。コルディナ国の国立劇場のこけら落としの演劇に選ばれたのはアメリカで活躍するイヴの劇団。独立心が強く,多くの才能を持つイヴですが,今は自分の劇団の運営に全精力を傾けています。前作の最後でヒーローの弟王子ベネットの命を救ったイヴですが,当時16歳だったイヴはアレクサンダーを堅苦しく,いずれ王国を継ぐものとして責任感あふれる人物という世間の評判の他に,アレクサンダーのもつ内面の思いやりの深さや寂しさを感じ取っていたのでした。プレイボーイであるベネットとは,事件の時以来互いに心を許す親友としての感情は持ったものの,男女の愛情を感じることはできない関係でした。しかし表面的にはベネットとイヴは互いに軽口を言い合える恋人のように見られており,アレクサンダーも皇太子とアメリカの民間女性という関係から一歩踏み込んだ関係は許されないものという心の壁を築いていたのでした。そんな時イヴがコルディナ国に劇団を引き連れてやってきており,皇太子であるアレクサンダーはその劇団の公演の責任者としてふたりは互いに出会う機会が多くなります。次第に互いの想いに気付いていくものの,どうしようもない身分的相違を崩せないままになります。父王であるアルマン大公がフランスで爆弾事件に巻き込まれ,義理の兄のリープが警戒を強めていく中,イヴのもとに謎の電話がかかってきます。アレクサンダーや王家の人々の身を案じていくイヴですがまさか自分が狙われることになるとは思いもよりませんでした。そして劇場で起こった爆発事件。さらには,宿敵デュボクの放った刺客により,イヴはアレクサンダーをかばって銃弾に自分の身をさらし大けがを負ってしまいます。さて,二人の運命やいかに・・・

 「アメリカでは,人間をものとは考えないわ。尊敬,称賛,愛情といったものは,それに見合う努力の結果得られるのよ(166p)」というイヴの言葉に,国民性と男女の性差にかかわらない人間としての生き方が見事に表現された傑作です。

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ムーンライト・パレス [MIRA文庫]

SHALOCKMEMO615
ムーンライト・パレス Affaire Royal 1986」
ノーラ・ロバーツ  Nora Roberts  noraroberts.com 三谷 ゆか





愛の国コルディナ・シリーズの第1作「ムーンライト・パレス」を再読しました。2004年2月にハーレクイン・プレゼンツ作家シリーズ(PB13)版で一度読了しています。そこではブリィが記憶を取り戻せるのか。誘拐犯人は誰か。リーブとの恋の行方は。サスペンスあふれる作品。」という簡単なコメントを書いています。
もう,7年以上以前のものなので,ほとんど記憶にありませんでしたが,今回再読してみて面白さが新鮮に感じられました。
記憶喪失ものと,ロイヤルものの融合。そして逆シンデレラ・ストーリーとでもいうのかヒーローが王女と結ばれるロマサスという凝った設定になっています。はたして二人の夢は叶うのか。ロマンスの王道を行く作品であることはまちがいありません。



このコルディナという地中海の小さな架空の国を舞台にしたシリーズは本巻から毎月MIRA文庫で再版されています。


あなたの瞳に溺れて [MIRA文庫]

SHALOCKMEMO586
あなたの瞳に溺れて(「あなたにダイビング」改題) Too Hot to Handle 1986」
エリザベス・ローウェル  Elizabeth Lowell  elizabethlowell.com 今谷朝子





 ダイビング選手として重要な右ひざを痛め,リハビリと休養を兼ねて農場にやってきたビクトリア(愛称トーリー)。そんなトーリーを出迎えたのはサンダンス農場主イーサン・リーバーの冷たい視線と「都会っ子,不器用,役立たず,若すぎる」というさげすみの言葉だった。
 二人の間には緊張感が漂うものの,ちょうど料理人が出奔してしまった農場としては料理をしてくれるトーリーに暖かいまなざしと励ましをくれるカウボーイたちがいた。



 飛び込み選手がヒロインというのは,ロマンスにはちょっと例がないように思いますが,両親にうとまれ,自分の力で生きてきたトーリーの,華奢ではあるものの力強く生きていこうとする前向きの考え方に,勇気をもらえます。
 また,会った瞬間から惹かれるものを感じ,自分を抑えるために必死に悪態と突き放した態度を取ろうとするイーサンに,たくましさと相反する優しさと可愛らしさを感ずる,爽やかな二人のロマンス物語です。


清き心は愛をつらぬき [MIRA文庫]

SHALOCKMEMO525
清き心は愛をつらぬき Heart of Courage 2009」
キャット・マーディン Kat Martin katbooks.com 岡 聖子





 「ハート・トゥー・ハート」新聞社の社主と記者の3人をヒロインにしたハート・トリロジーの第3作。
第1作「気高き心は海をこえて」(原題直訳では「名誉の心」)では社主でもあるクリスタがドローグル島からやってきたリーフがイギリス貴族社会になじむまでマナーを指導しているうちにリーフに惹かれ結婚するまでを,第2作「熱き心は迷宮を照らし」(原題直訳では「火の心」)ではクリスタの親友コラリー(コリー)が行方知れずの異母姉ローレルの死の謎を突き止めようとトレメイン伯爵グレイの元に潜入し,ついにグレイの愛を得ていくまでのスペクタクルを描いています。
 第3作にあたる本作は,第1作・第2作でも登場するリーフの孤独な弟ソロルフ(ソル)とクリスタの親友で新聞社の記者でもある勝気で美しい乙女リンゼイ・グレアムのミステリー風味の強いヒストリカル・ロマンスで原題直訳では「勇気の心」となります。
 ロンドンでは夜の勤めを生業にする女性たちが連続して殺害されるという事件が起き,リンゼイの弟ルーディが現場付近で目撃されていることから,男爵の子弟でありながら警察に逮捕されてしまいます。弟の無実を信じるリンゼイはクリスタ夫妻やソルの助けを借りながら,探偵とは違った方法で果敢に夜の街に繰り出し,弟の無実を晴らすための聞き込みや証拠探しに乗り出します。ソルは勝気でスタイルのよいリンゼイとは真逆の女性が好みだったのですが,いつしかリンゼイこそが生涯の運命の人と気づきます。でも自分にはリンゼイと見合う財産も身分もありません。自分の心に言い聞かせ,なんとかリンゼイをあきらめようとしますが・・・

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希望は君の瞳の中に [MIRA文庫]

SHALOCKMEMO483
希望は君の瞳の中に Frisco's Kid Frisco's Kid 1997 (Tall, Dark and Dangerous 3)」
スーザン・ブロックマン Suzanne Brockmann suzannebrockmann.com 松村和紀子





危険を愛する男たちシリーズの第3弾です。このシリーズはSEAL(海軍特殊部隊)の男たちの物語。本作では,フリスコと呼ばれるアラン・フランシスコとハイスクールの教師マイア・サマートンのロマンスにフリスコの姪ナターシャが絡み,ヒーロー,ヒロインのロマンス,プラス5歳児の娘というダブル・ヒロインになっているところが,興味深い作品です。原題は,「フリスコの子供」。
作戦中,膝に再起不能な負傷を負ったフリスコは,SEALにもはや戻れないのではという恐怖と,杖なしでは歩くことすらできないイライラでついつい酒に手を出したしまうのですが,そこに姉のシャロンが自分の娘ナターシャを預かってくれと尋ねてきます。少年のころから酒に身を崩した父親から逃れようと,海軍にはいり,軍人としてもっとも過酷で勇敢なSEALで活躍することを目指し,それを達成してきたフリスコにとって,姉が断酒のため,医療施設に入るために子供を預かってくれという頼みを断ることはできません。しかしナターシャは父親から虐待を受け,また母親からもかまってもらっていなかったため,人を信じず,しつけも全くされていませんでした。そんなナターシャにどのように接していったらよいのか,と思っていたところに手を差し伸べてきたのは隣人のマイアでした。
出会ってすぐ,マイアはフリスコに恋をしたのだと思います。外見や職業とは全く異なったフリスコの優しさに直感的に気付いたマイアは,女性らしく何くれとフリスコやナターシャの面倒を見るだけでなく,フリスコやナターシャの心の奥に響く言葉や行動を容赦なく浴びせます。そしてフリスコに自分自身を差し出してゆくのです。



冷蔵庫に貼られた,自分の目標リスト。「能のない人間ほど人に教えたがる」などの辛口の警句。ナターシャの父親ドウェインに連れ去られた後も,冷静にフリスコの言葉の裏を判断して行動をとるマイア。そんなマイアの姿に,自立した女性の強い意志とさわやかさを感じ取れる,清々しい1作です。


熱き心は迷宮を照らし [MIRA文庫]

SHALOCKMEMO480
熱き心は迷宮を照らし Heart of Fire 2008」
キャット・マーティン Kat Martin katbooks.com 岡 聖子





気高き心は海を越えて」の続編です。前作では,バイキングの兄弟,リーフとソルがイギリスに渡り,パクストン家で幸せな生活を送るところまででしたが,リーフとクリスタは本書でも登場し,さらに,本書ヒロインのクリスタの親友コラリーを守ろうとするソルも多く登場してきます。次作のヒーローがソルであることを意識しての登場なのでしょう。
さて,セルカーク子爵令嬢コラリー・ホイットモアには母親の異なる姉ローレルがいましたが,二人はとても仲が良く,活動的で気の強いコラリーと比べて,優しく,気弱なローレルが,川に身を投げるいう悲劇的な亡くなり方をしたことを納得できないコラリー(コリー)は,その真相を知ろうと決意し,姉が最後にいたトレメイン伯爵グレイソン(グレイ)・フォーサイスの城に,今は行方知れずになっている伯爵の遠縁,サイラス・モス夫人レティになりすまし,姉の死の深奥を探ろうとします。初めはその身分に疑念を抱いたグレイでしたが,貧窮し,可憐に見えるコリー(レティ)に,次第に惹かれていき,愛人にしようと考えるようになります。もともと,りゅうとした男ぶりで社交界でも名うての美男子で通っていたグレイですが,レティはグレイの隠された優しさ,たとえば貧しい少年を助けたり,領地の農民の出産を助けたりする心の優しさに触れ,姉の死にグレイはかかわっていないことを確信し,グレイを愛するようになります。
グレイの弟チャールズや従兄弟のジェイソン,異母弟のデレクなど,ローレルとの関係を疑える人物が登場しますが,謎の解明は終盤,領地の郷士の息子が登場するにいたり,だいたい予想がついてしまいます。また,疑わしき女性陣も華やかに登場します。グレイの元愛人のディヴァイン伯爵夫人べサニーや義妹のレベッカなど,結局は欲が生んだ様々な人間模様とねじれた愛の関係は,貴族の家族ならばかくありなんというわけです。そんな中で次第に愛を深めていくコラリーとグレイの関係は,とてもさわやかで,社会の矛盾に立ち向かっていこうとする19世紀イギリスの社会の変化と合わせて,一大スペクタクルに仕上がっている見事な作品です。
かつて,インドでグレイに仕えていた軍人サミールがなかなかいい味を出しており,執事があまり活躍しない本書でのバイプレーヤーとなっています。




気高き心は海を越えて [MIRA文庫]

SHALOCKMEMO478
気高き心は海を越えて Heart of Honor 2007」
キャット・マーティン Kat Martin katbooks.com 岡 聖子





ハート・トリロジーの第1作。クリスタ・ハートと彼女を取り巻く人々をヒロイン・ヒーローとする3部作になるようです。第2作目の「熱き心は迷宮を照らし」がこの3月に翻訳されました。第3作目の「Heart of Courage 2009」は,未訳です。
生粋のバイキングで,古ノルド語を日常語とするドローグル島(架空の島のようです)を船出したウールフル族の族長の息子リーフは,1842年,イギリスに漂着します。仲間の船乗りたちは海の犠牲になってしまい,一人生き残ったリーフは,サーカスにつかまり,見世物にされてしまいます。そのサーカス一座がロンドンの興行をしていた時,リーフは運命のひと女,クリスタ・チャップマン・ハートに出会うのでした。
古ノルド語を研究していた父のパクストン・ハートに古ノルド語の手ほどきを受けていた伯爵の孫娘であったクリスタは,サーカスを見物に来ていた他のひとには理解できなかったリーフのつぶやきが古ノルド語であることに気付き,悲惨な見世物になっていたリーフを,父とともにサーカスから解放し,自宅で英語やイギリスの風習,上流階級のマナーを教える代わりに古ノルド語やドローグル島のことを学ぶことにしたのです。当時,クリスタは,女性向けの新聞の編集人であり,過酷な労働条件で工場で働かされていた子供や婦人,労働者たちの権利の向上のための記事を掲載しており,記事の掲載のたびに工場経営者たちから批判と警告を受けていたのでした。
そんなクリスタに女性としての魅力を感じたリーフは,自分の妻にと考えるようになりますが,イギリスでは何の力も財力もありません。リーフは,英語だけではなく,カード・ギャンブルにも才能があることに気付き,貴族の館やカジノで開かれるカードの会で次々に賭けに勝ち,蓄財を始めたのでした。
クリスタは祖父の伯爵から早く結婚し,後継ぎの男性を設けるように急かされていたのでしたが,候補者として名乗りを上げていた貴族の次男,マシュー・カールトンから求婚されていました。やさしいマシューとリーフの男らしさを比較したとき,クリスタはリーフのほうにときめきと熱い思いを抱くのでした。しかし,リーフが蓄財したお金で船を購入し,ドローグル島に帰ることを真剣に考えているのに気付き,新聞編集と伯爵家の後継ぎを設けるという自分の義務と,リーフの愛情との間で,何度も眠れない夜を過ごすことになります。そんなとき,新聞社の裏手から火の手が上がり危ういところで延焼を免れたり,帰宅途中の馬車が襲われ,脅迫を受けるなどの事件が起こります。クリスタの身の安全のためリーフは日中はクリスタとともに新聞社で働き,夜はカード・ゲームで蓄財をするという着々と自分の帰国のための準備を進めていきます。
リーフの愛と義務との間で揺れ動くクリスタの気持ちと,望郷の念とクリスタとの愛の両立を図ろうとするリーフ,二人の葛藤が延々と語られ,緊張感の中で物語は進みます。クリスタに求婚し,船を手に入れたリーフは出港の日,ついにクリスタを拉致し,ドローグル島への船旅に出かけます。クリスタの父のパクストンは,そんなことが起こるのではないかと予感はしていたものの,クリスタがいなくなってからは,気の抜けたビールのような生活を送るのでした。
ドローグル島に無事帰還したリーフは,結婚をなかなか承諾しないクリスタを気遣い,いつかは承諾してくれるものという希望を捨てずに,ドローグル島の長老たちに,外国との交易をすることを提案します。しかし,他国との交渉をたち,保守的な生活を送ろうとする長老たちの理解は得られず,このままドローグル島に残っていいものかという悩みを抱えていきます。他の部族に襲われ,ウールフル族の危機を迎えたとき,なんとか敵を撃退したものの,クリスタに危険な目にあわせたくないという深い愛情を抱いていることに気付いたリーフは,弟やクリスタを伴ってイギリスに再び帰るのでした。
結局,イギリスでの生活を送ることにしたのは,再度ドローグル島を出港するときに,長老の一人から渡された,亡き父から送られた小さな箱の中に,迷った時には自分の信じる道を進むように書かれたという言葉でした。
新聞社や馬車を襲った人物が,工場経営者の一人の息子であることが判明し,さらに,マシュー・カールトンが自分を愛しているのではなく,財産をほしがっているだけであることを知ったクリスタは,ついにリーフの愛を受け入れ,結婚するのです。
数年後,男の子に恵まれた二人は,そののちも深い愛情に結ばれた生活を送るのでした。
当時のイギリス産業革命や女性・労働者の権利の向上を目指していた,時代の最先端を生きるクリスタと,古くからの生活を尊重し,男らしく生きようとするリーフという価値観の異なる二人が,深い愛情に結ばれ,権利や義務より愛情が人間にとって最も大切な価値であることに気付かせてくれる,深いテーマを見事に描ききった傑作です。一気読みも可能ですが,時代背景やバイキングの生活という蘊蓄も身に付くよう,じっくり読むことも可能です。


キスで終わる夜明け [MIRA文庫]

SHALOCKMEMO432
キスで終わる夜明け Night Shield 2000」
ノーラ・ロバーツ Nora Roberts noraroberts.com 長田乃莉子



[bk1][7&Y][Amazon]





ナイト・シールド」改題。自分としては2003年10月に読了しているものの,改題作とは全く気づかなかった。
その時は,”常に危険に見舞われる刑事の職業をジョーナはどう乗り越えたのか? そこが書かれていない。”などと,生意気なことを書いてしまったが,そのことを意識して読み返してみると,実は,本書282ページから283ページにかけて,ジョーナ:「きみがあいつの銃の前へ踏み出したときのことは,容易に忘れられそうにないよ。」,アリー:「ええ。どんな気分か,よくわかるわ」,ジョーナ:「なんとかして耐えるさ,アリー。それが君の仕事なんだから」という問答の中で,その答えがはっきりかかれていた。
改題された作品とはいえ,たった5年前に読んだ本の内容や登場人物が全く記憶から抜け落ちているとは,実に情けないものだが,逆にそのことに読み直しの意味もあるのではないか,という居直りの気持ちもないわけではない。
いずれにせよ,本書の魅力は,ヒロイン・アリーと愛情に支えられた家族のやりとり,そして,互いに頑固に自分を主張し合うジョーナとアリーの軽妙で笑いを誘う言葉の応酬にあり,それがしんみりさせたり,ほんのりさせたりする,ストーリーテラーとしてのノーラの本領が発揮されているところだろう。




優しい春を待って [MIRA文庫]

SHALOCKMEMO405
優しい春を待って Warrior 1991」
エリザベス・ローウェル Elizabeth Lowell 中田ゆりこ



[bk1][7&Y][Amazon]





アフガン戦争の闘士ネヴァダ・ブラックソーン。テネシー(通称テン)の弟でアフガン戦争での悲惨な体験から,愛することにより傷つけることを恐れている。



ネヴァダは一方女性以上に勘が鋭く,女性独自の体調についても,女性よりも先に気づいてしまうようなところがある。



野生に生きるピューマの生態の研究に訪れた美貌の野営動物生態学者イーデン・サマーズ。ネヴァダとイーデンは互いをみたときから一見して互いの中の優しい本性を見抜いてしまう。



イーデンは幼いとき妹の命を救うことが出来なかったという過去の思い出から愛することに自信が持てないでいる。
互いの愛に素直になれない二人がどんな風にして愛する勇気を持つようになるのか。
愛を育むには十分な時間が必要だという作者の主張がシリーズを通して主張されている。


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