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盗みは人のためならず [赤川次郎]

SHALOCKMEMO706
盗みは人のためならず (夫は泥棒,妻は刑事 1)
赤川 次郎 





赤川次郎氏のシリーズ・キャラクターの中でもこんな取り合わせは珍しいとご本人が本作あとがきでふれているが,夫婦で探偵というミステリのジャンルは結構ある。なかでもクリスティのトミーとタペンスの夫婦探偵シリーズは傑作中の傑作として知られており,映像化もされている。しかしながら,夫婦で異なる職業,というより真逆の職業の取り合わせというのは,確かに例のないものかもしれない。いわゆる警察と泥棒,つまりケイドロ夫婦とでも略したい。

赤川氏の作品はそのすべてを把握するのは一生かかっても不可能であろう。ならば,いくつかのシリーズならばなんとか制覇できるのではないかということで,「爽香シリーズ」は第1巻から制覇してきた。ロマンスのジャンルとして定義できるものということで,本シリーズも把握しておきたい。現在第13巻までの出版が予定されている程度なので,それほど難しくないと思う。

赤川氏の作品の登場人物は,なにしろ名前が優しい。いわば普通の,その辺にいるような名前が使われるという意味で優しい表現した。ミステリーの中にはやたらおどろおどろしい名前をあえて使おうとする傾向の作家もたくさんいる(もちろんそれが意味のある場合もあるが・・・)。しかし,赤川氏の場合にはどんなに複雑な謎をはらんでいても,出てくる名前が優しいと読者としてはそんなに大した人物ではないように思え,その人物がアッと驚く解決をすることで胸をなでおろし,さも自分が解決したような錯覚に陥る効果をはらんでいる。ユーモア・ミステリと総称される氏の作品群だが,パロディとユーモアの面白みを感じさせてくれるという点では,ジャンルにこだわらない作家だと思う。

さて,本作の中でもっともおもしろかったのは「C線上のアリア」。主役となるミケロッティはもちろんパヴァロッティをイメージしていることは明らかだが,クラシック音楽には特に造詣の深い赤川氏らしい作品だと思う。おそらくかなり楽しみながらこの作品を書いたのではないだろうか。


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新緑色のスクールバス [赤川次郎]

SHALOCKMEMO705
新緑色のスクールバス (杉原爽香40歳の冬) 2013」
赤川次郎

毎年9月恒例の赤川次郎「爽香シリーズ」です。今号ではいつも巻末解説を載せている山前譲さんが杉原爽香の25年間の軌跡と題して,第1巻から第26巻までのあらすじを掲載しています。四半世紀にわたり書き続けられているこのシリーズ。グイン・サーガに負けずとも劣らないシリーズになっています。
さて,夫明男は私立S小学校のスクールバスの運転手として再就職します。爽香の周りでは次々と増える仕事や関係してきた人たちの変化に伴い,またまた新しい人間関係ができあがり,爽香自身もまたナイフで刺されそうになったり,明男の運転するスクールバスにナイフを持った男が飛び込んで来たりと危険なことが続きます。今回は,謎の殺し屋中川もところどころ顔をだし,爽香との不思議な縁が続くなど,ちょうど25年目にふさわしく,関係者総出演という感じで,それぞれの登場人物の現在が描かれています。これまでこのシリーズを知らなかった若い人たちにも十分楽しめ,新たにファンが増えそうな作品になっています。


枯葉色のベビーベッド [赤川次郎]

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枯葉色のベビーベッド 杉原爽香36歳の秋」
赤川次郎









毎年9月に発売されるこの「爽香シリーズ」も,22巻目で,今月はこれまでのシリーズをまとめた「夢色のガイドブック」も発刊されています。
「ついに,爽香と昭夫の間に赤ちゃんが・・・。」本来であれば,そのことで,文庫の半分ぐらいの分量が扱われても良さそうなものですが,赤川ワールドではそんな甘いことは許されないようです。相変わらず,事件の山に爽香が振り回されます。
さて,本作で特に感心したのは,高齢者マンションの住人たちがバスを仕立てて温泉に旅行に行き,集中豪雨で大変なことに,という箇所。役場の職員と爽香の決断で危機一髪を逃れるのですが,ここ数年,国内でも同じように土砂災害が多くなっていることを,とてもうまく取り入れているなと思います。そして,その中で,栗崎英子ばりに落ち着きとわがままさをもった中津ノブさんという高齢者を登場させているのですが,今後何度か登場することを予想させる存在感をもった人がまた一人現れたなという感じです。
また,爽香の周囲のG興産のスタッフたちも,さらに,新しいプロジェクトで関係してくるだろうと思われる文化教室の面々など,ますます新しい登場人物が出てくる予感がして,読後すぐに,次が読みたいと思わせられてしまいます。これまで登場した人物が,ヒロインとともに1年ずつ年をとっていくというのは,とてつもない設定ですね。そんなたくさんの変化していく登場人物をまとめた「夢色・・・」がでたことは,読者にとってもありがたいことです。


萌黄色のハンカチーフ [赤川次郎]

SHALOCKMEMO442
萌黄色のハンカチーフ赤川 次郎



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毎年恒例になった「爽香シリーズ」も,第21弾,杉原爽香三十五歳の春と相成りました。
ヒロインがリアルタイムで小説の中で成長していくという名手赤川次郎さんの実験的ミステリー・ロマンスです。
クラシック音楽ファン,映画ファンとしても著名な赤川次郎さんですが,このシリーズの中で登場する大女優「栗崎英子」さんは,根性の据わった人生の酸いも甘いも噛み分けた人として,登場したころからのファンでした。本作品でも,困ったことになった女優志願の二人の女性を,ヒロインの杉原爽香の頼み一つで,香港ロケに連れ出してしまうという早業をやってのけ,事件の解決に一枚かんでいきます。見事な活躍ぶりです。
また,爽香の姪が結婚したいと言い出した相手がハンガリー人,実際には名前だけで本作ではあまり語られませんので,さらに次回作のお楽しみということになるのでしょうが,ハンガリー人というところに,赤川ワールドの落とし穴がまた一つ広がるのかなぁという期待も膨らみます。クラシック音楽ファンにはハンガリー出身の作曲家としてはコダーイ・ゾルタン(バルタン星人ではありませんぞ)などの名前がすぐ思い浮かびますので・・・。ヽ(´▽`)/


爽香シリーズ第20弾 [赤川次郎]

SHALOCKMEMO395
光文あ1-107/07.09/\580/309p
桜色のハーフコート
赤川次郎



[bk1][7&Y][Amazon]



今年も爽香シリーズの季節がやってきた・・・と毎年書くことになるのは,このブログを続けている限りは・・・と書けば,昨年とはちょっと違う書き方になるだろう。



本作では,学校と公園が舞台となり,名門私立女学校の教師と経営陣(人?)の悲喜こもごも,そしてホームレス問題が扱われており,登場人物も多く,何か落ち着きのない政情を反映しているような作品になっている。謎のコーヒーショップとそのオーナーも随所に登場し,これが芝居のト書きのような効果を表しており作風の変化が感じとられる。



文庫では毎年9月の発行ではあるが,「訪問看護と介護」という医学書院の雑誌に連載されており,病院の女医や介護施設が登場するのもこういった事情によるものと思われる。



来年はきっと爽香と哲男のヨーロッパ旅行が描かれるのだろう。


真珠色のコーヒーカップ [赤川次郎]

SHALOCKMEMO302
「今年もまたこの時期がやってきた。赤川次郎の杉原爽香(さやか)シリーズ。毎年9月にヒロインが1歳ずつリアルタイムで年を重ねるというこれまでのミステリロマンにはなかった設定。ヒロインの爽香の魅力もさることながら,夫明夫の優しさ,爽香を尊敬し,陰日なたなく仕える麻生。どうしようもない兄,大女優栗崎など,魅力あふれる登場人物。毎号あとがきの代わりにいろいろな人が書く推薦文など,毎年この時期が待ち遠しい。」
前作「枯葉色のノートブック 2005」(SHALOCKMEMO194)にはこのように書いた。
今年もまた,9月のこの作品を読むことが出来た。爽香は33歳。兄の娘,綾香も大活躍。



本シリーズで特に好きなキャラクター“栗崎英子”が,途中,倒れてしまう。75歳といえば,それほど老け込む歳でもないのだが,麻生と寿美代の娘,名子役である果林を引き立てて脇役として活躍するうち,少し過労がたまったのだろう。もちろん名医浜田今日子がすぐに手を打ち,大事には至らない。さらに,オープンした「レインボーハウス」の近くに出来た喫茶店「ラ・ボエーム」の謎の店主増田。今後,爽香を支えるもう一人の黒子となるに違いない。現在このシリーズは医学書院発行の「訪問看護と介護」に連載されているとあっては,レインボーハウスがますます発展するだろう。

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