罪深き婚礼 [デボラ・ヘイル]
SHALOCKMEMO346
「罪深き婚礼 The Elusive Bride 2000」
デボラ・ヘイル Deborah Hale 沢田 純
花嫁の醜聞 [デボラ・ヘイル]
SHALOCKMEMO338
「花嫁の醜聞 A Gentleman of Substance 1999」
デボラ・ヘイル Deborah Hale 辻 早苗
リージェンシー。「花嫁の醜聞」はナポレオン戦争に参戦する前夜に愛を交わしてしまい身ごもったヒロインルーシーの行為をさすのだが,相手のジェレミーは参戦してすぐに亡くなってしまう。さらには,ルーシー以外の女性との間にも子供をもうけていたという事実が後から判明する。このことから,「ジェレミーの醜聞」というべきところだが,当の本人が死んでいるのだから始末が悪い。 “夫の権利”,“教会と国家の掟によって”定められた夫の権利。リージェンシーでも,それに従わない新しい価値観を描く作品が多いなかにあって,本作は正面からそれに取り組んだ作品。そのことからすると,「炭坑の落盤事故」や「女性誘拐拉致事件」すらもなんでもないことのように描かれてしまう。さらには,自分の領地の経営や事業の管理に打ち込むドレイク・ストリックランド子爵のような存在は当時の貴族社会では軽蔑の対象になっているという価値観。そして,難産を投げ出してしまう医師など,当時の価値観と葛藤がみごとに描かれている好著。
勇者は死なず [デボラ・ヘイル]
SHALOCKMEMO303
「勇者は死なず The Last Champion 2004」
デボラ・ヘイル Deborah Hale ささらえ真海
ハーウッドの女領主ドミニ・ドモントフォードと元領主で修道士見習(助修士)アーマンドのロマンス。激しい戦いの中で,尊敬していたモントフォード卿(ドミニの父親)を誤って殺してしまったアーマンド・フランバードArmand Flambardはブレックランド修道院Breckland Abbeyに入る。厭世的な気分で毎日を祈りの中で暮らしていたアーマンドの元に,少年の格好をしたドミニが突然訪れる。領地が強力な盗賊の一味Wolf of the Fensに襲われ,女領主だけでは持ちこたえられ亡くなりつつあり,アーマンドを連れ戻そうとしにやってきたのだ。自らが犯した殺人の後悔から二度と剣をもつまいと誓ったアーマンドだが,修道院長の勧めもあり,ドミニと一緒に帰郷することにする。剣をもたずに強力な盗賊一味から城と領民を守れるのだろうか。二つの矛盾した約束と誓いの中で苦しむアーマンド。そしてアーマンドに惹かれながらも実際的で進取の気性に富んだドミニDominie De Montfordは,アーマンドの苦しみを理解できない。互いに二つの考えの基で苦しみながらも協力し合いながら,やがて盗賊一味との戦いに勝利を収める。しかし一度の戦いであきらめるはずのない盗賊一味。二度目の戦いの中でとらえられたアーマンドを助けるべく,単身一味のアジトへ潜入するドミニ。そして,スティーブン王とモード女王の政治的な争いも絡め,三重に絡み合った二人の関係を結びつけていくのはとてもシンプルな感情,“愛”,とヒストリカルロマンスの王道をひた走る傑作。