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ファンタジー [エマ・ダーシー]

SHALOCKMEMO943
ファンタジー Fantasy 1985」
エマ・ダーシー 松村和紀子





ヒーローの名前が登場するのは第4章に入ってからという,なんとも秘密めいた作品ですが,実は映像としては彼はヒロイン,イブ・チャイルドが溺れるのを助ける第1章から登場しています。謎の男ポール・ラマーは化粧品大手会社の社長で,海辺の別荘で過ごしていたところに,恋人が同性愛者であることを知ったイブがショックから海辺にやってきて泳いでいるうちに足がつってしまったところを助けたのでした。そして,海辺ではしゃぐイブとポールは互いの魅力に嵌まって一夜を共にします。イブにとっては初めての経験でした。モデルのイブは22歳でまだ精神的には未熟でした。母親マリオンと写真家サイモンによって,中性的な魅力を引き出されていたイブですが,ポールとの体験によって女性としての自分の魅力にも気づくのでした。そしてサイモンから独立しようとしたイブですが,業界ではサイモンとイブがセットでなければなかなか仕事は見つかりません。数週間後ラマー化粧品からイブをCMモデルとしてつかいたいので面接に来るように通知があります。自分で決断できる仕事になるかもしれないと期待して会社を訪れたイブが社長室に入ると,そこにポールがいたのでした。驚愕のイブ。そして試験的にCM撮影契約を余儀なくされます。イブは自分を騙していたポールにがっかりします。ポールもまた,自分のところを去って行ったイブが計算高く自分を訪ねたのだと思い込んでいました。この二人のすれ違いがCM撮影でもイブの緊張を大いに高め,撮影を難しくしていくのでした。しかし,相手役の男優に嫌気がさして耐えられなくなったときポールが相手役を追い出し,イブがポールを指命して自然のままに思いを込めることが出来ます。このあたりのCM撮影の様子は,何となく「ラブ・レイン」で海辺の女神アフロディーテとしてハナを撮影したグンソク君を思い出させます。そして,CMが完成し,試写会の席で,ポールからはひと言も言葉をかけられなかったイブ。去ろうとするポールをイブは追いかけます。もはや自分のキャリア以上にポールを愛していることを黙ってはいられなくなったからでした。さて,二人の間のすれ違いはどんな風に解決するのでしょうか。互いの気持ちに素直になることが出来ずにプライドや周囲が邪魔をしてしまうというのがロマンス小説のパターンですが,本作は互いのことを知らずに出会い,思いを遂げ合ったファンタジーな出来事を描いて,見事に美しい物語を結実させたさすがエマ・ダーシーと言える作品です。


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彼が結婚する理由 [エマ・ダーシー]

SHALOCKMEMO939
彼が結婚する理由 The Ramirez Bride
(ラミレス家の花嫁1) 2005」
エマ・ダーシー 秋元由紀子





「ラミレス家の花嫁」リレー3部作の第1作目です。ブラジルの富豪エンリケ・ラミレスの3人の異母兄弟,3人の作家がそれぞれのヒーローを担当し,エンリケの残した遺言にまつわるロマンスを描いたミニ・シリーズです。第1作目は長男となるニック・ラミレスとテッサ・スティールが主人公となります。
ニックは父親だと信じていたブライアン・スティールが実の父親ではなく,実母のリビーの連れ子で実父はエンリケであることを知ります。そして,スティール家の長女テッサ(テス)と心を通わせたのでした。エンリケの遺言は1年以内に愛する人を見つけ,子孫を残すこと,そうしなければ遺産も異母兄弟の行方も名前も明かさないというものでした。遺言執行人の弁護士ジャビエル・エステスからそう告げられたとき,ニックは経済的にはすでに十分なほど持っていたものの,兄弟という家族がいることを知って,なんとかその行方を知りたいと願ったために,限られた時間の中で結婚し,子供を得るためにはテスとの復縁しかないと思ったのでした。テッサの元を訪れたニック。そしてテスから明かされたのはすでに二人の間にザックという生後2カ月の息子がいることでした。妊娠を何故知らせなかったのかと尋ねたニックに対してテスは,ザックを自分の子供として育てるつもりだったと言うのでした。父ブライアンからの財産により,テスはニックから援助してもらわなくても十分息子を育てられること,そして何の約束もしていなかったニックとの関係を妊娠を理由にすがるつもりもないこと,ただ父親であるニックがザックと関係したというのならそれは認めること,過去のニックと父との関係から,知らせるのは時間が必要だと思ったことなどを明かしたのです。ニックの母ナディア・コンドーはかつての貧しい暮らしの経験から少しでも金銭的に有利になる男性との関係を求めることしか頭にない女性でしたし,テスの母リビーは自分が世界の中心であり,自分を褒めてくれる人しか相手にしない女優でしたので,二人とも愛情深い家族を持たないまま過ごしてきたのです。テスは父ブライアンからの愛情をたっぷり受けてはきましたが,ニックは実父のエンリケからも継父のブライアンからも愛情をもって受け入れられた経験がなかったのです。しかも母親からも・・・。ニックは自分の子供であるザックに自分と同じ扱いを受けさせたくない,両親のそろった愛情あふれる家庭で育てたいのだとテスに訴えるのでしたが,自立心の強いテスからは結婚する気はないと言われてしまいます。すでに跡継ぎの子供が存在する以上エンリケの遺言の条件の一部は果たしたことになるので,あとはテスの気持ちを変えさせて結婚にこぎ着けるだけでしたが,テスの複雑な心境や継父ブライアントの関係,そして母の説得などいくつかの山を越えなければなりませんでした。ニックはゆっくりとテスの心を開こうとし,同時にザックとの関係も深めていくのでした。徐々に心を開き,ブライアンとニックの関係もなんとか平穏のうちに取り戻し,ニックが本当に信頼できるのではないかとテスが考え始めたところに,エンリケの遺言執行人のジャビエルが二人の新居を訪ねてきます。すでに二人は二人きりの結婚式を挙げて名実ともに夫婦になっていたのですが,ニックの異母弟たちの存在を知らされ,もう遺言は必要ないと激怒するニックにテスは家族を取り戻すために弟たちに会うべきではないかと進言するのでした。ニックが信頼できる人であり,遺言のために自分との結婚を望んだのではなく,愛にあふれているニックの気持ちを信じての進言でした。エンリケの遺言が過酷なものであったにもかかわらず,遺言どおり愛する人と息子をすでに得たニックは,エンリケの望んでいたことが,生きている間に果たせなかった息子の幸せを願ったのではないかということに気づくのでした。エマ・ダーシーらしい,気持ちの揺れ動きが明確に描かれている良作です。次作はミシェル・リードが描きます。


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最後のおおいなる情熱 [エマ・ダーシー]

SHALOCKMEMO938
最後のおおいなる情熱 The Last Grand Passion 1993」
エマ・ダーシー 霜月 桂





エマ・ダーシー1993年の作品。原題もそのまま。初めはこのタイトルの「最後の」がなにを意味するのかわかりませんでしたが,読了してみてわかりました。もはや涙なしには読み終えない感動の作品です。もっと読んでいると思いましたが,ダーシー作品を読了するのは,「鏡の中の迷宮」以来5年ぶりとは驚きです。
舞台美術家のアン・トリバー,衣装係の助手からスタートしてプロデューサーのアレックスに認められ,舞台美術家としての仕事も順調にいっていました。4人姉妹の長女のアンですが,妹たちはそれぞれ愛する人を見つけ,末妹のジェニーの結婚式も間近で,アンはジェニーのウエディングドレスのデザインをしているところです。母親からはなかなか相手を見つけられていないアンにプレッシャーをかけてきているのですが,それを聞かないふりをして仕事に没頭しています。7年前,アンには愛する人がいました。しかし,突然の別れ,そして数年後付き合った相手は運命の人ではないことに気づき,別れを告げたのでした。そんなアンとジェニーの前にかつて愛した相手で世界的な脚本家のサディ・リオダンがやってきます。今更なにしにシドニーまでやってきたのかとすげない振りをするアン。しかしアンの気持ちには今にもサディの胸の中に飛び込みたい気持ちが強く残っているのでした。サディは,アンのかつての恋人トム・コルビーとの関係を質されたり,アレックスとは付き合うなと言われたり,もはや何とも思っていない相手のことをあげつらわれます。しかし,二人の関係は舞台のイギリス初演のためにロンドンに行って再燃します。やがて初演の舞台後のパーティで,二人の関係は周知のところとなっていきます。サディの弁護士の美人ポーラに嫉妬したりアンの心境も複雑ですが,サディを愛していることはもうアンには止められない気持ちになっていました。結婚しようという言葉は聞かれませんが,二人の関係が将来も続きそうだと判断したアンはサディの子を設けようと避妊を止めます。サディはどうしてもアメリカに渡らなければならない事情が出てきました。一人にしておけないのでポーラの家にいるように言われたアンはサディについてアメリカに行きたいと言いますが,サディは自分しかいけないのだとアンを拒みます。そしてサディが結婚していることを知らされるのでした。アンの中にはすでにサディの子供がいるにもかかわらず・・・。何故こんなにサディが一緒にアメリカに行くことを拒むのか,なにか既婚であること以外にも秘密があるのではと思うようになったのは赤ん坊のマイケル・ジョンが産まれた直後にサディがアメリカに渡ったからでした。アレックスに無理矢理言わせた本当のこととは・・・。ここからが本作の最大の山場です。そして,「最後の」というタイトルの意味も,クライマックスでわかるのでした。
全ての件が片づいて3カ月後。サディが再びアンとマイケル・ジョンの元を訪れます。サディが書き上げた未完の脚本「最後のおおいなる情熱」。それは公演されることのないアンとサディだけの見事な脚本でした。サディの苦悩とアンに対する深い愛,その全てが込められ,しかも結末はアンに委ねられるという脚本家らしいサディのプレゼントだったのです。本当に舞台で上演されているかのような二人の人生をかけた物語。スケールの大きな作品です。今年読んだ中では確実にベストに入る作品です。


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鏡の中の迷宮 [エマ・ダーシー]

SHALOCKMEMO588
鏡の中の迷宮 A Marriage Betrayed 1999」
エマ・ダーシー  Emma Darcy 吉本ミキ





 エマ・ダーシーの作品読了は平成7年以来3年ぶり。本書はファンが選んだベスト作品フェアの1冊です。
オレンジがかった金色の髪が豊かにウェーブを描き方の周りまで伸びており,唇も花も形が整っているし,瞳は澄み切ったブルー。
 まさに左の表紙の絵のような美女が,本作のヒロイン,クリスティです。クリスティは看護師。しかし,両親を失った自分を育ててくれた養父母が次々に亡くなり,特に癌を患っていた養父を最期まで看護し,看取った後,ジュネーブに行って実の家族たちを探そうと旅に出ます。途中,養父母が新婚旅行で宿泊したパリのホテルに行ったとたん,ホテルの従業員たちの自分に対する態度がおかしいことに気付きます。そしてロビーで話すカップルも自分を驚愕の目で見ます。高級ホテルの一番安い部屋を頼んで,部屋に着いた途端,ホテルの支配人らしい男性から,部屋を変わってほしいと言われ,案内されたのは高級そうなスイート・ルーム。しかも従業員が次々に頼んでもいない飲み物や果物を届けに来ます。これも,ホテルに入ったときから従業員たちの様子がおかしいことと関係があるのだろうか。そんな興味から言われるがままにしていたクリスティの部屋の続き部屋を開けたところにいたのは,ロビーにいた男性でした。しかもその男性はいきなりクリスティを非難したかと思うと,無理やりクリスティの唇を奪ったのです。
 こんな風に,速いテンポで読者を疑惑の渦に巻き込みながら,本書はすすんでいきます。次の舞台は,クリスティの唇を奪った男性アルマンの館。なにやら,家族の中がぎくしゃくとして,互いに疑心暗鬼で憎み合っているような様子さえ見える人々。実はクリスティはこの家族と関係があったようなのです。
 一見ミステリーのようなサスペンス満載の本書。最後はほんのりしたロマンスらしい終わり方をするのですが,一気読みお薦めです。


誘惑のハネムーン [エマ・ダーシー]

SHALOCKMEMO362
誘惑のハネムーン(キング三兄弟の結婚3) The Honeymoon Contact 2002」
エマ・ダーシー Emma Darcy 片山真紀



キング三兄弟の結婚 3
P-292/07.02/
\683/156p


先月読み終わっていたがアップが遅れていたもの。
なんといってもヒーロー,ヒロインのネーミングが問題。
ヒロインは“ニコール・レッドマン”。明らかにニコール・×ッドマンを連想させる。それに,ヒーローは“マッテオ・キング”通称“マット・キング”。MをNに変えれば往年の名歌手“××・××・コール”のようなセクシーさを連想させる。
多作家のエマのこと,こんな遊びも許されよう。




キング三兄弟のシリーズも最終巻。最後を結婚仕掛け人イザベラ・ヴァレリ・キングの手紙で締めくくる終わり方も,ニコールがキング家の歴史を描く仕事を終え,自らキング家の歴史を嗣ぐあととりステファンを出産したことを示している。
さらに,キンバリーのキング家のロマンスも,いずれ再販され,読むことができるだろう。

キング兄弟の結婚1・2 [エマ・ダーシー]

SHALOCKMEMO349/SHALOCKMEMO350
キング三兄弟の結婚1 仕組まれたウェディング The Arranged Marriage 2002」 
高田恵子 06.12/\683/156p
キング兄弟の結婚2 花嫁に真珠を The Bridal Bargain 2002」 
有森ジュン  07.01/\683/156p
エマ・ダーシー Emma Darcy



仕組まれたウェディング
花嫁に真珠を

エマ・ダーシーのキング兄弟3部作。第1作では長男アレックス,第2作では次男アントニオ(トニー)が登場。ヒロインは第1作では,プロ歌手で花屋の店員,子持ちのジーナ・テルリッツィ。敵役はアレックスの別れた妻ミシェル・バンクス。第2作ではハンナ・オニールがヒロイン。前向きで才能豊かな調理師。
キング一族はオーストラリア東部で数代にわたって富豪として事業を展開してきた一族。3兄弟の祖母イザベラ・ヴァレリはキンバリーに住むキング家の女家長エリザベスと話しているうち,ポート・ダグラスのキング家のアレッサンドロ,アントニオ,マッテオになんとかしあわせな結婚をして欲しいと願い,密かに孫息子たちに引き合わせる女性を見付けては,少しずつ二人の後押しをしようとする。

第1作ではぶどう農園の領主アレックスの住むキング城とよばれる館に,子持ちで身分違いの花屋の店員ジーナと息子のマルコが訪れる。別れた妻で美人であるだけに,自分が目立つことだけを考えているファッションデザイナー,ミシェルに裏切られた経験から結婚に対して慎重になってしまうアレックスが,ジーナに惹かれる様子に敏感に気づいたイザベラの後押しで,ついにジーナとマルコへの愛に気付き,結ばれる。
第2作で登場する生き生きしたヒロインのハンナは元婚約者のフリンに去られてしまい,結婚に対して慎重になっている。ヒーローのトニーはハンナの前に現れたフリンとジョディ夫婦からハンナを守ろうとし,ハンナの愛を勝ち取る。
オーストラリアの美しい自然と一族の人々と登場する周囲の人々をうまく配置し,一度愛に傷つき結婚に臆病になっているヒーロー・ヒロインが再び愛を獲得するまでの見事なストーリーが語られる秀作シリーズ。2月に第3作。その後「キング兄弟の受難」シリーズも再刊に取り上げられるとよいのだが・・・

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