貴婦人の秘密 [アン・アシュリー]
SHALOCKMEMO520
「貴婦人の秘密 Lady Knightley's Secret 1999」
アン・アシュリー Anne Ashley 古沢絵里
ハーレクイン・ヒストリカル(HS-86)で2000年に,さらにハーレクイン・リクエスト(HR-118)で2006年に出版され,今回ハーレクイン文庫(HQB-260)で,と3度にわたって出版されている作品です。アン・アシュリーの作品は斜麓駆もウェブページに一覧を作っていますが,本作品で6冊目の読了となりました。昨年2008年には,「幸せの記憶」「罪深き秘密」の2作が翻訳されましたが,手にできませんでした。今回,本書を読み始める前に作品一覧を作成してみて,本書が邦訳第1弾であり,原作の順からすると5冊目あたりになるのですから,2000年当時の翻訳事情からすると,もっとも最新の作品だったと思われます。
しかし,それだけではなく,たしかに,テンポのよいストーリー展開と,ヒーローとヒロインの幾重にも隠された出会いの不思議さ,ヒーローがいつそれに気づくのかを最も印象付けるためのストーリー運びのうまさ,ヒロイン,エリザベス・ベレズフォードのシンデレラストーリー的な精神的な成長の描き方,ヒーロー,サー・リチャード・ナイトリーの心根の奥からの優しさなど,読者をひきつけながら,ヒロインの姉エヴァドネを敵役にもってくるなどの意外性などなど,たくさんの隠し味をちりばめながら,最後まで一気読みさせるストーリー展開のうまさを堪能できる傑作に仕上がっており,これを翻訳第1作に持ってきたハーレクインの編集者の意図も,うーん。
子爵の憂愁 [アン・アシュリー]
SHALOCKMEMO410
「子爵の憂愁 A Lady of Rare Quality 2006」
アン・アシュリー Anne Ashley 杉浦よしこ
アニス・ミルバンクは率直で世話好き,聡明で嫌みのない性格。名付け親のレディ・ペラムの頼み事に応じてグレイソープに向かう途中,何者かに狙撃された男性を訪問先に運び治療をする。その男性こそ,グレイソープ子爵デヴァレルその人だった。
周囲の人に愛され,しかもいざというときには断固として行動するアニスは,いろいろな困難を乗りこえ,謎を解いていく。
時代がかった回りくどい言い廻しや,感情を抑えた行動を表現した文をしっかりと訳した杉浦さんの訳に拍手。
消えた子爵夫人 [アン・アシュリー]
SHALOCKMEMO363
「消えた子爵夫人(「華麗なる貴族たち」所収) Lady Linford's Return 1997」
アン・アシュリー Anne Ashley 古沢絵里
それにしても,いくら身分を隠しているとはいえ,自分の妻が何色の髪をしていたのか瞳をしていたのかが思い出せない夫の存在は,貴族社会だからこそあり得るのだろうか。夫が妻に気づくのはいつになるのかで読者の興味を引いていくのではなく,物語中半で気づいた後にどのように二人の気持ちが寄り添っていくのかを描くのがロマンスの醍醐味。本作の場合は特にそれがうまく描かれている。途中のさまざまな出来事はお約束だが,子爵の伯母レディ・ヘンリエッタ(ヘッタ)や家政婦のリットン夫人など興味深いキャラクターを配し,探偵スタッブスが真相を暴いていくなどミステリの要素も十分堪能できる佳作。
悩める伯爵 [アン・アシュリー]
SHALOKMEMO356
「悩める伯爵(華麗なる貴族たち所収) The Earl of Rayne's Ward 1997」
アン・アシュリー Anne Ashley 古沢絵里