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貴公子と無垢なメイド [ニコラ・コーニック]

SHALOCKMEMO752
貴公子と無垢なメイド Forbidden 
(Scandalous Women of the Ton 6) 2012」
ニコラ・コーニック 佐野 晶





MIRA文庫で紹介されるニコラ・コーニックの長編はこれが最初です。ヒストリカル作家としてはハーレクイン・ヒストリカルのシリーズが刊行したものを,文庫やヒストリカル・スペシャルで多くが再刊されているので,かなり人気のある作家であることは間違いありません。斜麓駆も「読書会の秘密」三部作や「放蕩貴族の素顔」三部作など全11作をすでに読了していますが,平成10年12月に「愛されぬ花嫁でも」を読了して以来,3年半もコーニックの作品を手にしていないので,本当に久しぶりです。
リージェンシー時代のロンドン,レディ付きメイドのマージェリー・マロンは幼い頃母と馬車に乗っていたとき,馬車が盗賊に襲われ,母は死亡,自分は誘拐されるという過去を持っていますが,詳しい状況はその時のショックから一種の記憶喪失になっています。今は養家で暮らし,レディ付きのメイドとして働きながら,将来自分の店を持ちたいという夢を描きながら,お菓子を作って売る商売もしています。ある娼家で商売を終えて帰ろうとした時ヘンリーという紳士と出会います。この出会いがマージェリーのその後の人生の転機となるのでした。マージェリーは実はイギリスで最も裕福な伯爵家の女相続人だったのです。馬車が襲われた時マージェリーの行方は分からなくなり,すでに死んだものと考えられていました。しかし,養家の兄の故買屋がマージェリーの持っていた宝石を売りに出したところから,その宝石が伯爵家のものであることが分かり,マージェリーが生きているのではないかと考えられたのです。ヘンリーは伯爵家の相続人として領地の管理に当たっていたのですが,直系のマージェリーが生きているとなると,すべての財産はマージェリーに渡ることになるのです。伯爵はヘンリーにマージェリーが本当に伯爵の孫娘か確認するよう派遣したのでした。もし本当に孫娘だとすると自分は相続人から外されることになるのですが,領地を愛しているヘンリーはこの仕事を引き受けたのでした。
初めて会った時からヘンリーはなぜかマージェリーに惹かれるものを感じます。マージェリーもまた紳士であるヘンリーに惹かれるものを感じ,二人は一瞬唇を交わします。その後,マージェリーの生活や家族のことを調べ,孫娘であることを確信したヘンリーは,伯爵のもとに弁護士を通じてマージェリーを呼び寄せます。壮大な館にヘンリーがいたことを知ったマージェリーの驚きは,自分が莫大な財産の相続人であるということよりも大きなものでした。その後マージェリーはヘンリーから領地のことやレディとしての振る舞いについて実地に教わることになります。その交流を通じてマージョリーはヘンリーを愛するようになっていくのですが,ヘンリーと関係を持っても「愛している」という言葉を聴くことは出来ませんでした。ヘンリーは一度結婚し,妻からひどく裏切られた過去を持っており,「愛」を信じることが出来なくなっていたのです。やがて二人の関係が新聞のゴシップ欄に掲載されてしまい,二人は婚約せざるをえなくなります。そして,マージェリーの周囲で時々起こっていた不思議で危険な小さな事件の犯人が,自分の養家の兄であることが分かります。そしてその兄こそが自分と母親を襲った盗賊であることもマージェリーは思い出すのでした。誘拐されたマージェリーを探すためにヘンリーは友人たちの協力を得て必死になります。その過程で自分がいかにマージェリーを愛しているのかに気づくのでした。やがてマージェリーを発見したヘンリーは,マージェリーに愛の言葉を告げます。結婚せざるをえないから結婚するのではなく,ヘンリーが自分を愛しているから結婚する。このことはマージェリーに無類の幸福感をもたらすのでした。
過去に辛い経験を持つ二人が状況の変化に負けずに愛を獲得していく姿は読者はほろりとさせられると同時に,こちらも気持ちが温かくなって来る作品です。


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愛されぬ花嫁でも [ニコラ・コーニック]

SHALOCKMEMO591
愛されぬ花嫁でも Kidnapped:His Innocent Mistress 2009」
ニコラ・コーニック  Nicola Cornick  nicolacornick.co.uk 石川園枝





 2007年以来のニコラ・コーニックの読了本です。ハーレクイン・ヒストリカルは284ページが標準でしたから,本書の252ページは,それよりやや短めの作品です。表紙のジュリア・ロバーツ似のモデルぐらい,本書のヒロインが美人だったようなイメージはありませんので,ヒーローにはこのように見えていただろうということで,まぁ,いいでしょう。
 舞台はスコットランド。ヒロインのカトリオーナ・バルフォーはバルフォー一族の娘で父は校長をしていましたが,父母を相次いで亡くし,明日からの生活をどうしていいかと考えていたところに,遠い親戚にあたる海軍将校ニール・シンクレアから愛人にならないかという失礼な声掛けをされます。独立心が強く,頑固で,所謂なよなよしていないカトリオーナの性格が本書では繰り返して述べられていますが,いとこのエレナに比べるまでもなく,当時の上流階級の女性としては,跳びぬけて変わり種であったと思われます。拒絶したカトリオーナですが,結局父の弟であるエベニーザーの管理するグレン・クレアで世話になることにしますが,実はこの領地の正当な持ち主はカトリオーナ自身であるはずですが,カトリオーナの父が領地を管理する気がなかったため,長い間エベニーザー叔父が管理人,というより領地の所有者のようにふるまっていたのです。当然,叔父一家には余計者として扱われたカトリオーナですが,いとこのエレナだけは,カトリオーナと年齢が近いこともあり,絶対の信頼と友情を寄せるのでした。
 さて,エベニーザー叔父はカトリオーナに領地の正当性を主張されると厄介であることから,ある日暴漢に襲わせ,海軍の軍人であるニールともども,船に乗せてイギリスを追放しようとします。女性としての商品価値のあるカトリオーナは客として扱われますが,軍事であるニールは外海に出たところで海に沈められることになりました。スコットランドの海霧立ち込める中,座礁を逃れた二人は,無人島に漂着し,誰にも発見されないまま数か月を過ごすことになりますが,ニールはカトリオーナを次第に愛するようになるものの,紳士としての接し方を崩そうとはしません。カトリオーナは自分がエレナほど美しくもなく,持参金もないただの女性であることからニールから愛されるはずがないと思い込んでいます。
 やっと捜索の船が来たのは,自分の父の悪だくみから勇気をふるって逃れ,当局に連絡したエレナの勇気ある行動のおかげでした。たった二人きりで数か月を過ごし,上流階級の評判を損ねないためにカトリオーナとの結婚を宣言したニールですが,ニールの両親や親せきの女性でニールとの結婚を望んでいたミス・メルヴェンらの姦計に嵌り,またしてもカトリオーナは窮地に陥ります。しかし,カトリオーナの気性を知りつくし,愛することを恐れなくなったニールは,カトリオーナの窮地を自ら救うのでした。
 章回小説のように各章の冒頭にコメントのついたスタイルは,ちょっと古風で,ヒストリカルらしさを味わえる佳作です。




求婚のゆくえ [ニコラ・コーニック]

SHALOCKMEMO378
求婚のゆくえ(読書会の秘密3) The Rake's Mistress 2004」
ニコラ・コーニック Nicola Cornick 飯原裕美





読書会の秘密の最終巻。ヒーロー・ヒロイン6人のロマンスを描くのに3巻では無理だなぁと思っていたのだが,やはり最後は押し込めるようなエピローグになってしまったのが残念。
1803年。ヒロインはレベッカ・ローリー。ガラス細工師の叔父と小さいながらも質のいいガラス工芸品を作っている。叔父が亡くなり,細々と生活しているレベッカだが,気骨のある女性であるレベッカは,腕のいい職人でもあり,ガラス工芸品の注文を得るため,妖しげなクラブの旧友からの注文からも受けてしまう。
スパイを追ってレベッカの工房にたどり着いたルーカス・ケストレル卿。レベッカを守ってやりたいと思うものの,自分の愛に気づくのは,時間がかかる。レベッカの方は,ルーカスに惹かれるものの,自立心の強さから,ルーカスのプロポーズを断り続ける。
果たして国を裏切るスパイは誰か? そのミステリの結末は意外な真相が語られる。この決着の付け方はすばらしい。


魅惑の一夜 [ニコラ・コーニック]

SHALOCKMEMO376
魅惑の一夜(読書会の秘密2) One Night of Scandal 2004」
ニコラ・コーニック Nicola Cornick 吉田和代





「読書会の秘密」第2弾。1803年9月。前作では遺跡の発掘というキーワードが全編を通じており,いわゆる世慣れない学者一家のユーモアというものが全体的に柔らかさを醸し出していた。原作では,Bluestocking Brides Trilogy。
小さな村にスパイが潜入している妖しげな感じは,結局次作に引き継がれていくが,捜査に当たる放蕩者たちが,こう次々と任務そっちのけで女性を追っかけていくことで,ミステリではなくヒストリカルロマンスであるという色合いが強まっている。
デボラ・ストラットンは、兄の結婚式に婚約者とともに出席すると嘘をついてしまい,“紳士募集”の広告を出す。放蕩者として名高いリチャード・ケストレル卿は偶然そのことを知り,計略をめぐらす。そのことを知らないデボラはリチャードの計略に徐々にはまっていく。
エピローグでは,レディ・サリー・サルティアとジェスティン・ケストレルが登場し,次作への興味を引いている。


名うての貴族 [ニコラ・コーニック]

SHALOCKMEMO373
名うての貴族(読書会の秘密1) The Notorious Load 2004」
ニコラ・コーニック Nicola Cornick 田中淑子





ニコラ・コーニックの3部作。帯には“イングランドの田園で,放蕩貴族と貴婦人たちのうるわしき恋の幕が開く”とあるが,こういうときの「放蕩貴族」がヒーローだった場合,本当に放蕩貴族だったためしがない。あるいは,かつての放蕩者に過ぎないのが普通で,そうでないとヒロインとの間のロマンスが成就しなくなってしまう。
本作でも冒頭,ヒーロー,コーリー・ニューリン卿が水浴から上がったばかりのところをヒロイン,レイチェル・オデルが偶然眼にすることになるが,当時のモラルからしてこの程度のことでも放蕩者と呼ばれてしまうことは容易に想像できる。



本書で傑作なのは,なんと言っても考古学の発掘に夢中になっているヒロインの両親のキャラクター。読書会の他のメンバーはあまり個性的には現れてこないが,シリーズの中で徐々に描かれていくのだろう。


十九世紀の恋人たち [ニコラ・コーニック]

SHALOCKMEMO360
十九世紀の恋人たち A Regency Invitation 2004」
ニコラ・コーニックジョアンナ・メイトランドエリザベス・ロールズ 石川園枝



十九世紀の恋人たち
HSX-1/07.03/
\1160/403p


リンドハースト・チェイスというマナーハウスで起こる三つのロマンスを売れっ子の3人のロマンス作家たちが綴っていく連作を一冊にまとめたスペシャル。
ニコラ,ジョアンナ,エリザベスの3人が300通ものメールを駆使して共同で設定を作り上げ,それぞれの作家が3組のロマンスを自分の特長を生かして生き生きと綴り上げた傑作。
romance cottageの今月の☆☆☆投票でもダントツの第1位。
ニコラ・コーニックの「女相続人に求婚を」ではカサンドラ(カシー)がピーター・クインラン子爵とのロマンスを,ジョアンナ・メイトランドの「レディの冒険」ではエイミー・デヴローとマーカス・シンクレアが,そしてトリを務めるエリザベス・ロールズはリンドハースト・チェイスの主人,リンドハースト少佐アンソニーの逃亡した花嫁との愛を取り戻すという感動の大団円で終末を締めくくる。ほんのりした物語からあっと驚く結末まで,三つの物語がそれぞれ生き生きと語られながらも,次々と登場する人物たちの関係を絡めながら破綻を来さず最後まで一気に読ませる。このような連作で最も筆力を要するのは,やはり最終話を書くエリザベス・ロールズだろうか。はたまた冒頭を描くニコラ・コーニックだろうか。

胸騒ぎの舞踏会 [ニコラ・コーニック]

SHALOCKMEMO359
胸騒ぎの舞踏会 The Larkswood Legacy 1999」 
ニコラ・コーニック Nicola Cornick 飯原裕美



胸騒ぎの舞踏会
HS-282/07.03/
\910/284p



「ヒバリの森?」でいいのだろうか?”larkswood”
とにかくイギリスでも田舎の領地を巡って,親の代からのトラブルに翻弄されていくヒーロー=ウィリアム・ウェストンとヒロイン=アナベラ・セント・オービー。
姉のアリシア・ムリノーは絶世の美女で侯爵と結婚。父の虐待から逃れるために結婚した相手は早死にしてしまい,財産のない彼女は義母からの徹底したいじめに遭っていたが,逃れるすべもなかった。そんな逆境から果たして逃れられるのかが前半の読み処。しかし,頑固で,気位の高い彼女の一族の例にもれず,アナベラはラークスウッドを狙っていたウィリアムを許せず,互いの愛を叶えることはできなかった。
後半ではウィリアムに罪を着せようとする悪巧みを,アナベラの周囲の人々がどのように暴いていくか。そしてその元凶となる俗物アーミナ・ハーストをアナベラはやりこめられるのか。そんなところに興味の中心がいってしまい,二人のロマンスは,まぁどうでもよくなってしまう。
今月はニコラ・コーニックの作品がもう一作出ており,そちらも気になるところ。

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