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嘘はオアシスに眠る [ジュリー・ガーウッド]

SHALOCKMEMO604
嘘はオアシスに眠る Shadow Dance 2006」
ジュリー・ガーウッド 鈴木美朋





 ブキャナン家のヒーロー・ヒロインたちのシリーズ第6弾になる本書は,ブキャナン家の長女でコンピュータオタクのジョーダンがヒロイン。そして,第1弾からシリーズにずっと顔を出している,ノア・クレイボーンがヒーローとなり,いよいよ佳境に入ってくるようです。
 さて,ジュリー・ガーウッドのヒストリカルとコンテンポラリー(ロマサス)はスコットランドのハイランダーを祖先に持つクランの歴史を通じてつながっているようですが,本作では「広野に奏でる旋律」のストーリーのもとになったマッケナ・クランとブキャナン・クランの対立,そして対立の元となった宝の行方がカギになってサスペンスが仕立てられており,「広野に・・・」から「嘘は・・・」の順に読むと,逆に歴史を下った感じになるのも面白い点で,まだ両方とも未読の方にとっては,この読み方もお薦めです。しかも,マッケナ家から見るとブキャナン家が宝を盗んだと主張されている点も,「広野に…」から読むと,なるほどそんな見方もあるのかとか,歴史というのは全く相反する二つの見方が存在するんだなとか,ロマンスとは異なる興味もわいてきますので,さらに面白い感じを持ちます。
 本作では舞台はテキサスの地図には名前しか載っていないような片田舎の小さな町。この街はふたつの郡にまたがって存在しているため,保安官も二人。しかも住人達は互いに顔見知りである意味怪しげな秘密を抱えているのも面白さを倍加しています。ジョーダンの兄のニックとその相棒ノアがジョーダンが巻き込まれた事件の捜査に駆けつけますが,FBIの存在と保安官の存在がここでも火花を散らします。本作では,いわばFBI側から事件を捜査していくのですが,これも保安官側から事件を描いたら,全く異なった物語がもう一つ出来上がるのではないか,そんな試みもなされているんだろうな(今は思い出せませんが,たしかそんなシリーズもあったように思います)と二面から楽しめることに,思いを膨らませています。
 車のトランクに入れられた死体を発見したジョーダン。ちょっと時間的に不可能かと思われる事件が連続していきますが,そこはミステリーではなくロマサスなので勘弁してもらうとして,こんな小さな田舎町で死体が複数,しかも殺人事件を表すということはほとんど起こり得ないことで,しかもジョーダンが町に来てから立て続けに起こる,というのに町の人はジョーダンを胡散臭い目で見るのではなく,「ヘイ,ジョーダン」と気軽に声をかけるというのも,何気に怪しい感じですね。
 ジョーダンとノアのロマンスも,たっぷり楽しめ…という感じではありませんが(「広野に・・・」に比べるとロマ度はかなり低いものの)これは,ジョーダンのコンピュータ・オタクという性格に合わせた設定なのかもしれませんね。




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広野に奏でる旋律 [ジュリー・ガーウッド]

SHALOCKMEMO603
広野に奏でる旋律 Shadow Music 2007」
ジュリー・ガーウッド  Julie Garwood  juliegarwood.com 鈴木美朋





 ジュリー・ガーウッドはコンテンポラリーもヒストリカルもどちらもこなす作家ですが,ヒストリカルの方に,とくに中世を舞台にした時は,すばらしい手腕を発揮する作家のように思います。
 スコットランドが群雄割拠のクラン時代はまさに日本の戦国時代のように多くの戦士たちが活躍する面白さがあり,それに翻弄されるヒロインたちも,決して上品で気弱なだけでなく,たくましく男たちに比しても負けない気の強さとたくましさを兼ね備えているように思います。
 本書もそんな中世ヒストリカルの面白さと,ヒーローとヒロインの間で交わされる,コンテンポラリー作品のようなポンポンとピンポン玉が飛び交うような会話の面白さの両方が楽しめる作品に仕上がっています。そんな意味で素晴らしい作品になっていることは間違いありません。
 さて,時代はジョン王時代。ヒロインはゲイブリエル・ブキャナン。ヒーローはコルム・マクヒュー。スコットランドのある氏族長のもとに嫁ぐことになっていたヒロインは,自分の遺産である領地に立ち寄ったところ,生き埋めにされそうになっている若者を救うことになります。しかし,瀕死の状態にある若者を修道院で治療してもらおうとしたところに,その兄であるヒーローがやってきます。見るからにたくましく恐ろしげなヒーローのコルムですが,ゲイブリエルにはちっとも恐ろしく思えません。そして,そのたくましさ,ぶっきらぼうさに次第に惹かれていくのです。そんなとき,嫁ぎ先の氏族長が殺されるという知らせが届きます。結婚式もなくなってしまい,自分のことであらぬうわさを立てられ,行き場を失ってしまったところで,ヒーローに一緒に来いといわれて,領地であるハイランドに向かうヒロイン一行でした。
コルムの領地の人々はみなゲイブリエルに親切に接し,様々な問題を次々にクリヤしていくのですが,やがて敵役のバロンにより,究極の困難に陥います。ところどころに登場するジョン王ですが,嫌われ者ではあるものの,ちょっとかわいい一面ものぞかせているところが,本作を暗い雰囲気にさせない一翼を担っているように思います。敵役のバロンたちのなんともトンマで憎めない性格にも,殺伐としがちな物語を終始面白くさせる要因になっており,正に作者の人物造形の深さが垣間見れる傑作だと言えます。




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太陽に魅せられた花嫁 [ジュリー・ガーウッド]

SHALOCKMEMO392
太陽に魅せられた花嫁 The Bride 1989」
ジュリー・ガーウッド Julie Garwood 鈴木 美朋



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12世紀のヒストリカルでありながら,妙に現代的な1作
ジュリー・ガーウッドのヒストリカル。しかもハイランドものであるということで,ちょっと構えて読み始めました。プロローグの重苦しい3ページでは,サスペンス色も強く,本の厚さもひとしお(525ページ)あることから,かなり長時間かかるかなと思われました。
しかし,しかし・・・
ヒロイン,ジェイミー(男性の名前らしいです)の父バロンとその4人の娘たちが登場してくると,もう,なんと言っていいか,それこそ蜂の巣をつついたような混乱ぶり。この時点でもう,おやっと思わなければならなかったんですね。
ヒーローのアレック・キンケイドとその親友のダニエルに掠われるようにハイランドに連れて行かれるジェイミーと姉のメアリーのキャラクターの違いや,アレックとジェイミーの漫才のような掛け合いがえんえんと続き,気がついたら,ほろりとさせられ,家族や一族に対する思いやりと誇り高きハイランド地方の人々の考え方,最後にはあしながおじさんのように登場してくるスコットランド王など,めまぐるしく登場する人物たちの生き生きとした書き分けにすっかり魅了され,一気に読み上げてしまいました。
重苦しい雰囲気は全くなく,プロローグの重苦しさは,最後のどんでん返しのための伏線としてきちんと生かされているなど,とても見事に仕上がった1作になっています。
会話の面白さ,家族愛,現代日本人が失ってしまったと言われる郷土愛などがたっぷり詰まった,ちょっぴり不思議な作品でした。
表紙の美少女が,目を伏せて静かにかしずいている様子にもだまされてはいけませんぞ! 五つ星の最高級品です。



Fantastic Fiction によると,姉妹作品[ The Wedding ]も1996年に出版されている様です。早く訳書を読みたいですね。
それにしても,The Bride やThe Wedding などと,とてもシンプルなタイトルはこの作家の特徴でもあるようですね。


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