SSブログ
クリスティーナ・ドット ブログトップ

霧の宮殿と真珠の約束 [クリスティーナ・ドット]

SHALOCKMEMO426
霧の宮殿と真珠の約束 Rules of Engagement
( Governess Brides 2 ) 2000」
クリスティーナ・ドット 細郷妙子





クリスティーナ・ドットの「秀麗家庭教師学院」シリーズ第2弾。
前作「異国の子爵と月の令嬢」で幸せをつかんだシャーロットとハナ,そして本作のヒロイン,パメラ・ロックハートは,家庭教師派遣業を開業し,貴族の子女にマナーを含めた教育を施すことによって生計を得ようとしていた。パメラが派遣されたのは,放蕩者で有名なケリッチ伯爵デボン・マシューズ。幼少の頃バッキンガム宮殿で友達同士の悪ふざけから窓からずり落ち,枝にズボンが引っかかっておしりが丸出しになってしまうと言う不名誉な姿を周囲の人々に見せてから,世を拗ね,常にそのことを隠し続けてきた。幸い,見られたのが自分であることは数人の人々にだけしか知られていなかったが,後に女王になったヴィクトリアと,当時は名前も知らなかったパメラ,その二人には秘密を知られていた。ヴィクトリア女王から無理難題を押しつけられても,断れなかったのは,その秘密を明かされるのを恐れていたからだった。また,最近自分の経営する一族の銀行で偽札事件が起こり,その犯人をなかなか割り出せないでいるのも気がかりなことだった。そんな折り,不品行にあきれた女王から,3ヶ月以内に結婚するように命じられ,デボンが思いついたのは,一時孤児を引き取り家庭教師にしつけて貰うことで周囲の人々から認められようということだった。そこで「秀麗家庭教師学院」が登場する。パメラはデボンの条件だった一定の年齢で,目立たず,腕のいい,デボンを誘惑しない家庭教師という条件を満たすため,わざと醜く変装してデボンの元に行き,孤児院でベスを見つける。8歳という年齢の割には賢く,大人の感情を見抜き,感受性の強いベスはたちまち周囲の人々やデボン,パメラの注意を惹き,孤児院に戻らずにデボンに本当の養女にして貰おうと願う。そして3ヶ月後,ヴィクトリア女王の接見の席で,デボンとベスは女王と夫アルバート殿下の信任を得ることができる。
一方,自分の本当の姿をひた隠しにしていたパメラだが,デボンの祖父レイナード卿には会った瞬間から元々の美貌や貴族の血を持つことを見破られてしまい,なにかとデボンとの本当の結婚を画策されてしまう。しかしレイナード卿は二人を無理に結びつけようとせず,折に触れ謎の言葉を話したり,デボンが両親から受けた母親から受けた裏切りや,パメラが父親から受けた結婚への不信感をそれとなく和らげようとするなど,二人が愛を見つけ出すのを陰から支えていく。そして,ベスも二人の結婚を望み大きな機会を提供する。
二人は本物の愛に支えられた結婚ができるのか。最後の最後まではらはらさせる展開が続く。


あたたかい恋 [クリスティーナ・ドット]

SHALOCKMEMO412
あたたかい恋 Just the Way You Are 2003」
クリスティーナ・ドット 森川信子





ヒストリカルロマンス作家クリスティーナ・ドットのコンテンポラリー作「ロスト・テキサス・ハート・シリーズ」の第1作。
16歳で両親に死に別れ,弟妹がばらばらにさせられたという不幸な過去を持つ乙女ホープが,ボストンのセレブで大金持ち一族の経営者で,氷の男と言われるザックの心を溶かし,兄弟を捜し続けるシンデレラ・ストーリー。
この手の話にはテンで弱く,すぐに引き込まれてしまう斜麓駆だが,下町の人たちのあたたかい心の交流と助け合いにだけでなく,金持ちたちも愛を本気で信じ大切にしているという姿が随所に表れ,「あたたかい恋」という表題を十分にあらわしている快作。


異国の子爵と月の令嬢 [クリスティーナ・ドット]

SHALOCKMEMO393
異国の子爵と月の令嬢 Rules of Surrender 2000」
クリスティーナ・ドット 細郷妙子





スーザン・マレリーの”アラビア・ロマンス3部作”の舞台がエル・バハールという架空の国。私は続編のバハニア王国編しか読んでいないので,ピンとこなかったが,ロマンスの世界では,常識なのだろう。それだとすると,2人の作家が同じ架空の国を想定していることになるが,これってイイの?
本書の著作年は2000年,スーザン・マレリーの”アラビア・ロマンス”の著作年も2000年となると,どちらも偶然同じ国名を思いついたことになるが,この辺の事情に詳しい方は是非お知らせください。
さて,このエル・バハールで艱難辛苦を経た後ウィンターを救ったのがベドウィンのバラカという族長。バラカを父のように慕い,その人生観をすっかり受け入れた子爵は,砂漠に国の男性観,女性観に凝り固まっている。長男,長女を伴ってイギリスに帰郷したものの,上流階級には受け入れられない,つまりイギリス流のマナーを実践できないことに悩んだ子爵の母,アドーナは孫共々,息子のマナーも見てもらおうと家庭教師のシャーロット・ダルランブルを雇うことにする。こちらが,本作のヒロイン。これまでの教え子たちにも”きちんと先生”と呼ばれていたようにシャーロットはまさにイギリス・マナーの完璧な実践家。二人の子供たちもすぐになつき,順調に友人たちと立ち上げた家庭教師派遣会社の経営にも潤いをもたらす講師料を得たと喜んだのはつかの間,ウィンター卿はあえて,マナーを否定し,シャーロットを脅かす。二人のマナー観をめぐる虚々実々の駆け引きが前編を通じて面白い。ただ,たいした事件もないのにマナー論争が繰り広げられるのに若干中だるみを感じる読者もいるだろう。誠実さと,傲慢さ,率直さ,愛することと自己犠牲など,いろいろな価値観をどう押さえていくかを考えさせられる本作は,あまり若い人向きではないのかもしれないが,伝統的な教養小説の流れをくむものといえるのかもしれない。
奔放な考えを持つ子爵の母アドーナを想い続けるバックネル卿や,自分勝手ではあるが,家族には忠実なシャーロットの叔父など,脇役に至るまで登場人物をきっちりと描き分ける見事さは,帯にあるように「ロマンス界の大物作家」と呼ぶにふさわしい作品になっている。

クリスティーナ・ドット ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。