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黒き公爵の花嫁 [サマンサ・ジェイムズ]

SHALOCKMEMO540
黒き公爵の花嫁 Bride of a Wicked Scotsman 2009」
サマンサ・ジェイムズ Samantha James samanthajames.com 森嶋 マリ





 本作は,サマンサ・ジェイムズ6冊目の邦訳です。ここ最近の邦訳3作品はマクブライド・シリーズがソフトバンク文庫で刊行されていますが,前作「星降る夜に抱かれて」に続き,シリーズ最終巻となる本作では,兄弟の長男,アレックがヒーローとなります。また,前作では「とにかく,ヒロインは謎の小説家として正体を知られないように秘密をもっているほか,母を精神病院に入れて介護しつつ,夜な夜なロンドンの町を一人で徘徊して小説の構想を練るという,変わり種の美女」というのが,ヒロインでしたが,本作では,「二百年前に略奪された一族の宝物<光の環>を取り戻すため,海賊ブラックスコッツマンの子孫に近づこうとする美女モーラ・オドネル」がヒロインとなります。いずれも思いがけない設定というか,特に本作ではファンタジー的な要素が強い人物設定・場面設定になっており,初めから読者を独特の雰囲気に引きずり込むのが,サマンサ・ジェイムズの真骨頂と言えるのではないでしょうか。
 一読して,ストーリーの圧倒的な面白さ,登場人物の生き生き度,光の環を求めてグレナデン中を探し回るなぞ解きの面白さ,そしてヒーロー・ヒロインをめぐる,互いの秘密の絡みなど,どの要素をとっても,どの要素が欠けても本作の良さが崩れてしまうような質の高さをもった作品です。
 今月読んだ本はどれもお薦めの作品ですが,本作がやはり随一でしょう。


星降る夜に抱かれて [サマンサ・ジェイムズ]

SHALOCKMEMO505
星降る夜に抱かれて The Seduction of an Unknown Lady 2008 (McBride 2)」
サマンサ・ジェイムズ Samantha James samanthajames.com 清水由貴子





設定に惹かれて読み始めました。19世紀前半のロンドン。ヒロインはゴシック小説の作家で,女性作家であることを隠し,F.J.スパロウというペンネームで数冊のベストセラーを生み出す謎の美女。さらに書店も経営しているという自立した女性です。かたや,ヒーローは,マクブライドシリーズの第2弾ということで次男のエイダン・マクブライドが登場します。貴族でありながらインドのパンジャブ地方で勇名を馳せた大佐。インドで部下を47名失うという大失態をしでかし,失意のうちに故郷に帰ってきますが,国では,名将というして勲章をもらうという皮肉な運命からやっと立ち直りかけたところです。
とにかく,ヒロインは謎の小説家として正体を知られないように秘密をもっているほか,母を精神病院に入れて介護しつつ,夜な夜なロンドンの町を一人で徘徊して小説の構想を練るという,変わり種の美女。しかも結婚などはさらさら頭になく,すでに社交界にデビューする適齢期をとっくに過ぎています。しかし,そのたぐいまれな美しさを全く意識しておらず,男性に対してもきつい言い方をしてしまう,当時の女性としてはあり得ない行動力を持つ女性です。読者はまずヒロインのこの立ち居振る舞いと,その謎に引きつけられます。そんなヒロインの経営する書店の向かいに越してきたのは,インドから帰ったばかりのエイダン大佐。イギリスの女性には珍しい独立心旺盛な女性にエイダンは,すぐに惹かれてしまいます。なぜ,こんな美女が夜な夜な一人で歩き回るのか。また,外にも彼女が隠していることがあるような気がしています。実は,ヒロインは夜の徘徊の途中,誰かにつけられているような気配を感じていることや,誰かが彼女の留守中に店の中に入り,本の配置を変えたり,枯れた花を玄関においたりといういたずらをしており,不気味な感じを強く持っていますが,警察に届けるには証拠が足りず,一人で悩んでいるところに現れたヒーローに惹かれるものをかんじます。
さて,二人の心は寄り添っていくのでしょうか,そして,謎のストーカーはいったい誰なのでしょうか,などとミステリアスな展開が最後まで続き,犯人が正体を現したときには,ヒーローが駆けつけ,見事に大団円を迎えるというロマンス小説の王道をいく作品です。
設定の面白さはさておき,二人のロマンス表現は充実しており,アドヴェンチャー,ミステリ,ゴシックロマン,などなどいろいろな要素が見事に融合した佳作です。


完璧な花婿 [サマンサ・ジェイムズ]

SHALOCKMEMO437
完璧な花婿 A Perfect Groom 2004」
サマンサ・ジェイムズ Samantha James samanthajames.com 森嶋マリ



[bk1][7&Y][Amazon]




SBNVシ08-02
08.07/\893
495p


「理想の花嫁」(SHALOCKMEMO428)の続編。セバスチャンの弟,ジャスティン・スターリングと司祭の娘アラベラ・テンプルトンのロマンス。
幼少のころから,長男のセバスチャンはまじめで優等生なのに対して,次男のジャスティンはなにかと品行の定まらなかった母親に似て,イギリス一の美男子として浮名を流しながらも,父親に疎まれ,反抗を重ねて来ており,父親の死にも自分に責任があると感じている心の深い傷を持った男性です。一方アラベラ・テンプルトンは司祭の娘でありながら,幼いころからお転婆で,木のぼりなどは平気の平左。しかも二人は幼いころにすでに知りあっており,アラベラがジャスティンをからかったことがあるという関係でした。アラベラはほかの女性よりも背が高く,しかも見事な赤毛であり,自分の容姿に強い劣等感を持っています。
そんな二人が成長してから出会い,互いに意識し合いますが,二人ともそれを認めようとしません。
あるパーティで二人きりになるチャンスがあり,ジャスティンがアラベラにキスしているところをアラベラのおじ夫婦に見られてしまい,ジャスティンは責任を取るように言われたとき,とっさに,アラベラとの結婚を表明してしまいます。すでに数人の男性から求婚され,それを断っていたアラベラですが,ハンサムでやさしさを示すジャスティンが心から結婚を望んでいることを信じられません。自分の容姿に対する劣等感から,自分を憐れんでジャスティンがが求婚したのだと思い,マリッジブルーに陥ります。自分の両親の結婚生活が破たんしたのを目の当たりにし,結婚生活そのものに自信が持てないジャスティンも,アラベラが結婚を承諾したことに困惑しています。そんな二人の気持ちが一つに溶け合うには,その後も紆余曲折があり,それがこの作品の読ませどころとなっています。
エピローグは7年後。二人の間に生まれた子供たちが,どんなふうに遊んでいるかを読んだとき,読者は思わずニヤリとし,心温まるすばらしい作品に仕上がっています。
次作は,スターリング家の末娘ジュリアンナのロマンスです。


理想の花嫁 [サマンサ・ジェイムズ]

SHALOCKMEMO428
理想の花嫁 A Perfect Bride 2004」
サマンサ・ジェイムズ Samantha James samanthajames.com 松井里弥



[BK1][7&Y][Amazon]





ナポレオン戦争後の時代,ロンドンの裏町で育った娘デヴォン・セントジェイムズと,自らの才覚で侯爵家の身代を立て直し,弟・妹の面倒を見続けている真面目で理想的な生活を送る長男の独身男,セバスチャン・スターリングのヒストリカル・ロマンス3部作の第1作。
セバスチャンは母親が家を飛び出したスキャンダルを回復し,イギリス1の美男子と目される弟,ジャスティンと互いに心を許し合える兄弟でありながら,自分はジャスティンと比較して容貌で劣っていると普段から思っていた。一方,父親が誰かもわからず,母親を幼いときになくしたデヴォンは,ロンドンの下層社会で気高い精神を失わずも,貧しさから逃れられず,ある夜勤め先からの帰路,ハリーとフレディという二人のゴロつきから大切な財布とネックレスを奪われそうになり,激しく抵抗した際,靴に隠し持っていたナイフでフレディを刺してしまう。自らも脇腹を刺され,意識を失って倒れているところを偶然通りかかったセバスチャンに発見され,侯爵のロンドンの屋敷に運ばれ,手当を受ける。意識を失っているデヴォンの美しさに一目惚れしたセバスチャン,目を覚ましたとき,ハンサムなセバスチャンの姿を見て熱い想いを感じたデヴォン。二人の運命の出会いはこのとき始まった。
身分が低いにもかかわらず,決して自分の主張を崩さないデヴォンの気高さに興味を感じたセバスチャンと,弟にかなわないと口にはするものの兄弟二人の面倒を自分一人で背負っているたくましいセバスチャンに恋心を抱くデヴォンのやりとりに,読者は思わずニヤリとさせられる。互いに想いを寄せ合う二人だが,身分の違いから結婚できないと考えざるを得ない時代の制約が正統的なヒストリカル・ロマンスの醍醐味を味わわせてくれる。
そして,終末で,デヴォンの身に驚くべき真実が・・・。
3部作第1作として,次作を期待させる渾身の一作。


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