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服従しない花嫁 [シェリー・ブラッドリー]

SHALOCKMEMO546
服従しない花嫁 His Rebel Bride 2001」
シェリー・ブラッドリー 芦原夕貴





「伯爵の花嫁」「盗まれた花嫁」と続いてきた「Brothers in Arms」シリーズの最終巻です。15世紀後半のイギリス。「伯爵の・・・」ではアリクのもとに押し掛けた男爵家の娘グウィネスがヒロイン。「盗まれた・・・」では,ドレークに連れ去られたエーヴリルがヒロインとなりました。本作では,イングランド王の命を受けて,アイルランドの反乱を防ぐために父の国アイルランドに戻ったキーランが,オーシェイ家の次女メイヴを見染めて花嫁とし,さまざまな困難を経てついに愛を獲得するまでの波乱万丈の物語です。
陽気で,いつも女性から熱いまなざしを受けていたキーランですが,四人姉妹の次女メイヴが,城を切り盛りし,自分の子供を授けてくれる花嫁として選びます。しかし,反乱軍に加わっている兄に協力し,なんとか内乱になるのを防ぎたいという思いから,夫になったキーランに魅力を感じつつも,反抗ばかりしてしまいます。ときどき見せる夫の人に対する優しさや,自分の不幸な幼少時代のことを話そうとせず,妻となった自分に誘いかけることにいらだちを感じながらも,夫ととしてのキーランの魅力に次第にのめりこんでいくメイヴですが,キーランの方も,自分に魅力を感じながらも,なかなか心を開こうとしない妻にいらだちを感じ,イングランドとアイルランド間の争いに巻き込まれていきます。


頑なで,しかもアイルランドの自由を戦いなしに話し合いで解決していこうとするメイヴの態度や思いに読者はやきもきさせられますが,キーランとアリク,ドレークの友情,さらにはその妻となったグウィネスやエーヴリルが終末で登場し,シリーズを締めくくるにふさわしい1作となっています。



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盗まれた花嫁 [シェリー・ブラッドリー]

SHALOCKMEMO528
盗まれた花嫁 His Stolen Bride 2000」
シェリー・ブラッドリー 芦原夕貴





「伯爵の花嫁」に続くシェリー・ブラッドリーの邦訳第2弾です。
 前作のヒーロー,アリク・ネヴィルの親友であるドレーク・マクドーガルが本作のヒーローです。ドレークは前作で,腹違いの兄に幽閉されており,アリクと親友キーランによって救出されたのですが,本作はさらにその1年後,腹違いの兄マードックへの復讐を誓うドレークは,マードックの婚約者エーヴリルを誘拐し,隠れ場所のスコットランドの孤島に連れ去ります。所謂略奪婚もの。
 エーヴリルの父が所有する領地は,荒れ果てており,富裕な領主であるマードックと結婚することによって,自分たちの領民が救われると思い込んでいます。さらに,やさしく声をかけてくれるマードックを理想の夫と考え,ドレークに連れ去られた時は,ドレークが自分の父を殺した殺人者であり,無法者であるというマードックの言葉を信じています。そのため,誘拐された時は,なんとかしてドレークのもとを逃げ出そうとしますが・・・
ドレークとエーヴリルが仮の結婚をし,宿泊している宿の上階からマードックが二人を捜索しに来たのを見たとき,エーヴリルはマードックの本性を見て,ドレークに対する思いを持ち始めている自分に気付きます。一方,マードックへの復讐のためエーヴリルを誘拐したドレークですが,一途なエーヴリルの気持ちに気付き,愕然とします。「泥沼の人生を歩んでいる自分に,神はなぜこれほど美しい花嫁を与えてくれるのだろう」という1行に,ドレークの気持ちが集約されています。
 エーヴリルとドレークは試験結婚(原語ではなんというのでしょう?)して,島で二人きりの生活をしますが,「愛」を信じられないドレークと自分を「不器量」と父に教え込まれたエーヴリルの気持ちはすれ違ったままです。ドレークの親友キーランが本土の情報を伝えに島を訪れますが,ドレークはキーランが妻の手をとって慰めただけでも烈火のごとく怒りの気持ちを表します。キーランはそのことから,ドレークがエーヴリルを本気で愛していることを指摘するのですが,ドレークの気持ちを変えることはできません。二人とも離れがたく愛によって結びついているのに,互いにそれを素直に認めることができないこと,しかも,それが各々の背負っている過去や責任に起因していること,その悲劇を思うと,読者も胸が締め付けられるような焦燥感にとらわれます。ふと振り返ると,物語中盤までで,すっかり作者の思うつぼに嵌ってしまっていることに気付かされます。

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伯爵の花嫁 [シェリー・ブラッドリー]

SHALOCKMEMO512
伯爵の花嫁 His Lady Bride 2000」
シェリー・ブラッドリー 芦原夕貴





シェリー・ブラッドリーの邦訳第1作です。訳の芦原さんの訳書としても第1作目ですね。
文庫帯には,「森に住む魔術師のもとに,いけにえとして嫁がされ・・・」とあります。確かに冒頭はそんな感じですが,この魔術師というのが,ヒーローのベルフォード伯爵アリク・ネヴィルの世を忍ぶ仮の姿とでもいうのでしょうか,本来は伯爵なのですが,権力闘争に嫌気がさし,森の中のコテージで孤独な生活を送るアリクなのでした。
さて,このコテージに男爵家の娘でありながら,爵位を継いだキャプショー男爵バードリックの姪であり,現男爵の娘たちより美人で気が強いため,徹底的に苛め抜かれてきたグウィネスが家を追い出されるために,魔術師と噂されるアリクに嫁ぐか,命を失うかという究極の選択を迫られて連れてこられます。孤独な生活の中で自分を取り戻しつつあったアリクは,こんな運命で連れてこられたグウィネスとの結婚を仕方なく承諾し,二人は司祭のもとで正式な結婚という道を選択せざるを得ませんでした。しかし,結婚はしたものの,もともと男爵の娘だったグウィネスは,アリクにしか愚痴をこぼせませんし,計略を用いて城に逃げ帰ってみたものの男爵をはじめ城の誰からも相手にされず,再び森のコテージに帰ることになってしまいます。
ところで,時代はバラ戦争末期,15世紀中ごろの物語です。ヨーク家とランカスター家の王位継承問題から内乱に発展したバラ戦争ですが,さて,どっちが白バラでどっちが赤バラでしたっけ?アリクが「白獅子」と呼ばれていたことから白側だったことは想像がつきますが,いずれにせよ,キングメーカーといわれたネヴィル家の爵位を継ぐものですから,イングランドで最も影響力の強い人物であったことは想像に硬くありません。そして,その正体を隠し隠遁生活を送っていたアリクに対して,グウィネスはかなり強く口での攻撃を繰り返すのでした。それでも,アリクは辛抱強くその口撃に絶え,グウィネスもうすうすはアリクの真の優しさに気づいていくのですが,城の女主人としての生活を捨てきれないのでした。
貴族には貴族の生活のよさと同時に,さまざまな意味での責任も伴うものだという精神は,ノブリス・オブリージュという言い方で古来イギリスには長い時間をかけてはぐくまれてきたのだと思いますが,グウィネスからしてみれば,広い城で多くの使用人たちを使って家事を差配する生活というのは,自分の本来の姿であるという思いからはなかなか逃れられなかったようです。
そして,アリクにはアリクなりに,自分の城に戻れない理由があるのでした。ひとつは,元自分の婚約者でありながら,自分の父と結婚してしまったロウィーナという美女の存在です。彼女もまた貧しく生まれ,美貌を元に貴族の生活を獲得するために愛をもとにした結婚を捨てた女性でした。しかし,アリクは,ロウィーナへの愛をもともと感じていたわけではなかったようで,読者からすれば,二人が愛をはぐくんでいなくてよかったと思わせられます。ロウィーナもグウィネスも同じような考えをもっていることから,作者としては両者の違いをグウィネスの精神的な未熟さ=愛らしさというところにおいたようです。とはいえ,グウィネスが誰に対しても食ってかかる様な挑戦的な態度を崩さないところから,いらいらさせられながらも憎めない性格をもっているところが,グウィネスがヒロインとして認められる存在なのかもしれません。
大団円では,爵位と城を失ったアリクが,グウィネスの愛を獲得するためのもうひとつの大きな仕掛けが用意されており,同時にグウィネスの心の成長も描かれて,さわやかな終結を迎えます。
この作品はアリクの友人である,ドレーク・マクドゥーガル,キーラン・ブロデリックがそれぞれヒーローを務めるシリーズ "Brothers in Arms" の第1作目にあたっています。暗い性格に描かれているドレーク,誰にでもひょうきんに話しかける明るい性格のキーランがそれぞれどんなヒロインと出会うのか楽しみです。


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