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まばたきを交わすとき [エロイザ・ジェームズ]

SHALOCKMEMO517
まばたきを交わすとき The Taming of the Duke (Essex Sisters 3) 2006」
エロイザ・ジェームズ きすみりこ





 エロイザ・ジェームズのエセックス姉妹4部作の第3弾。姉妹のお騒がせ娘,三女のイモジェンがヒロインです。駆け落ちまでしてメイトランドと結婚したイモジェンでしたが,結婚二週間で夫が競馬で落馬して亡くなってしまうという悲劇に見舞われます。その後夫の母のレディ・メイトランドも亡くなってしまい,イモジェンは豊かな未亡人になって,姉妹の後見人ホルブルック公爵レイフの隣の領地を所有しましたが,領地には住まず,ホルブルック邸に住むことにしました。そこに,四女のジョージーも,スコットランドに住む次女のもとから,来年の社交界デビューの準備にやってきます。
 さて,ヒーローのレイフはもともと公爵位を継ぐつもりはなかったのですが兄ピーターの急死に伴って仕方なく爵位を継いだものの,公爵としての意識はほとんどなく,酒を唯一の友として生きてきました。そこに,異母弟のガブリエル(ゲイブ)が,突然現れます。ホルブルック邸には,レイフの母が演劇を好んでいたので,小劇場もあったのですが,しばらく使われておらず,修理を必要としていましたが,大学で文学教授となっていたゲイブは,この小劇場での上演を依頼しに来たのでした。ゲイブにはある女優との間にマリアという女の子があり,この女優を劇で登場させたかったのです。そこでレイフはイモジェンの亡夫の元婚約者だったミス・ジリアン・ピシアン=アダムズを監督に,そして近親の者たちを素人役者として登場させる劇を上演するために,劇場の修理に取り掛かりました。
 本作には,これらの人々のほか,結構たくさんの登場人物が出てきます。さらに中半ではレイフがゲイブになりすましてイモジェンと外出するなど,かなりストーリー的にも入り混じっているので,登場人物に感情移入するのが難しい作品になっています。それよりも,シェークスピアの「真夏の夜の夢」のような登場人物たちのドタバタの方を楽しむべきなのかもしれません。作者のエロイザ・ジェームズが現役のシェークスピア文学研究かであることからも,シェークスピアの作品を意識していることは間違いないのですから。
 さて,次作でエセックス姉妹のシリーズは大団円となります。上三人の姉妹が2歳ずつしか年が離れていなかったのに比べ,末っ娘のジョージーだけ三女のイモジェンと4歳離れているようです。このジョージーは果たして誰と,どのように結ばれるのでしょうか。


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見つめあうたび [エロイザ・ジェームズ]

SHALOCKMEMO516
見つめあうたび Kiss Me Annabel (Essex Sisters 2) 2005」
エロイザ・ジェームズ 立石ゆかり





 エロイザ・ジェームズのエセックス姉妹4部作の第2弾です。前作で長女テス(テレサ)が結ばれますが,本作でのヒロインは次女のアナベルです。
原題の「Kiss Me Annabel」に表されているように,とにかく本作では,Kissの場面が数多く現れます。時代は1817年。絶世の美女であるヒロインのアナベル・エセックスは社交界デビューを果たしますが,父親が全財産を馬につぎ込んで亡くなったため,持参金は一頭の馬だけです。姉のテスが結婚した相手は貴族ではないものの,経済的にはとても豊かな紳士。厳しい自然と貧しい生活の中で切り詰めた家計をやりくりするのが一家の中でアナベルの役目だったため,イングランド貴族を結婚相手に選ぼうと考えていたアナベルは,結局,妹イモジェンのスキャンダルから逃れるため,スコットランドから来たばかりの,そう裕福そうにも見えないアードモア伯爵(イングランドの社交界では名前すら知られていない伯爵)ユアン・ポーリーからのプロポーズを断れずに,結婚を承諾し,スコットランドのアードモアの住まいに馬車で長い旅をすることになります。前編の半分以上を占めるこの旅の物語は,互いに愛し合った二人の旅というよりは,互いのことをよく知るための旅になるのでした。そして,その途中で,貧しい農家で,牛と鶏だけの,食べるものや寒さを防ぐ薪すら自分たちで準備しなければならない,上流階級では考えられない極貧生活を二人きりで経験することになります。数日間のこの生活の経験が,結婚に必要なのは,財産や社会的地位など,アナベルが求めていたものではなく,愛だということに気づかせてくれるのでしょうか。読者としては,そんな展開を望むところですが,まだまだどうして,スコットランドまでの旅には,ヤジキタ珍道中のような,かなりの紆余曲折が用意されています。
 そしてさらに,アードモア伯爵の城に着いたとき,アナベルは貧乏貴族と結婚するのではなく,とてつもない規模の領地を支配する大富豪が相手だということを実感するのです。しかし,ポーリー家には,大きな秘密が隠されていたのでした。
 前作ではシェイクスピアの「空騒ぎ」がもじられていましたが,本作では,ご想像のとおり,「じゃじゃ馬ならし」がもじられています。しかも,じゃじゃ馬はヒロインのほうではなく・・・というところに,もじりのもじりという,一味も二味もひねった楽しみが隠されています。さらに,「神の教え」(神学的な意味ではなく,信仰といった庶民的な意味ですが)という要素も入り込み,随所にヒロインとヒーローの交わす絶妙な会話にも,思わずニッコリさせられます。絶世の美女でありながら,自分を常に美しく見せようと幼い頃から訓練と工夫を凝らす生活をしてきたアナベルが,真の自分の姿と内面の美しさをヒーローに伝えられるのでしょうか。そこが読みどころだと思います。


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瞳をとじれば [エロイザ・ジェームズ]

SHALOCKMEMO515
瞳をとじれば Much Ado About You ( Essex Sisters 1 ) 2005」
エロイザ・ジェームズ 木村みずほ





 アメリカのヒストリカル・ロマンス作家エロイザ・ジェームズのエセックス姉妹シリーズ第1作です。作者は1964年生まれといいますから40代半ば,まさに脂の乗り切ったバリバリの作家と言えるのではないでしょうか。このシリーズは邦訳では第2作の「見つめあうたび Kiss Me , Annabel 2005」の方が先に訳されていますので,作者の紹介はあとがきに詳しく紹介されています。それによると,現役のシェークスピア研究家として大学で教鞭をとっているそうですので,本作の原題「Much Ado About You」がシェークスピア喜劇「空騒ぎ Much Ado About Nothing」のもじりであることも頷けます。
 さて,エセックス姉妹シリーズのヒロインとなるのは,エセックス家の4人姉妹,テレサ(テス),アナベル,イモジェン,ジョセフィーン(ジョージー)ですが,母は早死にし,父は娘たちよりもこよなく馬を愛し,全財産を馬につぎ込んだため,父亡き後の姉妹は貧乏なまま後見人のホルブルック公爵レイフの基に身を寄せざるを得ませんでした。エセックス家はスコットランドの貴族であり,爵位はイングランド王から戴いたという由緒ある家柄ではありますが,男子がなく,4姉妹だけが残った状況であれば,いずれは姉妹のうちの誰かが結婚し,その夫か,その息子が爵位を継ぐことにならざるを得ないのでしょう。
 ホルブルック公爵の基に身を寄せた4姉妹ですが,長女のテスは,姉妹の母親代わりを務めていたため結婚よりも妹たちの幸せを優先して考えています。次女のアナベルは蜂蜜色の髪と美しい顔立ちで社交界デビューを待ち望んでいます。三女のイモジェンは美しい黒髪としとやかさを持った美女ですが,メイトランド卿ドレイブンに恋をしていて,しかもメイトランド卿は競馬と馬のことしか頭にない上に,すでに他の令嬢と婚約しています。四女ジョージーは,頭の回転の速い少女で,社交界にデビューするにはまだ間がありますが,自分がちょっと太り気味であることを気にしています。公爵のもとには,メイン伯ギャレット,裕福な実業家ルーシャス・フェルトンなどが出入りし,4人の姉妹との間に,結婚をネタにしたさまざまな駆け引きが行われ,いわゆる「空騒ぎ」状態に陥ります。そのうち,イモジェンとメイトランド卿が駆け落ちしてしまったり,テスに結婚を申し込んだメイン伯爵が式の前日に行方をくらましてしまったりと,トタバタ劇が演じられますが,姉妹は互いを気遣いながらもユーモラスな会話で決してくじけません。結局,長女テスが,最も結婚に遠いと思われていたルーシャスとの結婚に至り,二人は互いに恋に落ちることになります。さらにイモジェンとメイトランド卿が加わり,競馬場で落ち合うことになりますが,そこで,最大の事件が起こります。
 馬をこよなく愛した姉妹の父はそれぞれに遺産の代わりに馬を一頭ずつ残したのですが,その馬がもとで不幸な事件が起こります。そして,三女イモジェンと長女テスの間には,気持ちの上での大きな亀裂が入ってしまいます。一方テスとルーシャスはルーシャスの両親との和解のためにテスが仕組んだ企みをかろうじて乗り切り,家族としての幸せを手に入れていこうとします。
 本作の重要なテーマは馬と貴族社会のかかわり,イングランドとスコットランドの微妙な意識のずれ,19世紀の上流階級の結婚観など,さまざまが入り混じり,互いを尊重し,愛にあふれた結婚と家族という理想の姿を描ききっていると言えます。第2作では次女アナベルがヒロインのようです。どんな愛を見つけていくのでしょう。


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