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ホワイトチャペルの雨音 [イヴ・シルヴァー]

SHALOCKMEMO541
ホワイトチャペルの雨音 Dark Desires 2005」
イヴ・シルヴァー Eve Silver evesilver.net 高橋恭美子





 19世紀のロンドンを恐怖に陥れたホワイトチャペルの殺人鬼を時代背景に描かれたヒストリカル・ロマンティック・サスペンスです。
 ホワイトチャペルの殺人鬼(切り裂きジャックとも呼ばれますが)は,ウィキペディアによると,「1888年,たった2ヶ月の間にロンドンのイーストエンド,ホワイトチャペル地区で少なくとも5人の女性をバラバラ殺人にした連続猟奇殺人犯」と描かれています。結局この事件の犯人は特定できず,現代でも性的猟奇殺人があると,この事件が思い出されるほど有名になっているようです。そのため,この事件を扱ったり背景にした小説・評論が書き続けられ,彼のシャーロックホームズとの対決やパトリシア・コーンウェルによる研究書など,多くの人々の関心を集めてきました。
 本作も,当時,ホワイトチャペルの殺人鬼が医者ではないかという推察されたことを背景に,大学から追放された解剖学者ダミアン・コールをヒーローに,ダミアンを愛するようになる20歳の娘,ダーシー・フィンチをヒロインに描かれています。数々の疑わしいダミアンの行動にも関わらず,ヒロインのダーシーが,愛するダミアンをどこまで信頼しきれるかという一点が,本作品の主題になっているようです。そこに集眼できるところが,本書の柱を明確にし,単なる謎解きや,ゴシックミステリ的雰囲気だけの作品から,サスペンスフルなロマンスに昇華され,成功を収めている最大の原因のように思われ,とても暗い題材を扱いながらも,最後にほっと癒される読後感をもつ傑作です。
 作者のイヴ・シルヴァーは,本邦初訳ですが,カナダのトロント在住のロマンス作家で,ヒストリカル・サスペンスだけでなく,コンテンポラリーやパラノーマルの作品も書き続けている作家で,イヴ・ケニン名義でも2作品を発表しています。


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