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波間のエメラルド [アイリス・ジョハンセン]

SHALOCKMEMO573
波間のエメラルド The Golden Varkyrie 1986」
アイリス・ジョハンセン 青山陽子





 アイリス・ジョハンセンの作品を読了するのは2004年5月以来ですから,かなり久しぶりになります。ジョハンセンの二見ミステリ文庫は結構充実していますので,発売のたびに必ずチェックしていましたが,イヴ・ダンカンものやディレイニー・シリーズ,ウィンド・ダンサー・シリーズなど,何冊かは手にしながらもなかなか読了に至らなかったものもあります。
 本書はセディカーン・シリーズ中の1作です。このシリーズは1984年から発表され始め,1991年までの7年間に13冊が出ているようですが,邦訳は本書を含め,今のところ3冊のみです。しかも最新版の黄金の翼(The Golden Barbarian)から訳されたということで,シークものである本シリーズが売れるかどうか,出版社としてもちょっと自信がなかったのでしょうか?
 本書のヒロイン,ハニー・ウィンストンは,自身をヒロインにしたシリーズものが描けるぐらい特長にあふれ,生き生きとしたヒロインです。身長175センチ,豊かな胸とほっそしたウェスト,長くて美しい形をした脚,というモデル体型に加え,情熱的な下唇,紫色の瞳,そして極めつけの腰まで達するきらめくプラチナブランドの髪という容姿の持ち主。作中,その神々しさから,ヒーローから「黄金のワルキューレ」と形容されています。こんなヒロインがバッタバッタと男をなぎ倒し,愛されることに溺れずに私立探偵としての職業を全うしていけば,ミステリ・シリーズのヒロインとしてふさわしいのでしょうが・・・。
 残念ながら,ヒーローのルビノフ王子と一目で恋に落ちてしまい,南海の孤島で執事夫婦とヒーローの従兄弟のシークとの奇妙な生活に満足してしまい,王子が絵の制作に没頭している間,海岸をとぼとぼ散歩したりするだけというつまらない生活を余儀なくされてもひたすら耐え,王子に色目を使うドイツ人男爵夫人の言葉をあっさり信じてしまうというアホさぶりを披露してしまうので,まことにもったいない限りです。また,二人のロマンスもちょっとべたべたしすぎて緊張感がなく,そちらの表現も,かなりありきたりですので,再読には耐えないように思います。ただ,ところどころ,ちょっといい表現も顔を見せています。たとえば141ページの,「道化者のアルルカンにはしっかりした恋人コロンビーヌがつきものだからだよ」などとあり,ほんのりした温かさが伝わってくることは確かです。




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