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ダークスーツを着た悪魔 [サラ・モーガン]

SHALOCKMEMO1447
ダークスーツを着た悪魔 Doukakis's Apprentice
( 21st Century Bosses 2 ) 2011」
サラ・モーガン 小池 桂




K-450
17.01/670¥156/p

R-2735
12.05/¥690/156p


 原題は「デュカキスの見習い」
 ヒロイン:ポリー・プリンス(24歳)/父の会社の補佐/絹糸のようなブロンドの髪,ブルーの瞳,美しい脚のライン/
 ヒーロー:デイモン・デュカキス(34歳)/複合型メディア・グループ経営者/黒い瞳,たくましい肩,褐色の肌/
 2012年に翻訳が出た「21st Century Bosses 2」シリーズの第2巻です。「21世紀のボス」というちょっと大げさな感じのするシリーズ名ですが,邦訳はメイシー・イエーツ「うたかたの蜜月」,トリッシュ・モーリ「一夜だけの婚約者」,キム・ローレンス「オフィスの恋人」と本作の4部作になっているようです。それぞれのヒーロー,ヒロインは取り立てて関係があるようではないようです。イマージュ,ロマンス両方で翻訳の出ているサラ・モーガンですが,イギリスのユーモアとロマンス度の高い作品,そしてシリーズものも多く,多作家の一人といっても良いでしょう。「三つの愛の詩」シリーズでは医師たちと三つ子の看護師という医療ものでNiceHeroineを登場させました。
 さて本作ですが,ボスものと復讐譚の両方の要素を融合させ,妹を守るために会社の乗っ取りを謀ったヒーロー,デイモンが妹の婚約者ピーター・プリンスの娘で妹の同級生ポリーを使ってピーターの行方を突き止めようとしますが,10年前妹とともに学校を退学になったポリーが当初考えていたのとは全く異なる理由で騒動を引き起こし,そしてさらにポリーに惹かれていってしまうという設定になっています。父を探し出すために自分が利用されていることを知りつつ,デイモンの男性的魅力に惹かれて行ってしまうヒロイン,ポリーもまた最後の台詞「おおせのままに。あなたがボスよ」とデイモンの愛を受け入れるまでの気持ちの変化を巧みに描いていきます。PR会社の経営不振が父ピーターの招いた無責任経営にあったこと,そして会社の業績を支えてきたのはひとえに高校卒の学歴しかないポリーとそのチームの斬新でユニークなアイデアによるものであることを知ったデイモンが,自分の経営方針であるきっちりした無駄を最大限に省いた経営方針を見直し,次第にポリーの経営方法を取り入れていくところが読んでいて思わず微笑んでしまう部分なのですが,自由な発想を得るために会社自体がおもちゃ箱をひっくり返したような破天荒な空間になっているのに対して,デイモンのオフィスは無機的な雰囲気でスタッフ用の机も出勤順に勝手に選べる,つまり何処に座っても良い方式だったのですが,ある日突然私物を持ち込んでも良いと変更されてしまうところが,作者特有のブラック・ユーモア溢れる本作の最大の魅力ある部分です。また,ポリーが着ていたピンクのストッキングを初めはデイモンがとがめるのですが,これは今PRを担当しようとしている会社の製品で,PRのコンセプトを最大に引き出すための企画方法だということを知ったデイモンが,ポリーの隠された才能と仕事に対する徹底したプロ意識を目の当たりにして,改めてポリーに惹かれていくところも,尊大なヒーローをぎゃふんと言わせるすっきり部分になっています。ひっきりなしにかかってくるクライアントからの電話に,ワイヤレスのヘッドセットで対応し,同時に従業員たちの個別の問題にも次々と対応していくポリーの働きづめの1日を目の当たりにして,自分以上に仕事に邁進するポリーへの尊敬の念と湧き上がる情熱に,ついに自分の女性観をすて,欲望に負けて行ってしまうデイモンの気持ちの変化にも注目したいところです。一気読み間違いなしの秀作です。


タグ:ロマンス
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賭けられた愛 [サラ・モーガン]

SHALOCKMEMO1325
賭けられた愛 The Highest Stakes of All
(恋という名の奇跡 3= Untamed 3 ) 2011」
サラ・クレイヴン 青海まこ





 原題は「すべての中で最も高い掛け金」
 ヒロイン:ジョアンナ・バーノン(19歳)/語学教師を目指す女性/脚が長くほっそり,ウエストに届くシルクのような栗色の長い髪,緑色の目/
 ヒーロー:バッソス・ゴルダニス(歳)/航空会社やホテルチェーンを所有する実業家/たくましい肩,筋肉質の上半身,豊かな黒髪,黒い目/
 「さよならは言わないで(SHALOCKMEMO1301)」「愛し合った記憶(SHALOCKMEMO1307)」と続いてきたシリーズ第3作ですが,もはやタイムスリップの面影もなく,単なるロマンスでした。強いて言えば時に取り残された孤島にヒロインが事実上閉じ込められていたということぐらいで,ヒーローの過去の亡霊となる亡妻の遺児が登場して現代と繋がるという点だけでしょうか。最愛の妻を失ったデニス・バーノンはギャンブルにその失意を転嫁するためにギャンブラーとして自分の娘ジョアンナを姪と称して派手な格好をさせ,相手の注意をそちらに向けさせて掛け金を稼ぐという汚い手を使い,お金持ちをカモにしてきました。しかし最近はカモに出会うことも少なくなり,いよいよ生活が苦しくなってきたとき,宿泊しているホテルに大金持ちとして名前を知られているバッソス・ゴルダニスが泊まっていることを知り,なんとかその賭場に潜り込むことに成功します。しかし,これはそもそもバッソスが復讐のために仕掛けた罠でした。結局デニスはとても払いきれない借金に首を絞められる結果になるのですが,バッソスが返済の担保に申し出たのはジョアンナを連れて行くと言うことでした。一年前,オーストラリアでバッソスのいとこの息子ペトロス・マナソー(ピーター・マンセル)がバーノン親子にうまく乗せられて会社の金を使い込むほどの多額の借財を負ってしまい,信用を失ったことを知り,その復讐のためにバーノン親子に頼み込まれてゲームに参加させるように周到に計画を立てたのです。そして最後の勝負で自分が勝つように仕組んだのでした。主要登場人物の紹介でヒロインは語学教師を目指す女性となっていますが,それは嘘ではないのですが,いまは詐欺師の片棒を担ぐ女性とならざるを得なかったのです。人身御供としてギリシアの孤島ペラス島に連れてこられたジョアンナ。彼女の立場はひどく不安定なものでした。強いて言えば愛人?それとも人質?
 バッソスの世話係のハラや他の使用人たちからも冷たい態度を取られ,すべてがバッソスの命令が最重要視される島での生活。自由にして良いとはいわれているものの,島から出る手段をたたれ,電話も通じないので父に連絡する手段もありません。ある日散歩に出たとき一人の少女に出会います。派手な格好の女性からエレニと呼ばれた少女はバッソスと同じ青い目をしており,その顔つきは明らかに血のつながりを感じさせるものでした。あの女性は別の愛人?使用人たちは触れてはいけないことだと口を閉ざし,バッソスも関係するなと言います。島での生活に慣れてきた頃,バッソスは次第にジョアンナが進んで詐欺の片棒を担いでいたのではなく,父から言われて仕方なくその立場にいたことが信じられるようになります。時に優しく,時に横暴に振る舞うバッソスに戸惑いながらも,次第にその魅力に自分を投げ出したくなってしまいたくなるジョアンナ。遂に二人は深い関係になるのですが,本当のところでは互いを信頼し合うことは出来ずにいました。そして言いつけに背いてエレニに逢いに家を抜け出したジョアンナは道端に倒れているエレニを発見します。島に救急車などがいるわけでもなくとりあえず骨折したらしい腕を自分の着ているTシャツで固定したところにバッソスがジョアンナを捜してやって来ます。すぐに船で隣の島の医院に駆けつけると同時に世話係のあの派手な格好の女性と船着き場の警備員に指名手配され,捕まった二人からエレニの秘密が明らかにされるのでした。当初ジョアンナが感じたとおりの事実を突きつけられたバッソスは,ジョアンナを遂に解放すると言い出します。荷物をまとめて家を出ようとしたときジョアンナの父と,父と結婚したと未亡人が現れたのでした。そこでジョアンナは一世一代の芝居を打ちます。さて・・・。というストーリーですが,単なる復讐譚で終わってしまっている本作。シリーズというのもちょっとちょっと,という感じの作品でした。ただ,ギリシア神話が設定の重要な部分にかかわっており,その挿話の蘊蓄がちょっとためになるな,という点は面白く読めました。


タグ:ロマンス
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プレイボーイにさよなら [サラ・モーガン]

SHALOCKMEMO1324
プレイボーイにさよなら The English Doctor's Baby
(三つの愛の詩 3) 2004」
サラ・モーガン 竹中町子




K-050
12.03/¥650/156p

I-1774
05.09/¥672/156p


 原題は「イギリス人医師の赤ちゃん」
 ヒロイン:ジェニー・フィリップス(?歳)/看護師/小柄,地味,黒髪/
 ヒーロー:アレックス・ウエスタリング(30歳)/救急救命室医師/広い肩幅,青い瞳/
 「私はアレックスを浅はかなプレイボーイだと思い込んできたが,実際の彼は信じられないほど複雑な人間だった。」「彼は素晴らしい頭脳と鋭いユーモアセンスの持ち主で,困っている人に対してはとても思いやりがある。」3部作最終巻はウエスタリング家の長男アレックスのロマンスです。36時間もの不眠不休の診療行為の後家にたどり着くとそこには赤ん坊を抱えた小柄な女性が立っていました。そして女性は,女児の父親はあなたの子供でデイジーという名前だと言うのです。お金目当てで自分に子供を押しつけようとしていると判断して即刻否定するアレックスですが,なんともその女性は押しつけがましく自分もここに一緒に住んで子供と父親の関係が良くなるまでいるというのです。疲労困憊していたアレックスはとにかく明日話し合おうと言って二人をほっておいて休もうとしました。翌朝キッチンで朝食を作っているその女性ジェニーに事情を聞くと妹クロエとアレックスの間に一夜の関係があり,その結果デイジーが生まれ,しかもクロエはその二日後になくなってしまったというのです。全く覚えのなかったアレックスは弁護士に調べさせると言い捨てて勤務先に向かおうとします。するとなんとジェニーも出勤するというのです。看護師としてアレックスの務める病院の救急救命室に今日から勤務するというのです。こうしてアレックスの家に住み着きしかも勤務先でもしょっちゅう顔を合わせることになったジェニーとデイジー。ジェニーの押しつけがましさもちょっとおばさんぽいですし,ブロンドで長身でもない自分がアレックスの好みの女性とは違うとジェニーは思い込もうとしますが,同時にその男らしい魅力に自分が参ってしまっていることが背景になっているのにうすうす気付いていながらも,許されないことだと思っています。病院でも,散歩中の海辺でもなぜか二人は病人に出会うのです。その度にアレックスの優秀さと思いやりにあふれた対応を見るうちジェニーはマスコミに洗われる顔と実際のアレックスは全くの別人だと考えるようになります。そしてもうアレックスを愛してしまったことを隠すことは出来なくなるのでした。数週間後,デイジーの本当の父親がかなり高名な人でしかも妻と三人の子供がいることが弁護士からのファックスで知ったジェニーは,もう自分がここにはいられないと荷物をまとめるのでした。そのころ丁度アレックスの下の妹リビーが子供連れでアレックスの家にやって来まており,しかも海岸で子供たちを遊ばせているうちに蜂に刺されたリビーはアナフィキラシー・ショックで人事不省に陥ります。アレックスの指示で治療を手伝ったジェニーはリビーの入院期間中,デイジーとリビーの子供たちも面倒を見ることになってしまいます。2日後リビーの夫がギリシアから帰国し,子供たちを託したジェニーはデイジーと家を出ることにするのでした。リビーの夫からデイジーの様子がおかしかったことを病院で聞いたアレックスは急ぎ家に帰りますが,書き置きだけを残して荷物ごと二人は消えていました。車で追いかけるアレックスがさんざん捜した後に見つけたのはジェニーの車が溝に落ちてジェニーが怪我を負っていることでした。
 第1巻のヒロイン,ケイティの夫妻,リビー夫妻そしてアレックス夫妻が揃ってのエピローグは2年半後に設定されています。3つ子らしく,和気藹々とした3組の夫婦とその子供たちが生き生きと動き回り愛の物語を完成させています。


タグ:イマージュ
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華麗なる誘惑 [サラ・モーガン]

SHALOCKMEMO1317
華麗なる誘惑 The Greek Children's Doctor
(三つの愛の詩 2 ) 2004」
サラ・モーガン 古川倫子




K-044
12.02/¥650/156p

I-1769
05.08/¥672/164p


 原題は「ギリシャ人の小児科医」
 ヒロイン:エリザベス(リビー)・ウエスタリング(29歳)/看護師/三つ子の次女/青い瞳,ブロンドの髪/
 ヒーロー:アンドレアス・クリスタコス(?歳)/小児科顧問医/身長190センチ,肩幅広くたくましい胸,褐色の肌,漆黒の髪,クレタ島出身/
 両親の不和の元で育ち,特にひどい父に虐待され,反抗的で男性を信用しないリビー。前作ではディエゴとケイティの結びつきに一役買った彼女ですが,資金集めのためのオークションで自分を千ポンドで落札したアンドレアスに千ポンドの小切手を渡し,デートも断り続けます。アンドレアスは小児科の新しい顧問医としてリビーたちの勤める病院にやって来たばかりだったのでした。そして偶然親から押しつけられたフィリップから逃れようとしているリビーに救いの手をさしのべることになったのですが・・・。小児科医として豊富な経験と優秀な見立てそして技術と医者として3拍子揃ったアンドレアスをリビーは医師として信頼し始めます。またアンドレアスもリビーが看護師として子供に好かれ,落ち着いて業務をこなしている様子をみて,敬意と愛情を抱きます。しかしリビーの男性不信の壁を崩すのはなかなか大変でした。また,アンドレアスは12歳の姪エイドリエンを預かっているのですが,姪が寄宿学校を逃げだしてきたところにリビーが出会い,たちまち意気投合してしまいます。リビーがなだめてなんとかエイドリエンを学校に送ることができましたが,アンドレアスはその手際に驚くのでした。たぐいまれな美貌,患者に対する愛情の深さ,そしてリビー側も自分を求めているという確信。アンドレアスはすっかりリビーに惹かれてしまい,仕事に集中しているとき以外はいつもリビーのことを考えてしまうという状況に陥ります。なんとしかしてリビーの男性不信の壁を崩したい。でもどうやって?
 アンドレアスはあの時のデート権をやや強引に使うことにします。ケイティや病院の看護師長ベヴの協力を得て,リビーをクレタ島への1週間の休暇に連れて行くのです。それにしても勤務し始めたばかりの新任の医師が1週間も休暇を取れるものでしょうか・・・。この辺りが日本とは状況が異なる点かもしれません。それまで次々に病院に運ばれてくる重篤な状態の子供たちに対して,見事な治療を施していくアンドレアスとリビー。専門用語も大分出てくるのですが,そんなことは全く関係なく二人の関係の進展の方が気に掛かります。幸せな1週間ののちに訪れた別れの危機。アンドレアスの机の引き出しから女性の名前入りのラブレターを偶然手にしてしまったリビー。説明しようとするアンドレアスの言葉に耳を傾けようとせず頑なになるリビーに,アンドレアスも諦め気味に,翌日帰国するのでした。「リビーとは知り合ってまだ一カ月しか経っていないが彼女こそ僕がこれからの一生を共にする女性だという信念は全く揺るがない」「問題は僕が遂に恋に落ちが女性は夕日の向こうに消えてしまったということだ。」というアンドレアスの後悔の念。その後は互いに互いを避ける日々が続きます。二人の異変に気付いたケイティがリビーに事情を聞くのですが・・・。
 それにしても,リビーのチョコレート好きは徹底しています。そんなに食べても体型を維持していける希有な存在なようです。


タグ:イマージュ
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私にはあなただけ [サラ・モーガン]

SHALOCKMEMO1315
私にはあなただけ The Spanish Consultant
(三つの愛の詩 1) 2004」
サラ・モーガン 高浜真奈美




HQB-750
16.08/¥670/224p

I-1762
05.07/¥672/164p


 原題は「スペイン人の顧問医」
 ヒロイン:キャサリン(ケイティ)・ウエスタリング(29歳)/医師/元モデル/ブロンド,青い瞳,180センチ,美しいハート形の顔/
 ヒーロー:ジェイゴ・ロドリゲス(35歳)/顧問医/元銀行員/黒曜石のような黒い瞳,190センチ/
 ウエスタリング家の三つ子,アレックス,ケイティ,リビーを主人公にしたミニシリーズの第1巻です。このシリーズはすでにHQセレクトで再版されていますが初訳は2005年7月から三ヶ月連続でHQイマージュで出ています。冷酷な銀行家チャールズ・ウエスタリングを父に持つ医療関係の3つ子たち。父の仕事を誰も引き継がないことで父に反抗に姿勢を示していますが,3人の中でもっとも心優しいケイティがまずヒロインとして登場します。この後「華麗なる誘惑」で次女のリビーが,そして3作目で長男アレックスが主人公となります。三つ子と父との対決はすでに本作の終末で和解の時を迎えますので,この後緊張感はどうなるのかわかりませんが,少なくとも本作ではウエスタリング家にふさわしくないと11年前に切り捨てられたジェイゴ・ロドリゲスが,我が儘お嬢様だったケイティと再会して意地悪を繰り返し,次第にその医師としての実力とかつて自分がケイティの元を去ったことは間違いだったと気付かされ,なんとかケイティの気持ちを取り戻そうと努力する様子がストーリーの中心となります。スペイン人独特のセクシーさに昔も今もすっかりメロメロになってしまうケイティの純真で一途な性格も愛らしく,またすがすがしさを感じさせ,イマージュらしい医療ものとしての詳細も巧みに取り入れられた好著になっています。和解の時も準備され,次作への期待が高まる終結です。


タグ:イマージュ
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はねつけられた愛 [サラ・モーガン]

SHALOCKMEMO1254
はねつけられた愛 Rescuing Dr. MacAllister 2003」
サラ・モーガン 森 香夏子





 原題は「ドクター・マカリスターを救助」
 ヒロイン:エリー・ハリソン(23歳)/救急救命室の看護師/緑の瞳,長い脚,大きい胸,黒い髪/
 ヒーロー:ベン・マカリスター(30歳代)/救急専門医,高山病研究者/痩せて引き締まった顔,太くて黒い眉,きりりとした口元/
 とにかくとんでもなく明るく無垢で人を信じて疑わない性格のヒロインの登場です。ヒーローがベン,ヒロインがエリーととてもシンプルな名前,そしてそれが愛称でもないのでストレートに登場人物の性格が表れてきます。救急救命室の看護師エリー・ハリソンは登山家として名高いフィル・ハリソンの娘で,エベレストで亡くなっています。その時エリーもベースキャンプにいたのでした。「一番大切なのは自分の限界を知ること,と同時に精一杯人生を生きろ」という父の言葉どおり,毎日を懸命に生きています。そして18歳までその義弟のジャック・モーガンに育てられ,その娘つまり従姉妹のリンゼイとは大の仲良し。ジャックも山岳救助隊のリーダーとして活躍しています。エリー自身もSARDA(山岳救助犬協会)のメンバーでアレックスという救助犬の世話をしています。一端ことあれば,アレックスを駆って救助に駆けつけるエリー。そんな彼女ですので,どんなことにも前向きで,クヨクヨせず,しかも止めどないおしゃべりで人をリラックスさせ,高慢なところがありません。しかも自分が美人だと鼻にかけることをしないので誰からも好かれてしまうのです。嵐の中従姉妹のリンゼイの出産を手助けするためにロッジに向かったエリーは氾濫した川を渡ったところで車が故障してしまい,歩き出そうとしたところにベンに出会います。そして救命医ベンの手助けでリンゼイの出産を無事成し遂げたのです。そのまま病院へとリンゼイに付き添ったベンとエリー。二人の出会いはまさに運命的でした。その後,同じ救命室で働くことになったベンとエリーですが,エリーはベンの整った顔立ちと男らしさにすっかり参ってしまいますが,女性なら誰でも好きにならざるを得ないハンサムなベンに,自分が好かれるとは思ってもいません。この謙虚さというか天然なところがエリーの最大の魅力なのですが・・・。そしてエリーは蘇生室に行く度にベンが何か別人のようになることを気付きます。きっと深い理由があるはずだとエリーは思いベンに訪ねるのですが,ベンはその度にその質問を無視するのでした。上級専門医で救急室のリーダー,ショーンは何か知っている様子ですが,本人に聞けと取り合ってくれません。ベンを愛し始めたエリーは,リンゼイにも勧められ,隣家に越してきたベンにもうアタックをかけます。そして身内のパーティの席上でベンを愛していると大きな声で言ってしまったのでした。気まづくなると思っていたエリーですが,翌日もベンは相変わらずの態度です。しかし子供の患者が来た時は緊張の色を隠せない様子。人に話せない過去の深い傷があるのではと「私には何でも話してみて」としつこく食い下がるエリーに,ついにベンは妻と娘を失った過去を話すのでした。その責任が自分にあるという罪悪感で2年間パキスタンで医療奉仕に携わっていたベン。しかし罪悪感は相変わらずベンを苦しめているのでした。その様子をたまらない様子で見つめるエリー。どうしてそんなに自分を気にかけるんだと半ばきつい口調で言うベンに対してあっけらかんと「だってあなたを愛しているから」とサラッと言い放つエリーに邪気がないことはベンも理解し始めたようです。ベンもまた美人で看護師としても有能,さらに人を信じすぎ世話を焼きたがるエリーを守ってやりたいと思うようになります。同僚医師から誘惑されそうになったエリーを助けたり,行方不明の登山者を協力して発見したりしたことをとおしてベンの気持ちはエリーに傾いていくのでした。しかし罪悪感を抱き続けるベンはエリーを幸せには出来ないと思い込んでいます。そんな時,病院に銃を持った男が侵入し,エリーを人質にとって蘇生室に閉じこもる事件が起こるのでした。この事件の意外な解決方法が本作の最大の読みどころです。ハンサムで深い悩みを抱えたベン,飾らない美女エリー,二人の間の恋のゆくえは・・・。
 ナイスヒロインというよりピカイチ・ヒロインの一気読み間違いなしのイチオシ・ロマンスです。


タグ:イマージュ
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危険な億万長者 [サラ・モーガン]

SHALOCKMEMO1213
危険な億万長者 The Vasquez Mistress 2008」
サラ・モーガン 東みなみ




HQB-725
16.04/¥670/224pp

R-2405
09.07/¥690/156p


 原題は「バスケスの愛人」
 舞台:アルゼンチンの牧場エスタンシア・ラ・ルシア
 ヒロイン:フェイス(25歳)/獣医/緑の瞳/
 ヒーロー:ラウル・バスケス(30歳)/四千ヘクタールを超える面積をもつ牧場の主,ポロ選手/つややかな黒髪,男性的でたくましい筋肉,180センチを越える身長/
 第2章でいきなり10カ月後に飛ぶ展開は予想外でした。タクシーの前に飛びだして転倒したヒロインのフェイス。ちなみにサラ・モーガンの他の作品でもありますが,フェイスの姓は記されていません。病院で意識を取り戻すと夫のラウルがやってきました。フェイスはラウルの元を逃れて彷徨っているうちに事故に遭ったのでした。身元の分からないフェイスは記憶障害を装いますが,ラウルに強引に家に連れて行かれます。フェイスが結婚式後すぐにラウルの元を逃げだしたのは,流産が原因でした。もともと結婚も子供もいらないと言いきっていたラウルが突然結婚をいいだしたのはフェイスの妊娠がきっかけでした。そして,ストーリーの終盤までぎりぎりふせられていくラウルが結婚も子供も望まない理由。それが本作の一番の盛り上がりです。女性なら誰でもうっとりしてしまうアルゼンチン男性のラウル。そのラウルが一時も離したくなくなってしまった相手がフェイスでした。絶世の美女よりもその知性とラウルを夢中にさせる性的反応の良さ,そして自分に媚びようとせずユーモアを失わずに自分を主張する性格。そんな全ての点を総合して,惹かれざるを得なくなる女性がフェイスでした。しかしラウルに金目当てで結婚し,妊娠して自分を騙したのかと謂われのない冷たい言葉を投げつけられ,ラウルの元を逃げだしたのでした。「私たちは全く不釣り合いだった。わたしは現代的な思慮分別のある女。そしてラウルは無慈悲な暴君で,存在することすら知らなかった世界の住人だった。」というフェイスの思いを,あざ笑うかのようにつぎつぎと自分勝手な言動をするラウルですが,少しでも触れられると,もうラウルの言いなりになってしまうフェイス。それほどフェイスを愛しているにもかかわらず,その男性至上主義のアルゼンチン男性らしい言動にうんざりしながらも,ラウルもまたフェイスから離れずにいるのです。仕事上の関係で隣の土地をもつ夫妻を家に招いたときも,ラウルはフェイスを伴います。しかし,やってきた夫妻の妻はラウルのかつての恋人ソフィアでした。あえてかつての恋人を招待する場に自分を同伴させたと,フェイスは憤り,ラウルの冷酷さに今更ながらに牧場を去らなければと思うのでした。しかしこのままソフィアに負けるのはフェイスのプライドが許しません。フェイスは作戦を変えることにし,ラウルの気持ちにより添うようにしていくのです。それが,ラウルの気持ちを徐々に軟化させていきます。そして明かされるラウルの幼少時代の記憶と残酷な事実。このことを話したことがラウルとフェイスの関係を一気に高めるのでした。
 ヒロイン側ではなく,ヒーロー側から描かれたこの作品。ヒーローが過去を乗り越え,人間性を取り戻していくためには,フェイスの存在が必要だったのです。その過程を克明に描いた本作はサラ・モーガンの筆力の冴えを物語っている作品です。


タグ:ロマンス
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シークの罠 [サラ・モーガン]

SHALOCKMEMO1185
シークの罠 In the Sheikh's Marriage Bed
Surrender to the Sheikh 5 ) 2004」
サラ・モーガン 井上きこ




HQB-693
15.11/¥670/220p

I-1810
06.03/¥672/156p


 ヒロイン:エミリー・キングストン/幼児教育教師/長身
 ヒーロー:ザクール(ザック)・アル・ファリシ/カズバーンの王/長身,黒い瞳
 いつか王子様が現れて仲の良い家族を作りハッピーエンドの人生を送る,それがエミリーの夢です。兄が借金をし,返済を猶予して欲しいというお願いのため砂漠の国カズバーンの王ザクルール(ザック)のもとにやってきたエミリーですが,王はエミリーの話しを信じず,借金の形に自分との契約結婚を提案します。宮殿にはザックの兄の子どもジャマールがおり,母親ダニエーレの育児放棄により精神的に不安定な状態でした。ところが泣き叫んでいるときにエミリーが話しかけるとすっかりエミリーを頼りにし,懐いてしまったのです。また,ザックの愛馬サハラも,危うくジャマールを踏みつぶすところでしたがエミリーが優しく話しかけるとすっかりおとなしくなり,事なきを得たのでした。このエミリーの人を惹きつける不思議な力をザックは単なる演技だと思い込もうとしていたのですが,実はすでにこの時ザックはエミリーに恋し始めていたのでした。契約結婚は取り急ぎ行われ二人の初めての夜,ザックは彼女の男性経験が初めてであることに驚愕します。これほど魅力にあふれた女性が男性との関係を持ったことがないことが信じられなかったのです。エミリーもまた,傲慢で自分を信じてくれないザックに腹を立てる一方で,ザックを新から愛してしまったことに悩みます。そしていずれ別れが来ることも・・・。
 やがて宮殿を出てオアシスでハネムーンを愉しむ二人の元にエミリーの兄ピーターが訪れ,ザックからの借金を全て返したことを告げます。借金はエミリーの義姉の病気の治療に使われていたのですが,一部を投資にあてた結果それがうまくいき,返済が可能になったのでした。いよいよザックとの別れが迫っています。ザックを悩まし続けてきた義姉のジャマールの母も別の男性とフランスに出奔し,二人が偽装結婚を続けていく意味がなくなってしまいました。しかし,エミリーは残る決意をします。自分はザックを愛しており,今はザックが自分を愛していなくてもきっと自分を愛するように努力してみる覚悟を決めたのでした。そんな時,兄から電話があり,話をしているうちにジャマールが砂漠の奥の洞窟に一人で行ってしまったことに気付くエミリー。嵐が近づく中,ジャマールを連れ戻しにザックの馬サハラを駆るエミリー。この最後のスペクタクルが本作を冒険仕立ての素晴らしい作品に仕上げています。人間関係のごたごたからやっと解放されつつあるエミリーとザックが,本当の夫婦として末永く暮らせるのでしょうか。予想どおりのハッピーエンドが本作にふさわしいエンディングであり,これこそロマンス小説の王道をいく作品だと感じさせます。オススメの一作。


タグ:イマージュ
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見捨てられた女神 [サラ・モーガン]

SHALOCKMEMO1136
見捨てられた女神 The Midwife's Christmas Miracle
( Lakeside Mountain Rescue 5 ) 2006」
サラ・モーガン 森 香夏子





 「冷めた情熱(I-2387)」の続編。前作のヒロイン,クリスティもちょっと顔を出します。イギリス湖水地方の12月。産科専門医のジェイク・ブレラックウェルは山岳救助隊員。独りぼっちのクリスマスでも全く平気ですが,ちょっと山に出かけたとき,雪の中で一人震えている美しい女性に出会い,このままでは凍死してしまうと思い,救助することになります。自転車で近くまで来たという彼女はミランダ。冬山の装備などは何一つ持たず急激な天気の変化について行けずに立ち往生してしまったようです。そのまま自分のフラットでまず手当てをしてと思い車に自転車をくくりつけて自宅に連れて行きます。なぜかこれまで出会った女性とは少し異なったミランダに,ジェイクは欲望を止められませんでした。結局彼女の家まで送り届けようとするのですが,この当たりでと彼女は降りてしまい,ミランダという名前しかわからないままに別れてしまいます。翌日病院に運ばれてきた患者の手術を担当しようとしたとき,新しい助産師として紹介されたのがミランダでした。ミランダは一体何者?昨日は気付かなかったのですが,ミランダのお腹の中に新しい命が育っていることは明らかでした。自分のことは話そうとせず,なぜ昨日あんな山の中で一人でいたのかも話そうとしませんでした。しかし,有無を言わせず仕事を終えた彼女を車に乗せ,彼女のフラットにいってみると,とても狭く環境の悪い部屋。強引に自分のフラットに連れて行き,食事と休養を取らせることにします。この時すでにジェイクの頭の中にはミランダのことばかり浮かんでいる自分に驚きと守りたいという気持ちがわき上がってくるのでした。ミランダは母が16歳の時に生んだ,いわゆる望まれない子供でした。父親が誰かは知りません。そして継父との仲も悪く,高校卒業後は自立して自分の生活を支えてきたのです。愛を知らないまま大人になってしまったミランダ,自立心の大変強いミランダでした。その分,助産師として懸命に子供と母親を守ろうとする気持ちが強い様子が手に取るようにジェイクには見えるのでした。あの環境の悪い部屋では何かあっても対応できないと,ジェイクは自分のフラットの空き部屋にミランダを住まわせることにします。少しずつ過去を話し始めたミランダ。そしてジェイクは自分の子供ではないミランダのお腹の中の子供を含めて,ミランダを愛してしまったことに気付くのでした。
 恵まれない境遇に育ったミランダがジェイクによって愛と温かい環境に恵まれていくというシンデレラストーリーですが,母親譲りの美貌だけでなく,強い自立心と愛にあふれた素晴らしい人柄として描かれています。結婚願望のなかったジェイクがころっと惹かれてしまうのも分かる気がします。しかしなかなかジェイクのプロポーズを受け入れないミランダの背中を押していくのが,クリスティです。さらりとした登場のさせ方はとてもうまいですね。イマージュらしい作品です。


タグ:イマージュ
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大富豪の醜聞 [サラ・モーガン]

SHALOCKMEMO1061
大富豪の醜聞 Bought : The Greek's Inocent Virgin
( Greek Tycoons 55 ) 2008」
サラ・モーガン 加納三由季





「イチオシ」マークと「Nice Heroine」マークを付けたサラ・モーガンの「愛に迷えるシンデレラ(SHALOCKMEMO1058)」に関連して作者ページの更新をしているうちに,ヒロインの名前がシャンタルとしてしか分からなかった本作を調べてみようとして読んでみました。結論からすると,どこにもヒロインの姓が記されていませんでした。ただのシャンタルです。それには理由がありました。それはネタバレになってしまいますのでここには記しませんが,本作も傑作だと思います。なによりシンデレラ・ストーリーでありながら,シンデレラを夢見る乙女の物語ではなく,すさまじく自立心の強い,独特な魅力を持ったヒロイン,シャンタルの人物造型によるものです。ギリシア人大富豪であるヒーローのアンゲロス・ゾーヴェレキスについては,普通のヒーロー像,富豪でハンサムで仕事熱心,しかも妻を亡くした後,後妻にだまされて挙げ句の果てに病気になってしまった父を反面教師として女性を信用できなくなってしまった冷静で傲慢な紳士。パーティで出会った二人が,父を挟んで互いに惹かれ合いながらも,階級の違い,そして異性間の違いにもかかわらず互いに相性抜群であることに気付き,互いに意識し合うものの・・・。という発端から,父の望みでシャンタルをギリシアの自分の住まいのある島に連れて行き,父と一緒に過ごしながらプールでの初めの交わり以降,夜を共にするようになり,父もそんな二人の姿を見ながら満足して次第に回復していくという流れになります。ところが日中家を空けるようになるシャンタルを不審に思い探し当てた果てで見つけたのはレストランで働くシャンタルの姿。なぜ働くのかと問うアンゲロスに,「あなたのお金は使わない」と言い切るシャンタル。それまでの女性とは全く違い,自分の財力を頼らない独立心あふれるシャンタルの言葉にどう対応して良いか分からないアンゲロス。やがて父の病気も落ち着き,アテネにどうしてもいかなければならないアンゲロスの必死の頼みでパーティに同行したシャンタルが取った行動は,ブティックでドレスを買わずに,市場で布と裁縫用具を購入し手縫いで数時間でドレスとバッグを仕上げてしまうというものでした。そして,パーティの途中で行方をくらましてしまうシャンタル。二人はどこでどのように再会し,ロマンスの結末を付けるのでしょうか。原題の「買収:ギリシア富豪の無垢なバージン」は,二人の関係を見事に言い表したタイトルです。邦題は,これ以上ないぐらい陳腐ですが・・・。これまでにないヒロイン像にすっかり引き込まれる傑作です。


タグ:ロマンス
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