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情事の報酬(ファム・ファタールの息子たち 2) [アビー・グリーン]

SHALOCKMEMO816
情事の報酬 When Christakos Meets his Match
(ファム・ファタールの息子たち 2) 2014」
アビー・グリーン 熊野寧々子





ラファエルの弟アレクシオは自社の飛行機のエコノミークラスに乗り,機内やスタッフの対応などのチェックを自らしていた。たまたま隣り合わせたシドニーが気になる。そこから二人の関係が始まります。初めは誰だか分からずに飛行機が苦手なシドニーは飛び上がることへの恐怖と戦っていましたが,隣のゴージャスな男性がしきりと話しかけてくるのも気になります。機長がわざわざアレクシオを訪ねて座席までやってきたことで,シドニーは男性が誰だか分かりますが,自分とは縁の無い富豪との関係など想像も出来ずにいました。しかし,着陸後も,アレクシオはシドニーをあきらめきれずにいったん離れた空港を再び訪れます。乗り継ぎの飛行機に空席が見つからずに立ちすくんでいるシドニーを見て,再びアレクシオに希望が訪れました。その日のうちにアレクシオのロンドンの部屋に二人は行き,軽い挨拶程度のキスだけでその夜は二人ともまんじりともせずに過ぎますが,数日の休暇を取ろうと決意したアレクシオはシドニーにギリシア行きを提案するのでした。やや脳に障害を持つ叔母の面倒を見るためアイルランドに戻ろうとしていたシドニーですが,数日間叔母がパリに旅行中なのを良いことに,アレクシオの計画に乗ることにしました。二人が互いに夢中になるのは時間の問題でした。そして,もう離れることが出来ないと分かったアレクシオはシドニーの履歴を探偵に調べさせることにしました。それで分かったことはシドニーの母が服役後亡くなり,叔母が莫大な借金を抱えており,シドニーがそれを返そうとしていることでした。実はシドニーの母が叔母をだまして家を抵当にして借金を重ね,その借金を残したまま亡くなってしまったのですが,その事情まではアレクシオの元には伝わりませんでした。お金目当てに計画的に自分に近づいたのかと問い詰めるアレクシオに,自分が信頼されていないと怒ったシドニーは「そうよ」と応えてしまいます。そして翌朝アレクシオの出勤後シドニーは船でギリシアを離れるのでした。別れ際に残された膨大な額の小切手を破り捨てて,「お金なんか初めから期待していなかった」というメモを残して。イギリスに帰ったシドニーは掛け持ちのアルバイトをして懸命に働いて数ヶ月が経ちました。そのころから体の変調を覚え,たった一度避妊せずに関係を持ったときにアレクシオの子供を身ごもったことに気づくのでした。その頃アレクシオはシドニーと過ごしたヴィラを訪れ,破り捨てられた小切手を見つけます。実は自分の勘違いだったのではないかと思い至ったアレクシオはシドニーの状態を調べ直します。
アルバイト先をでたところでシドニーは,アレクシオが入り口付近に立っているのを見て驚きます。そこから,叔母を巻き込んでの二人の関係が再燃しました。自分とアレクシオとの間に今の関係はあっても,将来の関係は無い,と考えたシドニーはアレクシオの援助をことごとく断り,関係も復活させるつもりは無いと言い続けますが,複雑な家族関係で育ったアレクシオの境遇も知り,自分を愛してくれることを感じ取ったシドニーはアレクシオの言葉を信頼するに至ったのでした。無邪気で飾りけがなくても愛らしさと美しさのにじみ出るシドニーというキャラクターがひときわ輝く本作です。


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恋の罪,愛の罰 [アビー・グリーン]

SHALOCKMEMO798
恋の罪,愛の罰 When Falcon's World Stops Turning 2014」
アビー・グリーン 寺尾なつ子





「ファム・ファタールの息子たち」というミニシリーズの第1作目です。本作に登場するのは異父兄のセサル・ダ・シルヴァと異父弟のアレクシオ・クリスタコスですので,おそらく三部作という設定なのでしょう。本作のヒーローは,イタリアの自動車製造業「ファルコーネ・モーターズ」のCEO,ラファエレ・ファルコーネです。父ウンベルトが母エスペランサ・クリスタコスに去られてしまい,家業である自動車製造業への意欲を失ってしまい,倒産の危険が迫ったのを,ラファエレのがんばりで持ち直し,経営規模の拡大を図るため,イギリスに工場を作ろうとするところまで持ち直したのでした。かつてイタリアの研究所で働いていたヒロインサマンサ・ロークは現在ロンドン大学の研究室にいます。ラファエレとの間には一人息子のマイロがいますが,ラファエレに裏切られたと思ったサマンサ(サム)は,息子の存在をラファエレには告げていませんでした。ローク家の家政婦ブライディ・オサリヴァンが現在でも近所に住み,マイロの面倒を見てくれるおかげで,研究所での勤務ができているのでした。そんなサムの元にイギリス工場開業のため,働かないかとラファエレから電話があります。サムはついにマイロの存在が知られてしまうのではないかと怖れ,さっさと電話で断りを告げてしまいます。しかし,ラファエレはサムの家に訪れ,自分の幼い頃にそっくりなマイロの存在を知り,サムがわざと息子を隠していたと責め立てるのでした。そしてラファエレの存在が自分にとって,まだ引き込まれてしまう魅力を持っていることをサムは感じていることに気づくのでした。二人の関係はマイロを挟んで,次第に接近していきます。結局イギリス工場立ち上げにサムも関わらざるを得なくなり,ラファエレもサムの家に一緒に住むことになります。そして,マイロに自分が父親であることをサムから伝えさせたラファエレ。意外とすんなりとマイロはラファエレが父親であることを受け入れます。そして,ラファエレの父ウンベルトがいるミラノにブライディも含めて4人で会いに行くのでした。ウンベルトもマイロを見た瞬間自分の孫であることを確信し,物心ついて初めて祖父ができたマイロも大喜びするのでした。このように着々とファルコーネ家に受け入れられていくマイロをみて,孤独を感じるサムでしたが,ついにラファエレもサムの存在がマイロ抜きでも自分にとって大切な存在であることを認めざるを得なくなります。離れていた数年間の互いの交際関係に嫉妬心を抱きつつも,互いの信頼を確認し合う二人。母親の裏切りのせいで父が病に倒れたという過去を背負ったラファエレとアレクシオ兄弟は,女性を信用しないという主義を貫こうとしていましたが,ついにラファエレはサムに陥落してしまうのでした。
マイロが実にすんなりと父親や祖父の存在を受け入れてしまうために,家族間の問題に深まりがいまいち感じられず,ハッピーエンドにたどり着いてしまう点がちょっと安易な感じを否めませんが,シリーズ次作に期待と言うことでしょうか。


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婚礼の夜の過ち [アビー・グリーン]

SHALOCKMEMO711
婚礼の夜の過ち The Restless Billionaire 2011」
アビー・グリーン 藤村華奈美





シリーズ3作目は,アビー・グリーンの作品。ヒロインのアニーサ・アダニはインドの映画女優。これ以上ないほどの美貌,スタイル,純真さ,全てを兼ね備えた女性で,冒頭ではまさにインド式の結婚式の最中。しかし婚約者の俳優ジャマル・カプーア・カーンはなんと同性愛者。その秘密に結婚式が始まってから気づいたアニーサだが,全財産を賭けた豪勢な結婚式をやめることは,家族を不幸に陥れることになってしまう。悩み,躊躇していた瞬間,自分を見つめる視線に気づく。相手は,ハンサムで自分を見つめる目には,情熱が込められているような気がする。思い切って,式場を抜け出したアニーサを結婚式場のあるホテルの最上階のスイートルームに連れて行ったのは,セバスチャン・ウルフ。第1作のヒーロー,ナサニエルの実の兄だった。セバスチャンはホテルチェーンの経営者であり,インドのムンバイにあるこのホテルのオーナーでもあった。互いに惹かれるままに一夜を共にするセバスチャンとアニーサ。やがて,アニーサは自分の中にセバスチャンとの愛の結晶が育ち始めたことを知る。イギリスに帰ったセバスチャンが父親であることは間違いない。自分との交際を認めるかどうかは別として,自分のお腹の中にセバスチャンの子供がいることを知る権利はあるはずだと考えたアニーサは思い切ってセバスチャンを訪ねる。

複雑な家庭に育ち,自分が親になることの決断がつかないセバスチャン。弟ナサニエルの結婚式にも出席する勇気がわかないセバスチャンの心を解きほぐし,ウルフ邸に連れて行くことに成功するアニーサを,セバスチャンは自分と弟の区別もつかない自分の母親を訪ねるのに連れていく。少しずつではあるが,過去の重荷をほぐし,自分の心を開放していくセバスチャン。アニーサが寝言同然に「愛している」とつぶやいたのを聞き逃さずに,自分の感情に正直になろうとする勇気をもらったセバスチャン。アニーサとその家族によって,愛すること,愛するものを守ることを徐々に知っていくセバスチャン。全編を通じてセバスチャンの心の成長が静かに語られる秀逸な一作です。


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