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公爵の秘密の世継ぎ [メイシー・イエーツ]

SHALOCKMEMO1471
公爵の秘密の世継ぎ The Spaniard's Pregnant Bride
(天使のウエディング・ベル 1) 2016」
メイシー・イエーツ 中 由美子





 原題は「スペイン人の妊娠した花嫁」
 ヒロイン:アレグラ・ヴァレンティ(22歳)/富裕な貴族の令嬢/黒髪,小麦色の肌,黒い大きな瞳/
 ヒーロー:クリスチャン・アコスタ(30歳)/スペイン公爵/黒曜石のような黒い瞳,長身,肩幅が広い/
 予期せぬ妊娠を共通設定にしたメイシー・イエーツのシリーズ第1作です。ちょっとSなヒーローのクリスチャンと,それに負けずに勝ち気な貴族令嬢アレグラのコンビがドタバタを繰り広げます。サンタ・フィレンツェ大公であるラファエル・デサンティスとの結婚を目前に控え,親の言いなりになってきた令嬢アレグラは独身最後の一夜の冒険を仮面舞踏会で実行します。階段から降りてきた悪魔の仮面をかぶった正体を知らない男性と廊下で交渉をもってしまいます。互いに名告らずそれきり別れてしまった二人ですが,一カ月後に妊娠に気づきます。その相手こそ,自分が嫌悪していた兄の親友でスペインの公爵だったクリスチャンであることを知ると,アレグラはパニックに陥ってしまいます。やがて大公との婚約を解消しなければと母親に打ち明けますが,そんな破廉恥な行動をとってしまったアレグラを両親は恥としか思いませんでした。そんな彼女を慰めるのはいつも兄のレンツォでした。しかし相手がクリスチャンだったことはなかなか兄にも言いだせずにいます。嫌悪していた相手との間の子供を産むかどうかはアレグラの決意一つにかかっています。MB版,邦訳版の表紙のアレグラのイメージモデルは,やや顎の張った豊満な女性ですが,令嬢としてはちょっとイメージが違うなと言う気がします。もう少し華奢な美女をイメージしているのですが,ただ気の強さだけは正直に表しているかと思われます。さて,クリスチャンに気づかれてしまったアレグラは,自分の爵位を継ぐ跡継ぎを必要としているという言葉に仕方なくクリスチャンとの結婚を承諾せざるを得ませんでした。婚約を解消した大公の方も早々とアメリカ人の学生ベイリーとの交際が発覚し,しかも相手も妊娠していると言うではありませんが。元々意に沿わない婚約だったにもかかわらず自分と大公との関係はなんだったのかと,そんなに自分は選ばれていなかったのかと自分勝手な気持ちも残っていました。しかも自分より子供が大切,夫婦として愛のない一生を送る気もないとクリスチャンに宣言されてしまい,少なくとも子供が産まれて一年間は親としての務めを果たし,あとは離婚しようとまで言われては,大公と愛のない結婚をしていた方がよかったと後悔の念を抱かざるを得ません。件に究極の選択を迫られたアレグラですが,兄の親友であるクリスチャンに実は憧れに近い気持ちをもっていたこと,そして実はクリスチャンに愛されたいと思っていたことを自分に認めるのはしゃくに障ります。しかもクリスチャンには結婚歴があり,亡妻シルヴィアのことを忘れていないのではないかという恐れも感じていました。それならなんとかしてクリスチャンと自分の関係を修繕できないだろうかという願いも持ち始めるのですが・・・。
 上流社会では未だに女性は家のために犠牲になるという風習があり,大公との婚約もそんな関係だったのですが,傲慢なスペイン人公爵との間に衝動的な一夜の関係を持ってしまったことから次々に変化していくアレグラの状況をうまく生かし,遂に愛を獲得していくまでの顛末を描いた作品です。しかし,どうにもこうにも都合の良すぎる二人の心理変化の説明がお粗末で,良作とは言えない感じの作品です。シリーズ次作が9月に出るようですのでそちらに期待です。


タグ:ロマンス
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億万長者の無垢な薔薇 [メイシー・イエーツ]

SHALOCKMEMO1445
億万長者の無垢な薔薇 Carides's Forgotten Wife 2016」
メイシー・イエーツ 中 由美子





 原題は「カリディスの忘れられない妻」
 ヒロイン:ローズ・タナー・カリディス(23歳)/主婦/淡いブロンドの髪,華奢な体つき,すらりとした首筋,かすかに上を向いた鼻先,ピンと伸びた背筋,大きな青い瞳/
 ヒーロー:レオン・カリディス(33歳)/企業家/黒い瞳,/
 記憶喪失ものです。しかも,かなり作者の愛に対する哲学的な主張が随所に見られるかなり固い作品という感じがしました。離婚寸前だった,というより政略結婚的に式は挙げたものの,夫は全く妻を顧みず純潔のまま2年を過ごしたローズは,夫が交通事故に遭ったという知らせを聞き,夢中で病院に駆けつけます。「存在感があり,力強くてカリスマ性があった」夫のレオン・カリディスがベットに横たわっている姿にローズは離婚を切り出せないまま,夫を伴って家に帰ります。10歳の年齢差のある夫にかつて憧れを抱いていたローズ。もし「彼が死んだら,その喪失感は耐えがたい」と父を亡くしたローズに頼れるのはレオンだけだったのです。しかし全く自分を省みず好き勝手に外で過ごしているレオンとこれ以上結婚生活を続けても自分の孤独は癒やされないと,自立することを決意したローズでしたが,この夫の怪我,そして記憶喪失によって,夫婦間に新たな関係が築けるかも知れないという希望が生まれたのです。いずれ完全に記憶が戻れば再び夫は自分から離れていってしまうかも知れないという恐怖と,それでも今だけは夫は自分を頼り切っているという状況との間でローズの心は揺れ動きます。幼い頃に母を亡くし,ずっと父の言うとおりに生きてきた内気で本好きで引きこもりがちだったローズ。一方どうしようもないプレイボーイだった夫。夫が父の会社を永久に所有するには5年間の結婚生活が必要だという婚前契約期間はまだ2年しか過ぎておらず,夫が離婚に応じるはずがないとはわかっていたものの,彼に会社も屋敷も手に入れさせても,自由を手にしたいという気持ちを抑えきれなくなっていたローズにとって,夫の世話をする今の状況は夫との関係を修復できる唯一で最後の機会かも知れないのです。自分の気持ちはどうだったんだろうか。本当に10歳年下の幼妻に関心がなかったのだろうか。これほど魅力に溢れた女性に関心がなかったなどとは信じられないとレオンはローズを誘惑したい気持ちに駆られます。「私が知っているのは,あなたが父の下で働いていたことだけ。卒業を待たずに働き始めて十代の頃は使い走りみたいな仕事もしていたようね。父の目にとまってからは後継者として指導を受けていたわ」というローズの言葉に対してもなんの記憶も戻ってきません。父はなぜ,自分にレオンを与えたのだろうか。今になってみればその真意を父に聴いておけば良かったとローズは思いますが,レオンに手に触れられただけで「体に稲妻が走り,体中がパチパチと音を立てると息が詰まり膝が震え」るほどの衝撃を受けるほどうぶなローズには,まさにこの機会にもっと夫を知りたいという気持ちが湧いてくるのでした。「それなら今から事実を作ればいい。僕らが新しい人生を歩めないはずはない。君が話してくれた夢は,僕も気に入った」と迫る夫の言葉にローズもあやうく自分の気持ちを明かしそうになりますが,夫の周りにいた女性たちへの嫉妬心も湧いてきます。そして夫の欲望の対象になることで再び自分の自由が失われるのではないかという怖れの気持ちが再度強くなっていくのでした。会社のスタッフや友人たちには幸い記憶喪失の件は知られていません。事故による怪我を理由にしばらくは二人きりの時を過ごしていますが,体力的には回復してきた夫の誘惑についに応じてしまうことでかつて描いてきた夫への憧れが今でも失われておらず,夫を愛していることに気づかされるローズ。「レオンは男性としてのすべての要素を兼ね備えていた」「ローズが求めてきた男性像はレオンが規準だったのだから」と,レオンの情熱を自分への愛だと信じかけたところで,地味で本好きな少女だった自分がカリスマ性を持つ夫に本当に愛されるはずがないとローズは気づいていきます。少しずつ細かい記憶を取り戻しつつある夫が再び自分から離れていってしまうという喪失感と,周囲の女性たちへの嫉妬心の間で苦しむローズ。そんな時二人の前に現れたのは,赤ん坊を連れた女性でした。そしてその赤ん坊は夫レオンの子供だというのです。絶望感に陥ります。その赤ん坊イザベラは見るからに夫の子供であることが分かるほどそのDNAが感じられる女の子でした。「あなたが浮気をしていたときも,辛いなんて絶対に言わなかった。あなたが差し出すものだけを私は受け取った。あなたが床に投げつけたパン屑すら私は舐めた。だって私は悲しみに暮れた情けない奴隷だから。でももうあなたの奴隷なんかじゃない」と心の痛みを吐露するローズ。こんな言葉を夫に投げつけたことなどなかったローズでした。「彼女は自分を憎んだ。レオンを憎むのと同じくらいに。こんなときでも彼を求める自分を憎んだ。自分を苦しめる男性に,慰めてもらおうとする自分を憎んだ。しかしレオンの記憶の中によみがえってきたのはかつて結婚していた妻と同時に失った一人息子マイケルでした。この事実はローズは知らなかったのです。そしてレオンの記憶と深層心理の中にある,人を愛すると失ったときの衝撃は倍になって自分に返ってくることから幼妻ローズを愛してしまわないように,自分の心を守るためにわざとローズに触れなかったことに気づいていくのです。幼子イザベラには罪はない。少なくとも夫の子ではあるのだ。自分が育てなくてだれがイザベラの面倒を見ることができるのか。と父にも夫にも捨てられたローズはイザベラを愛さずにはいられなくなるのでした。二人の住む屋敷には亡き母が作った小さなバラ園がありました。クムゾン・ローズが咲くそのバラ園の存在こそローズという名前の由来だったのです。そこで夫の心の闇を知り,その理由を考え続けたローズは,ついに愛を獲得するために戦う決心をするのでした。一方でレオンの側に,記憶が戻るにつれて如何に自分がローズを傷つけてきたかに気付き,自分は無垢で純真なローズを傷つけまいと逆にローズを避けてしまっていたことを知ります。自分などはローズにふさわしくないのだと。さて二人の心は本当に寄り添うことができるのでしょうか。愛を恐れる気持ちからレオンは立ち直れるのでしょうか。すれ違った二人の深層心理に迫り,最後には愛の勝利を高らかに歌うメイシー・イエーツ渾身の作品です。


タグ:ロマンス
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灼熱の足枷 [メイシー・イエーツ]

SHALOCKMEMO1285
灼熱の足枷 To Defy a Sheikh 2014」
メイシー・イエーツ 馬場あきこ





 原題は「シークに反抗」
 ヒロイン:サマラ・アル・アゼム(21歳)/ジャハール国王女(シーカ)/小柄,黒髪,黒い瞳,小麦色の肌/
 ヒーロー:フェラン・バシャール(31歳)/カドラ王国シーク/黒い瞳,引き締まった長身/
 16年前の事件がきっかけで親を失った二人。というより親同士の不倫がきっかけでサマラは国を失い,フェランはサマラの父を手にかけて復讐を果たします。そして復讐の刃は大人になったサマラがフェランを狙って仕掛けるという段階になったのでした。これはもうシェークスピア以上の国を賭けた復讐譚になるかと思いきや,一瞬の逡巡がサマラの手からナイフを奪ったフェランの勝利となり,フェランはサマラとの結婚こそこの長い間の復讐劇の終焉をもたらすものだと考えます。そこに愛情はなくともジャハールとカドラの民衆や政権を納得させられる方法だというフェランの説得にサマラも,それ以外の解決方法はなく,自分も復讐だけが生きる方法だと思っていたところから,未来に向けて生きることが出来るのだという希望が見えてくるのでした。オアシスでの二人だけの数日間ののちに,二人は宮殿に戻り,公式の場へと向かうことにします。ところがフェランにはサマラに告げなければならない事実がありました。15歳の彼が惨劇の間,ただ隠れていただけではなく,自らサマラの父に手をかけたのでした。それが自分を殺人者だという後悔の念に彼を駆り立てていたのです。サマラを愛し始めていたフェランはサマラに許しを得られるのか,というぎりぎりのところで愛を認められずに感情を押し殺す大人に成長させてしまっていたのでした。
 そしてサマラもまた,感情を押し殺すことが唯一生き残り復讐を遂げるためには必要なことだったのです。二人の結婚には互いの許しが必要でした。それを積極的にフェランに解き始めるサマラ。こんな複雑な運命に翻弄される二人の若者の心理描写がとても見事な作品です。激しい言葉の応酬の中に真実の愛の姿を描ききったイチオシ作品です。


タグ:ロマンス
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花嫁の悲しい嘘 [メイシー・イエーツ]

SHALOCKMEMO1180
花嫁の悲しい嘘 Married for Amari's Heir
One Night with Consequences 6 ) 2015」
メイシー・イエーツ 山科みずき





 原題は「アマリの後継者のために結婚して」
 ヒロイン:チャリティ・ワイアット(22歳)/ウエイトレスで詐欺師の娘/黒髪の巻き毛
 ヒーロー:ロッコ・アマリ(35歳)/アマリ・コーポレーション社長/金色に近い肌,ごつごつした鋭角な頬骨と顎,官能的な曲線を描く唇/イタリア出身
 チャリティの父がアマリのお金を100万ドル持ち逃げし,残されたチャリティがアマリから代償を求められます。刑務所か一夜のベッドか。究極の選択肢を与えたアマリですが,もちろんチャリティには刑務所への選択肢は考えられません。この後もなにかとアマリはチャリティに刑務所をちらつかせ有無を言わさず言うことを聞かせます。卑劣で冷酷な男,そんなアマリの子どもを身ごもってしまったチャリティ。どちらが加害者でどちらが被害者か。この二人の縄の引き合いが前半から中盤へと続きます。二人の身体の相性は抜群で,チャリティも次第にアマリを求めるようになります。そして二人の過去が互いの関係に影を落としていきます。父を知らず,5歳で母親を失い捨てられ里親の元を転々としたロッコ・アマリ。母を失い父の詐欺の片棒を担がざるを得なく青春時代を過ごしてきたチャリティ・ワイアット。どちらも言葉にできないほど過去に傷つき,愛を知らずに育ってきたため,愛に不器用で人を信じず,自分にも自信がない。本作はそんな二人が互いに影響を与え,愛に気付いていくという成長と感動の物語です。特にエピローグでは15年後の二人の生活が描かれていますが,あのぎくしゃくした関係が嘘のように幸せに満ち,読者に本当に暖かい感動を与えます。
 さて,あのチャリティの父ノーラン・ワイアットはその後どうなったのでしょう。チラッとでもそのことが描かれていれば,物語にさらに深まりがあったのではないかと思われますが,ちょっと残念です。まぁそれも余韻となっているのかもしれませんが・・・。イチオシの作品です。


タグ:ロマンス
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放蕩王子と修道女 [メイシー・イエーツ]

SHALOCKMEMO1144
放蕩王子と修道女 Pretender to the Throne
(ロイヤル・アフェア 3) 2014」
メイシー・イエーツ 東 みなみ





 シリーズ最終巻です。第1巻のヒロイン,プリンセス・エヴァも,第2巻のヒロイン,ジェシカも素晴らしかったのですが,本作のヒロイン,レイナ・ゼナコスこそ,ヒロインという名にふさわしい勇気と不屈の精神を併せ持ったすばらしいヒロインでした。15年前に婚約者であったザンダーが出奔してしまい,その後,政治的理由による騒動で薬品によるひどい火傷を負って顔の半分に傷跡が残ってしまったレイナ。21回にわたる皮膚移植手術をうけたもののかつての美貌を取り戻すことはできませんでした。そんなレイナが心の居場所に選んだのは修道院でした。見習い修道女として10年間を過ごしましたが,院長からは,まだ心に迷いがあり修道女になることはできないといわれていたのです。そんな修道院にザンダーがレイナを迎えに来ます。出奔後プレイボーイとして様々なスキャンダルの中心になっていたザンダーですが弟から父危篤の知らせを受けて,キョーノスに帰ってきたのです。そして王位継承者として国の統治にかかわることにしたのでした。これまで妻を失ったあとの父王がすっかり手を抜いてしまい,荒れ果ててしまった国土を弟スタヴロスがたゆまぬ努力で国民の王室への信頼を取り戻しつつ国の立て直しを図ってきました。政治からも国からもすっかり遠ざかり,王家の長男としての義務と責任から逃げてばかりいたザンダーもついに父王の様態の悪化とジェシカとスタヴロスが王位継承権を断ったことにより,国に戻らざるを得なくなったのです。そして子孫を残すためには,再度レイナとの結婚を完成させなくてはならないと考えたザンダーでした。しかし,初めは気づかなかったほどレイナの顔は変わってしまっていました。しかし,ザンダーはその傷跡の残る顔に不快感は抱きませんでした。それより輝く瞳やなめらかな蜂蜜色の髪の方が,そして内面から出てくるであろう大人としてのレイナの魅力に気付いたのでした。レイナもまたザンダーから王宮に一緒に来て欲しいという頼みを断れませんでした。心の奥に深い闇を抱えているザンダーに気付いたからでした。ザンダーは母の死を自分の責任と感じ,さらにその理由が自分は王の実の息子でないことを母から聞いたためだということを打ち明けられます。その秘密を父に明かすというザンダーの言葉に,レイナは再びザンダーが気付くのを恐れ止めようとするのですが・・・。そして父王の下にザンダーが向かったとき,レイナの元にマスコミの記者から心ない言葉を投げかけられ,再び自分がいてはザンダーが国を去ってしまうのではという想いから修道院に逃げ帰ってしまうのでした。
 結局二人は互いの愛に気付いて互いに支え合うことにするのですが,エピローグはなんと15年後のキョーノスが描かれ,大団円を迎えます。


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愛なき王子の婚約者 [メイシー・イエーツ]

SHALOCKMEMO1131
愛なき王子の婚約者 At His Majesty's Request
(ロイヤル・アフェア 2) 2012」
メイシー・イエーツ 三浦万里





 「氷の富豪と無垢な王女(SHALOCKMEMO1130)」に続くシリーズ第2弾です。前項にも書きましたが,シリーズ第3弾「放蕩王子と修道女(R-3129)」は,2年あまりの間をおいて出版されました。間にいくつもの作品が上梓されていることから作者側になんらかの事情があったものと思われます。
 本作のヒーローは王家の次男で王位継承者のスタヴロス・ドラコスです。前作のヒロインでスタヴロスの妹王女エヴァンジェリーナの結婚式が迫る中,スタヴロスにも王妃をめとらなければならない状況になってきています。自らは王家の仕事の他,ホテル営業のビジネスマンとしての顔もあり,将来の王妃にふさわしい女性を探すため,国際的に有名な結婚仲介業者(マッチメーカー)ジェシカ・カーターにふさわしい相手を見つけて欲しいと依頼するのでした。妹のスキャンダルによる王家のイメージ低下を防ぐためにも,スタヴロスの婚約はかなり必要性の高いことになっていたのです。ところが,ジェシカと会い,話をしてみると,彼女に紹介された6人のお后候補者には,何の魅力も感じなくなってしまったのです。普通は王族,特に王位継承者にはどの女性も笑顔を振りまき,唯々諾々としてその要求を呑むものだという常識を覆し,ジェシカは質問静ライこともずけずけと,さらにはスタヴロスの要求にも逆らうことがたびたびあります。そんなジェシカの率直でしかも魅力あふれる容姿に,スタヴロスは国のためということを重視するあまりこれまで失ってきた,人としての気持ちや自分のしたいことをするという自由な生き方を取り戻していくのでした。ジェシカもまた圧倒的な男性的魅力にあふれたスタヴロスに惹かれ,離婚した夫から得た傷や,子宮摘出による不妊という問題を忘れることができ,再び男性を愛する気持ちを取り戻すことができるようになって行くのです。遂にスタヴロスは6人の候補者の中からヴィクトリアという女性を選択するのですが,婚約発表を先延ばしにして1カ月だけジェシカと愛を交わすことを提案するのでした。
 2週間を過ぎたところで父王からの呼び出しがあり,スタヴロスはヴィクトリアとの婚約を告げますが,本当に愛しているのはジェシカだということも話さざるを得ませんでした。亡き母の事故の後,国の仕事をそっちのけにしてしまった父王のようにはなるまいと10代のころから国一筋にがんばってきたスタヴロスに対して,「愛が人を弱くするのではなく,愛を失ったことで弱くなった」という父王の告白にスタヴロスはハッと気付くのでした。ジェシカを愛することは自分を弱くするのではなく,自分の人間らしさを取り戻してくれたのだということに・・・。王位継承に絡んで,子孫を残せないジェシカとの結婚は難しい,という問題点や,プロのマッチメイカーであるジェシカとの結婚は彼女のこれまでの仕事の実績と信用をも失わせることになる。様々な困難やスキャンダルが予想されますが,もはやスタヴロスはジェシカと離れてくらすことはできない状況になっていたのです。さて,王位継承問題にどのように解決策を?もう一人残された長男ですでに国を出奔しているアレグザンダーが解決策になるのか,このあたりをうまく整理調整するために,第3弾の刊行が遅れたのかもしれませんね。あるいは,マックとエヴァンジェリーナの間に王子が産まれれば,その子が王位継承権を得るということも考えられるのかもしれません。王室問題には常に継承者問題が裏腹にあるのでしょう。過去の苦痛を振り切ってスタヴロスとの愛を追い求めようとするジェシカの勇気に拍手です。


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氷の富豪と無垢な王女 [メイシー・イエーツ]

SHALOCKMEMO1130
氷の富豪と無垢な王女 A Royal World Apart
(ロイヤル・アフェア 1) 2012」
メイシー・イエーツ 熊野寧々子





 今月シリーズ第3作目の「放蕩王子と修道女(R-3129)」が刊行されるのを機に,第1作,第2作を読んでおこうと思い,本作を手にしました。年明け最初の読了本で,エーゲ海の島国キョーノスの王子王女たちを主人公にしたロマンスです。長男ザンダー(アレグザンダー)は王位継承権を放り出し島を出てしまいます。次男スタヴロスが王位継承権を持っていますが独身。そして末娘エヴェンジェリーナ(エヴァ)・ドラコスが本作のヒロインです。このシリーズは兄妹の下から順にいくようです。エヴァは王家の末娘らしい我が儘放題でお騒がせなお嬢様。本人はほんの少しの自由が欲しいと思っているだけの気持ちですが,スタイリストが選んだ服を着せられ,城に閉じ込められたような生活,そして何より自分が国の政治や経済的理由で結婚相手すら勝手に決められてしまうという生活に反抗し,何かとマスコミのスキャンダル報道の対象になってしまうような行動を取ってしまうのです。すでに近くの王子との結婚が予定されており,婚約式を間近に控えており,かなり情緒も不安定になっていますが,かといって兄ザンダーのように国を飛びだす勇気も持てないでいます。そんなエヴァのボディガードを引き受けているのは世界有数の有名人の警護をも担当しているセキュリティ会社の経営者,マックハイル(マック)・ナバトフというロシア人でした。長身で体格に恵まれいかにも厳つい風貌のマックに対して,初めは反抗的態度を取っていたエヴァですが,彼女のつぶやきに反応し,少しでもエヴァの気持ちを受け入れようとしてくれる初めてのガードマンでした。しかし外出した彼女を追っかけてタブロイド紙はかなり奔放な行動を取る女性としてあることないことを報道し始めます。業を煮やした父国王は,マックとエヴァを国の外で2週間ほどを過ごすように言いつけるのでした。2週間あれば予定していた婚約が整い,結婚すれば,エヴァをターゲットとした報道も落ち着くだろうと考えたからです。マックはエヴァを連れてスイスの山小屋に逃れていきます。ここはマックの所有する別荘の一つ。事業の成功で富豪となったマックにとっても隠れ家的存在の場所です。そこで,エヴァはマックの生い立ちや心の闇を次々に聞きだし,これまでマックも誰にも打ち明けていなかった秘密をエヴァには話さざるを得なくなります。亡き妻マリーナを結婚早々,交通事故で植物状態にさせてしまい,10年もの間の介護虚しくなくなってしまったのでした。両親の反対を押し切って駆け落ちしたとたんに事故に遭ったことで,マックは生涯消えない心を着ずと罪悪感をマリーナに対して抱いていたのです。そのためその後は独身をとおし,どんなに誘惑されても女性を相手にせずに氷の男という印象を周りに与えてきたのでした。それがエヴァの無垢な質問には嫌々ながらもかなり正直に応えてしまう自分に驚き,マリーナの死後始めて心を開ける女性に出会ったことに気付くのでした。エヴァもマックとマリーナの関係を理想の愛のように気遣い,マックを愛してしまった自分に気付くのでした。父から連絡があり国に戻って婚約が取り交わされた披露パーティで,ついにマックもエヴァも互いに自分の気持ちに嘘を突き通すことはできないことに気付くのでした。
 大人になりきらない王女の心の成長と過去に心の傷を負ったボディガードの自己再生への道のりが細かく描かれたロマンス小説らしい心温まる成長譚です。オススメです。


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シークの美しき獲物 [メイシー・イエーツ]

SHALOCKMEMO1029
シークの美しき獲物 Sheikh's Desert Duty
 2014」
メイシー・イエーツ 中村美穂





「恋人?ばかばかしい。そんな時間がどこにあるの?誰がわざわざ失恋を経験したがるわけ?信頼できる男性を見つけられたら話はまた別だけれど,そんな仮定は滑稽なだけだ。」上昇志向の新人新聞記者ソフィー・パーソンズの言葉です。独立心の強い彼女。父親が誰かは明かされませんが,母親が父親を慕い続け,自分を貶めていくのを間近に目にしながら成長したソフィーは結婚を信じません。そんな彼女が唯一心を寄せることの出来る親友,イザベル・ハリントンのハリントン・ホテル・グループのチャッツフィールド家による買収計画を阻止するため,スペンサー・チャッツフィールドの弱みを握ろうと路地裏で取材をするために隠れているところに,スルハーディ国王,ザイン・アル・アフマルに出くわします。スルハーディ王家のプリンセス,レイラ・アル・アフマルがジェイムズ・チャッツフィールドの魔の手にかかり妊娠させられてしまい,ザインはジェイムズに警告しようとしていたところでした。その秘密を聞かれてしまったザインはソフィーを連れてスルハーディに戻ってきます。いろいろな関係が絡み合うこの出来事はアル・アフマル家のもう一人のプリンセス,ジャスミンがかつてダミアン・コルトレーンというザインの旧友とともに事故死し,そのスキャンダルを伏せて来たこととも関係していました。砂漠の民をまとめ,スルハーディの近代化を進めてきたザインは,妹たちのスキャンダルが公表されると反対勢力の格好のネタになってしまい,国に多大な混乱を引き起こすことを恐れていました。国政の安定化を図るため婚約者,クリスティーヌとの政略結婚を間近に控え,スキャンダルから世間の目を離そうとしていた矢先に,最大のスキャンダルを新聞記者のソフィーにかぎつけられたからザインとしてはたまりません。なんとかソフィーを説得しようとスルハーディに連れて行ったのはいいのですが,いつしかザインはソフィーに惹かれてしまいます。ソフィーもまた職を失う結果になることを分かっていながらザインに従いたいという気持ちを止めることが出来ないまま,砂漠の国にやってきたのでした。二人の関係が圧倒的に近づいたのは砂漠の民の取材のためベドウィン族の長,ジャマルの元を二人で訪れたときです。妹の死に責任を感じてきたザインはその秘密を明かすことでソフィーに特ダネを与え,替わりにレイラの秘密を伏せて欲しいと言う気持ちでいたのですが,砂漠からの帰宅途中天候の悪化で鉄砲水の危険に迫られ,仕方なく二人は狭いテントの中で一夜を過ごします。結婚しても幸せになれないと思っていたソフィーと婚約中のザインは互いに将来のない関係であることを分かりながら,愛し合うことを止められなかったのです。愛か責務か。究極の選択に迫られた二人。ソフィーはザインを守るために新聞社の編集長が手に入れたスキャンダルの証拠を消滅させようと自分の職を投げ打って編集長と取り引きをします。その時点でレイラの相手がジェイムズ・チャッツフィールドであることを明かさざるを得ませんでした。自分が裏切られたと誤解したザインはソフィーにすぐに出て行けといいますが,この言葉がかつてジャスミンを死に至らしめた言葉であることを,そして二度も同じ間違いをしたことに気付き,ソフィーを追いかけるのでした。片親で貧しい自分が努力の末に手に入れたソフィーが職を投げ打っても秘密を守ろうとしたことを編集長から聞いたザインは許しを請うためにソフィーのフラットを訪れます。
チャッツフィールドは登場しますが,これが番外編なのか新シリーズの始まりなのかはちょっとよく分かりません。とりあえずもっと他の作品が訳されてから判断したいと思います。


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家なき子へのプロポーズ [メイシー・イエーツ]

SHALOCKMEMO891
家なき子へのプロポーズ Girl on a Diamond Pedestal 2012」
メイシー・イエーツ 飛川あゆみ





イギリス版Mills and Boonの表紙を見てください(image下)。真っ赤なドレスでピアノに向かうヒロインの姿は,ブロンドで背中も大胆に開いたデザイン。そしてS字型に捻った後ろ姿が,なんともセクシーでしかも真剣にピアノに向かう姿勢が感じ取れるイメージになっています。ロマンスのカバーデザインの中でも,MB版は素晴らしいものが多いのですが,これほど読む前から引き込まれるデザインはあまりないように思います。
天才少女ピアニストの名をほしいままにしてきたノエル・バーチですが,すでに20歳を越え,コンサートツアーの声もあまりかからなくなり,CDの売り上げも激減してきました。印税で買えるのはわずかな食料ぐらい。電気代などを節約するため,暖房も電気も広い家の一間だけに限定して暮らさなければならないほど,経済的に追い詰められてきていました。そしてついに,彼女名義の家も競売に掛けられることになってしまいます。幼少の頃から世話をしてきた母は,彼女が稼いだお金を全て持って家を出てしまい,一人寂しく暮らす日が続いていました。そんな時,かつてノエルの母と愛人関係にあった男性の息子,イーサン・グレイが訪ねてきます。そして,自分と結婚すれば家の借金を払い,しかも名義はそのままにしようと便宜的結婚を持ちかけてきたのでした。男性としてのイーサンに惹かれるものを感じながらも愛のない結婚に二の足を踏んだノエルですが,経済的にどうしようもなくなり,この話を受けることにするのです。イーサンもまた,自分の母親を傷つけた父とノエルの母に憎しみを持ち,ノエルを通して仕返しをすることと,祖父の持っている財産を結婚によって父ではなく自分が受け継ぐという約束を果たすため,この便宜的結婚を考えついたのでした。婚約者としてマスコミや社交界に互いに愛し合っているように見せる。そんな演技を,これまでステージで平気でこなしてきたノエルにしてみれば,難しいことではないのですが,やはり愛のない関係は,周囲にも,自分の家族にも嘘をつくことになり,気が進まない点もありました。しかし,最初の口づけから,ノエルは真剣にイーサンに惹かれてしまいます。なんとかイーサンの気持ちを自分を愛するように仕向けていきたい。そう思いながらも,これまでの人生をピアノの練習と作曲に明け暮れ,恋愛経験を一度もしたことのないノエルにとって,どう振る舞って良いのか全くわからないままでした。それでも自分の気持ちの赴くままにイーサンからの誘いに本気になってしまう自分に気づいていきます。やがてラスベガスで即席の結婚式を行い,正式に夫婦になった二人。財産を受け取ることが出来るようになったイーサンは父親にそのことを告げ,復讐は完成するのですが,しかし達成感は得られませんでした。復讐や財産よりももっと大切なもの,つまりノエルの存在こそが自分にとっては大切なものだと気づきます。愛になれていない二人が不器用で,互いの気持ちを傷つけながら次第に離れられなくなる,そんな姿が愛らしく,ほろりとさせられる秀作です。


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花嫁失格 [メイシー・イエーツ]

SHALOCKMEMO846
花嫁失格 One Night to Risk it All 2014」
メイシー・イエーツ 片桐ゆか





カンヌで友人とブティックを経営するレイチェル・ホルトはアメリカの裕福な家庭の令嬢で,婚約者のアイアスとの結婚を間近に控え,独身最後の休暇をコルフ島楽しんでいた。そのとき,ふと目にとまったのは上半身裸でヨットのデッキを掃除している男性だった。友人に背中を押されながら勇気を出して男性に声を掛けたレイチェルは,その男性アレックスに惹かれている自分に驚いた。若い頃,羽目を外しすぎて痛い目に遭った経験を持つレイチェルは,その後10年以上も男性との深い関係をすることなく,ひたすら良い娘でいようと心がけてきた。そんな生活から自分らしさを取り戻させてくれたのがアレックスだった。1カ月後の結婚式当日,レイチェルは妊娠検査薬を手に部屋で迷っていた。このまま何もなかったことにして結婚式を挙げてしまおうか,妊娠を確認しようかと。その時,部屋をノックして入ってきたのはアレックスだった。アレックスの言うまま妊娠検査キットで確認したレイチェルは自分の妊娠を知り,アレックスに手を引かれて結婚式場を逃げ出したのだった。コルフ島のアレックスの家に隠れ,アレックスから結婚しようと迫られたレイチェルだったが,プロポーズを断るレイチェル。レイチェルは自分が若い頃と同じ衝動的な行動をしてしまったことに深く傷つき,こんな自分を許せなくなっていたのだった。アレックスもまた犯罪に手を染めていた父とその犠牲になった母の存在を忘れることが出来ず,誰も愛せない,どう愛していいかわからないで人生を送ってきたのだった。ただ,自分の子供に自分のような生活をさせたくないという思いだけは強く,レイチェルと子供を守りたいという切ない気持ちを持っていたのだった。
レイチェルと結婚する予定だったアイアスはレイチェルの妹リアと結婚し,二人は愛し合っていて幸せだという。リアの気持ちに気づけないでいたレイチェルは二人が幸せなことを喜んでいた。そして自分以外の人と生涯を共にしようとする気がないというアレックスの言葉を信じようと思い,ついに結婚を承諾する。そして二人の結婚式の当日,アイアスの姿を見たアレックスは,これまでアイアスを憎んでいたと思っていた自分が,アイアスが悪いのではなく,自分に愛がないから自分が悪いのだと言うことに気づかされる。またもや結婚式を,今度はアレックスの事情で取りやめにしてしまう二人。アメリカに戻ったレイチェルはリアとアイアスと生活し,自分のお腹の中で成長する子供のことを考えながら,なぜアレックスが人を愛せないのかと考え続けていた。二週間後,突然アレックスが現れる。自分のこれまでの生活を振り返り,自分が愛を知らなかったのは認めた上で,不完全な自分でもレイチェルなしには生きていけないことに気づいたこと,そしてそんな不完全な自分でよければ,もう一度自分と一生を共にして欲しいと訴えるアレックス。
愛の描写が多いにもかかわらず,なんとなく自分らしさを取り戻していく二人の愛らしさが伝わってきて微笑ましく,二人の心の成長が存分に描かれた秀作です。


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