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シンデレラになった家政婦 [マリオン・レノックス]

SHALOCKMEMO1272
シンデレラになった家政婦 The Earl's Convenient Wife 2015」
マリオン・レノックス 川合りりこ





 原題は「伯爵の都合のいい妻」
 ヒロイン:ジーニー・マクブライド(旧姓:ロックラン)(29歳)/家政婦兼秘書/女らしい体つきをした小柄の女性,顔にはそばかす,肩まである淡いブラウンの巻き毛,頬にはえくぼ,グリーンの目/
 ヒーロー:アラスデア・マクブライド(37歳)/第十六代ダンケーン伯爵/190センチ近い長身に漆黒の髪,人目を引くたくましい骨格/
 本作の主人公はなんと言ってもスコットランド西部に位置する島の自然です。ヒーロー,ヒロインの行動を通して,自然に厳しい中で美しい風景や鳥やラッコといった動物たちが大活躍し,主人公たちの気持ちを代弁するだけでなく,あるべき姿を教えてもくれる,まさに自然に学ぶことを目の前に提示してくれる作品です。作者の深い自然や動物に対する敬愛の気持ちや深い洞察力が無ければ本作はできあがらなかったことでしょう。
 さて,冒頭ではアラスデアの祖母アイリーンの遺言公開の場面から始まります。遺産相続の条件はアラスデアと従兄弟アランの未亡人でダンケーン城の家政婦だったジーニーとの1年間の結婚生活。それが出来たら会社の経営権と領地はアラスデアに,ダンケーン城はジーニーにという内容でした。1年間の結婚生活が完了しなかったり,30日以上別居生活送ればその時点で二人には何も残らず,会社と領地の売却した金額を全額動物愛護団体に寄付するという条件つきなのです。便宜的であれ結婚しなければすぐにでも二人とも路頭に迷うことになります。しかしジーニーが金銭目当てで従兄弟と結婚したと思い込んでいたアラスデアはすぐにでもジーニーを説得できると思っていたのですが,ジーニーはこの話を断ろうとするのです。慌てて秘書にジーニーのことを調査させることにしたアラスデア。ところがジーニーが欲深い女性ではなく,近隣の人たちからも祖母からもとても好かれており,さらに不幸なことに最初の夫を海難事故で亡くしたばかりか,放蕩者だった従兄弟をも失ってしまい,さらに未亡人になってからも祖母の世話と城をB&Bとして繁盛させていた働き者であることが分かります。改めて素直で見てみるとジーニーの目立たないけれどもその内面の美しさと太陽が輝くような笑顔の持ち主であることに気づき,自分の思い込みが如何に誤っていたかに気付くのでした。そしてジーニーは自分が3度目の結婚生活を了承しなければ,アレスデアがこの美しい領地と会社を失ってしまうことが余りに気の毒でこの条件を呑むのでした。しかし自分を信用していないアラスデアと本当の夫婦としての生活だけはどうしても我慢が出来ず,互いに出来るだけ接触を避けるという条件で結婚を了承するのでした。
 奇妙な二人の結婚生活が始まります。途中いくつかのぶつかり合いがあるものの,アラスデアが少しずつ自分に歩み寄ろうとしていることが分かり二人はまるで本物の夫婦のように暮らすようになり,数ヶ月が経ちます。ところがアラスデアの会社で大きな問題が持ち上がり,しばらくその問題にかかり切りになるアラスデア。ところがどんな問題が持ち上がっているのかアラスデアはジーニーに何も語ろうとしません。結局今でも自分を信用してくれないのだと思ったジーニーは,再びアラスデアを避けるようになって行きます。普通の作品であれば,二人の気まずい雰囲気に気付いた周囲の友人たちがどちらかに助言をして問題を解決させようとするのですが,本作の特徴はそれをスコットランドの自然や動物たちにさせていく点です。幼少の頃を過ごし,その後エジンバラで仕事一辺倒で過ごしてきたアレスデアが人間的な感情を取り戻し,ジーニーの本当の優しさに気付き,その幸せを願っていくまでの成長譚が後半,静かにそして確かなテンポで語られていきます。強い風の吹く荒々しいスコットランドの海岸に経つ二人のあたたかい心の交流が素晴らしく語られる傑作です。MB版の表紙のジーニーの飾り気のない,そして意志の強そうなきりっとした美しい笑顔がとても印象的で,素晴らしい表紙です。


タグ:イマージュ
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非恋愛結婚 [マリオン・レノックス]

SHALOCKMEMO1178
非恋愛結婚 Dr. McIver's Baby
Prescription : Romance 3 ) 1998」
マリオン・レノックス 北園えりか





 原題は「ドクター・マカイバーの赤ちゃん」
 ヒロイン:小児科医 アニー・バロウズ(25歳)
 ヒーロー:外科医 トム・マカイバー(32歳)
 オーストラリア南部の小さな町バンノックバーンの町立病院に勤める同僚医師アニーとトムの住む病院裏のアパートの,トムの側の入り口の前に置かれていたのは,生後何週間かの小さな女の赤ん坊。中にメモが入っており,トムが最近まで付き合っていた女性が産んだトムの娘だというのです。メリッサというその女性はすでに外国で他の男性と暮らしており,娘はトムが育てるべきと書いてあります。小児科医であるアニーは,捨てられた赤ん坊がたどる道筋に精通しており,それを淡々とトムに説明するのですが・・・。ハンナと名づけられたその子は,結局病院中の人気者になり,トムも愛情を持ち始めて,トムが育てることになりました。さて,その時困ったのが母親が必要だということです。その時トムと付き合っていたサラは,他人の子を喜んで育てるような女性ではありませんでした。その時トムが年配看護師の助言で目にしたのは,これまで同僚としてしか見ていなかったアニーだったのです。自分と同じように地域医療に携わることを選択し,片田舎の町にやってきたアニーとの医師としての仕事ぶりは立派で,しかも若いのに派手な格好をせず,「歳を取っても独身でずっと働いてくれそうだ」と思われていたアニーが,眼鏡を外し,髪を下ろして身体のサイズに合う服を着てみると,素晴らしい美人であることが見えてくるではありませんか。「父は私が幼いころに出ていったの。母にとっては,私もいらない存在だった。私の姉は美人なの。それに比べて私はこんなふうだから」と自分の容貌に自信を持てないアニーは仕事一筋の人生を送ろうと決めていたのです。一方トムは女性なら誰もが振り向いてしまう容貌と医師としてのステータスをもち,アニーも密かにトムに対して憧れの気持ちをもっていたのでした。しかしトムがこれまでとっかえひっかえ付き合ってきた女性はいわゆるモデル体形と美貌を兼ね備えた女性ばかり。自分のような女性を振り向いてくれるはずがないと思っています。そんなトムが,赤ん坊が現れたとたんに自分と結婚したと言いだしたのですから,いくら自分の魅力や美辞麗句を告げられても信用できません。きっぱりと申し出を断るアニー。それが,看護師たちの目から見るとアニーも美人でトムとの相性もバッチリで,二人がこの病院に勤めてくれている間は町の医療も安泰だと勝手な憶測で噂をし出したのでした。2週間経ってもアニーの返事は同じです。このままではこの病院にもいられない,月末には辞職するとアニーは言い出しました。その後病院内だけでなく町のあらゆるところでアニーを説得する声が高まります。しかしトムの口からはこの結婚の有利性ばかり聞かされ,肝心の「愛」の一言も聞けません。しかし周りに説得される形でアニーは結局結婚を承諾するのでした。式の後も,トムは娘のハンナには愛情を注ぎますが,アニーとは病院のシフトの関係ですれ違いばかり。夜はベッドを共にするものの,朝になるとまた心は離れているように思えるのでした。休日に浜辺でおぼれかけた人を助けにトムが海に入り,アニーも命綱を投げて協力して助け上げるのですが,このときトムを失うことがどんなに辛くなるのか身をもって体験したアニー。そしてもう一つ大事件が起こり,アニーは脚に重篤な怪我を負ったとき,トムはアニーを愛していることに気付くのです。
 相手を失うようなことを体験したときに始めて分かる相手への愛。愛はもらうものではなく,与えるもの。そんなメッセージが伝わってくるハートウォーミングな作品です。それにしても,ヒロインの名前がアニー・バロウズ(有名なヒストリカルロマンス作家と同名)とはなんてことでしょう・・・。


タグ:イマージュ
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ベビーはある日突然に [マリオン・レノックス]

SHALOCKMEMO1083
ベビーはある日突然に The Surgeon's Doorstep Baby 2013」
マリオン・レノックス 堺谷みすみ





洪水のため対岸の町から切り離されてしまったシドニー郊外の牧場の屋敷で過ごすことになってしまった整形外科医と看護師兼助産師,そして外科医の姪の赤ん坊と看護師の妹弟4人のてんやわんやを描いた作品です。育児放棄した両親の替わりに弟妹の世話をしながら暮らす8人兄弟姉妹の長女で看護師兼助産師のマギー・ティルデン。物心ついたときから一人になることがなく,常に周囲に面倒を見なければならない兄弟姉妹に囲まれ,夢は一人で世界中をバックパックを背負って旅して回ること。放置された牧場の家政婦部屋を借り,地域の医療の最前線で誰からも頼られる存在です。牧場と屋敷の持ち主の息子で外科医のブレイク・サムフォードは怪我をして療養回復までの1週間をここで過ごすことにしたのですが,そこにはマギーも暮らしていることは予想外でした。そしてある朝起きてみると,玄関戸口の階段に一人の赤ん坊が捨てられていました。中にある書き置きからそれはブレイクの腹違いの妹が産んだ赤ん坊。しかも脚に異常が見られ長期にわたる矯正治療が必要なようです。それを苦に病んだ妹夫婦が医師である義兄のブレイクに赤ん坊を押しつけて大陸の反対側の町に引っ越してしまったのでした。これまで7人の弟妹の面倒を見てきて未だに4人の年少の兄弟姉妹たちの面倒を見なければならないマギーはさらに一人赤ん坊を面倒を見ることはできないと,ブレイクが育てるつもりがないのなら福祉施設に引き渡すべきだと主張します。洪水はさらに進み,町との間の唯一の交通手段の橋も流されてしまいます。ヘリコプターでの緊急出動を依頼すれば病院への搬送は可能ですが,むりやり福祉施設へ赤ん坊を引き渡すことに迷いを持っているブレイク。何とかマギーの手伝いを得て赤ん坊の面倒を見始めます。そこにマギーの弟が大怪我をした連絡が入り,マギーは駆けつけます。弟は幸いブレイクの手当で命を取り留めますが,マギーもまた大怪我を負ってしまい頭部狭窄手術を受け入院することになります。この時すでにブレイクはマギーに惹かれている自分に気付き,マギーなしでこれからの人生を送ることはできないと決意します。もともとハンサムで優しく繊細な心を持ち,弟の命の恩人でもあるブレイクがいることで自分が助けられたこともあり,マギーもまた,ブレイクを愛してしまったことに気付きますが,ブレイクからプロポーズをマギーは断ります。いずれシドニーに帰ってしまうブレイクとの間に人生を共にする決意ができなかったのです。その半年後,マギーの暮らす家の前にダンプカーが2台やってきて,庭一面に空き缶が集められます。空き缶集めで少しずつお金を貯めて7年後には世界旅行に出る計画を打ち明けたマギーの計画を早く実現しようと,ブレイクの発案でマギーの弟妹たちや町の人たちが協力して半年にわたって空き缶集めをしてくれたのでした。この予想外の出来事がマギーの心を大きく動かしますが,計画どおりマギーは世界旅行に出かけてしまいます。さて,二人の愛は実るのでしょうか。オーストラリアの自然の驚異が克明に描かれ,スケールの大きなオーストラリアらしさと人々の優しさにあふれた作品です。冬に向かうこの季節にはぴったりのぬくもりが感じられるイチオシの好著です。


タグ:イマージュ
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裸足のプリンセス [マリオン・レノックス]

SHALOCKMEMO720
裸足のプリンセス Her Royal Baby 2003」
マリオン・レノックス 高橋庸子





タムジン(タミー)・デクスターは樹木治療師としてオーストラリアで樹上にいた。そこにやってきたのは礼服を着たマルク。ブロイデンブルク公国の摂政だという。タミーの妹ラーラがヘンリーという息子を出産した後,夫で公国の君主ジャン・ポールとともに事故で死亡。タミーの甥のヘンリーの後見人にタミーが指定されているため,ヘンリーをオーストラリアから出国させるにはタミーの承諾が必要だという。タミーとラーラの母親は4人の男性と結婚し,姉妹の父親はそれぞれ別だった。タミーは幼いラーラの母親代わりとして育てた経緯があり,ここしばらくは連絡すら取っていたなかったが,ラーラが自分を息子の後見人に指命したことは理解できた。では,今ヘンリーはだれと一緒にいるの?この疑問にマルクは,ナニーが面倒を見ているという。では,家族は?甥がブロイデンブルクの君主であり,マルクが国に連れ帰るという。国で最高のナニーを雇うというが,だれが愛情を持って育ててくれるの?考えさせてほしいというタミーに対して,マルクは4日後までに結論を出さないと,ヘンリーは君主としての資格を失うという。それでは,私も一緒に行くわ,とタミーは結論を出さざるを得なかった。公国についてみると,立派なお城に,使用人以外だれも住む者がおらず,しかも国の政治は有力者たちによって支配されていて次第に優秀な人たちが出国する傾向にあり,マルクが立て直さないと,やがて国は滅びてしまうという。マルクになぜか惹かれるものを感じ始めたタミー。そして,マルクも城の中でもTシャツにジーンズのみすぼらしい姿のタミーが本当は美しく,自立した女性であることに気づき,いつもタミーのことが頭から離れなくなってしまう。しかし,城に着いてみると出迎えたのは自称マルクの恋人で,タミーを見下した態度をとる。それに負けずに言い返すタミー。そんなタミーにマルクはさらに魅力を感じていく。

初めは人に対して反応を示さなかった生後十ヶ月のヘンリーも,タミーとマルクにだけは手を伸ばしてくるようになる。24時間交替でヘンリーの面倒を見るように宣言するタミー。本当はマルクとヘンリーとの絆を強めようと考えたからだった。ほぼ一晩を一緒に過ごしたマルクとヘンリーは実の親子のような関係を築く。翌々日,タミーと交替しようと城を訪れたマルクは,タミーがすでにオーストラリアに出国したことを知る。1通の手紙を残して。一月後,タミーはオーストラリアに戻り,樹木治療師としての仕事に戻っている。でも心のなかではいつも,ヘンリーとマルクのことが頭から離れなかった。樹上で仕事をしているその時,マルクの声が聞こえる。「ヘンリーが立って歩くようになったよ」。マルクはタミーのいる木に登り初め,やがて驚くべき提案をする。最後は,タミーの友人のオーストラリアの樹木治療師たちの元に来た手紙で,その後の二人の,いや三人の様子が知らされる。このラストがとてもしゃれている。爽やかな1作。


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ドクターは億万長者 [マリオン・レノックス]

SHALOCKMEMO718
ドクターは億万長者 Dating the Millionaire Doctor 2010」
マリオン・レノックス 中野 恵





5分間デート。次々に相手を交替していくテレビ番組のようなデートに参加したヴィクトリア(トーリ)・ニコルズとジェイク・ハンター。互いに最後の相手で,二人とも友人から無理やり参加させられたことを告白しあい,なんと1分半でデートを終了。しかし,終了後に互いに相手のことが気になってしまう。

ジェイクはニューヨーク在住の麻酔医。父の死により,オーストラリアの父の財産の後始末に来たのだが,あの大火災(2009年のビクトリア州森林火災のことだと思われる。)による被害が大きかったため,売れるものなら売ってしまおうと思っていた。この大火災はWikiによると2009年2月7日から3月14日にかけてビクトリア州を中心に同時多発的に発生した大規模な山火事だった。なんと1カ月以上も燃え続けたことになる。当時うちの娘もオーストラリア留学中だったのでちょっと心配したが,別の州に滞在していたので全く影響がなかったようだが,知り合いのオーストラリア出身の方の実家は被害があったという話も聞き,Black Saturday bushfires(暗黒の土曜日)と呼ばれたこの火災は記憶に残っている。500人を超える死傷者を出したこの火災で,ヒロイン,トーリの父親と妹が亡くなり,なんとか命を取り留めた愛犬も脚を1本なくすという被害に,さらに家は消失。動物たちの救護活動のため獣医のトーリは,焼け残ったジェイクの家を本部として治療にあたっていたところだった。5分間デートにふさわしくない普段着で現れたトーリに,逆に新鮮味を感じたジェイクだが,その後,地所で治療にあたるトーリを見た途端,その隠された美しさに気づく。そして自分の父親が地域では尊敬されていた医師であることを知り,母親が自分に嘘を言っていたことに気づく。トーリが治療していたコアラが亡くなってしまい,失意のうちにホテルに滞在した夜,二人は互いの距離を縮め,燃える一夜を過ごす。

ニューヨークにジェイクが戻ってしばらくして,勤務を終えたジェイクを驚かせたのは手術着を着たトーリだった。トーリはジェイクとの一夜の結果妊娠し,そのことをジェイクに告げに来たのだった。互いに生活の基盤をもってアメリカとオーストラリアを離れることができない事情を抱えているため,互いに束縛し合わない関係にならざるを得ないと思い,関係を深めようとしない二人。そして,数日でオーストラリアに帰ったトーリの許にジェイクが訪れる。難しい状況を二人がどのように乗り越えるのか,最後の大団円は思いがけない結末に。

豪州在住の作家らしく,大火災という自ら体験したであろう事件を巧みに設定に生かし,自然なストーリー展開と独特な語り口調で仕上げた好著。


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私だけのプリンス [マリオン・レノックス]

SHALOCKMEMO651
わたしだけのプリンス Claimed : Secret Royal Son 2009」
マリオン・レノックス 佐藤利恵





日本の皇室でも皇位継承をめぐって女性宮家の創設を含めた皇室典範の改正問題が論議され始めているようですが,どの王室でも皇位継承問題は最大の問題のようです。本書に登場する島国,おそらく地中海のいくつかの島でできている連合王国のようなものだと想定されますが,歴史上それぞれの島ごとに王室があったものをまとめて一人の皇帝が支配するようになった時期,民衆は独裁的な皇帝を嫌っていたのでしょう。その王様が亡くなり,求心力が落ちたところを継いでいる本書のヒーロー,アレックス(アレクサンドロス・コンスタンティノス・ミコノス)も家臣たちが忠実であればある程皇位継承問題に触れてくるのを避けるわけにはいかなくなっていたようです。然るべく血統のいいお姫様と政略結婚して跡継ぎを設けなければならない立場。もしも偶然に二人の間に本物の愛情が芽ばえればそれで良しとしなければならない,という立場はなんともさびしいものがあります。

それに対して,若かりし頃,皇太子時代のヒーローには将来のそんな姿が想像できればそれだけ,皇位継承とは無縁の気心の知れた相手との恋愛には心動かされるに違いありません。本書ヒロインのリリー・マクラクランとの間にはそんな互いの心の交流があったのも当然と言えるでしょう。しかも,二人の間には男の子さえいたのですから。しかしながら,リリーは独立した女性。自分とアレックスの間の息子ミカレスが皇位継承問題にさらされ,リリーの姉の実子として扱われ,両親から引き離されてしまったからには,何としても息子との生活を最優先させようとするのです。しかもリリーは才能ある船大工として打ち捨てられたボートを再生する仕事に熱中しながら,ミカレスを育てようとするのです。アレックスはそんなリリーの姿に再度惹かれていきます。

このシリーズ「地中海の王冠」は,小国のそれぞれの島の王室をめぐる物語。次作「プリンセスの帰還」では,アルギロスのニコスがヒーローです。


タグ:ロマンス
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