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夢から覚めた花嫁は [キャット・キャントレル]

SHALOCKMEMO1211
夢から覚めた花嫁は From Fake to Forever
(ウエディングドレスの魔法 2) 2015」
キャット・キャントレル 北岡みなみ





 原題は「偽りから永遠へ」
 ヒロイン:メレディス・リゼット・チャンドラー=ハリス/ウエディングドレス制作会社社員/元ミス・テキサス
 ヒーロー:ジェイソン・リンハースト/アパレル会社「リン・クチュール」CEO/
 第1章でジェイソンがラスベスガスのあるネヴァダ州クラーク郡の結婚登記所にメレディスとの結婚の事実があるかどうかを携帯電話で尋ね,回答を得る部分がありますが,こんな個人情報に関することを簡単に電話で教えてくれるアメリカという国は,またはラスベガスという町は,どれだけ自由なところなのでしょう。自由というより,開けっぴろげというべきなのでしょうか。さて,2年前にちょっとショックなことがあって出会った二人は,おふざけで?ラスベガスで結婚式を挙げます。例のプレスリーの衣装を着た立会人のもとで。そして結婚証明書は互いにシュレッダーにかけようといい合って別れますが,メレディスの申請書が受理されたままになってしまい,二人は正式の夫婦になっていたのです。最近になってメレディスの弁護士からその事実を指摘されてあわてたメレディス。ニューヨークのジェイソンの元に駆けつけますが,侮辱的な言い方をされ,腹を立てたメレディスですが,今はそんなことをいっている場合ではありません。ジェイソンは婚約者との結婚が迫っており,メレディスは姉の会社の共同経営者になるために仕事を頑張らなければならない時期。おふざけで結婚したなどと両親にも姉にも言えるわけがありません。密かに離婚しようと,しかしジェイソンは根っからの事業家。メレディスが申請書をシュレッダーしなかったことを理由に,自分の仕事の手伝いをするように条件を付けます。ジェイソンの両親は離婚し,会社を半分にしました。ジェイソンの会社は母がCEOで,父の会社は姉がCEO候補。しかも2社は今ふたたび合併し,ジェイソンはそのCEOになるつもりです。婚約も結婚もそのための便宜的なものでした。ところが,正直にメレディスとの偽りの結婚の事実を話すと,婚約者はアッサリと婚約を解消してしまったのです。そのために,ジェイソンはメレディスをスパイに仕立て上げて姉の会社に勤めさせようという計略を練ったのでした。ファッションの本場ニューヨークの有名アパレル会社への就職は,姉の会社の共同経営者になるためのステップとしてはこれ以上ないほどの貴重な体験でもあります。ジェイソンの条件を呑んだメレディスですが,二人の関係は姉に知られることになってしまい・・・。結構場面展開の速いここまでのストーリーですが,互いの身体の相性の良さ,そして絶世の美女であるメレディスと女性なら誰しも振り向いてしまう美男ジェイソン。しかもジェイソンの母はメレディスとジェイソンの関係を諸手を挙げて賛成するとあって,出来るだけ速く離婚しようとする二人の計画は暗礁に乗り上げてしまうのでした。しかし,頑固者のジェイソンは「結婚は道具だ」と豪語し,愛だのロマンスだのはからきし考えてもいないのです。何より仕事,会社,昇進というのが第一義のジェイソンです。それでもメレディスに弾かれる気持ちは日増しに強まります。メレディスも自分が美人だけでなくきちんと仕事の出来る女でありたいという切実な願いをもっており姉の会社の共同経営者という立場を得るためにはジェイソンと愛におぼれている場合ではありません。しかし,ジェイソンの姉の会社で有名なデザイナーがメレディスを気に入ってしまい,なかなか会社から離れることが出来なくなると共に,ジェイソンもデザイナーとしての自分も両方を得たいという気持ちに次第に変わってくるのです。「この結婚は全てを手に入れられるチャンスなのよ。あなたが2年前に失ったものを,そして私たちが一緒にいられる未来も。」とジェイソンを説得しようとするメレディスですが・・・。失意のうちにジェイソンの元を去るメレディス。
 やはり失ってみてその存在の大きさに気付く。というのは真理のようです。やっと自分の愚かしさに気付くジェイソン。しかしもうメレディスはジェイソンとの未来を諦めたのかもしれません。それでもやるだけのことはやってみようとジェイソンはメレディスのいる姉カーラの元を訪れるのでした。
 とにかく,メレディスは,めっちゃ美人だということ,そしてジェイソンに自分を求めさせる手練手管も豊富にもっていること,親が財閥で,姉の会社経営を軌道に乗せ,愛する夫もいる,いわばなにもないものがないのですが,そんなメレディスが欲しいものは自分の成長した姿を両親や姉に認めてもらいたいことなのです。美貌やお金や家族に恵まれていても,自分が認められたい,愛されたいという気持ちの方が人間には大切なのだということを物語をとおして語ってくれる秀作です。一気読み間違いなしのイチオシです。



タグ:ディザイア
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置き去りの花嫁 [キャット・キャントレル]

SHALOCKMEMO1129
置き去りの花嫁 
From Ex to Eternity

(ウエディングドレスの魔法 1) 2015」
キャット・キャントレル 野川あかね





 今月30冊目。7月以来久しぶりに30冊台に乗りました。年間300冊を優に超え,309冊になりました。今日中にもう1冊読めば,1日1冊,年間310冊となりますが,それも夢ではない状況です。でも欲張るのはやめましょう。じっくり作品を味わってこそ読書の楽しみですし,また新たな歳への目標もできるというものです。
 さて本作ですが,「シンデレラになれる日」3部作後の新たな連作「ウエディングドレスの魔法」の開幕です。本作に登場するヒロインは,カーラ・チャンドラー=ハリスには妹メレディスがおり,タイトルも「前妻から永遠に」と「嘘から永久に」と関連強いタイトルになっていますので,シリーズというよりは姉妹のロマンスを描いて2作で1作的な作品になっています。2年前に結婚式を直前でドタキャンされ,お腹の子も流産してしまい,もう自分の結婚はこりごりと思いながらも,結婚式で愛する二人が幸せな時間を過ごして欲しいという自分が果たせなかった想いを叶えようとウエディング・ドレスのデザインを専門にする会社を設立してここまで少しずつ成長を見せてきたカーラが仕事でやってきたのはブライダル・エキスポが開かれるカリブ海の島のリゾート地。そのイベントの企画の責任者としてやってきたのはかつての恋人で結婚式をドタキャンした張本人のキース・ミッチェル。複雑な思いを抱えるカーラですが,ここは仕事と割り切って取り組もうとします。キースの方は自分と別れたあといつの間にこんな会社を経営するようになったか不思議に思い,改めてその美しさと企業人としての実力を身に付けて自分の前に現れたカーラの姿に惹かれている自分に気付くのでした。イベントの開始まであと数日,準備に余念のない二人を襲ったのはミニ台風。イベントの前日には嵐が激しくなりそれまでの準備が無になってしまうような自然の脅威の中,二人は逆に燃え上がります。2年前はほとんど自分のことを話さないまま結婚になだれ込もうとしていた二人ですが,夜を共に過ごすうちに互いの本当の胸の内を少しずつ話せるようになります。そして改めてキースを愛していることに気付くカーラですが,キースは相変わらず永遠の関係や結婚という形式を嫌っているのです。イベント開催中だけの関係に留めようと決意するカーラ。そして嵐が去って2日後にイベントを延期し,二人が一緒にいられる時間は秒読みになって行きます。イベントの最後のウエディング・ドレスショーと模擬結婚式で,キ言葉に「異議あり」と大きな声でステージに駆け寄るのでした。
なかなか凝った舞台設定で心からの関係を築けない二人が徐々に歩み寄りハッピーエンドにいたる様子を描いた王道ディザイア・ロマンスの良作です。


タグ:ディザイア
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不遜な富豪は理想の夫 [キャット・キャントレル]

SHALOCKMEMO1069
不遜な富豪は理想の夫 Matched to Her Rival
(シンデレラになれる日 3) 2014」
キャット・キャントレル 八坂よしみ





「億万長者の名ばかりの妻(SHALOCKMEMO888)」「王子様の花嫁探し(SHALOCKMEMO985)」と続いてきたシリーズの最終巻です。これまで,ダニエラ・ホワイト,ジュリエット・ヴィレールと二人をそれぞれ愛する男性とマッチングさせてきた結婚相談所のアドバイザー,エリース・ランデルは,テレビ局の対談番組で,自分のマッチングシステムがインチキだと果敢に挑んできた局のCEOダックス・ウェイクフィールドとの賭けにのらざるを得なくなります。自宅に戻ったエリースがダックスのデータをシステムに入力してマッチングしてみると,なんと回答はエリース・ランデルと出るではありませんか。そんなはずはないと,翌日さらにデータを収集し入力し直してみると別の女性がヒットしました。このときすでに,エリースの心の中にダックスが,ダックスの心にもエリースのことが少し入り込んでいたのです。マッチングの相手キャンディス・ウォーターズは美貌といい,弁護士という頭脳の優秀さといい,文句なしの女性でしたが,ダックスは少しも魅力を感じず,というかこれまで付き合ってきた女性たちと全く変わらなかったため,すぐさま断りの返事をし,エリースに文句を言いにいきます。自宅に押しかけられたエリースは,ダックスの心の闇の秘密を巧みに探り出し,いつのまにか自分も母親から受けた「デブ」の自縛に縛られてきたことを意識しなければならなくなってしまいます。そしてダックスの会社を訪れたとき,ダックスのかつての恋人たち,ジェンナ,シェリリン,アンジェリカとキャンディスが押しかけてきます。この時4人の女性から話されたことでエリースが傷ついたと考えたダックスは,エリースへの想いに気づくのでした。そして,互いに賭けを中止し,自分の負けを認めようとしたとき,互いの愛に気付いていくのです。このあたりの愛とは何かについての作者の考えが明確に出ていて,読んでいてなるほどと思えるところです。愛と信頼,この二つが両輪であることが,この後,ダックスがエリースへの信頼を疑ってしまうきっかけになるのは面白いところです。なかなかすぐにハッピーエンドには終わらないところが作者のうまいところですね。そしてエリースが大胆な仕掛けで,さらにそれにダックスも輪をかけて大胆な仕掛けで互いを愛を打ち明け合うところが,端から見れば迷惑な話ですが,物語としてはスケールの大きさに,そしてアメリカ的なところ(舞台はダラスですので)に,爽やかで暖かい読後感にさせる最大の理由だと思います。シリーズ最終回にふさわしい大作だと思います。オススメの1作です。


タグ:ディザイア
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王子様の花嫁探し [キャット・キャントレル]

SHALOCKMEMO985
王子様の花嫁探し Matched to a Prince
(シンデレラになれる日 2) 2014」
キャット・キャントレル 八坂よしみ





徴兵中の弟ベルナールを亡くしたジュリエットは徴兵制反対の抗議集会の先頭に立って活動し,王宮の前で国旗を燃やすという過激なパフォーマンスをしたこともあります。しかもジュリエットが付き合っていたのは王家の次男アラン王子だったのです。結局二人は立場の違いから別れてしまいます。地中海の小国ドゥラメールの国王ローラン,そして皇太子のレオナルドは前作「億万長者の名ばかりの妻」に登場します。レオナルドの弟アランは軍の大尉として国を守る仕事をしていますが,前面に海を抱えたドゥラメール(de la Mer=海の国という意味のフランス語が国名でしょうか?)には護衛艦が4隻ほどあり,そのヘリコプターパイロットをしているのがアランでした。ローラン国王は息子とかつての恋人ジュリエット・ヴィレールのスキャンダルが国益を損なっていると考え,ジュリエットと別れた後の王子の結婚を急がせようと一計を案じます。アメリカのセレブ専用結婚相談所のアドバイザー,エリース・アランデルに候補者の選考を依頼したのです。エリースの申し出ではアランがダラスに赴き,お見合いをすることが条件とされていました。そのころジュリエットはアランと別れた後アメリカに渡り,やはりエリースの元で結婚相手を捜していたのです。アランとの別れの心の傷を癒やすために・・・。ところが相談所のコンピューターがマッチングさせたのはなんとアランとジュリエットでした。そして,二人は突然誘拐されてしまいます。この誘拐は国王が仕組んだものでした。ドゥラメールの近海にある皇太子の所有する別荘の島。初めはそれに気づかず,必死に近くを通る船や上空を通る航空機に合図を送るジュリエットでしたが,アランはポケットに入っていた手紙で,これは国王が仕組んだもので,この機会にジュリエットを説得し,ヴィレール家に反対運動を止めるように説得するために努力せよという内容でした。危険が絡む誘拐ではないことを知り,アランはジュリエットに説明しようとしますが,ジュリエットはとにかく助けを求めることだけを考え,アランの説明を聞こうともしません。この頑固さが二人の間のわだかまりの原因でもあるのですがアランは,これもジュリエットの魅力の一つであると思っているため,敢えて説明をしようとはしませんでした。考えられることを全部試してみても埒があかず,二人はとにかく休暇だと思って気長に助けが来るのを待とうと,ゲームをしたりしていますが,互いの欲望を抑えきれずに次第に求め合うようになってしまいます。これもまた父王の狙いとしていたところでした。そんなときニュースで隣国で軍事衝突が起こりそうだと報道がなされます。軍人であるという自分の立場を思い出したアランは何とかして国王と連絡を取らなければと思うのですが,その方法すらありません。それを間近で見ていたジュリエットは,アランの本来の立場と任務を理解しながらも,将来自分を置いて戦場に赴いていくだろうという不安をぬぐいきれません。二人が将来どうなるのだろうと冷静に話し合う二人ですが,結局のところ互いの立場を譲れず,愛が結婚には結びつかないという結論になるのでした。やがて皇太子がヘリコプターで二人を迎えに来ますが,それを見たジュリエットはこの誘拐が初めから仕組まれていたことに気づき,二人の別れは決定的になります。家に帰ったジュリエットに家族たちはさっそく軍事行動に対する抗議の集会の計画を話し合おうとするのですが,アランの立場を少し理解したジュリエットは自分は計画には関わらないつもりだというのでした。このときジュリエットの心の中にはアランを許し,少しずつ近づいて行かなければ二人の愛が実ることはないのだということに気づいていたのです。アランもまた隣国の軍事行動を非難するのではなく思いとどまるよう説得しに行き,見事に合意を取り付けてきます。インタビューでアランは記者に秘訣は何ですかと問われ「譲り合うことです」と答えています。ジュリエットは,自分たちも少しずつ譲り合えば再び近づけるのではないかと希望を持つのでした。国連から帰ったアランの交渉成功を祝うパーティが王宮で開かれようとしていますが,門の前ではヴィレール家の人々が先頭に立って抗議行動をしています。ジュリエットの姿が見えないので心配していたアランは,パーティ会場に盛装したジュリエットが現れて驚きます。そこからはスローモーションの劇を見ているように,詳細な描写がクライマックスを盛り上げていきます。二人の間に何が変わったのでしょうか・・・。王族という立場,そして王子と結婚すれば王妃になる。そんなプレッシャーや,互いの家族との関係など愛だけでは,二人の気持ちだけでは解決しないさまざまな問題点を丁寧に取り出し,見事に解決策を示している作品です。


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億万長者の名ばかりの妻 [キャット・キャントレル]

SHALOCKMEMO888
億万長者の名ばかりの妻 Matched to a Billionaire
(シンデレラになれる日 1) 2014」
キャット・キャントレル 八坂よしみ





難病の母親を抱え,経済的に困窮していたダニエラ・ホワイト(ダニー)は結婚相談所のアドバイザー,エリース・アランデルの指導で妻となるためのレッスンを受けた。一方ワークホリックで1日16時間以上働くことで,自分のベンチャー・キャピタルを維持しているレオナルド・レイノルズ(レオ)は,自分の望むままに行動し,パーティを取り仕切れるほどの才能を持った妻を何とか見つけたいと結婚相談所に相談する。二人のデータがぴったり合ったとして紹介された二人は,ほとんど知り合うことなく結婚式をあげ,夫婦となった。いわゆる便宜的結婚の物語ですが,本作の特徴は,本心を打ち明けることで自分が女性にのめり込んでしまい仕事がうまく出来なくなるというレオの立場と,夫に会わせようとはするものの幼い頃から夢見てきた結婚というロマンチックな世界とのバランスが取れないで悩むダニーが,互いに愛する気持ちを抱きながら,なかなかそれに踏み切れないで苦悩する姿が,読者をハラハラさせ,カタルシスを生み出すところです。それにしても何日間かわかりませんがレッスンを受けるだけで,あんなに落ち着きのある美しさと何者にも揺るがない夫への気持ち,そして何度も自分を見捨ててしまう夫の態度にもあきらめずに夫とともに成長しようとするダニーの我慢強さが身につくものだろうかということ。かつて日本の女性たちの結婚観に近い感じがしますし,アメリカ人女性には想像できない存在を作者が作りだしたというところが本作のすごさだと思います。訳本の表紙が英国版の表紙とは異なります。ディザイアのシリーズでは今月の4作すべてが日本語版は別のデザインですが,本作については英国版の方が圧倒的に素敵なデザインですね。本作の雰囲気がよくでていますし,名前はわかりませんが女性のモデルさんの素晴らしいプロポーションと横顔にも,そして男性モデルの若々しくすっきりした魅力にも惹かれます。文中,薔薇と石榴の違いがちょっとわかりにくかったですが・・・。薔薇の花言葉は,情熱、愛情・あなたを愛します、貞節、美、模範的 ・熱烈な恋、私を射止めて。石榴の花言葉は優美、円熟した優美、優雅な美しさ。レオが求めたのはまさしく薔薇の貞節,美,模範的であり,ダニーが身に付けたのは円熟した優美な美しさ,そしてダニーがレオに求めるようになったのは,情熱,愛情,熱烈な恋だったのでしょう。
シリーズ次作では,ダニーがエリースの結婚相談所でレッスンをするジュリエットがヒロインになるようです。失恋の痛手を克服してジュリエットがどんな幸せをつかんでいくのでしょうか。そして3作目でもエリーズが仲介した二人のロマンスが登場するようです。


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愛を夢見たシンデレラ [キャット・キャントレル]

SHALOCKMEMO829
愛を夢見たシンデレラ The Things She Says 2013」
キャット・キャントレル 大田朋子





ヴィクトリア・ジェーン・ルイス,普段はVJと呼ばれている片田舎のウエイトレス。たまたま郊外の道路で道に迷っている男性に声を掛けたところから二人の物語は始まります。男性は映画監督クリスチャン・デメトリアス。ギリシア出身のカリスマチックな映画監督で,近々女優のカイラ・モンローと婚約することがマスコミで報じられています。始めVJはこの男性が有名人であることに気づきませんが,勤務先の店にクリスを連れて行ったとき,店にいた客から指摘されて気づくのでした。VJは5人兄妹の唯一の娘で,母亡き後父の面倒を見ながら,家事とウエイトレスの仕事と兄の経営する自動車修理工場の仕事の3役を一人でこなしていたのでした。この田舎町から逃れて,ダラスへ行ってキャリアを築きたいというのが夢で少しずつその夢に近づいていた時だったのですが,父がVJがこつこつ貯めていたお金をすべてトラックの購入に充ててしまったことを知り,クリスに頼んでダラスに連れて行ってもらうことを決意します。9時間のダラスへ向かう車中で,自分の殻に閉じこもっているクリスにVJは愛の6段階の講義をしながら,途中いくつかの場所に立ち寄り二人の関係をぎりぎりのところまで近づけていくのでした。ダラスのホテルに着いたときには二人の気持ちはすっかり高まっていて,すぐに関係を持ちます。しかし,現実はクリスとカイラの婚約に戻ってしまいます。短い関係になることを覚悟しながらもVJはクリスを愛してしまったことを後悔はしませんでした。しかし,カイラと会ったパーティで,VJはカイラの計略にまんまと嵌まり,二人の関係をマスコミにかぎつけられてしまいます。本当はカイラとクリスの婚約は映画撮影のための契約にすぎないということを明かしてしまったVJは,クリスがロスにすぐ立たなければならないことを知り・・・。そんな時,父の緊急入院を知ったVJは急ぎ故郷に戻ります。病院ですっかり弱っている父が手を握ってくれたことで,VJは父を許し,人生の新たな出発をしようと思います。さて,クリスはVJの元へ戻ってくるのでしょうか。エピローグではVJの意外な活躍と映画制作のその後が語られ,ロマンス小説らしいハッピーエンドに向かっていきます。最後のしゃれた一文が読者を思わずニヤリとさせる爽やかな作品です。


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仮面の下の大富豪 [キャット・キャントレル]

SHALOCKMEMO826
仮面の下の大富豪 Pregnant by Morning 2014」
キャット・キャントレル 八坂よしみ





「ルールはなし,期待もなし,決断するのは本人のみ。」ベネチアの仮装パーティで出逢ったエバンジェリンとマシュー。正体を明かさないまま互いの抱えている深い悩みを忘れるように関係をもった二人ですが,言葉で表さなくても互いに相手の考えていることを理解して話が出来ることに驚きます。これほど相性のいい相手はいない。妻を失って家族や愛を失ってしまったマシュー,手術の失敗で声帯が傷つき歌手としての生命線を失ってしまったエバンジェリン(エバ)。二人は互いの魅力に溺れてほとんど家から出ずに関係を続けていきます。しかし,エバンジェリンが妊娠に気づき,それをマシューに告げた時から二人の考えの違いがハッキリしてきます。すべてを計画通りに進めていく人生を送ってきたマシューがベネチアではマットと呼ばれてルールのない生活を送ってこれたのはエバンジェリンのおかげでした。しかし,子供が生まれるということがマットを今後のことをあれこれと計画していく以前のマシューに戻してしまったのです。結婚しようというマットがまるで別人になったかのように感じたエバンジェリンは,マットが自分を愛していないことに気づき,結婚話を断ります。そしてダラスへ行こうというマシューの誘いをきっぱりと断るのでした。
関連作の「偽装結婚のルール」に登場するマシューの弟ルーカスと妻のシアがダラスに戻ったマシューの後押しをします。そしてホイーラー兄弟の素敵な母親フランは,考え直したエバンジェリンがダラスを訪れたとき一目でこの女性がマシューを人間らしく変えてくれることに気づき,二人の後押しをするのでした。「エバンジェリンが僕の密かな望みを引き出し,マシューという名の仮面をはぎ取ってくれたおかげで,その名前の陰に隠れた本当の自分を発見できたのだ。」ことに気づき,すれ違いでモンテカルロを訪れたマシューは仕方なくベネチアに立ち寄るのですが,そこにいたのは・・・。前作のヒロイン,シアも素敵な女性でしたが,本作のヒロイン,エバンジェリンもすごく素敵な女性です。完璧な容姿,つぶれた声が反ってハスキーな響きになり,8桁の財産を持つ有名人。こんな女性を前にしてはマシューだけでなく,ホイーラー家のみんなが好きにならずにいられないですよね。エバンジェリンには異母妹のリアがいて,声を失ったエバの代わりにエバの作った歌を歌うことになります。リアのロマンスも読みたいものです。


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偽装結婚のルール [キャット・キャントレル]

SHALOCKMEMO795
偽装結婚のルール Marriage with Benifits 2013」
キャット・キャントレル 氏家真智子





祖父の遺産を受け取る条件は,とても変わったものだった。母の意志を継ぎ,女性のための保護シェルターを運営し,さらに拡張するためには,どうしてもその遺産を手に入れる必要がある。25歳の彼女が,35歳になるか,または結婚してから夫に離婚を申し立てられるまでは信託財産になっていて受け取れないという条件を満たすため,これから10年間待つことはできない。それならば,半年間の契約結婚をして,相手に離婚を申し立ててもらうしかない。そう決意したダルシアナ・アエンデ(シア)は,リサーチの結果プレイボーイという噂の高いルーカス・ホイーラーに目星をつけます。ルーカスの母フラン・ホイーラーの誕生日パーティへの参加許可を手に入れたシアは,なんとかパーティに潜り込み,ルーカスに話しかけるきっかけをつかみます。「私と偽装結婚して欲しい」という申し出にルーカスは理由を尋ねますが,ルーカスの自ら招いた醜聞のため,一族の経営する不動産業が少し状況が悪くなっていたことを指摘され,結婚すればそのスキャンダルも自然と消えていくだろうというシアの提案にも,うなずけるものがあったため,この提案を受け入れることにするのです。偽装結婚のルールを互いに出し合い,なんとか双方で承諾した二人ですが,実はこの時,ルーカスもシアも互いの魅力に惹かれ初めて行くのです。
半年間の偽装結婚のつもりでしたが,互いに惹かれ始めた二人は間もなく深い関係になっていきます。しかしルーカスから「愛している」のことばが聞かれないため,シアはついに別れを決意して新居を去るのでした。この互いの気持ちのすれ違いが,ロマンス小説らしい,女性の視点から描かれ,去ってしまったシアを想う気持ちが募るルーカスの心の動きがとてもよく表現されています。そして,元カノのラナから,自分勝手だったと告白されたルーカスは,再びシアの元を訪れ,自分の気持ちを告白するのでした。
愛する妻を失って失意のあまり会社を去って行ったルーカスの兄マシューや,慈愛に満ちたルーカスの母フランの存在が,次作への伏線になっているように思われます。


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