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駆け引きは億万長者と [ジェニファー・ルイス]

SHALOCKMEMO1117
駆け引きは億万長者と A High Stakes Seduction 2014」
ジェニファー・ルイス 秋庭葉瑠





 3カ月ぶりのジェニファー・ルイスです。今回はネイティブ・アメリカン(すっかりこの言葉も日本で定着してきたように思いますが・・・)のカジノに税務調査員として派遣された会計士コンスタンス・アレンがヒロインです。あまり馴染みのないマサチューセッツ州の居留地でホテルやカジノを経営するジョン・フェアウェザーがヒーローとなります。「ネイティブ・アメリカン管理局(BIA)」というのがあるんですね。おもに西部や西海岸にしか居留地がないと思いこんでいましたが,このマサチューセッツに住むニセコット族のネイティブ・アメリカンたちは,かつて最大だった土地が少しずつ政府に奪い去られた歴史に対して,カジノの経営で利益を上げ,その土地を少しずつ買い戻しているのでした。そして他の人々も受け入れ居留地としての人口を取り戻そうとしているのです。その中心にいるのがジョン・フェアウェザーでした。wikiをちょっと調べてみたら,「BIA本部ビル占拠抗議」というコラムがありました。1972年の11月初旬に権利団体「アメリカインディアン運動」が部族の生存権と条約遵守を訴えてワシントンDCの内務省BIA( Bureau of Indian Affairs )本部ビルを占拠した事件ということです。そこには,「1950年代初頭から、アメリカ合衆国政府はインディアン諸部族の解消方針を強め、約10年間で100を超えるインディアン部族が連邦認定を取り消され、「絶滅」したことにされていた。合衆国が1956年に施行した「インディアン移住法」は、保留地から都市部へインディアンを放逐させるものであり、この法によって多くのインディアン部族はその共同体を破壊された。限界集落化されたインディアン部族に対し、合衆国は連邦条約で保証した権利一切を剥奪して、領土である保留地の保留を解消し、これを没収した。1960年代には、多くのインディアンたちが都市部のスラムに追いやられ、路頭に迷っていた。」という記述もありました。初めは居留地においやり,後にここから追い出すことで部族としてのまとまりそのものをなくそうと画策したことがわかります。この歴史に対抗するためにジョンたちは部族としての歴史をまとめ,土地の回復に努めてきたのでした。そこにコンスタンスを派遣したBIAの意図は,なんらかの不正を見つけ,この居留地からニセコット族を追い出そうとする動きであることは間違いありません。
 そんな民族問題を背景にした本作ですが,ロマンス部分は,会ったその瞬間からジョンに惹かれていくコンスタンスの,仕事上の立場と愛に葛藤する姿と,これまで目立たずに静かに過ごしてきた自分の中に,奔放な女性的部分が隠されていることをジョンに見抜かれ,次第にその魅力に逆らえなくなっていく,素直でしかも仕事とプライベートはきっちり分けようとする潔さが描かれています。まさにNice_Heiroineです。そしてジョンの近親者の瑕疵を見つけたときに迷いながらも,それをきちんとBIAに報告するという仕事を成し遂げます。それはジョンとの別れを意味する行動でした。眼鏡をかけ,数字に没頭する冴えない女性という姿で現れるコンスタンスですが,ジョンは彼女の高潔で隠された情熱を持つ女性であることを見抜き,すっかり彼女の虜になります。邦訳版の表紙のモデルさんはちょっと雰囲気には合わないですね。本国Desire版のモデルさんはまさにBestImageです。そして我が娘を心配するコンスタンスの両親がジョンとの関係を非難しながらも実際にジョンに出会って,「娘に敬意と良識を持って結婚してくれること」を認めていく展開も爽やかで,つい頬が緩んでしまいそうになる好著です。


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砂漠で見つけた至上の愛 [ジェニファー・ルイス]

SHALOCKMEMO1035
砂漠で見つけた至上の愛 Her Desert Knight( Al Mansur Brothers 3 ) 2014」
ジェニファー・ルイス すなみ 翔





“Al Mansur Brothers”シリーズの第3弾です。第2弾からちょっと時間が経ってからの翻訳なのと第1弾が未読だったので,合わせて読みました。さて,本作のヒーローはアル・マンスール家の末っ子クエーサーです。活動的でちょっとお茶目,いかにも末っ子らしい性格の彼ですが,兄たちと同様父親の愛を受けられず,しかも母親が亡くなったときはまだ幼かったので,どちらの愛も受けた記憶がないという成長をします。つまり生涯の伴侶となる人と出会っても愛する仕方を知らないということになります。一方ヒロインは伝統的なオマーンの家庭で育ち,長女ではありますが父親からはアラブの女性としての慎みを強く求められて育ち,才能を生かしてアメリカに渡って仕事をしていましたが,優しくされた男性と憧れの結婚をして父親の圧迫から逃れられたと思いましたが,夫もまた彼女を支配したがったため仕事を辞め,結局は結婚に失敗して父親の元に帰らざるを得なくなって失意の日々を送るという現在を過ごしていたのでした。そんなダニヤ(ダニー)の慰めは本を読むこと。美術史を専攻し,古い文化に触れることを好もしく思う女性です。そんな二人の出会いは古書店でした。ダニーが欲しいと思った本を先にクエーサーが買ってしまい,それがきっかけで声を掛けられた二人はカフェで話をしますが,出戻りの彼女にとっては独身のハンサムな男性であるクエーサーのことを考えることすら許されないことと思っているのです。そんなダニーにクエーサーは惹かれていきます。長兄サリムと妻シーリアが開発した古代の町を再現した場所サーリーヤを見せたいと思ったクエーサーですが,ダニーを説得するのには時間がかかりました。バツイチであることも知り,サリムの開発したいと思っている海辺の場所をダニーの父親ムハンマド・ハッサンがアル・マンスール家に騙されて奪われたと主張して裁判沙汰になっているのも知り,それでもダニーに惹かれていく自分に驚きを隠せません。しかしアル・マンスール家特有の頑固さを受け継いでいるクエーサーは自分の全財産を投げ打ってもダニーを手に入れようと奮闘します。そして二人でニューヨークに一緒に行くことをダニーに承諾させたと思った時に,以前付き合っていたローラ・ラーソンがやってきてしまいます。クエーサーの腕にぶら下がり媚びを売るローラを見て,前夫と同じようにクエーサーの言葉を信じて身を投げ出してしまった自分に嫌気がさし,ダニーは家に閉じこもってしまうのでした。女性の心の機微を察してあげられないクエーサーは義兄たち,義姉たちからアドヴァイスを受け,ダニー獲得作戦を練り直します。ハッサン家とアル・マンスール家の確執を解決し,いよいよダニーの元へ・・・。さてどうなるのでしょうか。前作前前作で登場してきたアル・マンスール家の長男サリムとシーリア夫妻,その子どもたちのキーラとバジア,次兄エランとサラ夫妻,その子どもたちのハンナとベン,一族が勢揃いし大団円を迎えます。妙に捻ったところもなく,素直に読み進められるシリーズです。美男美女,幸せな結末,信頼し合う夫婦と子どもたちなどロマンスの全部が詰め込まれた好著です。


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ボスは誘惑禁止 [ジェニファー・ルイス]

SHALOCKMEMO1034
ボスは誘惑禁止 The Boss's Demand
( Al Mansur Brothers 1 ) 2007」
ジェニファー・ルイス さとう史緒





「彼女には辞めてもらう」という一文で始まる本作は,中東オマーンの族長一家の3兄弟のシリーズ“Al Mansur Brothers”の1作です。次男エランは石油会社「アル・マンス・アソシエイツ」をアメリカで成功させた富豪。その秘書に雇われたサラ・ダリーが本作のヒロインです。努力の結果,経営学と地理学を学び,石油関連会社のビジネスパーソンとして秘書業務よりさらに上のポジションを得たいと考えている才女です。家族のことで高収入を得られるこの会社に入り込むことに成功した彼女ですが,社長のエランは白髪の生えた地味な年配の秘書を想定していたのでした。25歳の彼女が秘書になると,余計なことに気を遣わなければならなくなると考えていたためでした。しかしいったん人事部が雇った彼女をクビにしてしまうと後で訴訟だなんだとまた手間がかかると思い,とにかく1カ月試用期間を設けて,彼女にどんどん仕事を与え,自ら辞表を出すことを企てたのでした。重要な案件を彼女に任せ,短期間で無理な仕事を押しつけたりしますが,1週間で彼女は思いがけない結果を出したのでした。相手先の経営者からも彼女を是非担当者にして欲しいと望まれるほど,その仕事ぶりは見事なものでした。さらに秘書業務として無味乾燥なエランのオフィスに,観葉植物や絵画など人間的なものをいろいろと持ち込み,快適なオフィスになるように気を遣うことすらしてくれます。そして,「涼しげな翡翠色に少しだけ金色が混じった」彼女に瞳を見たとたん,エランは彼女に惹かれていることに気付くのでした。しかし秘書と関係を持つことは後々面倒なことになると分かっています。サラもまた,独善的で過度な要求をしてくるエランに初めは腹を立てていましたが,周囲の女性が必ず振り返らずにいられなくなる彼の魅力に負けてしまいそうになる自分を戒めながら早く試用期間が終わり,正式採用されるために自分を鼓舞しなければならないのでした。たくさんの家族に囲まれて家族の世話をしながら育ってきたサラと,父親に邪魔にされ少年のころに寄宿学校に入れられて成長し,自分の才覚だけでのし上がってきたため家族の温かさを知らずに育ったエランとの間には共通点が見つからなかったのですが,運命の相手として二人は関係をもつようになっていきます。そして,サラは体調不良で訪れた病院で妊娠を告げられます。勿論開いてはエラン。シングルマザーの姉が不幸に陥ったこともあり,姉にはすぐに相談します。しかし結婚という選択肢はエランにはないことを公言されていたために,この事実をエランに告げることが良作かどうかは大いに迷うことになります。サラの妊娠が分かったときもエランは「僕は人を愛する能力を失っている。だが彼女の助けを借りればきっと取り戻せるに違いない。」と気付き,全身全霊でサラを愛することを決意するのでした。いったん決意するとアル・マンスール家の男たちはとことん前に進もうとするというのは既読の長男サリムの例でも明らかです。何かにつけてサラの面倒を見ようとするエラン。そしてついにサラは自分のキャリアを尊重しつつ愛してくれるというエランの言葉を信じることにするのでした。
明朗で屈託がなく,しかも実力を備えているにもかかわらず女性らしさを失わないサラは,エランにとってまさに運命の人なのでした。


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砂上の恋 [ジェニファー・ルイス]

SHALOCKMEMO1033
砂上の恋 The Desert Prince
Mon of the Month 81)( Al Mansur Brothers 2 ) 2010」
ジェニファー・ルイス 高橋美友紀





オマーンのアル・マンスール家の3兄弟のシリーズ・ロマンスの第2弾です。邦訳ではシリーズ化されていないため出版年もちょっと離れておりますが,今月第3弾の「砂漠で見つけた至上の愛」が発売されたので,3冊まとめて読むことにしました。第1作の「ボスは誘惑禁止」よりも第2弾の本作の方が先に翻訳されいたので,とりあえず本作を先に読むことにしました。つづけて「ボスは・・・」「砂漠で・・・」を読むつもりです。
原題が“The Desert Prince”と味も素っ気もない題ですので,同じタイトルの作品が沢山あるだろうと思います。Fantastic Fiction で検索をかけると類似の作品名が33冊もヒットしてしまいます。全く同じものもリアン・バンクスやシャロン・ケンドリックにありますので,もう少し何か本作を特徴づけるタイトルを思いつかなかったのかと思います。さて,長男のサリム・アル・マンスールは長男らしく一家のことを最優先にし,自分の結婚も政略,いやお見合い結婚にするつもりでいました。大学時代をアメリカで過ごし,そこで付き合っていたシーリア・デイビッドソンには別れも告げずにオマーンに帰ってきてしまいます。数年後,二人は再会し,一夜を共にしますが,それでも二人の付き合いが続くことはなく,それぞれアメリカとオマーンで暮らしていました。ホテルチェーンのオーナーとなったサリムは,オマーンの砂漠の中の遺跡の町を再興し,ホテルを作る計画をもち,その景観設計士としてシーリアを雇うことにします。インターネットでもシーリアが世界各地で景観設計士として活躍している様子が紹介されており,今回の事業にはぴったりだと判断したからです。シーリアは4年前にサリムと再会して一夜を共にしたとき一人娘キーラを身ごもり,両親の家でキーラとともに暮らしていました。サリムには娘のことは一切知らせていません。今回依頼があったとき,断ろうかとも思いましたが,その理由を尋ねられても答えに窮することが予想されたため,仕事として割り切ることにしました。万一娘のことが分かってしまっても,サリムには父親としてこのことを知るべきだと両親や親友の勧めもあったからです。4年ぶりに会ったサリムはさらに男ぶりが上がり,トキメキを押さえることが出来ないシーリアですが,何度か口に出しかけはしたもののなかなか娘の存在を切り出すきっかけがつかめませんでした。サリムの弟エランはすでに結婚しており(エランの物語は「ボスは誘惑禁止」で・・・)妻のサラがシーリアに会いに来たとき,たまたま娘キーラの写真を手にしたのを目ざとく見つけ,すぐにサリムの娘であることに気付いてしまいます。結婚に一度失敗しているサリムは良家の子女ナビーラとの婚約を考えています。シーリアとの結婚はあり得ないと二人とも分かっていますが,ナビーラはシーリアに対抗意識を燃やしている様子。そしてついにキーラの存在が知られてしまいます。サリムは始め戸惑い,さらにサラのアドヴァイスでキーラの養育について覚え書きを交わすようにサリムに要求し,サリムもそれに従わざるを得ませんでした。キーラを連れてオマーンを再び訪れたシーリア。キーラはすぐにサリムと打ち解け,エランとサラの二人の子どもたちともすぐに仲良くなります。サリムはナビーラとの婚約を破棄しシーリアにプロポーズするのですが・・・。愛のない結婚,子供の養育のためだけの結婚には納得できないとシーリアはプロポーズを断り,急いでアメリカに帰ろうとします。シーリアに去られようとしたとき,サリムは大学時代からすでに二度シーリアを裏切っていて,この機会を逃せば一生シーリアともキーラとも会えなくなるかもしれないという怖れを抱き・・・・。最後はハッピーエンドに終わるのですが,互いに愛し合いながら周囲の状況がそれを妨げ,それだけいっそう愛が深まるという,ロマンス小説の王道を行く作品です。エピローグはとてもしゃれた終わりかたをしていて,思わず笑顔がこぼれてしまう作品です。


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富豪との許されざる恋 [ジェニファー・ルイス]

SHALOCKMEMO947
富豪との許されざる恋 The Heir's Scandalous Affair 2009」
ジェニファー・ルイス 中野 恵





訳本表紙のモデルは,ちょっとイメージ違いという感じがします。本作のヒロイン,サマンサ・ハードキャッスルは31歳でとびきりの美女と言うよりは少し落ち着いた感じで上品な大人の女性という設定だからです。その点ではシルエット・ディザイア版の表紙のブロンドを長く垂らしたモデルの方が,設定としては近い感じがします。ただこちらはちょっと近寄りがたい感じでもあるので100%合っているとも言いがたいのですが。
さて,「ボスとの秘密の関係(SHALOCKMEMO800)」「甘美な交換条件(SHALOCKMEMO873)」と続いてきたハードキャッスル家の異母兄弟たちの物語の第3弾になる本作ですが,故タラント・ハードキャッスル氏の後妻で異母兄弟たちの行方を追って家族関係を復活させてきたサマンサが最後の一人ルイス・デュラックと出会うためにニューオーリンズを訪れるところから始まります。いまだタラントとの思い出に浸りながら31歳という年齢で次の人生をどのように進めていったらいいかという悩みを抱えながら捜索に疲れて路地裏に迷い込んだところ一軒のバーに誘われて入ってしまい,そこのオーナーで魅力的な男性と出会います。それが目指す相手ルイスであることは知らずに一夜を共にしてしまうのでした。ここからのトラブルは想像に難くありません。ニューオーリンズのねっとりと肌に絡みつくような熱く雨がちな熱帯の雰囲気と,バイユーと呼ばれる湿地帯を背景とした独特の自然の雰囲気が文章から伝わってきます。そしてニューヨークに戻ったサマンサを待っていたのは1枚の写真を中心としたスキャンダラスな記事とマスコミ攻勢でした。せっかく再会した異母兄弟たちと一人娘のフィオナからもまさか・・・という感じで迎えられてしまい,ルイスとの関係を絶とうとするサマンサ。そしてルイスに言われた絵を描くという作業に没頭するサマンサ。教会で開かれたサマンサの個展にはあのバイユーの風景画が最も人気が高く,「わたしが描いたのはごく普通の絵,時代遅れの具象画よ」という意識のサマンサに,ルイスの「真実の美と結びつかなければ,様式には何の意味もない。様式と美を結びつける。それが君の成し遂げたことだ。」と励ます言葉は蓋し名言だと思わせるものがあります。そしてマスコミが退去して自宅に押しかける中危険を冒して裏側から入ってきたルイスは再びサマンサとの交流を復活させるのでした。義理の息子との愛という難しい選択を迫られたサマンサですが,占い師の言葉をどんな風に解釈するかということで自分の気持ちに整理を付けていきます。2009年に書かれた三部作「ハードキャッスルの子供たち」ですが,一人娘フィオナのロマンスが描かれないのがちょっと残念です。三部作の中では第1作のヒロイン,ベラが最高です。


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プリンスにせまられて [ジェニファー・ルイス]

SHALOCKMEMO877
プリンスにせまられて Affairs of State
禁じられた恋のゆくえ 6) 2013」
ジェニファー・ルイス 秋庭葉瑠





イギリスの王子とアメリカ大統領の隠し子というリアルなヒーロー,ヒロインによるロマンスです。ヒーローはイギリスの王子サイモン・ワース。自由な物事の考え方をする魅力的な王子様がワシントンで出会った美女。それは,最近大統領の娘で大統領自身がその存在を知らなかったイベント・プランナー,アリエラ・ウィンスロップでした。アリエラの母エリナーは高校3年生で同級生だったテッド・モローとの間に娘を設けはしたものの,周囲の非難を怖れ,産まれて顔を見ないうちに娘を養子に出して自らはアイルランドに身を隠します。長じて養父母に大切に育てられたアリエラは養父母を亡くし,イベント企画会社「DCアフェアーズ」を共同経営し,自活しながらそれなりに幸せな人生を送っていましたが,マスコミに大統領となったテッドの娘であることがリークされたばかりでした。そしてワシントンで開かれた病院の寄付集めのパーティでサイモンと出会います。大統領はエリナーが忘れられず,独身を通していましたが,娘がいたことも知りませんでした。テレビの番組でアリエラとの対談で対面を果たす計画が進行中でした。サイモンに促され,実の父母との対面を決意したアリエラ。イギリス王室の中に自分の居場所はないだろうと,サイモンとの将来は考えてもいませんでしたが,互いに気安く,そして素晴らしく配慮をしてくれるサイモンに惹かれる思いは次第に募ります。そんな時イギリスでの大規模なイベントを任せられたアリエラはイギリスに渡り,母エリナーとの再会を果たします。互いのつながりを感じた二人はすぐに打ち解けます。そして王室のポロ大会に招かれ女王との対面,サイモンの家族との対面を果たしますが,王子がアメリカ女性と結婚することには断固反対するサイモンの伯父の言葉や,やんわりとアメリカに帰ることをほのめかす女王の言葉に,やはりサイモンとの将来はあきらめようとします。盛り上がる二人の関係の結果,体調の変化に気づくアリエラ。妊娠の事実を知ったアリエラはエリナーに相談し,泣き崩れるのでした。アメリカに戻ったアリエラはエリナーを連れ帰り,大統領との対談番組の中で3人の感動的な出会いの場が設けられました。親子の絆を確認し合った3人。しかも大統領と母エリナーの間には30年前の情熱が再燃したのでした。
再びアメリカを訪れたサイモンにアリエラは妊娠の事実を告げます。サイモンは悦び,結婚を申し込むのですが,アリエラはイギリスでのサイモンの家族たちの態度から自分が歓迎されないことを理由に承諾の返事をためらうのでした。そこで,サイモンは一計を案じます。二人で食事に行ったところで,思いがけない人物が自分を待っていたのでした。
現実のイギリス王室の人々とはちょっと異なりますが,ちょっとずつその姿が見え隠れし,フィクションとは言え,読む方もドキドキすることもあります。親に捨てられたとは言え,養父母のもとですくすく育ち,立派な女性に成長した28歳のアリエラがとても魅力的なヒロインとして,そして周囲の人たちとの暖かい関係がほんわかした雰囲気を作っている好著です。


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甘美な交換条件 [ジェニファー・ルイス]

SHALOCKMEMO873
甘美な交換条件 In the Argentine's Bed 2009」
ジェニファー・ルイス 藤峰みちか





ミニシリーズ「Hardcastle Progeny」の第2弾。大富豪タラント・ハードキャッスルの失われた息子捜しで二人目の息子がアルゼンチンにいるという情報を頼りに,秘書のスザンナ・クラークは息子候補者のDNAを持ち帰るように厳命される。スザンナの両親は宣教師で,幼い頃から両親とともにフィリピンを皮切りに世界各地を転々とし,現在でもワインの買い付けなどで家にいる時間よりもジェット機の中にいる時間の方が多いような旅に明け暮れる生活をしています。スザンナが訪れたアルゼンチンのワイナリーでは,息子候補のアマード・アルバレスが父親とともに牧畜業とワイン製造業を営んでおり,ワイナリーは実質的にアマードが事業を興し,成功させたという経緯がありました。セクシーで働く男の象徴のような存在のアマード。そのアマードはDNAの提供を承諾しますが,その条件として一晩アマードの家に泊まるという条件で。アマードは父イグナチオと母クララが自分の両親であることを全く疑っておらず,タラント・ハードキャッスルが実の父であるかもしれないというスザンナの話を全く信じていませんでした。そして,後日DNAの採取にも協力的だったのです。ニューヨークに戻ったスザンナが数日後にタラントに呼ばれます。そして,やはりアマードがタラントの実の息子であることが判明した,ついては,会いたいことをアマードに伝えるようにと,2度目のアルゼンチン行きを命じるのでした。
自分のワイナリーとぶどうを育てるのに適した広大な地所「ティエラ・デ・オーロ」に誇りを持ち,養父母を実の父母として生きてきたアマードに,実父の存在を伝えることはスザンナにとっても大変なストレスでしたが,命じられれば行かなければならないのが雇われものの辛さ。しかしスザンナはアマードにもう一度会いたいという気持ちを抑えられず,アルゼンチンに向かうのでした。アマードはすでに事実を告げられており,実の父がタラントであること,さらに実の母が実の姉と思っていた人であったことを知らされていました。もう一度会いたいという気持ちはアマードも同じでしたが,自分が信じていた自分の家族が偽の家族であったことのショックは隠しきれず,養父や養母とは関係が悪化していました。二人の間の体の相性は抜群で,しかも一個所に留まった生活を送ったことのないスザンナにとって「ティエラ・デ・オーロ」はまさに夢のような土地ではありながら,ここで二人で生活することは考えられものでしたが,アマードに惹かれる気持ちはさらに高まるのでした。3度目にはアマードのワイナリーで生産するすべてのワインを言い値で買い取るようにというタラントの命令でアルゼンチンを訪れたスザンナ。しかし,「ティエラ・デ・オーロ」で生きている人々の暮らしや大企業に買収されるような今回の話はアマードの考えているワイン造りとは異なると感じたスザンナは,会社に辞表を出すという思い切った行動に出るのです。そしてアマードが養父母との生活を取り戻せるように積極的に働きかけるのでした。
エピローグでは前作で登場したタラントのもう一人の息子ドミニク夫婦とタラントの3番目の妻で現在の妻であるサマンサ,そしてタラント自身も加わり,「ティエラ・デ・オーロ」での祝祭が繰り広げられます。スザンナは終の棲家を見つけられたのでしょうか。7カ国語を自由に操り会長の厚い信頼を受けていたスザンナがその才能ばかりではなく運にも恵まれ自分の「家」を見つけていく本作。読後にほんのり温かい気持ちになれる作品です。


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ボスとの秘密の関係 [ジェニファー・ルイス]

SHALOCKMEMO800
ボスとの秘密の関係 Millionaire's Secret Seduction 2009」
ジェニファー・ルイス 高山 恵





SHALOCKMEMOの800号となる記念の作品となりました。10年間で800冊,平均して年間80冊のロマンス小説を読んできた勘定になります。もちろんその中には邦人作家の作品やミステリ,SFとの境界が不明確なものもありましたので,広義の意味でロマンスを描いたものと考えればいいかなと思っています。当初はノーラ・ロバーツやサンドラ・ブラウン,リンダ・ハワード,ジェイン・アン・クレンツ,ダイアナ・パーマーなどなど,大御所の作品を楽しんできました。その後本格的に毎月の新刊文庫を手当たり次第に集め,収集狂になった観がありましたが,東日本大震災を挟んで,収集量の激減,読書量の減少となり,震災後はKINDLEを中心に電子書籍での読書が多くなったため,ハーレクイン社の作品を中心にした読書に偏っている状況です。しかし,特にここ数ヶ月は読書量も増し,この11月は月間最多となる18冊をすでに読了しました。もっとも,156ページものがほとんどだったのでページ数はそれほど多くはありませんでしたが・・・。
さて,本作です。ナノテクノロジーを活用した画期的化粧品の開発部門で研究を牽引しているベラ・アンドリュース(ベラ・ソロス=アンドリュースは母の姓)は,社の会長タラントが,自分の父の研究成果を安い値段で奪い取り,それを苦にした父が亡くなってしまいます。すると母も精神的に参ってしまって入院し唯一ベラが父のことを話したときだけ正気を取り戻すというありさまでした。ベラは父の研究成果を適正に認めてもらうための裁判を起こす資料を集めるため,ハードキャッスル社に入社したのでした。そこに,タラントの愛人の息子だというドミニクがやってきます。一目見たときからベラはドミニクに惹かれますが,ドミニクもまた,白衣の下に隠れたベラの美しさとモデル体型ではない起伏に富んだ身体に惹かれます。そして,ベラは自分の秘密である入社の動機をドミニクに話してしまうのでした。ドミニクもまた父である会長から息子として認知されていないことから,独力で事業に成功し富豪となっていたのですが,会長が不治の病で余命数ヶ月という宣告を受け,自分の財産を受け継ぎ,会社を切り盛りしていく息子として,ドミニクを認知しようとしていたのでした。ベラに告げられた秘密を,いともあっさりと父であるハードキャッスルに話してしまうドミニク。この裏切りをベラは知りません。そして,母の入院先から看護婦付きで退院するための費用を負担してくれたドミニクに感謝の気持ちすら持つのでした。
このドミニクの裏切り的行為は読者としては許せませんね。しかも後にそのことを知ったベラから非難されたドミニクは,会社のため,そして父のためだと平気で言ってしまうのです。父親譲りの強引さ,身勝手さというのが終盤まで繰り返されます。しかし,そんなドミニクに惹かれてしまう,求められることを期待してしまうベラに,愛らしさを感じてしまうので,すっかり作者の罠にはまった感じでもあります。ドミニクの裏切りを知った翌朝の新聞に二人の関係がリークされ,物語は急展開していくのですが,この情報を新聞社にリークしたのが誰か,作者は思わせぶりに会長タラントの三番目の妻サマンサの姿をちらつかせるのですが,それは次作以降に明らかになっていくのかもしれません。ドミニクの存在感の強さもさることながら,ベラと二人で交わすしゃれた冗談の応酬も本作の魅力の一つです。


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