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ブラックメイル [ペニー・ジョーダン]

SHALOCKMEMO1452
ブラックメイル Blackmail 1986」
ペニー・ジョーダン 中原もえ




HQB-804
17.05/¥670/208p

C-333
96.11/¥640/156p
R-0371
85.02/¥500/156p


 原題は「恐喝」
 ヒロイン:リー・レイヴァン(22歳)/イギリス全土にチェーン店をもつ高級スーパーマーケットのワイン部門の主任バイヤーのアシスタント,婚約者は大銀行家の御曹子,家族はオーストラリア在住,ジルは初恋の人/肩に揺れるつややかな赤褐色の髪,カールした長いまつげ,グリーンの目,整った口元,すらりとした長身/
 ヒーロー:ジル・フレブール・ド・ショ-ヴィニー(31歳)/ワイン醸造主,伯爵,リーの母親とジルの母親は同窓生/黒い髪,額の広い顔/
 互いの母親が学校の同窓生で十代の頃に初恋の相手であったジルの元を訪れることになったリー。6年前のあの頃の気持ちがまだ残っていたなんて!? 再燃する憧れから大人の気持ちへの変化に戸惑いながら,婚約者よりも再会した初恋の人のほうに気持ちが傾いていくキャリア・レディの葛藤を美しいフランスのワイナリーを舞台に繰り広げられるドラマ仕立てのロマンスです。自分をしつこく追いかけてくる女性を諦めさせるためにジルに突然婚約したという芝居を振られたリーですが,驚いている間にあれよあれよと結婚が決まってしまい・・・。でも断れない理由もあったのです。自分の名誉を著しく傷つけてしまう1枚のラブレター。それは男性に縁のなかった自分のことを心配してくれた親友が書いたものだったのですが,その扇情的な内容が今になって自分を傷つけるものになるとは思いも寄りませんでした。しかもそれをジルがもっているとは・・・。それをネタに便宜的な結婚を迫られてしまいジルの申し出を断ることができなくなったのでした。思い起こせばリーはこれまでの人生の中でいくつかのタイミングの悪さで人から誤解を受け,苦労してきたのですが,そこからやっと立ち直りつつあったのです。そして人畜無害の婚約者ドリューとの交際も清いまま推移してきました。ジルへの思いはそれとは真逆の強引さや荒々しさに溢れたものだったのですが,逆にそれが魅力となり,ドリューの魅力のなさにも気づいていくことになってしまいます。ワインの買い付けのために仕事をしている数日間ジルのシャトーで滞在することになりますが,シャトーの家政婦はなにかとリーを目の敵のように扱うのが気になります。後にこの家政婦はとんでもないことをしでかすのです。さて翌々日。リーはパリでジルと結婚式を挙げるという超スピード展開。一方ジルはあの扇情的な手紙をリーが書いたものと誤解し,リーを身持ちの悪い女性とすっかり勘違いしており,そんな女性にふさわしい扱いをと完全にリーを見下しています。帰宅してリーに投げた言葉により思いもかけずに頬に平手を受けたジルは,逆に冷静になり,リーの本当の姿はあの手紙とは違うのでは? と思い始めるようになります。数日後にはリーもジルとのふれあいに違和感を感じなくなり,そして嵐の夜二人は自然の中で結ばれます。「私はジルを愛している」と気づいたリーは,あの夜ジルとの愛の結晶が授かったことを知ります。しかし自分がいかにジルを愛していてもジルは私を愛してはくれない。あくまで期間限定の便宜的結婚という条件は変わっていないのです。「愛される希望は持てないにしろ,時とともにジルの尊敬と信頼は勝ち得られるかも知れない。尊敬と信頼,この二つから案外見事な花が咲くこともある。」と希望を捨てないリー。
 そしていよいよクライマックスとなる大きな出来事がやって来ます。もともと暗闇恐怖症のリーは,例の家政婦と地下のワイン倉庫で在庫の確認をしようと地下室に降りていくのですが,一番奥まった今は使われていない倉庫部屋に入った途端,家政婦によって閉じ込められてしまうのでした。鍵をもっているのは家政婦のみ。ジルを追いかけている未亡人ルイーズの手先の家政婦により,リーは誰からも見捨てられることになってしまうのでしょうか。愛する一粒種とともに・・・。
 勿論,ロマンス作品ですからここはジルが白馬の王子となってリーを助けに駆けつけることになるのですが,分かっていながらも困難の事態にパニックにならずにじっとジルを信じて助けを待つリーの健気さに,読者は愛の深さを感じるのではないでしょうか。ときにこの家政婦の名前がマダム・ル・ボン(善良夫人)というのはなんともフランス風の皮肉が効いていますね。そしてこの事件の背後にはルイーズはもとよりかつての婚約者ドリューも一枚噛んでいたのです。これでもうジルとリーの間のわだかまりは一切消え,「赤ちゃんよりもあなたの愛情のほうをほんの少し余計欲しがっているって言ったら,許してくれるかしら?」という素敵な言葉をリーの口に乗せるのでした。ペニー・ジョーダンらしい骨太で繊細さの溢れる絶品のロマンスが堪能できる作品です。それにしても,文庫版の表紙の,このリーのモデルさんのフランス人形そのものの顔立ちときたら・・・。


タグ:ロマンス
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閉ざされた記憶 [ペニー・ジョーダン]

SHALOCKMEMO1410
閉ざされた記憶
Back in the Marriage Bed 2000」
ペニー・ジョーダン 橋 由美




R-1714
01.10/¥672/155p

HR-098
05.07/¥966/378p
(記憶をなくしたら)


 原題は「新床への帰還」
 ヒロイン:アニー(23歳)/交通事故で記憶を失った女性,施設育ち/大きくて知的なグレーの目,卵形の顔,ブロンドの髪,華奢な体つき,事故の後遺症で右腕が少々不自由/
 ヒーロー:ドミニク・カーライル(33歳)/顧問海洋生物学者/深いブルーの目,日焼けした肌,ブルーブラックの髪,長身/
 親に捨てられて孤児院で育った少女アニーが18歳で出会ったドミニク。二人は強い愛に結ばれ結婚しますが,ドミニクは自分のキャリアを高めるため中東に数年間出張することになります。そして妊娠したと誤解したアニーはドミニクの子供は要らないという言葉に傷つき,二人に未来はないと絶望して出奔するのでした。そして妊娠が間違いだと気づいてドミニクの出発する日に飛行場に向かう途中で車にはねられ記憶をなくしてしまうのでした。右腕を失う大怪我を救ったのは外科医のヘレナ。退院後ヘレナ夫妻に引き取られて事故から5年が経過していました。パートで勤めていた石油会社に新たなプロジェクトで赴任してきたのは夫ドミニク・カーライル。歓迎パーティで偶然出逢った二人は顔を見合わせ互いに驚愕します。アニーは入院中たびたび夢に出てきた男性が目の前に立っていたこと,そしてドミニクは自分を捨てて出ていった妻が悪びれもせず自分を見つめて立ちすくんでいたこと。二人の再会がアニーのなくした記憶を取り戻す旅路へと新たな展開を迎えます。名手ペニー・ジョーダンの2000年の作品ですが,HQロマンス版が電子再刊されたので,(HQリクエスト版は紙版で持っていましたが)取りかかったものです。初めは自分を捨てていった妻への恨み,憎しみ,そしてその理由にこだわっていたドミニクですが,取りあえず記憶が戻るまで自分のアパートで監視することにします。自分を捨てた理由がわかったら離婚に応じようという言い訳を考えて・・・。ところが5年の歳月を経て子供だったアニーが23歳の大人の女性として再び現れたことで,すっかりアニーの魅力に取り憑かれてしまうドミニク。そして記憶を失ったアニーはもともと惹かれていたドミニクにすっかり夢中です。無理やりにでも記憶を取り戻そうと苦しむアニーを見かねていたドミニクの心の中に,記憶を取り戻すことよりも新しく二人の関係を作り上げたいという気持ちも湧いてきます。そしてドミニクが数日の出張で家を離れている間に,ついにアニーは記憶を取り戻します。そしてそのことと同時に今度は本当に自分が妊娠していることに気づくのです。記憶を取り戻したことをドミニクに告げ,妊娠のことは黙っていようと決意したアニーは,ドミニクの会社で話した方が冷静に話ができるだろうと会社に向かった時,再び車がアニーに向かってきます。それを見つけたドミニクが一瞬差でアニーをかばい自分が車に引っ掛けられてしまうのです。再び起こる事故。まさかこんなに都合良く,と思ってしまいますが,アニーはよっぽどボンヤリと舗道を渡ろうとしているのだなぁと逆にそのボンヤリぶりに感心してしまいます。きっとそれほど癒やし系の愛らしい女性なのでしょう。怪我をしたドミニクが目覚めてすぐにアニーは問いかけ,入院先で看護師や医師から聞いたことば,「奥さんは大丈夫ですよ。お腹の赤ちゃんも含めて」に衝撃を受けるドミニク。しかし退院してからもアニーは一切妊娠のことを話そうとはしません。ふとした会話の途中でアニーがドミニクの食べ物の好みのことに触れた瞬間,ドミニクはアニーが記憶を取り戻したのかと問い詰めます。さぁいよいよ終盤。「わかった。いいわよ。話すわ,何もかも。」と居直るアニー。「遂にこの時が来た。恐れていた対決の時。ドミニクとの暮らしに区切りを付け,先に進んでいくために,このハードルはどうしても越えなければならない。」「あなたと別れるわ,ドミニク。この家にはこれ以上いられないの。」「あなたは,私の親が誰かわからないから,私には悪い血が流れているから,あなたの子供を産んで欲しくないと言ったのよ。」という思い込みには,ちょっと韓流ドラマによくあるようなアニーの発想がありますね。「そばにいてやれない父親の存在が,子供の心の重荷になると言いたかったんだ。」と,自分の幼少の頃の経験を話すドミニク。5年前は互いに精神的に未熟だった。離れていた5年の間に二人とも辛い経験をして互いを思いやり互いを深く愛する気持ちを持ち続けていたことに改めて気づいたのです。
 記憶喪失ものの面白いところは記憶を取り戻すまでの過程だけではなく,記憶を取り戻してからの二人の関係がどのように変化し,あるいは深まり,本当の愛を見つけて行くかというところにあるのだと思います。本作はまさしくそういう点で記憶喪失ものの王道を行く名作だと思います。


タグ:ロマンス
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鳥かごのシンデレラ [ペニー・ジョーダン]

SHALOCKMEMO1408
鳥かごのシンデレラ Some Sort of Spell
(ベレア家の愛の呪縛 1) 1987」
ペニー・ジョーダン ( Frances Roding 名義) 松本果蓮





 原題は「あるタイプの女性の魅力」
 ヒロイン:ベアトリス(ビー)・ベレア(27歳)/作曲家個人秘書/小柄で丸みを帯びた体型,鳶色の髪,はしばみ色の瞳,なめらかな肌/
 ヒーロー:エリオット・チャーマーズ(30歳代)/実業家/190センチ,シルバーグレーの瞳,焦げ茶色の髪/
 ウィンブルドンにあるビクトリア朝様式の立派な屋敷。俳優だった両親が亡くなり,兄弟姉妹の面倒を見ながら母親代わりを勤めるベアトリスは,もう27歳ながら,男性との交際の経験もなく青春を過ごしてきました。双子の弟に妹そして末の弟,そこに両親の再婚によって生まれた異父妹とその異母兄。大家族といっても過言ではない七人の男女が織りなすシリーズの開幕です。といっても,本作で一気に二人が片づく予定ですから(笑)。5年前に亡くなったペニー・ジョーダンが前世紀末に別名義フランセス・ロディングで描いた未訳のシリーズです。さて,双子のベネディクトとセバスチャンは背が高く金髪の21歳,18歳のミランダは黒っぽい髪,末弟で17歳のウィリアムは金髪とそれぞれ両親の特徴を引き継いでいるようです。ベアトリスの両親チャールズとクレシダは結婚,離婚,再婚とクレシダが19歳でベアトリスを出産し,その後すぐ離婚,そしてそれぞれが再婚し,クレシダは歳の離れた実業家と再婚し,前妻の子供エリオットと,再婚相手との娘ルシーラが誕生します。つまり母の再婚によりベアトリスには義妹とその異母兄という複雑な兄弟ができたわけですが,エリオットとはまったく血のつながりがないことになります。その後,両親は再度結婚し,前述の四人の弟妹が誕生したという複雑な関係になっています。本作ではこの血のつながりのない義兄エリオットとベアトリスの運命的なロマンスを描いています。俳優同士の元も生まれた四人と美貌の母後を受け継ぐルシーラはそれぞれ美しさもスタイルの良さも兼ね備えた男女でした。一人ベアトリスのみが女性らしい起伏に富んだ体型をしており,自分は弟妹たちのようにはなれないとあきらめの気持ちが先に立ってしまいます。そのため,エリオットがフラットの修理を理由に同居し,ベアトリスになにかとちょっかいを出しても,逆に自分はからかわれているだけだと物語の終盤に至るまでずっと思い込んでいるのです。亡き母の美貌を受け継ぎ女優を目指すルシーラは,ベアトリスを「醜いアヒルの子」と呼び,平凡で地味なかっこうしかしないベアトリスに何かと難癖を付け自分勝手に生きています。下の弟妹たちはすっかりベアトリスを母親代わりとして頼り切り,ビーと呼んでなにかと頼み事をするのですが,そろそろ自分自身の人生も考えていかなければと一念発起して秘書として働くことを決意したのでした。それには弟妹たちはみな反対するのですが,一時交際していたロジャーもベアトリスとの将来は弟妹たちもついてくることだと知り,さっさと逃げだしたのでした。そんな状況がいつまでも続いては人生がなくなってしまうと,一大決心したのです。きょうだいたちの面倒を見る新たな家政婦も必要ですが,エリオットのナニーだったヘンリエッタ・パーカーが来てくれ,我が儘な弟妹たちともうまく生活してくれるようになり,ベアトリスの仕事もうまくいき始めます。
 エリオットが,このウィンブルドンの屋敷に越してきたのはもちろんフラットの改修という理由もあるのですが,それは言い訳で,本当はベアトリスへの気持ちを抑えきれなくなっていたからでした。しかし,大勢の兄弟の中でベアトリスに気持ちを伝えることはできません。そのため何かと理由を付けてはベアトリスを連れ出し,時々気のあるそぶりを見せるのですが,男性経験のないベアトリスはそれに気づかないこともあり,逆にエリオットを意識するあまり反抗的な態度も取るのでした。それを弟妹たちから指摘されるとますますエリオットへの反感が増してくるのですが,次第にエリオットを男性として意識するようになっていきます。「エリオットが女性としての私に興味があるように振る舞った理由を突き止めよう。絶対に何か裏があるはずだもの」と考えてしまうベアトリスでした。しかしエリオットに連れ回されるたびに,「私はなぜエリオットの言いなりになっているのかしら」という思いと「人生を一変させる真実が,波のようにのみこむ・・・私はエリオットを心から愛している」と気づいたことで,少女の心から大人の女性への心へとベアトリスが成長したことがうかがえます。エリオットのベアトリスへの褒め言葉「最高の骨格と透明感のある美しい肌を持つ君」という表現はまるで人物模型を表現するようでこの言葉で女性が自分が褒められたとは感じないだろうと思うのですが・・・。
 シリーズ開幕とあって登場人物が多いので,二人のロマンスにはあまり触れられませんでしたが,ベアトリスがエリオットから逃げ回りつつも深い関係になっていく様子がいかにも純情な少女らしさと相俟って思わず微笑んでしまう作品になっています。出張先のイタリアで出会ったルチアによって本来の美しさに気付き,女性としての自信をもっていくところがとても印象的です。


タグ:ロマンス
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ジェシカの愛情研究 [ペニー・ジョーダン]

SHALOCKMEMO1366
ジェシカの愛情研究 Research into Marriage 1986」
ペニー・ジョーダン 三木たか子




HQB-759
16.10/¥670/200p

R-0622
88.08/¥578/156p


 原題は「結婚への調査」
 ヒロイン:ジェシカ(ジェス)・(26歳)/作家,心理学者/長身,脚は長く,ウエストが細く胸は豊か。銅色の髪,透き通るほど白い肌,気分次第でグリーンにも金色にも見える目/
 ヒーロー:ライル・ガーネット(35歳)/開業医(神経外科医)/寡夫,スチュアートとジェームズの父,オックスフォード近郊のサットン・パルバ在住/長身,豊かな褐色の髪,青い目/
 ヒロイン,ジェシカ(ジェス)の苗字が明らかにされていません。ときどきこんな作品もあります。まあすぐにヒーローの結婚してしまうので旧姓はどうでも良いということなのでしょうが・・・。結婚式もとても簡単に済んでしまい,描写もほんの数行です。いわゆる便宜的な結婚から,生活しているうちに次第に愛に気付いていくパターンですが,二人とも会った瞬間に惹かれてしまうのです。二人が結婚に至るきっかけとなったのは一つは義兄の存在がありました。姉のアンドレア・チャーズはいささか気持ちの弱い人で,現在妊娠中ですが,夫のデビッドは隙あらばとジェシカに言い寄ろうとするのです。父を亡くし,その遺産を受け継いでいた姉妹に,デビッドは姉の方との結婚を選んだのですが,本当はどちらでも良かったようです。ジェシカはそんな義兄におぞましさしか感じなかったのですが,うぬぼれ屋で道徳心のないデビッドはジェシカが自分に色目を使っていると人前でなれなれしくすることから始まって,顔を合わせるたびに厚かましく誘いをかけてきます。なんとかそんな姉夫婦から離れたいと思っていたやさきにライルに出会います。9年前,母はすでにジェシカが大学に入った年に再婚して新しい夫とカナダで幸福に過ごしており,大学卒業後ジェシカは心理学者として著作をしたため,それが売れ行き好調であり,現在は3冊目の著作に取りかかっているところでした。「こと結婚に関し,何の幻想を抱いてはいない。結婚はただの肉体的欲望を越えたものに基づかなくてはならない」というのが現在執筆中の著作の中心テーマでした。調査を進めれば進めるほど【見合い結婚】が理想の結婚形式だと確信するようになっています。そこで,ジェシカは新聞に自分を売り込む記事を掲載してもらい,それに反応してきたのがライルだったのです。一方ライルは妻と離婚しようとしていたときに事故により妻の死という事態に遭い,,神経外科の専門医のとしての職を投げ打ち,二人の子供を育てるために田舎であるサットン・バルパで開業医を始めたところでした。妹夫婦になにかとこどもたちの面倒を見てもらいながら頑張ってきたのですが,スチュアートとジェームズは母に捨てられたという心の傷をもち,反抗期であることも含めて何かと父であるライルの言うことを聞かず,叔母のジャスティンにも反抗的態度を崩さないのでした。従兄弟の幼いピーターを木に縛り付けてその下でたき火をしてガイ・フォークス遊びと言い張るなどのワルがき的な態度を示すようになった二人に耐えきれなくなったジャスティンは,例のジェシカの新聞記事を見つけ,二人にはきちんと向き合ってくれる母親が必要だと兄のライルを説得するのでした。ライルは妻は必要ではないし,望んではいないとしても,自分の子供たちに母親役の人が必要だとこの話しを断ることができない切羽詰まった状況にあったのでした。「26歳で未婚,自活の手段あり」という記事だけを頼りに妹の勧めに頼らざるを得なくなったライル。そして,サットン・バルパにやって来たジェシカの金色の目とライルの青い目が出会います。恋に落ちるということ自体を信じていないとするジェシカと,妻との関係がうまくいかなかったことにより女性が信用できないライルが,出会った瞬間でした。スチュアートとジェームズという子供の母親役が自分に求められている立場であり妻は必要ないというライルの言葉に,反ってそれこそ自分が望むものだと言い切るジェシカ。そしてこの二人と子供たちという四人の奇妙な家族ごっこが始まるのでした。初めはジェシカにも打ち解けない子供たちですが,初めに兄のスチュアートがジェシカに信頼を寄せるようになり,兄を手本にしていたジェームズも次第に打ち解けていきます。逆にライルこそが家族の中で浮いた存在になってしまうほど三人が寄り添い,近づいて行くのでした。ジェシカに出会ったジャスティンは初めからジェシカの味方です。ジャスティン一家も皆ジェシカを歓迎し,瞬く間に周囲の人の信頼を得ていくジェシカにライルはますます惹かれていくのですが,初めに妻は必要ないと言い切り,自分も夫婦としての関係を望んでいないというジェシカに強い欲望を抱くという矛盾に悩み,どうしてもぶっきらぼうにならざるを得ないというライルの態度にとまどいながら,ジェシカもライルに触れてみたいという欲望を抑えるのに苦労しています。そんな二人にクリスマスという神からの贈りものの季節が迫ってきました。ガーネット家の四人にとって,これは家族としての紐帯を深める格好の機会となるのです。ジェシカは「本当のお母さん,あの子たちにとって私はそういう存在になったのだろうか」と子供たちに対する愛情を感じ始めます。そして夫であるライルの男性としての魅力にも強く惹かれ始めて行きます。「こうなることは出会った瞬間から分かっていて,そしていまそれが現実になったのだ。この人を愛していると分かった以上」と深い関係になります。しかし,二人の間にはもう一つ,互いに想いを寄せる別の存在があるのではないかという想いがくすぶっています。ライルには前妻のヘザーの存在が,そしてジェシカには義兄のデビッドの存在が・・・。二人はこの疑心を乗り越え本当の結婚が成就できるのでしょうか。そしてジェシカの愛情に関する研究の著作は完結するのでしょうか。邦題がまさにぴったりの作品です。
 数日前に読了していた作品ですが,メモをまとめるのが遅くなってしまいました。ちょっとそのまま映画になりそうな,映像を思い浮かべながら楽しめる素敵な作品です。


タグ:ロマンス
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愛と掟のはざまで [ペニー・ジョーダン]

SHALOCKMEMO1354
愛と掟のはざまで A Bride for His Majesty's Pleasure 2009」
ペニー・ジョーダン 橋 由美





 原題は「陛下の喜びの花嫁」
 ヒロイン:アイオナンス(27歳)/エコノミスト/暗い色の髪,古風な顔立ち,ほっそりした喉/
 ヒーロー:マックス(34歳)/フォーテネグロの皇太子/長身,肩幅が広く,豊かな黒髪,彫りの深い顔立ち,灰色がかったブルーの目/
 久方ぶり,半年ぶりのペニー・ジョーダン作品です。
 「黒い崖」という意味の地中海の島国フォーテネグロ。彼の皇太子コスモが遊興の末亡くなってしまい,その従兄弟のマックスは,国民のため,また皇位継承のため,皇太子(皇太孫)位を継ぎ,勧められるままに結婚しますが,相手に裏切られ,恥をかかせられたら相手に復讐することが国民性という廷臣たちの勧めるままにその妹アイオナンスと再婚することに承諾せざるを得なくなります。国際的慈善団体「ヴェリタス・ファンデーション」に力を貸すエコノミストとしてベルギーで働いていたアイオナンスは,姉が犯した不倫の罪を償うための人身御供としてマックスとの結婚を承諾するのですが,故郷フォーテネグロの国民生活の向上に資することができるチャンスだと割り切って結婚を決意するのでした。伝統的な掟が色濃く残っているフォーテネグロ。そして皇太子マックスが国のことを考えずに遊びほうけていた前皇太子の従兄弟と同じ血を引いていると考え,事務的に皇位継承者である息子を産みその息子の代新しい国づくりの基礎ができるのだと決意したのでした。一方マックスも表面的な美しさや楽しさのみを思い求めていた前妻の妹も同じような人物であろうと想像していたのですが,見かけは普通の女性,しかも言いたいことをずばずばというアイオナンスを逆に興味深く見ている自分に戸惑います。2週間での結婚式,さらに披露パーティや国民の前へ進んで出ようとするアイオナンスを信頼し始めます。しかし,前妻に煮え湯を飲まされた経験からして,アイオナンスの行動が計画的に自分を騙そうとしているのではという疑いを払拭しきれません。アイオナンスは国際的慈善団体の代表者を尊敬していましたが,その団体がマックスの亡き父が創設し,マックスが跡を継いでいることは秘密にされていたために知らないでいたのですが,アイオナンスが気持ちを告白したとき,すぐには自分が代表者であることは言い出せませんでした。このことがのちに二人の間の亀裂を大きくします。現国王のマックスの祖父,そしてアイオナンスと姉エロイーズもまたすでに両親を亡くし,独善的で権威主義の祖父の元で育ちますが,常に美貌と愛らしさで知られるエロイーズの影に隠れるように過ごさざるを得なかった自分が,皇太子妃という表舞台に登場することになろうとは想像もしていませんでした。マックスの表に出ない優しさに触れ,ほとんど男性との関係を知らなかったため,ちょっとマックスに触れられただけで意識してしまう自分を戒めつつ,なんとか息子を授かるためにはとハネムーンの夜は大胆になろうとするのですが・・・。マックスの心の中にはエロイーズが生きているのではと思うアイオナンスですが,実際はマックスとエロイーズの間には愛にあふれた心の交流は存在していなかったのです。そのことをマックスがアイオナンスに告げたのは二人がアイオナンスの育った自分の領地である山上の城に二人が到着し,雪で帰途につけなくなったときでした。本当はマックスとの関係を考え直すために一人で領地に行こうとしたのですが,マックスが出かける予定だった出張が相手の都合でキャンセルされたため,マックスがアイオナンスを送るという名目で二人で出かけることになってしまったのでした。領地の人たちに暖かく迎えられたアイオナンスとマックス。エロイーズとアイオナンスを育てたといっても良い家政婦の言葉,「エロイーズは愛らしいだけの子だったが,アイオナンスはしっかりして心根の優しい子だった」と聴いたことにより,マックスのアイオナンスに対する疑念はすっかり晴れていくのでした。そして打ち明けた慈善団体の代表者であること。教育や産業などを国民のために改善していきたいという思いは,しかし,アイオナンスにとっては,代表者だと言うことを打ち明けてくれなかったマックスに対する落胆に変わってしまうのでした。さて,マックスの謝罪はアイオナンスの心に届くのでしょうか。
 大御所ペニー・ジョーダンらしい大きなスケールのロイヤル・ロマンスです。17-18世紀からちっとも進歩していないフォーテネグロに降り立った21世紀の皇太子夫妻が,国の近代化の基礎をしっかりと築いていけるのかというヒストリカル的要素ふんだんなストーリー。マクロとミクロの両方の視点が156ページにしっかり詰め込まれた秀作です。


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追憶のひと [ペニー・ジョーダン]

SHALOCKMEMO1212
追憶のひと Stranger from the Past 1991」
ペニー・ジョーダン 堀田 碧




HQB-710
16.02/¥670/192p

R-0987
93.03/¥652/156p


 原題は「過去からの異邦人」
 ヒロイン:シビラ・ガードナー(25歳)/人材派遣会社経営/ブロンドの髪,ラベンダー色あるいはグレー色の瞳,愛読書はジョーゼット・ヘイヤーの小説
 ヒーロー:ギャレス・シーモア(32歳)/会社経営/シーダーズ屋敷の跡取り/グレーの瞳
 15歳の頃に憧れた年上の幼なじみギャレス。祖父の元で育ち祖父亡き後祖父の会社も後を継ぐ形になります。シビラはギャレスの祖父トーマス・シーモナと近所だったせいもあり,ギャレスが大学や国外で事業を興したこともあり,トーマスの元にしょっちゅう訪れていました。しかし,ある日トーマスとギャレスの会話に自分が登場し,しかもギャレスは自分のことを子供だと言い切ったことでショックを受け,その心の傷を抱いたまま男性との真剣な付き合いをせずに25歳を迎えてしまいました。ギャレスが来ることが分かっていたので,トーマスの葬儀にも顔を出しませんでした。雨の降る中スーパーでの買い物を終え,駐車場までカートを押して急いでいたとき,目の前に駐車しようと車が入ってきたので慌ててカートをよけようとしたとき荷崩れを起こしてしまい,カートの中身を道路にぶちまけてしまう恥ずかしい思いをしてしまいます。その車に乗っていたのはなんとギャレスと美女でした。次に人材派遣会社の仕事の関係で自分に以前から関心を示していた妻帯者と面談がありレストランでの話し合いをしているとき,ふたたびギャレスが現れ,今度は妻帯者と不倫の関係であるかのような誤解をするのです。そして翌日の夜入浴中に玄関のベルがなり,隣人かと思ってバスタオルをまいただけの状態でドアを開けるとギャレスが入ってきたのです。そしてシビラにキスをしたのでした。二度三度と恥ずかしい場面を見られたシビラ。もう十五歳の少女ではない,あれから10年も経ってビジネスウーマンとして成功している女性なのだと自分に言い聞かせても,ギャレスヘの愛が消えていないことを否定できないシビラでした。その後,ギャレスとの出会いを極力避けようとしたシビラですが,何度かのニアミス,そしてインフルエンザのような最悪の体調,そんな弱気になりがちな自分に活を入れながらも,終末の休日に散歩の途中で自分を追いかけ回すシビラの顧客のレイ・ルイスに出会ってひどい侮辱を受けたとき,偶然通りかかったギャレスに危ういところを巣くわれたときは,もうギャレスへの愛と欲望を否定することは出来なくなっていました。もうこの街には住めない。だから一時だけギャレスを求めたい。ギャレスもまた同じ気持ちであることを告白され,シビラは自らギャレスに身を投げ出すのでした。
 ペニーの作品には,幼い頃から憧れ続けた男性にふたたび出会い,その愛を得るまでの成長譚がストーリーの中心になるものが多いのですが,これもその作品群のひとつです。シビラという名前は古代ギリシア時代の異教(キリスト教ではない)の巫女で,「終わりの日(怒りの日?=Dies Irae)」を宣託する女性です。レクイエムの歌詞にも登場するこの名前をこの作品に登場させたのはなぜだったのでしょう。


タグ:ロマンス
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キスのレッスン [ペニー・ジョーダン]

SHALOCKMEMO1115
キスのレッスン An Expert Teacher 1987」
ペニー・ジョーダン 大沢 晶





裕福な家庭の子女と貧しい境遇からたたき上げて成功した富豪とのラブロマンスです。ジェマ・パリッシュは14歳のころ近くの小川のほとりでルーク・オウロークに出会います。二人の間には次第に友情が芽生えていきますが,兄の友人のトムに出会ったことからルークにキスの仕方を教えてくれととんでもないお願いをするのでした。当時ルークは20歳。それから10年後,公立総合中等学校で教職に就いているジェマは両親の俗物的見方にうんざりしています。家に来客があると聞き,その中にルークという名前を聞いてまさか・・・という気持ちでした。10年前にキスのレッスンをお願いした翌日からルークは姿を消してしまいます。その後ジェマは何人かとデートをしたものの決定的な体験をしないまま24歳になっていたからです。あの時のルークとは別人であることを願いつつ,来客の中にあの,ルークがいたことで動揺するジェマ。しかもルークはジェマに初めて会ったかのように接するのです。そのことにルークは未だに自分に腹を立てているのだと思い込むジェマでした。ジェマの勤める公立中学校に人減らしの嵐が吹き荒れ,働かなくても食べていける裕福な実家を持つジェマが,校長から呼ばれて自主退職を暗に仄めかされるのです。その後の生活の様子をルークと話し合ったジェマはこのこともルークに話さざるを得なくなりました。そしてルークは新しいプロジェクトにジェマの力を是非借りたいと自分のアシスタントになるように説得を始めたのです。そしてカリブ海の島に向かったジェマとルーク。島の空港にはルークを慕うサマンサという娘や,ジェマの存在を歓迎しないことをからさまに示す地元の社員たちがいるのでした。イギリスに帰りたいと思うジェマにルークは契約書の内容を思い出させ,現地に留めようとするのでした。ルークが少しずつ明かしていくジェマへの気持ち。そしてジェマの方もルークを愛し始めていること,いや10年前からルークを愛していたことに気付き,深夜ルークの部屋に忍んで自分を投げ出すのでした。
ペニー・ジョーダン作品ということで期待して読み始めましたが,あまり捻った部分もなく,予想どおりの展開が続きちょっと拍子抜けした感じの正統派ロマンスです。


タグ:ロマンス
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苦いレッスン [ペニー・ジョーダン]

SHALOCKMEMO1003
苦いレッスン Past Passion 1991」
ペニー・ジョーダン 原 淳子





2011年12月31日65歳という若すぎる死を迎えたペニー・ジョーダンですが,本名のペネロープという名前にふさわしいシルバーブロンドの髪に若い頃はほっそりした体格で年齢を重ねてもその大きな目とバランスの取れた顔立ちで笑顔の素敵な作家だったと思います。多くの作品を発表し,新作が読めなくなったのが残念ですが多作家であり,その全作品を読むことなど自分の残された人生ではとうてい無理ですが,ヒーロー,ヒロインへのいつも温かい眼差しと多くの成長の物語をいつも楽しみに読んでいます。本作は原題は「過去の情熱」,いかにもロマンスらしさがあふれるタイトルですが,ヒロインの成長譚でもあります。8年前,恋人に裏切られた腹いせにどぎつい化粧をしてパーティに出かけそこで出会った見知らぬ男性と一夜の関係を持ってしまったニコラ。その後悔からその後は決して女性として目立つ服装はせず,男性恐怖症に近い状態で過ごしてきました。建設会社の社長秘書として,単なる秘書以上に仕事に没頭してきたニコラ・リントン。そんなニコラのボスが息子を亡くすという不幸に見舞われてすっかり事業への興味を失い,新しいボスがやってきます。それが,8年前自分の恥だと想い続けてきた男性マット・ハントでした。すっかり様相を変え,仕事一筋でやってきた自分をどうか思い出さないで欲しいと願いつつも,未だにちょっとでも身体に触れられただけでマットへの思いを募らせてしまうニコラに,マットはかつて出会った女性であることには気づく様子もなく,あくまで会社のスタッフとして接してくれていますが,単なる秘書以上に大切に接してくれていることに戸惑いと期待を覚えています。実は8年前もティーンエイジャーの妹3人がいて,ニコラに出会ったときも妹たちと同年代のニコラがなにかトラブルを抱えてやけになっていることを見抜き,酔いを覚ますために自分のフラットに連れて行っただけであることを言わずじまいでした。すっかり一夜を共にしたと勘違いしてしまった,ニコラにちょっとお灸を据えるためにワザと関係があったように仄めかしたマットだったのです。邦題の「苦いレッスン」はそのことを指したタイトルです。その言葉が8年間もニコラを苦しめ続け男性と正常な関係が築けない心の傷を残してしまったことをマットが知るのは,物語の最終場面でした。それも8年前にニコラを裏切った当の本人と会社関係の夕食会で偶然出逢ってそれをばらされてしまうという,最悪のシナリオの中で起こります。
男性の欲望に過敏すぎるほど罪悪感をもつニコラ。そしてマットへの愛を8年間も持ち続ける純な気持ち,そしてマットもまた,捜していたニコラとすでに出会い,電流を感じていたことが8年間自分の中に埋もれていた感情であったことに気づくなど,ちょっとあり得ないほど初心な設定ではありますが,読者を夢のような純愛に引き込む設定でもあります。約四半世紀近く前の作品ですが,この当時ですらおそらく珍しいほど初心なカップルだったと言えるでしょう。思わず微笑まざるを得ない愛らしい作品です。


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半年だけの結婚 [ペニー・ジョーダン]

SHALOCKMEMO962
半年だけの結婚 The Flawed Marriage 1983」
ペニー・ジョーダン 安引まゆみ





片足に障害が残り,困難の連続のアンバー・ダグラスは就職のための面接が不首尾に終わり落胆して道を歩いているとき,脇を通り過ぎた車を運転していた男性に声を掛けられます。「妻を捜している」という言葉を理解したのは,一人息子ポールの親権を取るために妻が必要だという意味でした。「君がふさわしい」というのはポールもまた足に怪我を負い,リハビリを受けなければならない状況で,母親に捨てられた心の傷を埋めてくれるのは同じ悩みを持つアンバーの方がいいと思われたからでした。怪我の前に付き合っていた医学生のロブには捨てられ,養護学校の教師になる望みも今は採用がないと打ち切られ失意のそこにあったアンバーにとって,生活のためにジョエル・シンクレアのこの申し出を受けることは躊躇する余地はあれ,断り切れるものではありませんでした。ポールもすぐにアンバーに懐き,新しい生活が始まります。時々冷酷になるジョエルではありましたが真剣にポールを育てようとする気持ちにアンバーは惹かれていきます。そしてジョエルの男性としての魅力にも・・・。しかし初めから便宜的な結婚しか望んでいないジョエルに愛してもらえるはずがないことやポールの母であるテリーの存在もアンバーにとっては悩みの種です。意地悪で自分のことしか考えられないテリーはポールを嫌っているのに離婚を言いだしたジョエルを傷つけるためだけにポールの親権争いを挑んでいるのでした。ジョエルとアンバーの間にある微妙な男女の関係への期待が徐々に親密さを増してきて,いつしかアンバーは足の痛みを忘れていくようになります。散歩や水泳でポールも次第に元気を取り戻しますが,テリーがいっこうに自分の方を向かないジョエルの態度に業を煮やし,ついにポールの誘拐を企てるのでした。ポールを守らなければという必死の思いとジョエルが助けに来てくれるかもしれないというかすかな望みを捨てないで果敢に誘拐犯に立ち向かうアンバー。まもなく契約の半年を迎えようとしており,二人の間に将来はないという絶望感との狭間でアンバーの気持ちは揺らぎます。アンバーとポールの運命や如何に・・・。
体の障害は心の傷を癒やされることによって克服できるというメッセージが伝わってくるヒューマンなロマンスです。元々美しかったアンバーがジョエルやポール,そしてポールの祖父母でテリーの両親との交流で次第に自信を回復し,美しい女性として変身していく様子が描かれた秀作です。オススメです。


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愛する資格 [ペニー・ジョーダン]

SHALOCKMEMO961
愛する資格 Injured Innocent 1985」
ペニー・ジョーダン 平江まゆみ





子供の頃から姉の人生は妖精の女王の祝福を受け,自分の人生はいたずらな悪魔の陰謀で茨の道となるよう運命づけられたと感じていたリサ・グラント。その姉と夫のジョン,そして両家の両親が乗っていた飛行機の事故により一瞬にして家族を失って師またリサは姉の遺児ルイーズの後見人となります。しかしもう一人義兄の兄のジョエル・ハーグリーブスもまた後見人になると知り,憤慨します。きっと富豪のジョエルが自分を排除してルイーズを自分一人のものにする気だわ,なんとしてもそれを阻止しなくては・・・。そう思っていたとき,ジョエルからの呼び出し。そしてジョエルの住まいウィンタリー館に出かけたリサを待っていたのは,ジョエルのプロポーズという思いがけないことでした。両親の死で情緒不安定になりかけているルイーズを守るために便宜的な結婚を申し出てきたのです。しかしリサにはジョエルに対して過去に忌まわしい思い出があり,なんとしてもそれだけは避けたいことでした。しかし愛する姪のことを理由にされると断り切れなくなったのです。15歳の時の忌まわしい思い出,それは同級生の男の子の家のパーティに両親の精子を踏み切って参加した時に,ベッドに二人でいたところを両親とジョエルに見られ,ふしだらな娘ということを親に突きつけられた,と同時に他人であるジョエルにもそう思われてしまったことです。今でもときどき暗い夢の中にジョエルの姿が現れることすらあるぐらいトラウマになっていたからです。そんな自分にプロポーズするということは,少なくとも姪のためであることだけは理解できたのでした。しかしことあるごとに過去のことをあげつらわれてからかわれることにも耐えがたい思いをしていたのです。そして二人は僅かな準備期間でひっそりと教会で式を挙げたのでした。外面的には愛し合う夫婦という仮面の姿を姪にも見せて安心させなければならないというということで同室で暮らすことになったリサ。時折見せるジョエルの優しさと体の接触によって起こる不思議な感覚に戸惑うリサ。他の男性とは異なりジョエルに触れられてもそんなに嫌悪感を抱かずにいられることを知り,ついに二人は何度か言い合いをしながらも毎日話し合いをし,ついにリサは過去の秘密を打ち明けることになります。ところが,ジョエルの元を訪れる過去の恋人マリサの存在がリサを不安にし,そしてリサに言い寄ろうとするリサのかつての恋人サイモン・グリーブスの存在をジョエルが意識してしまうという誤解と気持ちのすれ違いで二人の間は険悪なムードになってしまいます。誤解が誤解を生みもはやどうにも意地の張り合いを止められなくなった二人です。さあ二人は別れてしまうのでしょうか。最後は一気に解決に向かいます。リサの気持ちの変化と斗どうしたらこんなにひん曲がった誤解をしてしまうのだろうかということが,ちょっと滑稽なほどで,ハラハラしながらもなんとなくコミカルな作品です。


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