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庭師の娘の恋わずらい [メラニー・ミルバーン]

SHALOCKMEMO1378
庭師の娘の恋わずらい Engaged to Her Ravendale Enemy
( Ravensdale Scandals 4 ) 2016」
メラニー・ミルバーン 萩原ちさと





 原題は「彼女のレーヴェンズデールという敵との婚約」
 ヒロイン:ジャスミン(ジャズ)・コネリー(23歳)/ウエディングドレス・デザイナー/秀でた眉,アイスブルーともグレートも言える瞳,ほっそりした体つき,つややかなハニーブラウンの巻き毛,クリームのように白くなめらかな肌,完璧な口/
 ヒーロー:ジャック(ジェイク)・レーヴェンズデール(33歳)/コンサルチング会社社長/たくましい長身,濃紺(藍色)の瞳,厚い胸/
 「博士の密やかな誘惑(SHALOCKMEMO1333)」,「眠り姫の目覚め」と続く,レーヴェンズデール家の兄弟姉妹のロマンスの第3弾です。原作では第3弾は「The Most Scandalous Ravensdale」になっていますが,こちらはフリン・カールトンとキャット・ウィンウッドが主人公になっているため,先に本作が翻訳されたのでしょう。レーヴェンズデール家の長兄ジュリアスとホリーの結婚式が間近に迫り,ホリーのウエディングドレスのデザイナーである本作ヒロインのジャズがドレスのデザインのためレーヴェンズデーンに来ています。ジャズは第2作のヒロインのミランダの親友であり,ミランダと婚約者のレアンドロとも知り合いです。なにせジャズ自身がこのレーヴェンズデーンで幼少の頃を過ごしていたからです。つまり,ジュリアスの家政婦の娘であったホリーと同じように,ジャズも庭師の娘だったからです。なにか一族が狭い関係の中でまとまってしまっているのが本シリーズの特徴ですが,それだけに家族的紐帯が深まると,逆に言えば世界中に散らばっている家族からしてみれば,ノスタルジックな関係ほどまとまりやすいということを前提にしているのかも知れません。男性陣はみな学生時代の仲間ですし,女性陣もそれぞれの人生の中でかつて深く関わった人たち,しかもレーヴェンズデールの先代夫妻が超一流の俳優として名を成しているセレブであるがゆえに,家族を顧みずに自分勝手な人生を送っている人たちで,その子供たちはけっして両親のような結婚生活は送りたくない,いやもっと強く結婚そのものがおぞましいと考えている人たちなのですから。破綻した結婚の犠牲になった子供たちが愛を取り戻していくまでの心の葛藤を描くというのがこのシリーズの中心テーマなのでしょう。
 さて本作のヒーローのジェイクはまさしく,ハンサムでお金持ち,女性との関係は一晩以上は殆ど続かないものの,それでも順番を待つ女性は挽きを切らないという有様。自ら結婚はしない,子供も作らないと宣言している結婚恐怖症の男性です。双子の弟として真面目な兄ジュリアスといつも比較され,自由奔放に生きてきたものの事業では成功を収め,仕事と遊びも派手な性格です。そんなジェイクに憧れ,16歳で大人ぶってジェイクに迫った過去を持つのが庭師の娘ジャスミン(ジャズ)でした。その時はジェイクはジャズに対しては妹のような感情しか持っていなかったため,たしなめたのですが,それに傷ついたジャズはその後3度婚約して,3度とも相手に逃げられてしまう,しかも3度目のカレシとはまだ表面的には婚約中なのに相手が浮気をしてしまっているというかわいそうな状況にいます。ウエディングドレス・デザイナーとしてのキャリアを踏み出したばかりで,まだブランドを立ち上げるほどではないため,身近なジェイクのコンサルも受ければ成功間違いなしなのでしょうが,かつて自分を拒絶したジェイクにシッポをする気はさらさらありません。そんなジャズが,ジェイクをストーキングしている女子高校生からジェイクを守るために取った行動とは,ジェイクの婚約者の振りをするというとっさのでまかせでした。ジェイクもこのアイディアの効果を目の当たりにして,なんとか兄とホリーの結婚式までの間だけでも婚約者の振りをすれば高校生も諦めるだろうと期限つきの便宜婚約を承諾したのでした。ジェイク兄弟と10歳の年齢差のあるミランダとジャズですが,高校生からすれば大人びた姿態と美貌を身に付けたジャズは今では充分に女性としてジェイクの婚約者にふさわしい相手に見えたのでしょう。それからこの婚約を本物らしく見せるためわざとマスコミの前でそれらしく振る舞って写真に収まるようになった二人ですが,自信が16歳の時以来,ジェイクに憧れ続け愛し続けていたことを,そしてジェイクは決して自分を愛してくれることはないことを,引きずったまま,ジュリアスとホリーの結婚式の数週間前まで来てしまいます。その間二人の間の気持ちの高まりと深い関係があったものの,やはり将来がないと考えたジャズはジェイクの元を去るのでした。そして結婚式当日,ジャズのデザインしたドレスを着たホリーの美しさ,さらに愛し合う様子が誰の目にも明かなミランダとレアンドロの姿をみて,ジェイクはある決心をするのでした。
 第2作の「眠り姫の目覚め」も途中まで読んでいるのですが,読了したらコメントをアップするつもりです。その前に第4作の訳が出てしまうかも知れませんが・・・(笑)。今複数の作品を手当たり次第に平行して読んでいるので,なぜか逆に読了速度が愕然と落ちてしまっているので・・・。


タグ:ロマンス
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博士の密やかな誘惑 [メラニー・ミルバーン]

SHALOCKMEMO1333
博士の密やかな誘惑 Ravensdale's Defiant Captive
( Ravensdale Scandal 1 ) 2015」
メラニー・ミルバーン 萩原ちさと





 原題は「レーヴェンズデールの反抗的な囚われ人」
 ヒロイン:ホリーアン(ホリー)・ペレス(25歳)/保護観察中の家政婦見習い/キャラメルブラウンの瞳,真紅の唇,鼻の頭のそばかす,高い頬骨,長くて濃いまつげ,茶色の豊かな髪/
 ヒーロー:ジュリアス・レーヴェンズデール(33歳)/ソフトウェア会社社長で天文物理学者/オリーブ色の肌,ダークブラウンの髪,意志の強そうな顎,整った鼻筋,官能的な唇,サファイアブルーの瞳/
 舞台はアルゼンチンです。しかし物語のほとんどが一軒の大邸宅の中で繰り広げられるため,ちょっと舞台劇を見ているような感じになっていますそういう意味では舞台はどこでも良かったように思います。最後の場面ではイギリスに舞台が移りますが,ほんのちょっとの短い部分で,しかもレストランというこれもまた室内ですので,ほとんど風景や野外の場面が登場しません。映画化,舞台化が可能な作品といってもいいでしょう。しかもやすあがりで・・・。さて,18歳のホリーアン(ホリー)は,刑務所か奉仕作業かという瀬戸際のところで,ヒーローのジュリアスの家政婦によってジュリアスの屋敷にやって来て家政婦見習いとして働くことになります。いやいやながらのこの仕事。どうせ幼少からセレブな生活をしてきたであろう老人だと思っていたホリーは,ジュリアスを見て驚きます。ハンサムな若い男性だったからです。彼が身元引受人?思い切り反抗的な態度を取るホリーの舌戦が実にめちゃくちゃで,まさにスケバン的な態度です。一々腹を立てては,ホリーを連れてきた家政婦の顔を潰してしまう。どうせ一ヶ月だけ我慢すれば良いし,途中で自分は一週間ほど出張で家を空けることになる,と高をくくっていたジュリアスですが,ホリーは反抗するか女性としての自分の魅力をひけらかして自分をベッドに誘おうとするかという両極端の態度をとり,その都度ジュリアスを翻弄していきます。ところがふとしたことで見せるホリーの何かに怯える恐怖の色合いや,手首から腕にかけて残された白い傷跡,そして反抗的な態度の裏に隠された料理上手,家事の手際よさなど彼女のもつ能力が決して偽物でないことに気付いていきます。そして出かけた出張先では,いつもホリーのことが頭から離れないジュリアスはついにホリーに恋し始めた自分を発見するのでした。一方ホリーもまた言ったことは必ず守り,厄介者の自分の言い分もしっかり聞き,信用してくれるジュリアスに心から惹かれ,同時に愛されたいと思うようになるのでした。ホリーの義父は犯罪界に首までどっぷりつかったヤバい人です。手首の傷も義父に反抗した結果腕を四個所も折られたときの傷跡でした。そのため男性を信用できなくなり,ましてや権威に対しての反抗心のみが自分を守る手段だったのです。そして何を言い訳しても決して信用されない自分。義父が敢えてそのように周囲の人たちを動かしていてもそれを止めることができない自分。いずれ幸せなときが過ぎればジュリアスにも飽きられ,また迷惑をかけてしまうことになる。そう考えたホリーは約束通り一カ月たったときジュリアス邸を去って行くのでした。さて,二人の愛はどのように近づいていくのでしょうか。
 まさにメラニー・ミルバーン版「マイ・フェア・レディ」です。MB版の表紙イメージのモデルの帽子にあのミュージカルのイライザの競馬場でのシーンが思い浮かびます。そして子供だと思っていたホリーのなんとも心の純真さに気付いて惹かれていくジュリアス。なるほどと思わせる結末が待っています。さらに,ジュリアスの双子の弟と妹,さらに本作で影が見える異母妹などシリーズが広がる可能性が示されています。


タグ:ロマンス
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忘れられぬ抱擁 [メラニー・ミルバーン]

SHALOCKMEMO1304
忘れられぬ抱擁 Melendez Fogotten Marriage
( Bride on Approval 2 ) 2010」
メラニー・ミルバーン 茅野久枝





 原題は「メレンデスの忘れていた結婚」
 舞台:ロンドン,セビーリャ
 ヒロイン:エミリア・ルイーズ・メレンデス(旧姓:シェルヴァートン)(27歳)/ホテルのバー「シルバー・ルーム」ピアニスト/小柄,手と脚は日に焼けていてお腹のたるみはない,灰色がかった青い目,蜂蜜色の髪/
 ヒーロー:ハビエル・メレンデス(?歳)/企業買収会社経営/長身,真っ黒な瞳,濃い眉,漆黒の髪,鼻筋が通り顎は力強く,深く豊かな声/
 成長譚を描いては力量を発揮するメラニーのちょっと前の作品です。このシリーズは2011年の邦訳が多く出ましたが,まだほとんどが未読ですが,「同意の花嫁」とするシリーズ名は,本当は同意していないのに・・・という言外の意味が含まれているのかもしれません。本作を読んでそんな感じを持ちました。記憶喪失ものと夫婦の復活を描いた作品ということで,斜麓駈の好きなテーマです。ロマンス度がちょっと高すぎる気もしますが,夫婦ものにはありがち。それよりヒロインが結婚していた間の2年間の記憶だけ都合良くなくなっていることが,ややわざとらしさを感じさせてしまい,他の方の読後感を読んでもあまり良い印象を本作に持っていないことが気がかりです。思えばヒーローもヒロインも親の子供に対する責任放棄のしわ寄せを受けて育ってきた,いわゆる愛情不足者たち。ヒロインはだからこそ夫の愛が欲しいと願っているのに,ヒーローはだから愛を信じちゃいけないと思っている,このすれ違いが,本作の中心になるテーマなのだと思います。かなり深い夫婦者をテーマにしているんじゃないかと思うのですが,これは舞台で演じたり映画化したりすると面白いなという感じがします。決して雪に閉じ込められた別荘での物語ではありませんし,それより逆に陽光に照りつけられるセビリア(訳ではセビーリャとなっていますが,セビリアという表記の方が慣れているので敢えてそうします)の大邸宅で繰り広げられる点では真逆なのですが,なんだか共通点があるような閉塞感を感じてしまうのは,舞台的な演出のせいでしょうか。表現が映像的なせいでしょうか。それでもヒロインのエミリア,ヒーロー,ハビエルのインナーワールドに読者を誘い込むメラニーの巧みな筆裁きによるものではないかという気がします。いつエミリアの記憶が戻っていくのかというサスペンス要素もその要因になっているような気がします。その面で,本作を記憶喪失ものにしたメラニーの術中に易々と嵌まってしまったのかもしれません。妊娠と流産,その事実を淡々と告げる医師たちのドライな言動も逆に客観性を感じさせ,ヒロインを嫌う家政婦の言動もちょっと不気味な雰囲気を感じさせます。唯一明るい面はエミリアとハビエルの妹イザベラとの心の交流ですね。最後はハビエルの背中を押すイザベラがとても爽やかで,温かく,本作を兄への思いやりと幸福感を感じさせるハッピーな役柄を一人で背負っている感じがします。
 MB版の表紙イメージのモデルさんのお腹のすっきり具合がすごく綺麗で,背後の男性モデルさんの腹筋の割れ具合と合わせて,とても目につく作品です。エミリアの風貌は最低限しか表記されていないのですが,この表紙イメージを見ただけでヒーローがなぜ惹かれたかがイメージできる点がいいですね。


タグ:ロマンス
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白馬の騎士の誘惑 [メラニー・ミルバーン]

SHALOCKMEMO965
白馬の騎士の誘惑 The Valquez Seduction 2014」
メラニー・ミルバーン 柿沼摩耶





前作「大富豪と裏切りの薔薇(SHALOCKMEMO934)」に続いてヴァルケス家の弟ルイスと富豪の跡取り娘で小学校幼児クラスの担任教師デイジー・ウィンダムのラスヴェガスでの4日間の休暇ロマンスを中心に描いた作品です。原題は「ヴァルケスの誘惑」。前作のヒロイン,テディも自立した自分の世界を持った女性でしたが,本作のヒロイン,デイジーもお茶目で自然でちょっといたずら心をもった少女のような純真さ気質を持つ素敵な女性です。テディは足の故障で自分に対する自身を亡くしていましたが,本作のデイジーもまた,過保護すぎる父親からの自立を目指しながらもたった一人の家族の父を大切に思うという気持ちをもち,そしてモデルのような体型ではなく,ちょっと油断するとすぐポッチャリしてしまうことを気にしているという面を持っています。子供を自分のおもちゃのようにしか扱わないヴァルケス兄弟の母と何でも自分の思い通りに娘をしたがるデイジーの父親,という点で二人の共通点が明らかになると,二人の間では小さな秘密を共有し合うというゲームのような会話が弾んだり,これまで一夜の関係しか女性と持ったことのないルイスがデイジーに対しては特別な女性として欲望を自制しようとするなど,一つ一つのエピソードがとても可愛らしく優しさにあふれているため,とても暖かくユーモアにあふれた二人の姿を通して幸せな気分になれる作品です。とても大切に育てられてきたデイジーが一人の大人の女性としてルイスの姿を通して自分を確立していく成長譚としても優れた作品だと思います。オススメの1作!


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大富豪と裏切りの薔薇 [メラニー・ミルバーン]

SHALOCKMEMO934
大富豪と裏切りの薔薇 The Valquez Bride 2014」
メラニー・ミルバーン 平江まゆみ





「アルゼンチンのプレイボーイ」連作の第1巻。原題は「ヴァルケス家の花嫁」。アルゼンチンでポロ用の馬の繁殖を始め広大な土地を所有する富豪のアレハンドロとルイスの兄弟のロマンスを描いたシリーズです。絶世の美女を母親に持つ兄弟ですが,子育てには向かない女性エロイーズに捨てられ,父親が怪我で車椅子の生活になってしまい,家業を継いだアレハンドロはまだ10歳の時だったのです。懸命に働いて現在の富を築いたものの,女性とのつきあいは長くても2週間しか持たないという状況になってしまいます。ルイスについては数日しか同じ女性とのつきあいが出来ない青年に育ってしまいます。しかしたくましいからだとセックスアピールを持つ二人。剽軽なルイスと生真面目で傲慢なアレハンドロ,対照的な二人ですが,兄弟仲はよく両親に見放されて二人で成長してきた二人の信頼関係は強いものがあります。テオドラ・マールストーン,通称テディは10歳の時の落馬事故で足が不自由になってしまい,女性として着飾ったり化粧したりすることもなく一人で家にこもり,児童書の挿絵画家としてイギリスの領主館で育った26歳。パーティでも常に壁の花となり,息子が欲しかった父親から娘だったことでいつも非難され,早くに母親を亡くしたことから家政婦や執事が面倒を見てくれて成長してきました。その父が亡くなり遺言で,財産を受け継ぐには条件を付けられてしまいます。それは,自分の死後1カ月以内にアレハンドロと結婚することでした。テディが16歳の時一度アレハンドロとはイギリスで出会っていたのですが,彼は全くテディに気づいてもいませんでした。互いにほとんど知らない相手と結婚しなければならなくなった二人は初めは反発し合います。テディはどの弁護士に聴いても遺産を手にするには結婚以外にに方法がないこと,さらにアレハンドロの方にも,もともとヴァルケス家が持っていた土地をテディの父に奪われ,それを取り戻すには結婚するしか道はないことを知り,イギリスにすっ飛んできて,二人の間の初めのぶつかり合いがあります。翌日を期限にされて,ついには遺産のため,それはマールストーン家を維持するために働いてくれた人たちの仕事を維持することにもなるため不承不承結婚を承諾するテディ。しかし,アレハンドロの男性的な魅力にも負けないようにするためなにかと意志を強く持とうとするテディを,これまで自分が女性から反抗されたことのないアレハンドロは逆に魅力を感じ始めるのです。簡単に結婚の書類を整え,法的に夫婦になった二人ですが,半年後には離婚することで合意していました。アルゼンチンに渡りヴァルケス家で暮らすことになったテディですが,傲慢で自分の主張を通すことばかりしていると思っていたアレハンドロが時折魅せる優しさ,男性的な魅力に次第に愛を感じ始めるテディ。自分に自信がないため自分をよく見せようともせず,自分の財力ではなく人間としての自分を知ろうとするテディに,これまで付き合ってきた女性との違いを感じ取ったアレハンドロ,二人の間にいつしか,互いが抱えていた親から見放された心の傷という共通点があることに気づき,深い愛が芽生えていくのでした。やがて,偽りの結婚から本当の結婚にと考え始めたアレハンドロがそのことをテディに伝えようとしていたとき,アレハンドロの母がフランスから帰国しルイスの家でパーティを開くことになります。パーティに訪れた二人に対してエロイーズはテディに対して蔑みを持って接し,外の空気を吸おうと足を踏み出したところを踊っていたカップルにぶつかられテディは倒れてしまいます。せっかく少しずつ女性として自信を取り戻しつつあったテディは,この出来事にすっかりショックを受け,イギリスに帰ると言いだし,アレハンドロも説得をあきらめてしまいます。テディの父の自分の死後までも娘を苦しめようとする企てを始め,このアレハンドロの母エロイーズの心ない行動と言い,全くひどい人たちもいたものだと思います。でも障害が大きければ大きいほど愛も強まるのですね。
イギリス版ハードカヴァーの表紙にはテディの髪を結い上げて,きりっと前を見据えるパーティ衣装の素晴らしく美しい姿が映されていますが,この美貌で自分が十人並みの器量しかないと思っていたとすると,これに内面の美しさが加わった彼女にアレハンドロが惹かれてしまうのも無理はないなと思います。
プライドを持たなければ生きていけなかった二人のプライドがぶつかり合う場面が緊張をはらみ,うまく自分を表現できなかった二人が互いの心の傷に理解と信頼を示し愛し合うようになる経過が暖かく描かれた作品です。次作では弟ルイスとラスヴェガスの教師デイジー・ウィンダムとのロマンスが描かれます。


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あなたに捧げる愛の詩 [メラニー・ミルバーン]

SHALOCKMEMO880
あなたに捧げる愛の詩 At No Man's Command 2014」
メラニー・ミルバーン 馬場あきこ





また魅力的なヒロインの登場です。アイーシャ・アダムズ。音楽の才能を持ちながら,どうしようもない義父に暴行を受け,15歳で家を飛びだしてから10年。生活のためにラスベガスのクラブ歌手をしていました。そして出会ったクリフォード・チャレンダーとマスコミに身持ちの悪い女としてスクープされ,チャレンダー夫妻の離婚の原因を作ってしまいます。ことごとく男という男に不幸にされ続けてきたアイーシャ。しかしクリフォードの元妻ルイーズからは,そんなマスコミの作り上げたアイーシャではなく,本当のアイーシャは音楽の才能あふれる優しい女性であることが見抜かれ,マスコミから逃れるためにスコットランドのハイランド地方にあるロッホバノン屋敷に滞在する許可を得るのでした。そこに,夫妻の息子ジェームズがやってきます。祖父が興し,父クリフォードがすっかり傾かせてしまった事業を立て直し,富豪に上り詰めたジェームズは,良家の子女フィービー・トレントンと婚約間近と噂されていましたが,父を堕落させ,両親の離婚を誘引した自堕落な女アイーシャを目にしたとき,ジェームズはその魅力に負けまいとしなければならないほど,惹かれてしまうのでした。真面目一方のジェームズが自分に魅力を感じているとは知らない,もし魅力を感じていたとしても自分との将来はあり得ないと思い,ジェームズをからかいながらロッホバノン屋敷で奇妙な同居生活を始めてしまうのでした。そして腹いせにありもしない二人の関係をネットに公開してしまうのです。ジェームズもさらに,二人が婚約したと偽の情報を流し,復讐するのですが・・・。常に自分をからかうアイーシャに対して,母ルイーズがなぜ憎むべき相手と連絡を取り合っていたのかを疑問に思ったジェームズは,夜アイーシャがうなされているのを目にして,アイーシャの隠された姿があるのではないかと思い始めます。そしてこれまで誰にも秘密を打ち明けたことのないアイーシャも,ジェームズに過去のいまわしい経験と傷ついた心を徐々に打ち明けるようになります。あくまで偽の婚約をなんとか本物の二人の関係に発展させたいと思ったジェームズは,パリでの仕事にアイーシャが同行するように求めます。しぶしぶながらのパリへの旅立ち。そして参加したパーティで,トラブルに見舞われた歌手の代わりにアイーシャが演奏を求められ,断ればジェームズの仕事に多大な影響を与えてしまうことを知ったアイーシャは,ジェームズも知ってしまった自分の作った曲とジェームズへの想いを込めた新曲を披露します。涙を流しながらその曲を聴いたジェームズはアイーシャへのプロポーズをする決意をするのですが・・・。
優れた容姿とセクシーな言動をしながら,男性を信用しないアイーシャが,ジェームズによって次第に本来の自分の姿を取り戻していく過程と,本当に信頼できる男性との出会いをとおして,愛を取り戻していく姿が美しくも感動的に語られる傑作です。


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プレイボーイ富豪の肖像 [メラニー・ミルバーン]

SHALOCKMEMO840
プレイボーイ富豪の肖像 Playboy's Lesson
ホテル・チャッツフィールド 2) 2014」
メラニー・ミルバーン 中村美穂





シリーズ「ホテル・チャッツフィールド」の第2弾です。
ロンドンの高級ホテル「ホテル・チャッツフィールド」のオーナー,ジーン・チャッツフィールドには複数の女性との間の多くの子供がおり,シリーズでは子供たちやホテル従業員たちのロマンスが描かれるのではないかと思います。本作では,プレイボーイとして名高い双子の弟ルッカがプレタール公国にあるチャッツフィールド・ホテルで,公国の長女マドレーヌ王女,後々女王となる予定の王女の結婚式のための準備リーダーとして,妹王女シャルロット(ロッティ)と協力して結婚式の準備に当たる間にロマンスに落ちる物語です。舞台となる公国のホテルの他,モンテカルロのチャッツフィールド・ホテルも登場し,初めは反発し合っていた二人,というより反発していたロッティ王女が,表面的なルッカの行動より,画家としての才能や優しく人を気遣う性格を見抜き彼を愛するようになる成長譚になっていて,爽やかな読後感を満喫させてくれる作品になっています。人に注目されることを極端なまでに嫌っていたロッティがルッカによって大きく変貌し,過激なまでに美しくなっていくのが克明に描かれ,彼の描く絵の画面が目に見えるかのように想像できるところも作者の筆力のすばらしさだと思います。おすすめの一作です。


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賭けられた花嫁 [メラニー・ミルバーン]

SHALOCKMEMO839
賭けられた花嫁 Never Gamble with a Caffarelli
(カッファレッリ家の祝祭 3) 2013」
メラニー・ミルバーン 中村美穂





三部作の最終巻です。末っ子レミーと宿敵アンジェリーク,祖父の代からの因縁の二人ですが,実はアンジェリークは15歳のときからレミーに恋し続けていたのでした。しかし,二人は出会う度に口げんか。しかもレミーはアンジェリークの父アンリ・マルシャンとのカードゲームでアンジェリークが母から譲り受けたタラントロッホ城をせしめ,因縁の対決に決着をつけたのでした。こんどはアンジェリークがレミーに城を返して欲しいと懇願に行きます。レミーが滞在していた大学時代の友人の砂漠の国の皇太子のところでは,未婚の男女が一緒の部屋に付添なしでいることは死罪に当たるという厳しい国柄。それを知らずにレミーのホテルのスイートルームに忍び込んだアンジェリークは,警備人に見つかってしまいます。とっさの機転でレミーはアンジェリークが婚約者だと偽りを述べてしまいます。そして,真実を告げる暇もなく二人の結婚式が行われてしまうのでした。水着モデルとして抜群のスタイルと美しさを持つアンジェリーク。しかしその姿は彼女の真の姿ではなく,父親に反抗するために自ら作り上げた虚像でした。本当はデザイナーとして自分の才能を生かしたかったのです。服を着る方ではなく作る方が自分の最終目標でした。レミーはホテルチェーンを持つロバート・メイプルトンから安価でチェーン店を譲り受けるチャンスをつかみ,これまでの彼の取り引きのうちで最大の取り引きをまとめようとしていました。そのため,タントロッホ城へメイプルトンを招待し,アンジェリークの手料理でもてなそうと考えていました。それを彼女が承諾するなら,デザイナーを立ち上げる資金援助をすることを餌にして・・・。メイプルトンを待つ間に豪雪降り,タントロッホ城は雪に閉ざされてしまいます。二人は互いに惹かれ合う気持ちを抑えきれずに関係を深めていきますが,男性と同じ権利を女性も持つべきだと考えるアンジェリークは関係でも常に対等を目指します。そんな彼女にレミーは惹かれていくのですが,自分の財産狙いの偽りの結婚だという想いから離れることは出来ません。メイプルトンとの交渉はアンジェリークのおかげでうまく進み,二人の契約結婚は終わりを告げようとしていました。そんなときアンジェリークの体に異変が起こり,妊娠か?となるのですが,二人の関係はこのまま終わりを告げてしまうのでしょうか。それとも妊娠をきっかけに永続的なものになるのでしょうか。いえいえそんな単純な終わり方はしません。最終巻らしく,アンリ・マルシャンがもたらした爆弾発言の後,レミーたちの祖父,そして兄たちのカップルも登場し,大団円を迎えるエピローグですが,「賭にでたんだ」という台詞とともに余韻を一杯に残したしゃれた終わり方で,本作としての結末もきっちりつけています。


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白馬に乗れない王子 [メラニー・ミルバーン]

SHALOCKMEMO837
白馬に乗れない王子 Never Underestimate a Caffarelli
(カッファレッリ家の祝祭 2) 2013」
メラニー・ミルバーン 柿沼摩耶





シリーズ第2弾。ラフェの弟ラウルはスポーツマン。スキーで脊髄を損傷するほどの大怪我を負い,自宅の城に閉じ困ってしまう。ポピーとの結婚を目前にしたラフェは,ラウルを結婚式に参列させるために理学療法士リリー・アーチャーを大金を投じて雇うことにする。車椅子生活を余儀なくされたラウルは人を寄せ付けず,回復への意欲も失っていて,リリーに対しても頑固に治療を拒絶する。しかし,会った瞬間から,リリーもラウルも互いに惹かれ合うものを感じつつもそれを素直に言い出せない理由を持っていた。ラウルの回復への意欲のなさと今の姿を他人にさらしたくない感情,そして婚約者に捨てられたという失望感,リリーは通常は女性の患者しか相手にしないできた療法士とのして方針。実はリリーは人に言えない過去の深い傷を持っていたのだ。治療は第一日目から暗礁に乗り上げてしまう。プールでの水中歩行の訓練から,二人の関係は急速に近づいて行く。
頑固者のラウルは元恋人のクラリッサ・モンクリーフに怪我の後捨てられたということにそれほどこだわっていませんでした。それを認めることは自分の現状や無力な姿を認めることになるからです。それをリリーにぶつけることによって苦しい訓練から逃げようとしていたのだろうと思います。しかし,プールでの一件からリリーの隠れた魅力に気づき,俄然がんばろうとします。時にはリリーがやり過ぎで反って体を壊すのでセーブするほどでした。また,リリーも過去に男性から痛められ,自傷行為に走った過去があり,自分には男性から相手にされないという自信のなさと思い込みがありました。当然治療期間を1週間,1カ月と区切って早く自分との契約を打ち切ろうとするラウルが自分に好意を抱いているはずがない,もし好意を抱いたとしても自分の体だけが目的で愛しているはずがないという気持ちが強かったのです。やがて車椅子のまま,ラフェとポピーの結婚式に参列したラウル。式にはリリーも連れて行ったのでした。式後のパーティで周囲の人々が自分とリリーの噂話をしているのを聞きつけたラウルは,それに腹を立て,同時に今後もこのような目で他人から見られるのではないかという怖れから,リリーに対して,即刻クビだとみんなの前で言ってしまうのでした。互いに愛する気持ちに気づいていながら,素直になれない二人。ロマンスの常套ですし,理学療法士と怪我を負った大富豪との組み合わせも決して目新しいものはありませんが,城で展開される静かで熱い物語に,ついつい引き込まれてしまいます。これも,ミルバーンの筆力のすごさでしょうか。


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彼がダイヤを贈るとき [メラニー・ミルバーン]

SHALOCKMEMO836
彼がダイヤを贈るとき Never Say No to a Caffarelli
(カッファレッリ家の祝祭 1) 2013」
メラニー・ミルバーン 中村美穂





シリーズ第1作の本作のヒーローはカッファレッリ兄弟の長男ラッファエーレ(愛称ラフェ)です。不動産業者のラフェが今回購入しようとしているのはダルリンプル卿の領主館。館と土地は購入できたものの,地内の家政婦の住む別館だけは,亡くなった元家政婦ベアトリス・シルバートンの孫娘ポピーが所有しており,いくら高額の金額を示しても彼女は別館を売ることに首を縦に振らないのでした。母亡き後幼少の頃から祖母とともに領主館で過ごすことが多く,ダルリンプル卿も自分の死後家政婦が暮らしに困らないようにこの別館を遺言で残したのでした。ポピーは近くの建物でカフェを経営しており,その経営も決して順調ではないのですが,愛着のある館を売ることはしたくないのでした。ラフェは部下任せにしないで自ら領主館に乗り込み,孫娘の情報収集に当たるために週末領主館を訪れ,カフェに立ち寄るのでした。会ったとたんに二人の間には電流が流れるような心の交流が生まれます。しかし,領主館を高級ホテルに改修しようとするラフェに,ポピーは初めから敵愾心を抱き,ラフェに対抗しようとしてきます。その後,2週間の休暇を取って頻繁にカフェを訪れるラフェ。カフェを訪れたのが世界的にも有名な富豪であることを知った従業員のクロエはポピーがラフェに惹かれているのを一目で見抜き,家を売る方がいいと説得しますが・・・。やがて領主館でラフェのために夕食を準備することを承諾するポピーですが,ラフェに惹かれつつも決してラフェに隙を見せまいと頑なになります。ポピーの飼っている3頭の犬たちもラフェに懐いてしまうのですが,ある夜,嵐がこの地方を襲い,家政婦館の屋根に大木が倒れ,屋根が大破してしまいます。ポピーを救うために館に駆けつけたのはラフェでした。この出来事ですっかりラフェへの警戒心を解いたポピーは家政婦館を売ることを決意するのですが,その時ラフェの携帯電話が鳴ります。ラフェの祖父からの呼び出しの連絡でした。一緒にいってラフェを慰めたいというポピーに,ラフェは,もう二人の関係は終わりだと告げるのでした。失意のポピー。二人の関係はどうなるのでしょうか。
物語の設定自体は特異なものではありませんが,ポピーの人柄,自分では意識していないポピーの美しさが見事に表現されていて,二人のハッピーエンドを望んでしまう筆力のある作品です。


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