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拒みきれない蜜の味 [エリザベス・パワー]

SHALOCKMEMO1039
拒みきれない蜜の味 A Delicious Deception 2012」
エリザベス・パワー 山本礼緒





正体を隠した新聞記者ロレイン・ハードウィックは,レイン・カーペンター(母の旧姓を使用)と名告ってキングズリー・クレイボーンの父ミッチェルに近づきます。キングズリー(キング)はレインを疑ってかかり,父を誑かしに来た若い女性と見なして警告を発するのですが,次第にレインに惹かれていきます。実はロレインの父グラントはかつてミッチェルと会社を共同経営して板の技術者だったのですが,開発した医療用ソフトウェア「ミラクルメッド」の所有権を会社のものにするという権利書にサインさせられ,失意のうちに亡くなってしまったのでした。復讐のためミッチェルのいるモナコに行き,事故を装ってパスポートも財布もなくしたことにして,ミッチェルの運転手としてアルバイトをすることになったのでした。かつて母を失い,若い後妻に誑かされたことを知っているキングはロレインの行動が何かしら含むものをもっていると感じて警戒したのでした。キングは「身長170センチ以上あり,スタイル抜群,かなりの美人,髪は赤褐色,クリーム色の肌と大きな目,ふっくらした唇と自信に満ちた雰囲気」をもつロレインに対してどうしても惹きつけられてしまう自分に驚きます。一方ロレインの方も復讐の対象であるクレイボーン家の実質的な経営者であるキングに男性としての魅力を感じてしまう自分を戒めながら,正体がばれないかと心配しています。7年前すでに父の会社でロレインはキングに出会っていたのですが,当時はがりがりのダサいティーンエイジャーであった自分と比べて,今ではすっかり別人のようになっている自分に気付かないようにとなるべくキングに近づかないようにしているのですが,何かと声を掛けられてしまいます。ロレインはそのころキングに憧れの気持ちをもちあらぬ妄想に駆られてもいたのですが,今また「十代のころにかかったたちの悪い熱病がぶり返し,身体が焼き尽くされそうな」思いをするのでした。しかも「彼は変幻自在のウイルスのように抑制がきかないばかりかもっと強力で致命的になって」しまうキングに対し「完全に彼のものになるしか」ないが「一度一線を越えてしまったら最後には手の施しようが内ほどの中毒になる」という思いにさせられてしまうのでした。ロレインの正体は予想外のところからバレてしまいます。キングに取材に訪れた記者が元同僚記者のネルソン・ファラデーだったのです。本名で呼ばれてしまったロレインは,正直に正体を打ち明け,父の被った仕打ちに対してキングを責め立てたのでした。しかしキングはそれを信じようとはしません。そしてミッチェルに真偽をたずねたキングはロレインの言うことが真実であり,さらにロレインも知らなかったミッチェルとグラントの確執を話されるのでした。これをロレインに告げたら彼女が更に苦しむことになると考えたキングですが,ロレインがモナコを去ろうとすることを止めるためには話さざるを得なくなるのでした。キングとかつて付き合っていたソフィー・リングウッドとの関係をロレインにたずねられて即座にソフィーとは別れたことを告げたキングですが,ロレインは傷ついた表情を見せるのでした。さらにロレインはキングの仕事の手伝いもしてその能力の高さを証明して見せました。ところが,ネルソンによって新聞に大々的に報じられたキングの新たな恋人出現の情報でマスコミが押し寄せます。かつての父親同士の会社でのトラブルも報じられ,すっかりロレインを疑ったキングに対して,弁解をするものの信じてくれません。キングの元を去るロレイン。
イギリスに戻ったロレインをさらにおおきなトラブルが襲います。キングの子を妊娠してしまったのでした。スーパーで買い物をしてレジで困っているところにキングが現れます。さらに自分を責め立てようとするのか,と不安な気持ちでいるうちにロレインは悪阻をキングに気付かれてしまいます。新聞記事のことで自分を信じてくれないキングと関係を復活させるわけにはいかないと頑なになるロレインですが,キングがかつて母に捨てられ愛を信じられなくなっていることに気付き,ロレインはキングの申し出を受け入れるのでした。
復讐譚が一転してロマンスにというストーリー展開はありがちですが,本作では人の命にかかわるものではなく,ソフトウェア開発という現代的なテーマを使うことでそれほど激しい復讐譚にはならなかったのですが,一人の女性を取り合うという点で大きな要素が盛り込まれています。最後のハッピーエンドは人を愛することができるようになったキングとロレインとの幸せな未来が示され,温かい気持ちにさせられる作品です。


タグ:ロマンス
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こぼれ落ちた月日 [エリザベス・パワー]

SHALOCKMEMO1038
こぼれ落ちた月日 Ruthless Reunion 2006」
エリザベス・パワー 秋元由紀子





「消せない一夜の宝物(SHALOCKMEMO1030)を読んで,エリザベス・パワーをもう少し読みたいなと思い本作を手にしてみました。ブリストル生まれで現在もこの町で暮らしているという作者の骨太なストーリー展開が気に入りました。原題は「無情な再会の集い」とでもなるのでしょうか。バミューダのホテルで開かれているパーティで出会ったカメラマンのサンチア・スティーヴンスと法廷弁護士のアレックス・セイバー。アレックスはカメラを構えているサンチアを一目見てその美貌に惹かれます。「すらりと背が高く,年齢は20代前半。たっぷりした漆黒の髪と豊かな胸,自信に満ちた冷静な女性」と一目で見て取ったアレックスは「天使の顔,いや妖精の顔,磁器を思わせる肌,弧を描く眉,黒く長いまつげに縁取られた蠱惑的な切れ長の目」の彼女と二人だけになったような錯覚に陥ります。彼女の方もカメラを下げてアレックスの方を呆然と見つめています。サンチアもまた「バミューダの太陽で焼けた肌に目を見張るほどの端正な容姿と全身から発散される権威の香り」をアレックスに感じ,背筋がぞくっとしてしまいます。「一杯おごらせてもらえるかな?」と声を掛けるアレックスの言葉を断り,「もう一杯いかがですか?」と言い換えさせてしまうサンチアの美しさにアレックスはこの時から運命を感じ取ったのかもしれません。そして彼女の方から後ろを振り返りもせずエレベーターに乗り込み,アレックスが割り込んできても断りませんでした。エレベーターの中からすでに求め合う二人。ベッドを共にした後で「36歳の法廷弁護士の身で責任感と常識を兼ね備えているはずなのに,彼女に対する欲求で,そんなものは跡形もなくなった」と状況に戸惑うアレックス,そしてサンチアもまた本来新婚旅行で訪れるはずだったバミューダで見知らぬ男性と一夜の関係を結んでしまうことなど考えもしなかったことに呆然としてしまいます。
こんな幕開けで始まる本作ですが,冒頭ですでに読者の心をしっかりと掴んでしまう見事な筆力です。ここからは現在と過去が同時進行していくストーリー展開です。名前も告げずに逃げるようにバミューダを去り,イギリスに戻ったサンチアは,陪審員を求められ,市民としての責任という一般的な義務感から法定で宣誓しようとしていたところを被告人側弁護士から忌避権行使の申し立てを受けます。この弁護士こそアレックスだったのです。「裁判の当事者とかかわりがある者は陪審員になれないという規則になれない」と言われ,サンチアは驚きます。実はサンチアはこの時事故により記憶を失っていたのでした。アレックスはサンチアの記憶を取り戻す手伝いをしようと申し出ます。サンチアはロンドンで庭付きのアパートで暮らしていますが,隣人で30歳の離婚経験者ジリー・ボストンと親しくしていました。アレックスを見かけたジリーはゴージャスな男性にサンチアが怖れを抱いているのを慰めます。そして二人の再会が初めて会った男女のように少しずつ前に進んでいく形で進んでいくのですが,それは過去への逆行でもありました。アレックスはサンチアの記憶回復を急ごうとはしませんでした。記憶が戻りかけるとサンチアが苦しむことが分かったからです。バミューダからサンチアが去った後,アレックスはサンチアのことを調べたのでした。しかしサンチアの勤務先を訪ねたアレックスにサンチアは冷たく当たります。それはサンチアも動揺するアレックスには知られたくなかった秘密があったからでした。あの夜サンチアはアレックスの子供を身ごもったのでした。そしてその子を失ってしまったことを知ったとき,茫然自失で道路に飛びだし事故に遭ったのでした。この出来事に関係したことがでてくるとサンチアは拒絶反応を示すのでした。悲しい出来事から自分を守るためにサンチアの脳が命じるからでした。このような心因性の記憶障害と身体的反応が克明に描かれていきます。休暇を兼ねた出張で再びバミューダを訪れるアレックスはサンチアを誘います。記憶を取り戻す可能性を考え,サンチアはこの申し出を受けます。そしてアレックスの友人である神経科医と面接をしたりしながらのんびりとバミューダのアレックスの自宅で過ごすうちに,嵐に出会ったり,元婚約者の裏切りなどを思い出していきます。そして全ての記憶が戻ったのでした。元婚約者こそ,アレックスの腹違いの弟だったのです。この不思議な出会いを運命と言うのでしょうか。アレックスもその事実を知っていながらサンチアの苦しみを理解していくことができるのでしょうか。記憶が戻ったサンチアのもとにまたまた大きな障害が現れます。アレックスを狙うヤズミンという女性の出現です。かつてヤズミンはアレックスとサンチアの幸せを邪魔したのでした。それが事故の大きな原因となっていたのですがバミューダに再びヤズミンが現れたのでした。次々に障害が現れるアレックスとサンチアの関係ですが,運命の相手とは障害が多くそれを乗り越えることでますます愛が深まるドラマチックな展開になっていきます。「高等法院の弁護士を誘惑した罪がどの程度か知ってるかい?」「終身刑でしょうか閣下。」「お行儀良くしていたら減刑を認めていただけますか?」「行儀良くしていたらその分長く閉じ込めておく」という終末の会話がとてもしゃれている作品です。


タグ:ロマンス
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消せない一夜の宝物 [エリザベス・パワー]

SHALOCKMEMO1030
消せない一夜の宝物 Visconti's Forgotten Heir
 2013」
エリザベス・パワー 水月 遙





マジェンタ・ジェイムズは一人息子セオのために是非ともこの仕事が必要でした。一部の記憶喪失。昏睡状態のまま生んだ一人息子セオ。そして,セオと自分の面倒を見てくれた大伯母のジョージー・アシュトンと3人で暮らしているものの,努力して周囲の人々との関係を作り上げてきたのでした。面接会場で,自分の経歴を話し終わって,人事部長も間違いなく自分を採用してくれるだろうと思っていたとき,会場に現れた男性を見て,マジェンタは驚きの表情を隠せませんでした。ホテルチェーンのCEO,アンドレアス・ヴィスコンティ,そしてセオの父親。若かったマジェンタは貧しい料理店の手伝いだったアンドレアスと付き合い,モデルとして自分のキャリアを掴もうとしていました。マーカス・ラシュフォードという事務所経営者が自分に声を掛けてくれたときは,大喜びします。しかもアンドレアスの両親や兄から二人の交際を反対されていたマジェンタはマーカスの誘いに喜んで応じます。裏切られたと思ったアンドレアスは,アメリカに出奔し,チャンスを掴んで現在の地位を得たのでした。面接会場でアンドレアスはマジェンタを採用しないと言い放ちます。ところがアンドレアスのオフィスで,マジェンタは彼の個人秘書になることを求められるのでした。さらにマーカスとの関係を詰問されるに至っては,イッソこのまま帰ろうかと思ってしまいます。アンドレアスがマジェンタの記憶喪失を知らないことは明らかでした。そして一人息子がマーカスの子供であり,マジェンタがアンドレアスを捨てたようにマーカスから捨てられたとすっかり誤解しているのです。復讐のため自分を個人秘書にして苦しめたいのだということは明らかでした。しかし息子が全てであるマジェンタは,アンドレアスがセオを父親であることを知ったらきっと自分からセオを取り上げてしまうだろうと思い,その誤解を解くわけにはいきません。さらに息子との生活を安定させるためにはこの職場をあきらめるわけにもいかないのです。苦悩するマジェンタにアンドレアスは次々に理不尽な要求をしていきます。しかしアンドレアスは未だにマジェンタに惹かれている気持ちを,マジェンタもまたアンドレアスに惹かれていく気持ちを抑えることはできません。こうして奇妙にねじれた二人の関係は次第に変化していくのでした。
復讐譚,初恋の幼なじみとの年数を経た再会,未だに互いを忘れられない気持ちと子供の存在など,ロマンスの要素をふんだんに取り入れた作品です。Mills and Boon社の表紙のイメージモデルはどちらかというと幼さを失わない美女ですが,邦訳版の表紙のイメージモデルは大人びたゴージャスな感じにあふれています。作品の雰囲気からして邦訳版の方がふさわしい気がしますが,好みからするとMB版の方が雰囲気がいいですね。


タグ:ロマンス
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愛と偽りのギリシア [エリザベス・パワー]

SHALOCKMEMO853
愛と偽りのギリシア A Greek Escape 2013」
エリザベス・パワー 山本みと





婚約者にひどいことをされて捨てられ,傷心の思いを癒やすために親友の別荘のあるギリシアの島にやってきた経理担当者のケイラ・ヤングがヒロインです。島で写真を撮っているとき偶然出逢ったセクシーな男性レオンに惹かれ,もはや離れられないと思えるほど深い関係になった矢先,レオンの正体がわかり,二重の意味での傷心を抱えてイギリスに戻ってきたケイラ。数日後会社を訪れた取引先のVIPの顔を見た瞬間,ケイラは衝撃を受けます。親友ジョシュ,ローナ夫妻の会社を救う重要な契約を持ってきたのはあのレオンだったのです。レオンの正体は大手企業グループの総帥,レオニダス・ヴァサリオ。島の肉体労働者だと思っていたレオンの正体を知ったとき,まただまされたことを知ってすぐに離島してから,もう男性を信用する気がないと思っていたのに,レオニダスの魅力を再び思い出すケイラでした。しかし,自分のプライドに賭けてレオニダスの言いなりにはなるまいと思ったケイラでしたが,自分と会社の契約を種に自分に近づこうとするレオニダスの申し出は断ることが出来ませんでした。翌日にはレオニダスの屋敷に引っ越し一緒に住むという状況の中で,ケイラはレオニダスの誘いを強くはねつけ接触を最小限にするのでした。レオニダスもまたそんなケイラの気持ちを尊重し夜もベッドに誘おうとしません。それが逆に欲求不満になっていくケイラ。
お金や物に満たされるよりも愛を求めようとするケイラと,愛は人を弱くさせると父親から徹底して仕込まれたレオニダスが,互いの過去を乗り越えて二人の愛を見つけていこうとする激しくも優しい物語です。島で次々にトラブルに見舞われたとき助けてくれたレオンを忘れることが出来ず,再度島を訪れたケイラがレオンの育ての女性フィロミーナの死によって傷心していることを知ったケイラがレオンの家を訪れ,そこで見た一枚のスケッチがもっともドラマチックで目に浮かぶようなクライマックスを感じさせます。


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