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侯爵に甘いキスの作法 [ローラーリー・ガーク]

SHALOCKMEMO623
侯爵に甘いキスの作法  2008」
ローラ・リー・ガーク 森なおみ





ローラ・リー・ガークのガール・バチェラー(女相続人)シリーズの第3弾です。前作ではお針子プルーデンス・ボズワースと公爵,リース・ド・ウィンターがヒロイン・ヒーローでしたが,本作では公爵夫人となったプルーデンスがヒロイン,マリアの相談に乗ったり恋の後押しをしたりということで登場しています。
ヒロイン,マリア・マーティンゲイルはヒーローのフィリップ・ホーソンの屋敷の料理人の娘として幼いころからフィリップと弟のローレンスといたずらをしたり,面倒を見てもらったりしていましたが,父の死後侯爵位を継いだフィリップが堅苦しくスノッブになっていくことや,マリアの父が亡くなり,自活していく必要に迫られたりしたことで,料理・菓子作りの勉強のため,イギリスを離れフランスに留学していきます。有名なホテルのパティシエ見習いとして,というよりは,実際は女性がパティシエとして認められないということから,自分の店をもち,自分の能力を生かそうとします。そして環境としても物件としても素晴らしい空き店舗との契約をしようとしたとき,12年間出会わなかったフィリップに偶然出会ってしまいます。実はフィリップは,マリアが借りようとしていた店舗のあるビルのオーナーだったのです。しかも,弟のローレンスも屋敷の改修中,そこに住んでいるというではありませんか。マリアがロンドンを離れるきっかけになったことの主な原因は,ローレンスとグレトナへ駆け落ちしようとしてフィリップに見つかり,1000ポンドを受け取って別れさせられたのが直接のきっかけだったのです。ローレンスはアメリカの造船王の娘との結婚話が持ち上がっているところでもあり,焼けぼっくいに火がつくことを恐れたフィリップは,再びマリアに他所に行くように迫るのでした。しかし,その背景には,幼いころ面倒を見て,弟と駆け落ちしようとしたマリアに対する深い想いがあり,身分違いの二人には将来はないと思い込んでいるフィリップ側の事情もあったのでした。
紆余曲折を経て,フィリップもマリアも互いに対する気持ちが今も続いていることに気付いていきますが,自立を認めようとしないフィリップに対する怒りをもつマリア,言うことを聞こうとしないマリアにいらだちを隠せないフィリップの立場から来るすれちがいに,読者もやきもきさせられます。マリアの友達のプルーデンスらの気遣いで,何度か互いの気持ちに気付かせられる場面はあるのですが・・・。
このシリーズ独特の中産階級の娘と貴族階級の若者という階級の違いを乗り越えた愛が次第に認められようとしているイギリス社会を背景に,そうはいっても自分のこととして見た場合になかなかその違いを乗り越えて愛を成就させるのが難しいのだという作者のメッセージがしっかり伝わってくる作品です。


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