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愛を拒む大富豪 [マヤ・バンクス]

SHALOCKMEMO1139
愛を拒む大富豪 Undone by Her Tender Touch
誘惑された花嫁 4) 2012」
マヤ・バンクス 八坂よしみ





 シリーズ最終巻です。前作「愛を知らない花婿(SHALOCKMEMO1138)」のヒロイン,アシュリーの親友ピッパは,アシュリーの夫となったデヴォンの親友キャメロン(キャム)・ホリングワースと視線を絡み合わせパーティから抜け出します。そして一夜を共にするのですが・・・。翌日キャムから連絡があり,避妊具に欠陥があったことを知らされます。ひょっとしての可能性はすぐにはでませんが,かつて妻とひとり息子を事故で亡くした経験のあるキャムはピッパに過保護なほど様々な援助を申し出てきます。実はキャムは過去の経験から立ち直ることができずにおり,ピッパとの関係も一夜のことと割り切って欲しいと事前に言っていたので,ピッパとしてもキャムのこの反応は意外に感じていました。それからは二人の間の心のすれ違いが物語の中心になります。キャムとしてみれば「愛したりしなければ君の身に何かあっても傷つかないですむ。君を愛さなければどんなものにも影響を受けずにすむ。目の前で妻と子をなくしたときの気持ちを二度と味わいたくないんだ。」という気持ちで,その言葉を面と言われることで,ピッパの心は傷つきます。そして,アシュリーを含めたピッパの親友たち,さらにはデヴォンにも総スカンを食ってしまうキャム。キャムに開いてもらった念願のカフェが大成功を収め,疲れ果ててアパートに帰り着いたピッパはソファで寝入ってしまいますが,夜中に焦げ付く臭いを感じて目を覚ますと火事の炎が迫ってきていたのでした。気丈に姿勢を低くして煙を吸い込まないようにして脱出できたピッパはキャムがパニックに陥りながら自分を追いかけてきたことを知らないでいました。病室で母子ともに無事でホッとしたピッパは,キャムの入室を断ります。修復不可能に思えた二人の関係は,どうなるのでしょうか。退院後住居を失い,アシュリーの実家に引き取られたピッパのもとを連日キャムが訪れてくるのですが,キャムの本音は・・・。
 エピローグでは,おおらかで常に前向きで明るいピッパの性格をはっきり示すエピソードで幕を閉じます。読後感の素晴らしいシリーズです。


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愛を知らない花婿 [マヤ・バンクス]

SHALOCKMEMO1138
愛を知らない花婿 Tempted by Her Innocent Kiss
誘惑された花嫁 3) 2012」
マヤ・バンクス 深山ちひろ





 シリーズ第3弾。デヴォン・カーターはコープランド家の一人娘アシュリーと,企業合併を条件にアシュリーの父ウィリアム・コープランドの提案により,アシュリーを誘惑して結婚にこぎ着けることにします。数回のデートと優しい言葉でアシュリーはすっかりデヴォンの虜になり,結婚を承諾するのでした。慌ただしく行われた結婚式。コープランド家の親戚一同とデヴォンの友人たち,そしてアシュリーの親友たちの見守る中二人は幸せの絶頂の中で結婚式を挙げます。アシュリーに真実を告げた方がよいのではというデヴォンの言葉をアシュリーの父はずっと隠しておくようにとデヴォンに約束させていたのでした。知らなかったのはアシュリーとその親友たちだけ。デヴォンは友人たちには勿論事情を打ち明け,そして,それでいいのかと疑いの目を向けられていたのですが・・・。やがて新婚旅行に出かけた二人ですが,喜び勇んだアシュリーは偶然デヴォンのパソコンをひっくり返してしまい,壊れていないか調べているうちに父と夫が交わした裏取引を知ることになります。天然なほど純真で喜びにあふれ,なんでも思ったことを口に出してしまうお嬢様育ちのアシュリーに,デヴォンはこれからは妻としての慎みを身に付けて欲しいと,アシュリーの欠点をそれとなく仄めかします。二人は婚約がきまってからすでにデヴォンのフラットで同棲していました。そのころはデヴォンが自分を愛していることを信じて疑わなかったアシュリーですが,裏取引と自分の欠点を取り上げるデヴォンとの結婚がうわべだけのものになるではないかという怖れを抱きます。このまま一生耐えていけるだろうか・・・。それがストレスとなり,頭痛が続いたため,新婚旅行は二日で切り上げてデヴォンのフラットに戻ったのでした。デヴォンが仕事で出かけたために,涙ながらに実家に顔を出したアシュリーは母に悩みを打ち明けざるを得ませんでした。そして母と父が一時別居していた時のことを尋ね,夫婦の有りように難しさを再認識するのでした。親友ピッパの元を訪れ,さらに悩みを見抜かれたアシュリー。体調が優れない理由を指摘され,翌日親友に付き添われて婦人科の医師の診察を受け,妊娠が判明します。アシュリーは思い切ってデヴォンの会社を訪れ,デヴォンにこのことを告げるのですが・・・。
 本来のシュリーの美点を自分の好みに変えていこうとしたデヴォンと,純粋に自分を愛してくれる男性との結婚を夢見たアシュリーのすれ違いから,二人がどんなきっかけで,そしてどんな方法でデヴォンがアシュリーの信頼を取り戻していくか。その思いがけない方法がシリーズの中心となるテーマですが,本作でもそれを裏切らない巧みな方法が示されていきます。そしてなにより天真爛漫で愛にあふれたアシュリーの魅力が満載のオススメの作品です。


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憎いのに恋しくて [マヤ・バンクス]

SHALOCKMEMO1137
憎いのに恋しくて Wanted by Her Lost Love
誘惑された花嫁 2) 2011」
マヤ・バンクス 藤峰みちか





 シリーズ第2作です。前作「忘却のかなたの楽園(SHALOCKMEMO1028)」を読んでから大分経つので(マヤ・バンクス作品をこれ以降読んでいませんでしたね),シリーズ一気読みはできなくなりましたが,邦訳も毎月というわけではないので,これも仕方ないことかもしれません。さて,四人の富豪たちのロマンスの第2弾はライアン・ビアズリーがヒーローです。全編読んで,ライアンのなんとも間抜けな恋愛観に唖然としますが,人の気持ちにこれほど気付かない人が会社経営で成功するはずがないのですが,それでも,あの母親の元で育ったとすればなるほどとうなずける性格です。一方そんなライアンに夢中になってしまったヒロインのケリーは,まだ若い,大学生。ライアンやその家族たちの本性に気付かないままライアンに夢中になってしまったことも仕方ないことかもしれません。それにしてもライアンの母親の俗物ぶりと弟ジャロッドの何とも我が儘な性格は,父親を早くなくして一家を支えていかなければならなかったライアンにとっては,自分がそんな家族の面倒を見なければという責任感から来ていたことは想像に難くありません。そして,最後には愛が勝つのですね。ラストの何とも小気味よい終わり方が素敵な作品です。


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忘却のかなたの楽園 [マヤ・バンクス]

SHALOCKMEMO1028
忘却のかなたの楽園 Enticed by His Forgotten Lover
誘惑された花嫁 1) 2011」
マヤ・バンクス 小林ルミ子





 マヤ・バンクスのコンテンポラリーも読んでみたいなと思って目にとまったのがこのシリーズ,「誘惑された花嫁」4部作でした。第1作の本作は先祖から譲り受けた海辺の土地にリゾート建設の計画,静かな町の発展か自然のままの維持かという選択と,それにからむ男女のロマンスを描いた作品です。テキサス州ガルベストン州の海に浮かぶ小島ムーン・アイランドの浜辺の所収者ブライアニー・モーガンは所有地の税金が負担になってきて土地を売りに出します。飛びついてきたのはリゾート開発会社社長で冷徹者というニックネームをもつラファエル・デ・ルカ。ラファエル,ライアン,デヴォン,キャメロンの4人がこのシリーズのヒーローたちですが,特にラファエルは情け容赦ない商売のやり方で冷たい経営者として知られていました。土地は売りたいけれども,ムーン・アイランドの市長始め島の住民たちはリゾート開発には反対です。付近の土地が観光地として栄え,観光客たちが大挙して押し寄せる様子をみて,我が町はそれとは異なる静かな生活を送れる町という思いが町の人たちに定着していたからです。ブライアニーは市長の秘書的な役割も含め町の何でも屋として住民たちの様々な世話をして生活をしてきました。また糖尿病を患う祖母が隣家におり,その世話も引き受けていたのです。そんなブライアニーを説得しようとラファエルは町にやってきて,やがてブライアニーとの間に愛が芽生えます。そして土地の売買契約を結ぶと,リゾート開発はしないということを条項に入れないまま,口約束だけでラファエルはニューヨークに戻ってしまいます。しかも,その時航空機事故で,ラファエルは一部の記憶をなくしてしまうのでした。物語は記憶を失ったラファエルの元に怒りを抱えた,そして妊娠したブライアニーが訪ねてくるところから始まります。ブライアニーに関する記憶をすっかり失ってしまっていたラファエル。実はラファエルは契約を取り付けるためにブライアニーを誘惑し,それに罪悪感を抱いていたために都合良くその部分だけの記憶を失っていたのです。お腹の中の子供の父親が自分だといわれ,真偽を確かめるため,そして遅れていた工事の開始を早めるようにライアンたちにせっつかれたラファエルはブライアニーとともにムーン・アイランドを再訪することにするのでした。帰宅したブライアニー立を待っていたのは工事の再開に腹を立てた市長や警察署長たちでした。相変わらず記憶を取り戻せないラファエルでしたが,ブライアニーに島を案内されていくうちに,記憶とは別にあらたにブライアニーとの生活を,子供と共に島で生活することを望んでいる自分に気付いていくのです。ライアンたちと約束した1週間の期限が来てニューヨークに一度戻るラファエル。ブライアニーに一緒に行くことを約束していた矢先に祖母が発作を起こし,一人で帰ることになってしまいます。祖母が落ち着き,遅れてニューヨークに向かったブライアニーがラファエルの会社に立ち寄ったとき,ラファエルは記憶を取り戻し,ライアンたちにブライアニーを騙していたことを告白している最中に出会ってしまいます。裏切られた絶望で逃げるように島に戻ったブライアニー。さて二人の関係は?
どうにも都合のいい展開が目立ってしまう本作ですが,156ページと短い制限の中では,これもまた仕方のない展開にならざるを得ないのでしょうか。


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ハイランドの略奪された乙女 [マヤ・バンクス]

SHALOCKMEMO1027
ハイランドの略奪された乙女 Highlander Most Wanted
( Montgomerys and Armstrongs 2 ) 2013」
マヤ・バンクス 草鹿佐恵子





13世紀前半のハイランド。シリーズ第2弾です。前作「ハイランドの政略結婚」でエヴリンの居所をグレアムたちにそっと教えたフード付きマントの女性の正体が明かされます。それは,許嫁の元に嫁ぐ途中で連れ去られ,イアン・マクヒューに想像を絶する虐待と一族の女性たちに嘲られていた女性,ジュヌヴィエーヴ・マキニスでした。イアンはマクヒューの城に駆けつけたグレアムの剣によってひと突きで命を絶たれたのですが,父のパトリックはマクヒューの戦士たちと財産をすべて持ち逃げし,城はもはや残骸とどこにも行けない哀れでひ弱な人たちだけが亡霊のように暮らす場所になってしまっていました。その後,グレアムの弟ボウエンとエヴリンの兄ブロディが駐留し,城の整備に取りかかろうとしていますが,その時,ジュヌヴィエーヴもやっとイアンから解放されたのでした。しかしマクヒューの人たちはジュヌヴィエーヴへの嘲りを止めようとしません。イアンによって左の頬に一生消えない切り傷を負い,イアンの部下のコーウェンによっても傷つけられ,今度はまたモンゴメリーの戦士たちによって傷つけられるのではないかと恐れていたジュヌヴィエーヴですが,それはエヴリンの誘拐を企てたのがジュヌヴィエーヴであることを知られたからでした。イアンからの,マクヒュー一族からの虐待から解放されたくて,その計画をたてたのですが,エヴリンを傷つけるつもりは元々なく,ただイアンがエヴリンを誘拐すればモンゴメリーとアームストロングの一族によってイアンが成敗されることが予想されたからでした。しかもエヴリンがイアンに虐待されようとしたとき,ジュヌヴィエーヴは自らイアンを誘惑し,目先を自分の方に向けさせるという方法をとったのでした。そしてパトリックが他の一族を引き連れてマクヒューの城を襲ったとき,ジュヌヴィエーヴは得意の弓矢を使ってパトリックやボウエンを後ろから襲おうとしたマクヒューの戦士たちを敵を討ち,ボウエンの命を救ったのです。もし,妹のロリーがジュヌヴィエーヴのような立場になったらどうしていただろうか。それを考えただけで,ボウエンはジュヌヴィエーヴの成し遂げた勇気と智慧に脱帽したのです。そして傷つけられた側の頬をいつも他の人から見られないように隠す仕草や,イアンの情婦と呼ばれてマクヒューの一族から精神的虐待を受け続けているジュヌヴィエーヴが愛おしくなる気持ちに戸惑います。同時に自分の所属するクランの族長夫人であるエヴリンの誘拐を計画したジュヌヴィエーヴを許すことが出来るのか,イアンにもてあそばれていた女性を信頼できるのか,悩みはつきませんでした。しかし傷の反対側の顔や,沐浴しているジュヌヴィエーヴがとてつもなく美しいということだけは事実でした。ボウエンの葛藤は,パトリックを葬り,自分の命をも救ってくれた女性に対する愛に次第に変わっていったのです。ジュヌヴィエーヴもまた,うわべだけでなく自分の告白を真摯に受け止めてくれ,しかもマクヒューの一族に蔑まれないように注意を払ってくれるボウエンを,庇護者として信頼することが出来る男性として受け入れていくのでした。二人の間に強い愛が結ばれていきます。
前作に引き続き,とてつもない不幸な時期を過ごした,しかし本来は美しく,気高い心をもったヒロインが登場しています。不幸に立ち向かい,生きるための手立てを工夫し,有事の際には戦士の心を持って物事に対処するそんなすばらしい女性。まさにヒロインとしての理想像です。ジュヌヴィエーヴはローランドの王の宮廷にも出入りしていた貴族の一人娘でした。甘やかされて育てられはしましたが,男子ではないけれど,将来族長を継ぐ立場として幼いころから父の教えを受けて戦士同様に弓矢の使い方を教わり,強く,しなやかな心をもった女性に成長していたのです。年齢の記述はありませんが,ロリーよりは年上,エヴリンよりは下,というイメージです。保護されてモンゴメリーの一族の元にやってきた彼女を,ロリーやエヴリンは心から歓迎しすぐに仲良くなります。エヴリンへの罪悪感をもっていたジュヌヴィエーヴですが,エヴリンからは逆にグレアムに自分の居所を教えてくれた恩人だと感謝され,わだかまりが解消されます。そしてボウエンと一生添い遂げたいという気持ちが強まったとき,出身クランの戦士たちがモンゴメリーの城を訪れたのでした。ボウエンはマクヒューの城を跡にするとき,ジュヌヴィエーヴの両親に彼女が生きていることを知らせ,モンゴメリーを訪れるよう連絡していたのでした。イアンの元で虐待されたことを親に知られたくないことをボウエンに懇願していたジュヌヴィエーヴですが,勝手にボウエンが親に自分のことを知らせたのだと許せない気持ちをもちますが,それでもやってきた両親が自分が生きていることに驚喜している様子に,それを承知でボウエンが傷ついた自分を癒やすために両親に会えて知らせたのだと知り,さらにボウエンへの愛が深まるのでした。両親とともにマキニスの一族の元に返っていくジュヌヴィエーヴを,ボウエンはただひたすら彼女の降伏を願って敢えて別れを選んだ自分の判断に間違いはなかったと複雑な気持ちでいます。数週間後,再びマキニスの一行がモンゴメリーの城を訪れます。籠を捜すボウエン,ところが騎馬姿の一騎がものすごいスピードで馬を走らせてきて,それがジュヌヴィエーヴでした。ボウエンの子供を身ごもり,両親の許しを得て,ボウエンとの婚姻を切望してジュヌヴィエーヴが帰ってきたのです。マキニスの族長とボウエンの間に今後のことが話し合われ,再びジュヌヴィエーヴはボウエンの腕の中に戻ってきます。モンゴメリーの一族もこの二人を目を細めて喜ぶのでした。
中世のヒストリカルを読んでいて,いつも,言葉の重さに驚かされます。識字率がとても低かった時代。人が発する言葉,約束は文字以上に重い責任と行動で示されるべき重要な事柄になったのだと思います。愛し合いながらも別れなければならなくなった二人が,立場を乗り越えて互いの腕の中に戻るところは,言葉以上に深い愛が感じられ,充実した読後感をもたらしてくれます。前作に引き続き,イチオシ度がアップした本作です。これで,モンゴメリー,アームストロング,そしてマキニスという三つの有力なクランが姻戚関係で結ばれました。しかも単なる姻戚というだけでなく愛と信頼で結ばれた姻戚です。国王はある意味,この巨大なクランが結びつくことにひょっとして危惧感を抱くかもしれません。それがちょっと心配です。アームストロングとマキニスの族長たちは年配ですから,3つのクランを統合するとするとグレアムが最有力になるのでしょうね。そんなことで国王対グレアムの構図が見えてきてしまうのもちょっと心配です。第3作目"Highland Ever After"はまだ翻訳が出ていませんが,3男ティーグはどんなロマンスを,そしてヒロインにはどんな不幸と幸せが待っているのでしょう。楽しみです。


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ハイランドの政略結婚 [マヤ・バンクス]

SHALOCKMEMO1026
ハイランドの政略結婚 Never Seduce a Scot
( Montgomerys and Armstrongs 1 ) 2012」
マヤ・バンクス 草鹿佐恵子





 13世紀前半のスコットランド。敵対する二つの氏族モンゴメリーとアームストロング。イングランドとの和解が成立し,スコットランド同士の緊張関係を解消するためスコットランド王アレグザンダー二世王はモンゴメリー家の族長グレアムとアームストロング家の族長の娘エヴリンとの結婚を画策します。白羽の矢を立てられたエヴリンは数年前に落馬事故以来,頭に変調を来した娘として一族の外部にまで噂が広まっていた娘でした。そんな女性と結婚しなければならないことになったグレアム始めモンゴメリー一族は怒り心頭。そしてグレアムたちがアームストロングの城にやってきます。王自身は政務を理由にやってこず,代理人の伯爵をお目付役に寄越しただけです。城ではエヴリンの両親,息子であるエヴリンの兄たちとグレアム一行の間に一発触発の雰囲気があり,危うく剣を抜き合う場面すらありますが,伯爵の仲裁で何とか事態は収まります。さてエヴリンは,グレアムを城の大広間で見かけたとき,何故か低い声の響きが聞こえるような気がして,その響きがとても心地よく感じます。実はエヴリンは耳が聞こえなくなっていただけでした。そして,相手の唇の動きである程度の話の内容は理解できるのでした。しかし呼びかけられても気がつかずにいたりしたため,頭がおかしいと思われてきたのです。そして以前婚約者のイアン・マクヒューが結婚したら自分を思うがままに傷つけるとささやかれて,それを恐れ,頭がおかしいと思われるままにしておけば婚約を解消されると考え,真実を隠し続けていたのです。案の定,婚約は解消され,マクヒュー一族との同盟は解消されていたのでした。グレアムの案内された部屋に前もって待機していたエヴリン。驚いたグレアムは女性がそこにいたことと,間近で見るエヴリンの美しさに二重の意味で驚きを隠せません。この時,エヴリンはグレアムとの結婚を決意していたのでした。グレアム側には例え結婚相手がだれであろうと王の命令を拒めば一族が反逆者として懲罰を受けることが分かっていたので,断る理由はありません。しかしエヴリンの美しさに気付いてからは,自身としてはなんとか一族にエヴリンを馴染ませて結婚を完成させたいとい気持ちが強まります。翌日結婚式が行われ,エヴリンはグレアムたちに連れられてモンゴメリーの城に向かいます。落馬事故以来馬を見ることもにおいをかぐことすら恐怖になっていたため,結納品などの物品を運ぶ荷車に乗って旅をするのでした。隣接する領地ですので旅はそれほどかからず,モンゴメリーの城にやってきたエヴリンですが,予想していた以上に一族の人々の対応は冷たいものでした。しかし,グレアムの妹ロリーが始めにエヴリンと仲良くなり,グレアムの弟たちも兄を支持するという立場からエヴリンを大切にし始めます。面と向かって悪口を言う人たちもいましたが最も最悪だったのは女性たちでした。自分が命じれば何とか一族の人たちもエヴリンを受け入れてくれるだろうと考えていたグレアムはある事件以来それは甘い考えであると思うようになります。女性たちはグレアムが見ていないところで悪巧みをしてエヴリンを苦しめていたのです。一族全てを集めて強い口調で反省を促すグレアム。エヴリンの難聴の病を告げ,決して頭が変なわけではないという説明と,自分の妻として,一族の女主人としてエヴリンに相応の尊敬は払わなければ反逆者と見なすという強い口調にほとんどのものはそれを受け入れ,グレアムの側に立つ,つまりエヴリンの側に立つことを宣言したのでした。しかし裏切られ,騙されたことを恥じたエヴリンは両親の下に返りたいとつぶやき,姿が見えなくなります。城の中は元よりあちこちを探し回ったあげくにグレアムはエヴリンを見つけますが,その時巡視の目を縫って侵入してきた騎士がエヴリンとグレアムを襲います。グレアムは肩に矢を負い,倒れたときに頭を打って気を失ってしまいます。大声で叫んでエヴリンは何とか騎士を追い払いますが周囲にモンゴメリーの一族は誰もいませんでした。恐怖を押してエヴリンはグレアムの馬に飛び乗り城に駆け戻って助けを求めます。グレアムのいる場所までも一度弟たちを案内し,城に運ばれたグレアムから一瞬も離れることなく懸命に看病をして4日間も飲まず食わず,睡眠も取らずにひたすらグレアムの世話をし続けるエヴリンに,モンゴメリーの人たちは敬意と二人の深い愛情に気付くのでした。グレアムが目覚め,エヴリンを休ませるよう命じて初めてエヴリンは休憩を取り,丸二日間も昏睡状態になっていきます。今度はグレアムがエヴリンをしっかり抱きしめ面倒を見ることになるのでした。もはや二人を分け隔てようと思うものは誰もいなくなりました。と,思いきや,グレアムを襲ったのはアームストロングの由緒ある剣をもった人であることをエヴリンから聞き,グレアムたちはどう対応するべきか話し合い,とにかく真偽を確かめるためにエヴリンの父に手紙を送ることにします。どうも他のものが仕組んだ企みではないかと気付いたからです。そこに大軍を引き連れたエヴリンの父たちがやってきました。事情を説明する前に,エヴリンは何者かに連れ去られたことが報告され,かつてエヴリンに意地悪して城を追放された女性が自分がイアン・マクヒューの手引きをしたことを白状していたのでした。グレアムの説明で両方の軍がマクヒューの領地に向かうことになります。始めイアンの父はエヴリンがいないと主張するのですが場内を探索してもたしかにエヴリンの姿は見えません。このとき少年の姿をした女性がそっと地下牢を捜すようグレアムにささやくのでした。これが一体誰であったのかは最後まで明かされません。マクヒュー一族の中にも良心を持ったものがいたのか,あるいはシリーズの後の方で明らかになるのかは分かりませんが,グレアムは地下牢のさらに奥に隠された穴蔵の中で鎖につながれたエヴリンを見つけることが出来ます。この事件をとおして,アームストロングとモンゴメリーの因縁は解消され,まさにエヴリンによって積年の戦いが解消されていくのでした。第45章で傷ついたエヴリンを守ろうとするグレアムの姿,深い愛情と信頼に基づいた二人の姿には涙なしには読めません。ハンディキャップをものともせずに真の人の価値に気付いたグレアムと,そのグレアムに愛を教えたエヴリンの姿が本作の真のテーマです。今年読んだ作品の中で文句なしのベスト・ロマンス。一気読み間違いなしのオススメです。


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