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9カ月目の赤い糸 [マリー・フェラレーラ]

SHALOCKMEMO1312
9カ月目の赤い糸 Do You Take This Child ?
( Baby of the Month Club 5 ) 1996」
マリー・フェラレーラ 庭植奈穂子





 原題は「あなたがこの子を取るの?」
 ヒロイン:シーラ・ポラック(30代?)/ハリス記念病院産婦人科医/長身でほっそり,ブロンドの髪,大きくて春の矢車草のように青い目/
 ヒーロー:スレイド・ギャレット(33歳)/新聞社特派員/身長185センチ,茶色の目,ダークブラウンの髪/
 マリー・フェラレーラと言えば「ボディガード」や「闇の使徒たち」といったロマサスの作家というイメージが強くありましたが,本作のようにイマージュの作品もあるんですね。1996年作品ですから20年前の作品になりますが,その生き生きした筆力は,その後のスピード感あふれる作品をうかがわせるに十分な表現力だと思います。さて,本作は両親とも医師で自らも産婦人科医のシーラが,出会ったばかりのスレイドとプライベートビーチで一夜の時を過ごし,妊娠し,再開後二人の関係が再燃していくというOne Night Babyものの物語です。一方ヒーローのスレイドは戦闘中の危険な場所にも飛び込んでいく命知らずの特派員ですが,いわゆるロマサス的な雰囲気のヒーローではなく,仕事として戦地には行くものの,その記す記事は思いやりにあふれたヒューマンなものであるようです。そこが医師のもののイマージュの中にロマサス的設定を取り入れた作者の工夫だと言えるでしょう。両親が仕事一辺倒で自分が面倒を見られたことのない自立した医師のヒロインに対し,妊娠が分かってからのスレイドのシーラべったりの働きぶりには思わずニンマリさせられますし,日頃妊産婦たちを診察しているヒロインが,自分の子供のこととなると医師としての判断力を失いあたふたしてしまうところが実に微笑ましく,とても温かな気持ちをかき立てられる作品です。今の暑い時期ではなく,冬の寒い時期に読むと心がホンワカしてくるような作品ではないでしょうか。


タグ:イマージュ
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小さな天使の贈り物 [マリー・フェラレーラ]

SHALOCKMEMO1161
小さな天使の贈り物 Dating for Two
( Matching Mamas 12 ) 2014」
マリー・フェラレーラ 中野 恵





 フラワーショップの経営者エリン・コリンズはお腹の子供の父親であるブレイディ・ロックウッドをやっと探し出します。出張で出かけると言い残して消息不明になってしまった恋人のブレイディを出張先に探しに行ったエリンですが,見つからずにいたところ,警察から連絡があり,それらしい人がいるかというのです。地元のレストランで働いているのでした。しかし,自分を含めて記憶を失ってしまっていたのでした。マリー・フェラレーラお得意の記憶喪失ものの2014年の新作です。ここから先は記憶を失ったブレイディとエリンとの間に,記憶喪失前の交際とは異なる新しい交際がスタートし,バージョンアップしたブレイディとエリンが出産を契機に新しい関係を築いていくという筋立てになります。象牙色の肌と夕日のような髪と草原のクローバーを思わせる瞳を持つエリンに新たに惹かれていくブレイディ。「どうして私を思い出してくれないの?」と悩みながらも記憶を取り戻すために様々な手助けをしていくエリンの姿が感動的です。記憶を失ったとは言え,物理学者であるブレイディの仕事に関する記憶はすぐに取り戻せますが,エリンとの関係はいっこうに思い出せないでいます。それでも自分たち二人の子供の存在が二人を結びつけていきます。「物事を徹底的に調べても改名しきれない未知の要素が最後まで残ることがあるでしょう。それが残っているということは,誰かを愛しているということなのよ。」というエリンの言葉には,割り切れないもの=愛という構図が見えますし,「論理的とは言えないかもしれないが,エリンと僕は結ばれるために生まれて来たような気がする。初めから心と心で結ばれていたような。」というブレイディの言葉には,エリンの言葉を本能的に感じ取るだけの認識の広さが,記憶喪失後備わったと思われ,これがいわゆる「新型で機能がアップしたブレイディ」なのだと思います。こんな素敵な表現が随所に見られるさすがベテランと思わせる好著です。


タグ:イマージュ
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プレイボーイの治療法 [マリー・フェラレーラ]

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プレイボーイの治療法 Taming the Playboy
( Sons of Lily Moreau 2 ) 2007」
マリー・フェラレーラ 早川麻百合





 マリー・フェラレーラの「リリー・モンローの息子たち」シリーズの第2弾。
 リリー・モローは有名な女流画家で莫大な資産を持っていますが,男運にはあまり恵まれず,それぞれ父親の異なる3人の息子を持っています。(ちなみに父親がそれぞれ違うので,名字もそれぞれ異なります。)
 この作品は次男で心臓外科の研修医ジョージ・アーマンドのロマンスです。
 勤務を終え,恋人とのデートに向かう途中後続の車が当て逃げに巻き込まれた後続の車から,女性と老人を救い出します。自分の勤務する病院に電話して救急車で搬送した老人の手術にぜひ立ち会ってほしいと頼まれたジョージは,勤務明けにも関わらず,それを断ることができないという不思議な感じを受け入れ,助手として手術に参加します。そして,ほとんどきずかれないような欠陥からの小さな出血を執刀医に指摘し,老人の命を救います。この指摘をしたのが老人の孫娘ヴィエナでした。あとで聞いてみるとヴィエナには不思議な直感が働くことがあり,今回もそれを口に出さずにはいられなかったのです。老人と二人暮らしのヴィエナには祖父のアモス(エイモス?)が頼るべき唯一の肉親であり,心から老人を愛していたからです。
 プレイボーイとして周囲の女性から常に注目と誘いを受けていたジョージは,ヴィエナがこれまでの女性とは違う存在として,つい面倒を見たくなる,そして勤務に差し支えるほど頭を占める存在であることに気付きます。読者としては,例のヒロインの直感がその後ちょくちょく登場し,二人が一時的に喧嘩別れしてしまうことを期待してしまうのですが,残念ながらその後,その直感はあまり重要な点ではなくなってしまいます。そんなことから,フェラレーラのいつものサスペンス色は今回は現れず,ひたすらロマンス色の強い作品になっています。
 でも,その中でも異彩を放つのは,何といってもジョージの母親,リリー・モローの傍若無人ぶりと,それに負けず劣らずのアモス・シュワルツウォルデンの頑固ぶりでしょう。

 早川麻百合さんの訳はいつもとても素晴らしいのですが1カ所気になるところがありました。父親の異なる3人兄弟のことを,ヴィエナが聞くところに「腹違いの?」と聞くところがあります。聞かれたジョージも「腹違い」と答えているのですが,厳密には「腹違い」は母親が異なる場合をいうのであって,父親が違うのは「腹違い」とは言わないのではないでしょうか?原文では見ていないので,どんな単語が使われているかはわかりませんが,この部分は,もしヴィエナが「腹違い?」と聞いたのであれば,ジョージは当然「種違い」と答えるのが正しいのでは?
 さらに,重箱の隅をつつくようで恐縮ですが,ヒロインの名前はヴィエナよりヴィエンナと表記する方が響きもよく,やわらかい感じがすると思うのですがいかがでしょう。もっとも,ヴィエンナではちょっと古風すぎるので,コンテンポラリーのヒロインにはふさわしくないとお考えになられたのかもしれませんね。


シンデレラに靴を [マリー・フェラレーラ]

SHALOCKMEMO435
シンデレラに靴を Angus's Lost Lady
Families Are Forever) 1998」
マリー・フェラレーラ 児玉ありさ





 マリー・フェラレーラのロマサス。いわゆる記憶喪失もの。原題の「Angus」はヒーローの名前ですが,私立探偵業を営むアンガス・マクドゥガルの元へずぶぬれになりながらやってきた美女が,いきなり「私をご存じ?」と尋ねるところから,物語の幕が開きます。この冒頭の意外性がとても面白いので,思わずずずっと読み継いでいき,気がつくと最後まで行っていた,というのがこの作品の魅力です。いわば,記憶喪失ジェットコースター・ストーリー。
ヒロインのレベッカ(ベッキー)は,電話帳でなんとなく気になったレベッカという名前が自分の名前であることを思い出す(名字の方は思い出せません)ほか,自分が料理が得意であることや,コンピューターを巧みに操れることなど,知らず知らずに自分の得意分野を体現していきますが,読者も次は何が思い出されるのだろうという興味が持続していき,これが記憶喪失ものの醍醐味なのでしょう。
 さて,ヒーローのアンガスには,亡くなった妻との間の一粒種,ビッキという7歳の娘があります。別れた妻が亡くなってから父親の元にやってきたビッキとの,まだぎこちない関係もさることながら,記憶が戻ったとき,結婚していたらとか,婚約していたことがわかったらなどという心配から,互いに惹かれながらも,なかなか相手に自分の本当の気持ちを言えないでいる二人の関係がもどかしく,じりじりする,という感情移入がしやすいのも,記憶喪失もののおもしろさでしょうが,作者のフェラレーラは実に巧みに,これを作品にちりばめていきます。最後がハッピーエンドになるのがわかっているロマンス小説だけに,いつ,どのように二人の関係が進展するのか,それを自然に読者に気づかれないように伏線を張っていくのも,作家としての腕の見せ所ではないでしょうか。そういう意味でも,7歳のビッキのキャラクターが一本副旋律のように流れを形作っていくのが,この作品のもう一つの魅力でもあります。最後に邦題名の「シンデレラの靴」が,あまりプロットの関係してこないことが一つ残念なことです。


ニューヨークの騎士 [マリー・フェラレーラ]

SHALOCKMEMO434
ニューヨークの騎士 Diagnosis : Danger
( Docters Pulaski 2 ) 2007」
マリー・フェラレーラ 小林りりこ





 本作は,SHALOCKMEMO419「ボディガードは眠らない」の関連作。
ヒロインたちは5人姉妹で全てが医者か医者の卵という化け物のような,信じがたい家族のロマンス。翻訳では第2作の「ボディガードは眠らない」が先に翻訳されていますが,Fantastic Fictionでは本作が第1作のように表記されています。しかし,ストーリーの途中で姉のサーシャの結婚式がでてくることから,時間の経過を重視して「ボディ・・・」が先に翻訳されたものと思われます。傑物はこの5人姉妹の母親マグダ・プラスキ。ポーランド移民のプラスキ夫妻はこの母親マグダで持っているようなもの。しかもそれを夫のジョセフ(ポーランド語ではなんと発音するのか? ヨーゼフではドイツ語風だし・・・)がしっかりと支えており,愛情あふれる一家の様子が生き生きと描かれているのもこのシリーズの特徴です。
 さて,ストーリーは次女ナターリャは小児科医で,友人でゲイのクランシーが謎の電話をよこしたきり連絡が取れなくなり,遺体となったクランシーを発見します。死因に不自然さを感じたナターリャを一目見て,刑事のイタリア系のマイケル(マイク)は,ナターリャの言葉に嘘がないことを感じ取り,ホームレス連続殺人事件の忙しい捜査の合間にクランシーの死の謎をナターリャと一緒に捜査していきます。互いに惹かれ合う二人ですが,その中にポーランド系とイタリア系という民族の違いが見え隠れして移民社会アメリカの状況が巧みに描かれています。「人種のるつぼ」という訳がされていますが,これは年配の人にしか通じない日本語になりつつあります。最近は「人種のサラダボール」と言われるようになっているそうですが・・・。イタリア系のマイクも大家族の中で愛されて育ち,イタリア系は親族の絆が固いことはアメリカドラマや映画でもつとに有名な話です。
 一方で,ナターリャにはマイクに惹かれつつも,マイクに隠している秘密がありました。その秘密がナターリャが医者になるときに小児科を選択した理由だということ。その理由をいつマイクに打ち明け,それにマイクがどのように反応するのか,さらにその状況が連続殺人事件とどのように関連していくのか。作者フェラレーラは,それらを巧みに関連づけ,最後まで飽きさせないミステリアスな雰囲気を見事に作り出しています。
原題は,直訳すると「分析結果,危険」あるいは,「診断,危険」となりますが,しゃれたタイトルですね。


タグ:ロマサス

ボディガードは眠らない [マリー・フェラレーラ]

SHALOCKMEMO419
ボディガードは眠らない Her Lawman on Call
( Docters Pulski 1 ) 」
マリー・フェラレーラ 如月富雨





 深夜、病院の立体駐車場で、眉間に銃弾を受け殺害された看護師の遺体を発見したサーシャは、2週間前にも同じ場所で看護師の遺体を見つけていた。という冒頭のシーンで始まるロマサス。
 ここしばらく,親HPの更新に追われたことと,あちらこちらのつまみ喰い読みで,読了本がなかった。実に一ヶ月ぶりの読了本になった。
 ひとことで,さすがフェラレーラだ! ロマサスの王道を行っている。美貌の産婦人科医師姉妹(なんと5人姉妹)の長姉サーシャと孤独で仕事フリークの刑事トニーを巻き込む病院内の連続殺人事件。婚約者を失ったサーシャ,愛妻を事故で失ったトニー。心の深いところでなかなか自分を出し切れない二人だが,連続殺人犯人がうろついているのに警告を無視して保護を拒否したりするサーシャに腹を立てたり,デートの約束をすっぽかしてしまう重大事件が起こり,サーシャを迎えに行けなくなり,数時間後に家に向かったトニーを迎えたサーシャの誘うような態度に我を忘れて愛にのめり込んでしまうトニー。このあたりの二人の心理描写の見事さとストーリー展開の速さ,そしてなにより,しっかり者でありながら愛らしさを持ち合わせるサーシャの人物造形が本作を最後までしっかり読ませる要素になっている。久しぶりのお薦め本。


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氷の紳士を愛したら [マリー・フェラレーラ]

SHALOCKMEMO348
氷の紳士を愛したら(キャバノー家の真実5) The Strong Silent Type 2004」
マリー・フェラレーラ Marie Ferrarella 新号友子





氷の紳士を愛したら
LS-313/07.01/
\710/220p


マリー・フェラレーラのキャバノー家の真実シリーズ第5弾
(Cavanaugh Justice series)。
原題の"Strong Silent Type"を「氷の紳士」とする邦題タイトルは,とても気が利いているがちょっと固いように思う。ただ,この“ハンサムで寡黙な”タイプのヒーロー,ジャック・ホーキンズ(愛称ホーク)は,ヒーローもののデテクティヴストーリーやポリスストーリーにはよく出てくるタイプ。本作はラブストリームらしくクロスオーバー的に刑事物とロマンス小説の見事な合体と仕上がった作品となっている。今月のおすすめ。






キャバノー家は元オーロラ市警察署長アンドリュー・キャバノーを長とする警察一家。アンドリューの子供たち,ショー,コーリー,本作ヒロインのテリー,テリーの双子の弟クレイ,妹ロレイン(通称レイン)はすべて刑事であり,さらにアンドリューの弟ブライアンは刑事部長。妻ローズは現在行方不明。全て警察関係で埋めてしまったことでシリーズに広がりがなくなってしまわないだろうかと心配になるほど見事に刑事で占められている。行方不明の妻ローズも本作では姿を現し,サイトストーリーとして重要な要素を占める。


さて,本作のヒロインはテリー。テリーのパートナーとなったのは「ハンサムで寡黙な刑事」ホーク。ある捜査で踏み込んだビルで銃撃を受け,テリーは負傷する。ここで,ホークの本来のやさしさが現れる。冷徹に見えるホークだが実は熱いハートをもっているという伏線が十分現れている。しかし機関銃のように容赦ない口調で話すテリーを寡黙なホークはたえられなくなっていくが,テリーに惹かれる想いの方をもてあましてしまい,パートナーの解消を上司に頼む。しかし,パートナーを解消されたテリーはふてくされず,ホークが自分の殻に閉じこもってしまうのを解きほぐし,キャバノー家の朝食に招くのに成功する。この朝食会はキャバノー家の家族愛を示す部分だが,これまでのシリーズの中で語られてきたところだろう(これまでのシリーズの作品は未読)。
さらに冒頭でも登場するサイドストーリー,行方不明の妻のローズを発見しながらも,訪問を拒絶され(現在はクレアと名乗っている),そのことをなかなか家族に言いだせずにいるアンドリュー。クレアの記憶は戻り,家族の元に返ってくるのだろうか。それは本作では結論は見えてこず,次作へと興味を引いていく。著者フェラレーラのストーリーテラーとしての仕掛けのうまさか。シリーズ作家の本領発揮というところだろうか。
そしてもう一つ,表紙カバーのホークにお姫様だっこされているテリー。しばしば登場するモデルだが,この角度が最も愛らしさを表しているのではないだろうか。もちろんUK版とは左右逆転しているが。

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