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シンデレラ失格 [ミシェル・スマート]

SHALOCKMEMO1443
シンデレラ失格 Helios Crowns His Mistress
( Kalliakis Crown 3 ) 2016」
ミシェル・スマート 朝戸まり





 原題は「ヘリオスが愛人に王冠を」
 ヒロイン:エイミー・グリーン(27歳)/博物館学芸員,大英博物館からの出向/すらりとした体,豊かなダークブロンドの髪,にじみ出る女らしさ,アフロディーテとまがうばかり/
 ヒーロー:ヘリオス・カリアキス(?歳)/アゴン王国皇太子/澄んだダークブラウンの瞳,長身,浅黒い肌,漆黒の髪,鼻柱にかすかな傷跡/
 「昨年十一月,大英博物館からアゴン王宮博物館に貸与される美術品の運搬チームの一員として初めてアゴンを訪れ,数日間の滞在中に館長のペドロと意気投合した」エイミー・グリーンは,自分を捨てた実母を探すためにアゴンを訪れたのでした。「三週間後には世界中の視線がアゴンに集まる。アストライオス王の即位五十周年を記念する盛大な祝賀行事が催され,各国から指導者や著名人が勢揃いする」行事のため,そして自分たちを育ててくれた祖父でもあるアストライオス国王に対する愛情ゆえに,カリアキスの三兄弟はそれぞれの分野において行事を成功させるための仕事をしてきており,それぞれが仕事の完遂に必要な人材を探して出会った美女たちと愛を育んでいきます。三部作最終巻は長男で皇太子ヘリオスの愛の物語です。三男タロスは亡き祖母の幻の曲を演奏するバイオリニスト,アマリーを愛し,次男テオ(テセウス)は王の伝記を完成させるために伝記作家ジョー(ジョアンヌ)と出会い,そして今また皇太子ヘリオスは王宮博物館の展示を成功させるために学芸員のエイミーと出会ったのでした。ヘリオスはすでに許嫁としてモンテクルール公国の公女カタリナとの婚約を決めていました。王妃となる女性としてカタリナ以上にふさわしい女性は居なかったのです。なぜなら,愛を信じないヘリオスにとっては愛のない結婚を前提として自分の元に嫁いでくれる女性との結婚が絶対条件だったからです。そしてエイミーに出会った瞬間恋に落ちたヘリオスは,祝賀行事までの間,エイミーとの関係を続けようと決意します。勿論カタリナとの結婚を祝賀行事に発表し,その後のエイミーとの関係をどうするかまでは,はっきりはさせたくないという都合のいい気持ちを残しながら・・・。エイミーもまたヘリオスとの関係におぼれていきますが,自分がいかにヘリオスを愛してもヘリオスは自分を愛してはくれないことは重々承知で,それでもヘリオスを拒否することが出来ないでいる自分に,ちょっとずつ言い訳をしながらずるずると関係を続けていくのでした。ヘリオスは両親の愛のない結婚生活を知り,自分も同じようになることを恐れています。それでも皇太子としての務めを果たさなければならない義務感を強く持っていたため,愛のないカタリナとの結婚を決意したのでした。エイミーは実の母ネイサ・ソウキスに捨てられ,その後自分を精一杯の愛情で包んでくれた継母への愛情を忘れてはいませんでしたが実母が自分を捨てた理由だけは知っておきたかったのです。不幸な親をへの気持ちを互いに打ち明け合った二人は,恋人であり友人であり,しかしその関係を明かせない秘密の愛人関係でもあったのです。
 紆余曲折はありましたが祝賀行事は大成功を収め,アストライオス王は数日後癌により87年の生涯を閉じます。ヘリオスへ残した最後の言葉は「愛を抱けない相手との結婚は不幸を招くだけだ」という言葉でした。ヘリオスはそれを自分の両親のことを言った言葉だと受け止めていたのですが,自分もカタリナとの関係を両親と同じにしようとしていることに気づきます。そして自分が本当に愛しているのはエイミーだと強く思ったのでした。すでにイギリスに戻っていたエイミーは引きこもった生活をしていましたが継母の「オレンジを掴みなさい」という後押しの言葉に支えられ,アストライオス王の葬儀に紛れ込んでヘリオスに見つからないように密かにアゴンにやって来ていたのでした。さて二人は互いの気持ちに正直になり王室の障壁を乗り越えることができるのでしょうか。終末には感動的なヘリオスの行動が描かれています。
 三部作それぞれに魅力的なヒロインが登場しましたが,なんといっても第1巻のヒロイン,アマリーが強い印象を持つヒロインでした。
さて,今月はなにかと他に気持ちを引きずられることが多く,読了冊数はみじめなほど少ないのですが,多分に数ヶ月ごとに気分のむらが現れたりするのが原因かも知れません。集中力が切れてしまうことが多く,なかなか一冊を読了することが難しい状況が続いており,やっとのことで本作を読み終わりました。やれやれ。


タグ:ロマンス
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カリアキスの秘密の跡継ぎ [ミシェル・スマート]

SHALOCKMEMO1440
カリアキスの秘密の跡継ぎ Theseus Discovers His Heir
( Kalliakis Crown 2 ) 2015」
ミシェル・スマート 朝戸まり





 原題は「テセウスの跡継ぎの発見」
 ヒロイン:ジョアンヌ(ジョー)・ブルックス(26歳)/出版社社員/赤毛,ポッチャリ型の体型。色白,高い頬骨,ふっくらした唇,ブルーグリーンの瞳/
 ヒーロー:テセウス(テオ)・カリアキス(34歳)/アゴン王国第二王子/ゴツゴツした鼻,深くくぼんだダークブラウンの瞳,力強い顎,浅黒い肌,,殆ど黒に近い髪,身長195センチほど,細く引き締まった体/
 アゴン王国の王子を巡る3部作「カリアキスの王冠」シリーズの第2作です。作者ミシェル・スマートはかなり大胆な手法でこのシリーズを描いています。つまり3部作がほぼ同時期のストーリーを描いているのです。つまり王子たち3人のロマンスがほぼ同時進行で描かれているわけで,前作で読んだ内容が本作でも裏で進行しているというものなのです。作者の頭の中で3つの作品が同時に進行していないとどこかに破綻が生じてしまうという難しさがあるわけなのですが,前作では気づかなかったこの点に本作を読んでいて気づきました。さらに3人の王子たちの末弟から順に描かれていきますので,最後は長男で皇太子のストーリー展開となるわけです。このアゴン王国を支配してきたカリアキス家のアストライオス王の即位五十周年記念式典がいわばゴールになり,その準備のために前作では亡き王の后だったレアの幻の作品を演奏するバイオリニストを探し,三男タロスがアマリー・カートライトという舞台恐怖症の女性を見つけました。本作では,第二王子テセウスが祖父であり現王のアストライオス王の伝記を完成させるため依頼していたフィオナ・サマラスが急病で入院してしまい,代役として出版社の依頼を受けてやってきたのがジョアン(ジョー)・ブルックス。かつて二人は一夜を共にした経験を持ち,その結果ジョーには4歳になるテセウスとの間の一人息子トビーがいることがテセウスに知られ,その結果息子の存在をジョーがわざと隠していたのではないかという疑いをもたれてしまうというストーリーと,5年前に祖母であるレア妃の病の知らせで急に帰国せざるを得なくなり理由を言わないまま去ってしまったテセウスに自分は捨てられてしまったと思ったジョーがトビーの存在により自分のキャリアを獲得しつつ努力してきたストーリーとが交錯し,不幸な別れ方をした二人が再び愛を見つけ出していけるのかというところが本作の読みどころとなっています。若かりし頃常に注目され続ける王室で第二王子という,皇太子である兄のスペアとしての存在だとしか父親に言われなかったテセウスが,反抗的な行動を繰り返し,テオ・パタキスと名告ってイリア島で泥酔したあげくに慰めをジョーに求めた結果がトビーの誕生となったこと,また母親から期待されず,父親もアルコール中毒という破綻家族の中で,過食気味だった自分の体型に自信が持てずにいたところをハンサムなテセウスに大切にされ,白馬の王子様だと思っていたのに急に去られてしまったこと,そしてまさに本物の王子だと知ったことで二人の間に将来の関係は築けないと言われても,テセウスを愛することを止められない自分の想いを持て余す様子がちょっと哀れで,出産により細身になり充分美しさを獲得した後も自分に自信が持てないでいるジョーが,飾り気のない美しさを発揮していくところが,逆にテセウスの思慕をつのらせていくという絡まり続ける関係が面白さを盛り上げる作品です。


タグ:ロマンス
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無垢なカナリアと王子 [ミシェル・スマート]

SHALOCKMEMO1382
無垢なカナリアと王子 Talos Claims His Virgin
( Kalliakis Crowns 1 ) 2015」
ミシェル・スマート 朝戸まり





 原題は「タロス,無垢な乙女を求める」
 ヒロイン:アマリー・カートライト(25歳)/パリ管弦楽団バイオリニスト,バイオリニストとメゾソプラノ歌手の娘/身長173センチ,華奢な体型,豊かな茶色の髪,真っ直ぐに通った鼻,細い顔,アーモンド形の目,グリーンサファイア色の瞳/
 ヒーロー:タロス・カリアキス(33歳)/アゴン王国王子(三男)/漆黒の髪,角張った顎,眉を分断するように刻まれた傷跡/
 名門パリ管(パリ管弦楽団)の第2バイオリン奏者がヒロインということで,ヒロインに期待して読み始めました。祖父である国王が不治の病に冒されていることを知ったアゴン王国の三王子は,他界したバイオリン奏者兼作曲家だった祖母レア王妃のつくった最後の作品を演奏するバイオリニストを捜すため,第三王子タロスにそのミッションを託します。世界数カ所でオーディションを行ってみましたが,なかなか適任者が見つからず,もはや時間切れで,最後にパリの地に来ています。オーディション途中の休憩に通りかかった部屋でタイスの瞑想曲を演奏している女性,これこそ求めていた音だと直感するタロス。25年前に両親を事故で亡くしたとき,レア王妃がタロスのベッドのわきで演奏して慰めてくれた時と同じ曲と音だと直感したのです。そして演奏者がパリ管の第2バイオリン奏者であることが分かりますが,彼女はタロスの申し出を断るのでした。タロスは劇場テアトル・ドゥ・ラ・ムジークのオーナーから劇場そのものを買い取り,承諾してくれなければ劇場を取り壊し団員もすべて解雇するぞと脅迫します。今彼女に断られてしまえば,1カ月後に迫った国王即位50周年記念音楽祭の公演に間に合わないからでした。彼女,アマリー・カートライトはバイオリニストの父とメゾ歌手の母という音楽家の両親を持ち自らも天才少女としてもてはやされた才能溢れる子供でした。しかし12歳の時,あることがきっかけで突然演奏ができなくなり,以来舞台恐怖症になり,長期の医師のカウンセリングの結果,オーケストラでは目立たない第2バイオリンの席であればなんとか舞台に立つことができるようになっていたのです。人前でソロを務めることなどとうてい無理な話でした。タロスの強引な説得に,過去の秘密を明かしてなんとか断ろうとしたアマリーでしたが,タロスは逆に自分がその病気を治してみせると豪語し,遂に契約書にサインさせてしまうのでした。自分の両親がイギリス出身の父ジュリアン・カートライトとフランス人の母コレット・バルテズだということも調べ上げていたタロスはクレタ島の隣国アゴンの第三王子であり,これほど強引に自分を演奏会での演奏をさせたがるのは何か別の理由があるはずだと思い質問を向けてみますがありきたりの理由しか言ってくれません。とりあえず1カ月の契約期間を全うしなければ仲間の団員たちが路頭に迷ってしまうことになります。「いいわ,行くわよ。その代わりどんな結果になろうと私は知らないから」とアゴン王国に向かったアマリーとタロス。天国のごとく美しい島の宮殿の近くにあるジムでボクシングの基本練習やアスレチックをすることで,恐怖心に立ち向かう心構えをつくらせようとタロスはアマリーを連れて行きトレーニングを毎日させ,祖母のつくった最後の曲の楽譜を与えます。あくまでも1カ月だけの契約で音楽祭が終わればパリに戻れることが契約だったため,互いに惹かれる思いを感じながらも深い関係になることを避けるようにしていた二人でしたが,自分の不安な気持ちを取り除くためにさまざまな手立てを使って自分を支えようとしてくれるタロスの優しさと頼りがいのある人柄,そしてなんと言っても長身で逞しい男性的な肉体的魅力にも惹かれ,遂にアマリーは25年間守り続けてきた純潔をタロスに捧げることにします。その夜から数週間は二人はいわば蜜月の期間を過ごします。始終触れあっていないと二人とも満足できない関係になってしまうのでした。アマリーの音楽祭で弾く曲をタロスはなかなか聴かせてもらえませんでした。完全にできあがるまでは人には聴かせられないというアマリーの気持ちをタロスも理解し,尊重したからです。王宮で開かれたプレイベントの皇太子主宰パーティにアマリーはタロスの同伴者として連れて行かれ,タロスの兄王子たちに会うことになります。幼い頃に両親に連れられてセレブたちのパーティに何度も参加した経験のあるアマリーは緊張せずに人々との会話を楽しみます。やがて,アストライオス・カリアキス国王本人の接見の機会がやって来ます。アマリーは「あの曲は愛の協奏曲で陛下に捧げた曲です」と話すと「なぜそれがわかる?」「あの曲には愛があふれています。妃殿下は愛をこめてあの曲を作られた。母としてではなく一人の女性として」と答えるアマリーに国王は王妃の使っていたバイオリンを渡し,「私がいなくなってからもあの子を頼む」とタロスとの関係を知っているように囁くのでした。この祖父のためにタロスは強引に自分を連れてきたのだと言うことを納得したアマリーは,国王のためと言いながらもタロスのためにも演奏を成功させようと決意します。一方タロスの方は逆に自分が強引さがアマリーの舞台恐怖症をさらに煽ってしまったのではないと考え,契約を破棄することを告げる手紙をアマリーに届けさせるのでした。互いに互いのことを思うがゆえに生じたすれ違い。この当たりの葛藤が本作のクライマックスです。そして開かれた祝賀音楽祭。舞台の最後に予定されていたアマリーの演奏する協奏曲はキャンセルすることにしていたタロスですが,進行係が告げた名前は「アマリー・カートライト!」でした。さて,演奏はどうなるのでしょうか。そして二人の関係は?
 静かに盛り上がっていく作品で特にクライマックスまでに二人の気持ちの高まりとすれ違い,そして周囲の人たちのかかわりが見事にマッチして,過去を乗り越えて行く二人の若者の成長譚になっています。読後感の素晴らしいイチオシ作品です。


タグ:ロマンス
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スペイン富豪の完璧な妻 [ミシェル・スマート]

SHALOCKMEMO1309
スペイン富豪の完璧な妻 The Perfect Cazorla Wife 2015」
ミシェル・スマート 井上絵里





 原題は「完璧なカソルラの妻」
 ヒロイン:シャーロット(チャーリー)・カソルラ(26歳)/障害者児童デイケアセンターのボランティア/普通の背丈,女らしい曲線美,情熱的で朗らかな笑い声,バニラの香りの肌/
 ヒーロー:ラウル・カソルラ(?歳)/ホテルチェーン・オーナー/青い目,高い頬骨に熱い唇がっしりした顎/
 父との不和から家業を捨ててIT企業を興し成功を収めたラウルでしたが,父が病に倒れ,自分の企業を売って家業のホテル業を継ぎ,経営を立て直しました。しかし,車椅子生活を送る父からは相変わらず自分の成果を無視され続けています。一方,やはり父から捨てられ,母とともに暮らしていたチャーリーはホテルのエンタテイナーをしている時にラウルと出会って目眩く1カ月を過ごし,たちまち富豪との結婚というシンデレラのような出来事に夢中になっていました。ところがスペイン名家のカソルラ家の嫁にふさわしい知性と振る舞いを要求され,息の詰まるような日々を送っていました。ある日夫と激しく口論したチャーリーは勝手にしろという夫の言葉を真に受けてカソルラ家を後にします。そして夫の金でいくつかの事業に取り組みましたがどれも成功せず,今は障害を持ったこどもたちのデイケアセンター,「ポコ・リオ」でスタッフとして働いているのでした。ところがセンターの経営が行き詰まりつつあることを知り,恥を忍んで夫に資金援助を申し込もうと,事務所を訪れたのでした。ラウルからは別居後1000万ユーロが送られてきましたが,チャーリーは自分のためにそれを使わず,父や異母兄たち,シングルマザーだった母のために家を購入するなど,家族のために使うだけでした。今のセンターでの仕事は気取ったカソルラ家での生活とは異なり,自分らしさを取り戻し,子供たちとの交流をすっかり楽しんでいたのです。しかしこのままではセンターの古びた建物は売却されて子供たちも行き場を失ってしまいます。近くに新しいセンターとして格好の物件があるのですが,そこを買い取るだけの資金がありません。2年間も別居生活を送り,一度も自分を訪ねてこない,つまりすっかり愛を失ってしまった夫にもう一度自分に資金を提供して欲しいと頼むのは,やりきれない思いでしたが,もうそれしか方法は残されていませんでした。ラウルは条件つきで資金提供を承諾します。それは新しい物件の改築が住むまでの4カ月間,再度家に戻り,自分と夫婦生活を続けるというものでした。3年間の結婚生活の後ラウルは別居していた2年間チャーリーを忘れることが出来ず,他の女性との関係は一切持っていませんでしたが,いつもマスコミから注目されているラウルが他の女性たちといる姿は何度か報道されています。チャーリーはそれを自分への愛がすでに無くなっているものと思い込んでいます。しかし4カ月だけ仮面夫婦を演じれば無事に離婚し,センターで自分らしい生活を送れることを考えるとこの申し出は断ることの出来ないものでした。そして契約書に書かれた自分名義でない物件の購入の内容に激怒したチャーリー,それをチャーリーの事業能力のなさを指摘され,完成まで自分の監視の下で事業を成功を確実にするのだと冷静に説明され,反論することが出来なくなるのでした。売買契約の完成までの4日間はベッドを共にしないと言い切るチャーリー。どこまでも自分を嫌い,頑なに妻であることを否定しようとするチャーリーを,誘惑することで家を出て行った妻を罰しようとする気持ちも働いて,ラウルはひたすら妻との生活を待ち望むのでした。その後,チャーリーが作った改築計画を超有名建築家が褒めそやしたことや,資金集めのための船上パーティーにチャーリーがしっかりした計画を作っていること,そして何よりチャーリーを迎えに行ったときセンターの子供たちを直に見てその交流を楽しんでいる自分を発見したことなど,ラウルは次第に妻を誤解し,その気持ちを考えてこなかったのではないかと思うようになって行きます。そして決定的だったスペインのトマト祭りにセンターの子供たちを連れて行くのに付き合わされ,楽しい数時間を過ごしたことなどから,これまで自分が如何に高慢で妻の能力を低く見ていたかを知らされます。自分が父からいつも冷たくその能力を疑われてきたことから,父のようにはなるまいと思ってきたラウルが実はチャーリーに対して同じコトヲしていたことに気付き,愕然とするのでした。それからはラウルは妻の計画を全面的にバックアップし,遂に船上パーティを大成功させて得たチャリティ資金100万ユーロを改築の他にも数カ所のセンター開所に向けてチャーリーを助けていくことを提案するのでした。そして,嬉しい知らせをチャーリーから聞かされるのです。エピローグは3年後のカソルラ家を描き,ハッピーで暖かな気持ちに読者を導いてくれます。バルセロナとバレンシアを舞台にしたオススメの1作。


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アドニスの冷たい抱擁 [ミシェル・スマート]

SHALOCKMEMO1249
アドニスの冷たい抱擁 The Greek's Pregnant Bride
( 大富豪の結婚の条件 2 ) 2015」
ミシェル・スマート 麦田あかり





 原題は「ギリシア人の妊娠した花嫁」
 ヒロイン:アレッサンドラ・モンデッリ(歳)/カメラマン,ロッコ・モンデッリの妹/つやつやした濃い栗色の髪,ハニーブラウンの瞳/
 ヒーロー:クリスチャン・マルコス(33歳)/投資家/身長190センチあまり,
 「たまたま出くわしたアレッサンドラが兄の代わりに呑みにつれていってほしい」と言ったことがすべての始まりでした。クリスチャンとアレッサンドラの兄ロッコたち4人は「コロンビア・フォー」という仲間組織を作り,慈善事業に力を貸しています。無二の親友たちの中でクリスチャンは富裕な家庭の生まれではなく,たたき上げで財産を築いてきました。そしてロッコの結婚式の花婿付添人を務めることになるクリスチャン。少女のころからクリスチャンに憧れを抱いてきたアレッサンドラがこの機会をとらえようとしたのは自然な成り行きでした。新人作家たちが描く本シリーズ第2弾は,ミシェル・スマートです。いくつかのシリーズにも執筆しているミシェル。本作が初邦訳ですが,巧みなストーリーと少女から大人の女性と変貌を告げていくアレッサンドラを見事に描ききっています。ロッコと結婚する元スーパーモデルのオリヴィアよりアレッサンドラの方が美しいとクリスチャンの目には映ります。しかし,ロッコとの友情を考えると手を出してはいけない存在。自分のような悲惨な幼少時代を送った男には・・・。アレッサンドラにはもっと育ちが良く,将来を嘱望される男性がふさわしい。でも,自分を抑えきれるだろうか・・・。そんな自問自答が何度も続くクリスチャン。そしてあの一夜の関係でアレッサンドラのお腹に自分の子どもが・・・。クリスチャンを密かにギリシア神話のアドニスにたとえていたアレッサンドラですが,両親から捨てられた自分が子どもを育てることより,夫となる人と添い遂げられるだろうかと結婚に自信を持てないため,クリスチャンのプロポーズを最初は断るのですが,次第にそれ以外の選択肢が限られてしまいます。クリスチャンはきっと妹を大切にしているロッコとの関係悪化が予想されました。そして二人は遂に結婚することにします。謂わば子どものための便宜的結婚だけでは満足できないアレッサンドラでした。出産にまつわる話を聞いたクリスチャンはアレッサンドラ,ロッコ兄妹の母がアレッサンドラの出産で命を落とし,父にも捨てられ,祖父に育てられたという事情を知り,両親の愛を知らないで育ったアレッサンドラを産まれてくる子供と共に守らなければという決意を新たにします。ロッコに二人のことを話すと,ロッコはクリスチャンに一発食らわせ,結婚式への参列も断るのでした。マスコミからは富豪の夫と美しい妻という構図で話題になります。そしてクリスチャンと母の改善されない関係など前途多難な二人ですが,互いに互いのことを考え,アレッサンドラはクリスチャンの恩人ミコライ夫妻を式に招き,クリスチャンもまたアレッサンドラのためにニューヨークまで出かけてロッコ夫妻を式に連れてくるのです。ロッコも渋渋ながらも二人の幸せを願い,式に参列するのでした。かつてハビエルという男性に裏切られた経験を持つアレッサンドラもクリスチャンの愛で,ついに自分の夫になる男性に信頼を向けることが出来るようになります。クリスチャンもアレッサンドラの成長で愛を取り戻し,家庭を築く勇気を持つことが出来るようになるのでした。
 あまりに出来すぎた結末だとも思いますが,信頼,愛,そして過去のしがらみからの脱却と,ロマンスのテーマがふんだんに盛り込まれた,読むにふさわしい作品に仕上がっています。


タグ:ロマンス
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