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公爵と内気な乙女 [クリスティン・メリル]

SHALOCKMEMO1280
公爵と内気な乙女 Miss Winthorpe's Elopment
( Belston and Friends 1 ) 2008」
クリスティン・メリル 日向ひらり





 原題は「ウィンソープ嬢の駆け落ち」
 ヒロイン:ペネロピ(ペニー)・ウィンソープ(?歳)/印刷業者の娘/流行遅れの服を着て眼鏡をかけている,白に近い淡い髪色/
 ヒーロー:アダム・フェルカーク(?歳)/第7代ベルストン公爵/青い瞳,筋の通った鼻,豊かな黒髪/
 ヒストリカルの成長譚です。ヒロイン,ペニーは印刷業者の娘。自分のことを大切にしてくれた父が亡くなり兄が後見人となりますが,会社の業績は下がる一方。しかも自分に残された遺産は結婚すれば受け取ることが出来る状況です。昔一度男性に裏切られてしまい自分は男性には好かれないと思い込みます。ひたすら読書に明け暮れ,今は「オデュッセイア」のギリシア語からの翻訳を計画中。自分と便宜的に結婚してくれる男性であるなら,この自分の研究生活を邪魔しないでくれれば,多少のお小遣いも含めて自由に過ごしてくれても良いと考えています。兄からはどうせ結婚など出来ないのだから家でおとなしくしててくれればいいと,まるで自分の価値を認めない言動が多く,いい加減うんざりしています。思い切って従僕のジェムに頼み込み,馬車でスコットランドのグレトナ・グリーンに向かいます。そこなら便宜的結婚を従っている男性を見つけられるかもしれないと思ったのでした。まもなく目的地というところで馬車の前に男性が倒れています。泥酔していますが身なりは高級なものを身に付けており身分の高い男性のようです。馬車に乗せ,目的地に向かいます。そして結婚してくれないかと頼むと,男性はペニーを天使だと言い,書類にサインと印章を押したのでした。それが第7代ベルストン公爵アダムでした。もうすでに結婚を済ませてしまった二人はその後ロンドンの屋敷へ,そしてペニーの弁護士に会い,遺産を受け取ることが出来ました。領地の屋敷で火事があり,さらにアメリカから輸入しようとしていたたばこを積んだ船が沈没してしまい,金策が尽きて馬車の前に身を投げ出して死んでしまおうと思っていたアダムでしたが,突然現れた愛らしい女性を天使だと思い込んだことだけは覚えていますが,あの夜のことは余り記憶に残っていなかったのです。しかし,酔いが覚めペニーと話し合ってみると困窮した自分にとってはまさに天使と言えるほどありがたい話しです。公爵夫人としての身分もペニーにとってはありがたいものではなく,ただひたすら「オデュッセイア」の翻訳する時間と場所さえあればと思っているのにアダムは驚き,と同時にこのペニーの願いを叶えてやりたいと思っている自分にも驚くのでした。兄との対決,そして領地の隣人で友人のティムの妻との不適切な交際など互いに過去との対決がありますが,次第に二人の間には信頼と愛情が芽生えていきます。一人でいたいと思っていたペニーにとってもアダムと別れることが苦痛になっていくのでした。そしてこれまで想像も出来なかった快感をアダムによって得られたペニーは,もうアダムから離れては生きていけないほど愛していることに気付くのでした。便宜的な結婚から,愛に裏打ちされた本物の結婚へ,二人の思いは高まっていきます。最後の気の利いた台詞,「では私を愛していて,望むものは何でも差し出すというのね?」というときのペニーは,もはや上流階級の女性らしい落ち着いた声にまでなっているのです。「それなら時間をかけて話をしましょう。でもその前に,靴下留めを返してもらうわ」,まさに勲章に等しいガーターというイギリスらしい落ちです。イチオシの作品。


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