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脅迫された愛人契約 [ティナ・ダンカン]

SHALOCKMEMO1411
脅迫された愛人契約 Da Silva's Mistress
( Mistress Bride 2 ) 2009」
ティナ・ダンカン 東みなみ





 原題は「ダ・シルヴァの愛人」
 ヒロイン:モーガン・マーカス(24歳)/「エニグマ・マーケティング」社員/長身,ほっそり,肩まで伸びる漆黒の髪,上品な顔立ち,純真さと官能性を兼ね備えている,肌はマグノリアの花びらのように白く,鴉の濡れ羽色のような髪,唇はふっくら,オレンジの香りが漂うシャンプーの香り,濃いまつげの下の黒い瞳,高い頬骨,誘うような唇の形/
 ヒーロー:ルカ・ダ・シルヴァ(34歳)/複合企業の経営者/黒髪,黒い目,黒い瞳の中に金色の斑点,長く黒々としたまつげ,鍛え上げられたからだ,黄金色の肌,誰もが振り向くカリスマ性/
 オーストラリアの作家ティナ・ダンカンの初訳作品です。幼少期をニューギニアで過ごし,現在はシドニーに生活する彼女は,ニューサウスウェールズ大学で商学士号を得たようです。作品としてはまだそれほど多くないようですが,本作を読む限りかなり内容の濃い,緊張感溢れる作品を描く作家のようです。未訳作品としては「Playing His Dangerous Game 2011」「Her Secret, His Love-Child 2010 ( Claiming His Love-Child 2 )」の2作があり今後の翻訳が期待されます。出版年からして本作がデビュー作ではないかと思われます。とてもシンプルな名前なので彼女のwebは見つかりませんでした。現時点では,ハーレクインgoodreadsには関連ページがあるようです。
 さて,本作の原題はそのものずばりの題名ですが,邦題「脅迫された愛人契約」は日本語としてはちょっと違和感を感じます。というのは愛人契約が脅迫されたというように,契約を擬人化した意味に取られかねないからです。「愛人契約を脅迫された愛人」という意味であることは間違いないのですが,冒頭の「脅迫された」が愛人にかかるのか愛人契約そのものにかかるのかによって,不明瞭な意味になってしまっています。まぁわからなくもないですが,この辺は編集部さんに再考願いたいところです。次にヒロインの名前ですが,モーガンというのはオーストラリアでは女の子の名前としては普通にあるものなのでしょうか。モーガン・フリーマンのように男の子の名前というイメージがあったので,初めはちょっと混乱しました。初めの方でこの名前が出てきたときはヒーローのルカの友人かと思ってしまいました。複合企業の経営者で「ダ・シルヴァ・チョコレート」ロンドン本社の経営者でもあるルカ・ダ・シルヴァはイタリア系の富豪です。両親を交通事故で亡くし,姉のステファニア・ラングドンを守るのが自分の使命と強く思っている男性です。この事故の時姉が重大な怪我を負い,妊娠出来にくい体になってしまったことになぜか弟のルカは責任を感じてしまっていたのです。そしてステファニアの夫,ジョセフ・ラングドンが不倫しているのではないかと会社の部下オリヴィアに指摘されたことにより,なんとしても姉を守らなければという思いを強く持ちます。そしてジョセフの相手として浮上してきたのがエニグマ・マーケティング社の社員でとびきりの美女モーガン・マーカスだったのです。もしそれほどの美女でなければ,その思いを強く持つこともなかったのかも知れませんが,ルカ自身がモーガンに強く惹かれてしまったことからも相当の美しさを持つ女性であることは間違いありません。なにせルカの周囲には多くの美しい女性が列を成して自分の順番を待つほどのイタリア人独特の美貌と財力を持っていたからです。義兄とその愛人に手を切らせるために,ルカが仕組んだこととは・・・。まず,彼女の会社のCEOに掛け合い,彼女を解雇させます。そして義兄との関係を問い詰めると「親しい友人」としか答えません。最後の手段としてルカは復讐と実益を兼ねてモーガンに自分の愛人になるよう契約を持ちかけます。いや持ちかけると言うよりyesと言わざるを得ないように追い詰めていくのでした。5万ポンドという金額提示にもモーガンはyesと言いません。ジョセフ・ラングトンは死んだ・・・。の先を言おうとしたとき,モーガンは気を失ってしまいます。「死んだと思え」と言うつもりが・・・。それはまさしく彼女と義兄の関係を証明しているように思われるのでした。そして抱き起こした彼女からは義兄の付けているコロンの匂いがしていることに気づきます。ここまでくるとルカにはモーガンが義兄の愛人であること以外の可能性は全く考えられなくなるのでした。この関係を最初に匂わせた社員のオリヴィアの奸計であることには全く思いも及ばなかったのです。モーガンは自分がジョセフの愛人だと思われていることに気付きますが,それを否定し,ジョセフが実の父であることを打ち明けることがちらと頭に浮かびますが,ジョセフからこのことは他言無用と約束したことで,真実を打ち明けられませんでした。もし真実を打ち明ければジョセフが他の女性と関係を持っていたことを知られ,それがステファニアを深く傷つけてしまうことを恐れたからでした。長い間自分には母親しかいなかったことから,最後の瞬間に母から真実を打ち明けられ,やっとできた唯一の身内である父との関係を壊すわけにはいかなかったからでした。ルカも慎重に探偵を雇って二人の関係を調査させれば真実はもっと早く明らかになったことでしょうが,姉に余計な心配をかけたくないというルカの責任感が当然やるべきことを躊躇させ,そしてモーガンを追い込むことしか思い浮かばなかったのです。「恋人が欲しいなら,僕がなろう」とルカは愛人契約を命じます。翌日返事をということで一端別れた二人ですが,翌日noをつきつけたモーガンの耳に,ルカにかかってきた電話でジョセフが救急科に入院したという知らせが聞こえてきます。しかしジョセフへの連絡すら一切禁じられた状態で,心配のあまり,ルカの身近にいることでなんとか父の病状を知ること以外に方法がないことに気づいたモーガンはついにyesを告げることになるのでした。ただ1週間は体の関係を持たないことを条件として・・・。
 次々に変化していく状況,このジェットコースターストーリーに読者はすっかり引き込まれていってしまいます。そしてルカの魅力にもはや抵抗できないことを悟ったモーガンは自分からルカに迫っていくのですが,ルカは1週間という期限を守ろうとします。そのことでルカへの信頼を強くしたモーガンはもはやルカを愛していることを否定できなくなるのでした。
 最後のジョセフとルカの対決,そして姉との関係,さらにタブロイド紙への情報提供者は誰なのかなど,多くの謎が末尾に凝縮され,最高の盛り上がりで締めくくられます。ルカの運転手兼ボディガードのジーノやモーガンの親友ステラとグレック夫妻も結構良い味を出しています。イチオシの作品です。


タグ:ロマンス
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