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虹に願いを [マーシー・グレイ]

SHALOCKMEMO1454
虹に願いを Rainbow's Promise 1993」
マーシー・グレイ 関口諒子




HQB-794
17.04/¥670/200p

HR-013
02.10/¥557/156p
L-0635
94.11/¥610/156p


 原題は「虹の約束」
 ヒロイン:リリー・アン・ジョーンズ(24歳)/保険会社「ネズビット・ヒューフネーグル社」社員,ハウスキーパー/身長174センチ/
 ヒーロー:ジョシュア(ジョシュ)・ディレーニー(34歳)/作家/身長190センチあまり,黒髪,美しい顔立ち,鼻筋が通り,頬は引き締まり,顎はがっしり,ふっくらした口元,長く濃いまつげ/
 「心配いらないわ,雨はいつだって止むんだもの。神様がね,もう洪水は起こさないって約束したのよ。だから雨が上がると,約束の印に空に虹を架けてくださるの」という幼いサラの言葉に慰められるリリー・アン。「でも人間が約束するときは虹は見えないみたい」「洪水」とは,もちろん「ノアの箱船」に登場する洪水のことでしょう。地球上にはびこった人間という悪の存在を一度リセットするために無害なワンセットずつの生き物を残してすべてを流し去る雨を降らせた洪水。ノアと園は小舟に乗った生き物たちは神と新たな契約を結びその印を虹という形で残した。という美しいお話しで原題どおりです。
 仕事募集の新聞広告を見てジョシュア・ディレーニーの元を訪れたリリー・アン・ジョーンズは,石と木材でできた広大な農家風の家で身長190センチはあろうと思われる長身の男性に迎えられます。リリー・アン自身も174センチと女性としては長身ですが,ジョシュアを見上げるしかありませんでした。「間違いなくこの人は,今までに私が出会った男の人の中で最高にハンサムだわ」とその外貌に興味を持ちます。そしてそんなハンサムなジョシュアが盲目であることにすぐ気づいたのです。家にはサラとサミュエルという二人の子供がおり,その面倒を見て欲しいというのですが,二人は普段はとても素直で聞き分けのいい子供なのです。しかし前のハウスキーパーだったミルドレッドが亡くなってしまい,その後やって来たリーナもすでに辞めてしまい,家の中はジョシュアがものに躓くほど雑然としていました。リリー・アンは自分の父親がこのジョシュアに定期的にまとまったお金を送っていたことで,なんらかの詐欺か恐喝に逢っているのではと疑ってここにやって来たのでした。しかし盲目で二人の子供を養育している人がそんなことをしているとは・・・。「このまま帰るわけには行かない。今となっては。それは彼の外見に惹かれたからでもある。永遠に見つめていてもいいと思うほどだ。しかし,それだけではない。彼のプライドがなぜか私を不安にするのだ。援助など要らないという拒絶の態度が。」と,リリー・アンはそのままこの家に残ることにしたのでした。サラとサミュエルの養育を巡っては福祉事務所の担当官から忠告を受けつつあるようです。兄夫婦の子供である二人を遺言により引き取りはしたものの,盲目の男性一人で二人を養育することは困難を極めます。なんとか力になりたいとリリー・アンは本来の父のお金をだまし取っている人という疑いを捨て,巻き込まれ的にハウスキーパーを引き受けてしまうのでした。「リリー・アンは彼をじっと見据えた。やっぱりそうだわ。こんなに強そうに見える人だけど,子供たちを失うのが怖いのよ。規則にとらわれすぎたソーシャルワーカーは,ジョシュアの目が見えないことにばかり気を取られてしまうのかも知れない。愛情も家族の絆も,簡単に消え失せるとでも考えているのだろう。私の方は,彼のすべてに魅了されている。父とジョシュとの関係はまだ分からないのだから,それを探ろう。」と自分に言い聞かせて・・・。そしてその関係に疑いをもったのはジョシュの失明の理由を聞いたときからでした。「カンザス州のハイウェイで,あの事故を起こした酔っ払い」のせいだったのです。父が事故を起こしたことを知っていたリリー・アンはその被害者がジョシュアではないかと,あまりの時期や事実の符合に愕然とします。4年前の事故で負った傷のせいでジョシュアが失明した。自分がその事故の加害者の娘だと知ったら,きっとジョシュアは自分を憎むに違いない。ジョシュとその甥姪たちを愛し始めていたリリー・アンは自分が気づいたこの事実をひたすら隠そうとします。そしてなんとかしてジョシュの力になりたいと。失明以来作家としての仕事ができなくなってしまったことを知ったリリー・アンはかつて担当していたデータ入力の仕事を生かして,ジョシュアの作品の口述筆記をすることを申し出ます。「困難を克服しなければ何も試みることはできない」というかつてのイギリスの文豪サミュエル・ジョンソンの言葉を思いだしたジョシュアはリリー・アンの申し出に勇気を振り起こし,時間を見つけて作品の口述を二人三脚で始めるのでした。この間の二人の仕事上だけではない心の交流が,本作の温かな雰囲気を盛り上げていきます。ところが,福祉事務所からやって来たソーシャルワーカーのミセス・ラドロウがとんでもないことをやってのけてしまいます。リリー・アンと父の関係を暴き出し,4年前の事故の加害者の娘であることを調べだしてジョシュアに教えてしまうのです。ジョシュアの妻になり,子供たちとともに家族になることを夢見だしていたリリー・アンにとっては,最悪の事態になります。事実を告げられたジョシュアからの鋭くきつい言葉。リリー・アンは謝罪と家を出ることをなくなく決意しなければなりませんでした。そしてその時に子供サラの言った言葉が冒頭の言葉なのです。さらに続けて「リリー・アンがこのおうちを出て行かないって約束してるときに,空を見たんだけど。だからジョシュおじさんに聴いたの。そうしたら神様からの合図は目に見えないから,人を信じるか信じないかは自分で判断しなきゃいけないんですって」という言葉に読者は泣かされます。「罪を許さず人は憎まず」という心境にジョシュアはたどり着けるのでしょうか。とにかくあたたかい作品です。ヒーローが盲目なので,ヒロインの外見についてはほとんど語られないのですが,心根の美しい女性であることは間違いないですね。
 本作の作家マーシー・グレイはたった4冊の作品を残しただけの作家でほとんどプロフィールは分かりませんが,4冊すべてが翻訳され,そのうち1冊が再版されたものです。いずれ他の作品も再版されることを切に願う次第です。


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