噂の貴婦人 [マリーン・ラブレース]
SHALOCKMEMO361
「噂の貴婦人 His Lady's Ransom 1995」
マリーン・ラブレース 上木さよ子
少々変わったヒロイン。12世紀後半イングランド。ジョン欠地王の父ヘンリー2世とジョンの兄リチャード。これまでは,リチャードとともに十字軍に加わった騎士をヒーローにしたものが多かったように思うが,なんと王弟ジョンと幼なじみのヒロイン。
悪役になりそうでヒロインを張っていくのは二人の夫に先立たれた未亡人マデリン・ド・クーシー。
“あでやかに咲き誇る王宮の花”。
初めは弟ウィリアムがマデリンの毒蛾にかからないよう王宮に乗り込むイアン・ド・バーグだが,弟から引き離すため騎馬試合の賞として,マデリンを欲しいとヘンリー王に申し出,許される。幼なじみのジョンは反対したが,王の承認では仕方がない。そして,マデリンの領地であるクラグズモア。しかし管理する者もなく荒れ果てたクラグズモアを自らの手で甦らせ,単に王宮の花としてではなく女主人としての実力も示したマデリン。次第にマデリンの能力を認めつつも,宮廷での男を誘うような振る舞いを見ているイアンはマデリンを信用できない。とまぁそんな設定で,二人がどうなっていくのか,敵役は今回は誰か,ヒーローはいつヒロインの元を一時的に去り,ヒロインが危機に陥るのかと思いきや,ヒロインがヒーローを誘拐してしまうなど,お約束ごととは異なるびっくり箱がいくつかあるものの,とにかく本書はヒロインの独特の性格,振る舞い,自分の中の孤独など心理的な面が色濃く出ており,ロマンス小説の姿を借りた心理小説という趣の独特さがある。
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