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愛の革命 [ヒストリカル]

SHALOCKMEMO446
愛の革命 The Daring Duchess 2004」
ポーラ・マーシャル Paula Marshall 正岡 桂子





ヒストリカル・ロマンスの名手,ポーラ・マーシャル(イギリス)の作品を読むのは,平成5年4月以来ですので,3年半ぶりになります。
時代はナポレオン戦争後の1817年。イギリスでもフランス革命思想の影響を受けて,社会全体が騒然としており,この作品ではあまり強くは表れておりませんが,ロンドンでも労働者や下層階級の人々のデモなどがあり,ストーリー展開上でも,それが重要な要素となっています。



さて,準男爵で下院議員のネヴィル・フォーテスキューは,堅物で面白みのない男として社交界では貴族仲間同士でもどちらかというと馬鹿にされるタイプの男。一方,ヒロインのダイアナ・ロスウェルは美貌をもって知られ,しかも,年の離れた夫を亡くし,その遺産を受け継いだという社交界では,引く手あまたの未亡人。そんな二人がたがいに惹かれあうという想定で,まずは,この二人がどのように愛をはぐくんでいくかという興味をひかれます。社会情勢が騒然といている中,ダイアナのメイドでネヴィルの馬屋番レムの恋人であるベリンダが行方不明になり,その足取りをたどっていくと,同じ年頃の娘たちが何人か行方不明になり,どうやらいかがわしい場所に売られているらしいという犯罪にたどり着きます。しかもそんな犯罪を裏で糸を引いている人物は,高貴な身分のものらしいことも次第に明らかになってきます。それまで,社交界でも目立たない存在だったネヴィルですが,放蕩者であった父親のようにはなるまいと自分を律する気持ちが強く,友人たちからも馬鹿にされるような生真面目な人間になってしまったという過去を持ち,派手な立ち回りなどは好まない性格のように思われていたものの,実は正義感の強い,世の不正にも敢然と立ち向かおうとする性格の強さと,相手に対する深い思いやりを持った男なのでした。それを見抜き,それまで自分を取り巻いて,愛想を振りまく男性たちにうんざりしていたダイアナの目には,ひどく変わった,しかも好ましい男性に見えてきたのです。



そんな,風変わりな出会いをした二人でしたが,ネヴィルとダイアナは互いに好ましい気持ちを抱きつつも,べたべたした関係ではなく,互いの立場を思いやり,しかも,強い気持ちで惹かれあっていることを匂わせながら,次々に悪漢たちの陰謀に巻き込まれながら,りりしく立ち向かっていくのです。いかにも,19世紀初頭の貴族階級の良識とスノビズムを大切にしながら,現代人が失った気概や高い倫理観を,作者は描いているように思います。ヒストリカルを読む醍醐味の一つがここにはっきりと表れているのではないでしょうか。
また,ストーリーの中で描かれる,ネヴィルの出生の秘密を悪漢たちに利用されながらも,それに雄々しく立ち向かっていく実の父親と母親,ダイアナと対照的な従姉妹のイザベラや私立探偵のジャクソンなど,名脇役たちが顔を揃え,ストーリーが単調になることなく,会話や人物を生き生きと描きながら,終末では愛し合う二人の気持ちの盛り上がりとともに,決闘場面でしっかりと二人の気持ちを読者が確認できるという劇的なストーリ展開になっています。


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