非情の戦士にキスを

SHALOCKMEMO468
「非情の戦士にキスを　Highland Heart　1992」
ルース・ランガン　Ruth Langan　ryanlangan.com　鈴木たえ子

HS-339
08.10/\910/284p

マカルピン三姉妹の関連作で，ブライス・キャンベルの養子，ジェイミー(ジェイムズ・マクドナルド)のロマンスです。
三姉妹の長女，メレディスはハイランドの野蛮人ブライス・キャンベルに，次女のブレンナはイングランド女王の野蛮人モーガン・グレイに，そして三女のメガンはアイルランドの戦士キーラン・オマーラに嫁ぎ，イングランド，ハイランド，アイルランドは，マカルピン三姉妹によって実質的には深い結びつきを持ちました。スコットランドでは，女王メアリーが妊娠しており，そのすきに反乱を企てようとする者がでてきました。それを阻止しようとしたブライス・キャンベルが重傷を負い，反乱の鎮圧に全権を託されたのは，ブライスの養子ジェイミーだったのです。ジェイミーはブライスの要請を全面的に受け入れ，ハイランドの有力貴族ゴードン一族を訪ねます。一族の父親ダグラスには４人の息子と男勝りの一人娘リンジーがおり，何をするにも親子の結びつきが強く，エジンバラに向かう時もリンジーが付いてきます。盗賊に襲われたり，怪しげなイアン・マクファーソンという戦士が一行に加わったりと数々の冒険の旅が始まり，リンジーやゴードン兄弟たちも途中けがを負ったりしますが，なんとかエジンバラにたどり着きますが，その間，ジェイミーとリンジーの間には愛が芽生えていきました。しかも，二人ともそれを認めようとしないのです。
さて，エジンバラの宮廷にいては女王メアリーが危ないと判断したジェイミーは極秘のうちに女王を伴い，少人数でロッホリーヴンという孤島にたどり着きますが，ジェイミーの行動を怪しんだリンジーは馬丁の姿に変装し一行を追いかけます。追跡を見破ったジェイミーはリンジーも船に乗せ，ロッホリーヴンに到着し，リンジーを女王に謁見させます。女王に直接会い感動したリンジーですが，無理やり連れてこられたように思ったリンジーは，父親のもとへ逃げ出そうとジェイミーの目を盗んで馬を走らせますが何者かに襲われてけがを負います。そこに，ゴードン一族とイアンがやってきます。イアンはかつてダグラス・ゴードンによって滅ぼされた一族の忘れ形見だったのです。駆け付けたジェイミーの働きにより，イアンたちの攻撃を無事切りた一行は，やがて女王派の貴族たちを糾合し，エジンバラへと凱旋します。
宮廷で，論功行賞が行われ，ジェイミーは爵位と領地をもらい，ジェイムズ卿となります。そのとき，とっさにジェイミーはダグラスにリンジーとの結婚の許可を願ったのでした。二人の気持ちに気付いていたゴードン一族はこぞってジェイミーとリンジーの結婚に賛成し，周囲の祝福のもとその夜のうちに女王の裁断で結婚式を挙げるのでした。
エピローグでは誕生した女王の息子の洗礼式で，女王は息子にジェイムズ(のちのスコットランド王ジェイムズ６世？)という名を付け，大団円を迎えます。
「彼はずっと冒険を求めて生きてきた。しかし今，傍らにいる女性への愛こそが，人生最大の冒険だと悟ったのだった。」という最後の一文が，本書の主題であり，シリーズの結語としてもふさわしいと思います。