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乙女と月と騎士 [ヒストリカル]

SHALOCKMEMO484
乙女と月と騎士 Another Chance to Dream 1998」
リン・カーランド Lynn Kurland lynnkurland.com 旦紀子





直訳すれば「夢に向かうもう一つの機会」と題された,シーグレーヴのグウェネリンGwennelyn of Segrave(グウェンGwen)とリースRhysのヒストリカルです。ド・ピアジェDePiaget一族のリースは騎士として幼少のころからグウェンを守ることを心に決めていたのですが,領地をもたない騎士の身分であり,広大な領地の相続人であるグウェンを得るためには,競技会で優勝して賞金を得るしかありません。リースはフランスに渡り,数年間でかなりの額を手にし,領地を買おうとします。グウェンは,ひたすらリースの帰りを待ちますが・・・。
リースの家系が,このシリーズで,重要な役割をもっています。祖父ジャン・ド・ピアジェ,父エチエンヌと母メアリー。そして物語後半でリースの妻になるグウェンは,イングランド,シーグレーヴの領地に父ウィリアムと母ジョアンナの下で育ちます。9歳の時に14歳のリースと出会い,「私の擁護者(チャンピオン)になって」と頼んでから,生涯をかけて,リースとの愛を貫きます。グウェンは15歳のときには,リースの養父であるイングランド,アイルの領主ベトラムの長男アランとの婚約を果たすため,結婚式の前夜リースと愛を交わしますが,のちに生まれるロビンが,リースの息子なのかアイルの息子なのかは本書では語られません。そして,べトラムの次男,敵役のロランは,盗み聞きの名人であり,今でいう情報将校のように悪だくみの計画を練り,常に自分の都合のよいように未来を描くことでも,ちょっと哀れな存在です。そんなロランも,圧倒的な美しさをもつグウェンに恋心を抱きますが,歪んだ思いであり,終末で誤ってグウェンに弓矢を射かけたことに動転して自らの胸に弓を引く悲しい最期を遂げます。またべトラムの三男のジョンは騎士道精神にあふれ,リースを師と仰ぎ騎士を目指すすばらしい少年です。
武芸競技会の猛者であり,騎士のしての腕前がイングランド,フランス両国に響き渡るリースですが,グウェンとの舌戦にはかなわず,常に気の強いグウェンの言うとおりになってしまいますが,外見の美しさだけではなく,そんなグウェンの自立心にもリースは惹かれています。そして,グウェンを守ろうとしますが,グウェンのほうは逆にリースを守ろうと剣術をバイキングの双子に手ほどきを受けたり,城にとどまっていると約束しながらもこっそり危険に赴こうとするリースを追いかけたりとお転婆を繰り返しますが,二人や周囲の人々の愛にあふれた言葉と行動はユーモラスであり,涙を誘い,ほのぼのとした温かさがあふれてきます。わき役もたくさんその存在感を示しますし,祖父ジャンとリースのやり取り,アイルの地下に追いやられている治療師の老人とその孫娘(最後の最後にその名前がベレンガリアであることが明かされます)など世代を超えた深い信頼と愛がいっぱいにあふれた物語であり,600ページ一気読みができる作品に仕上がっています。
139ページに誤植がありました。「そうしなければ」が「そうなければ」となっています。




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