あの夏の湖で

SHALOCKMEMO493
「あの夏の湖で　True Confessions　2001」
レイチェル・ギブソン　Rachel Gibson　岡本千晶

RB-ギ-01-01
08.05/\930/449p

レイチェル・ギブソンのＲＩＴＡ賞受賞作です。
アイダホ州に住む作者レイチェル・ギブソンは，ポテトで知られるアイダホが，単なる農業地域であるだけでなく，銃の保持率も全米一であり，その他いろいろな点で特色のある州であることを作品を通じて表現しているようです。

本作は，タブロイド紙の記者ホープと保安官ディランの大人の恋を描いた作品で，登場人物はいずれもひとくせもふたくせもある，架空の街ゴスペルに居住する人々です。この町の人々の考え方や行動は，カリフォルニアや大都会では考えられない不思議な魅力をもつ人々であることを，余すところなく表しています。その人物造形の深さと，ホープをストーカーする小人症のマッチョ男マイロン・ランバートや，ホープの向かい側のお隣さん，シェリーなどの存在感のある人物，そして，田舎の町でのお祭りで，人々がのびのびと楽しむ様子などをとおして，ホープが次第に自分の幸せに気付いていく様子を，見事に表現している傑作です。特に大団円で，マイロンとレストランのウェイトレス，パリスがメキシコに幸せを求めて旅立つところなどは，ホープの敵役さえもが読者の同情を買うように作り上げており，ほんのりとあたたかな読後感を誘っています。２００２年のＲＩＴＡ賞受賞作である本書は，まさしくアメリカの良心とロマンスの素晴らしさを描き，夏のクリスマス譚のような心にしみるおススメの一作です。