SSブログ

愛人と逃避行 [ヒストリカル]

SHALOCKMEMO510
愛人と逃避行 The Dangerous Mr Ryder 2008 (Scandalous Ravenhursts 1)」
ルイーズ・アレン Louise Allen louiseallenregency.co.uk 石川園枝





 ルイーズ・アレンはイギリスのベドフォードシャーに住むリージェンシー作家で,フランセスカ・ショー名義でもヒストリカル作品を発表しています。ショー名義では97年に訳が出た「忘れじの君」始め,4冊のヒストリカル作品を,アレン名義では2007年に訳が出た「甘き異国の香り(「砂漠で見る夢」所収)を始め6冊の計10冊が邦訳されています。
 本書は「スキャンダラスな貴族たち」というシリーズの幕開けの巻となりますが,ヨーロッパの小国の大公妃の冒険譚ということで,最近読了したアン・グレイシーの「麗しのプリンセスにくちづけを」と設定がよく似ており,ナポレオンの登場によって,ヨーロッパの大陸側では大きな政治的な変化が各地で起こり,貴族と平民との軋轢や女性の自立の機運などが次第に高まっていく時代だったのだなということが実感されます。
 さて,本書のヒロインはイギリスとフランスのハーフであるエヴァリン(エヴァ)と伯爵家の次男であり,イギリス政府のスパイを務める冒険家ジャックことセバスチャン(ジョン・ライダー)の冒険行です。嫁ぎ先であるモブール公国では,事故に見せかけた危険や毒殺に晒されていたモブール大公妃エヴァリン・クレール・エリザベッタ・メラニー・ニコル・ラ・ジャボット・ド・モブールの元に,イギリスの摂政皇太子の庇護を受け,イートン校に通う皇太子フレディが,最近,数回危険な目に遭っていると,夜中に窓から忍び込んできたハンサムな男性が告げます。引き締まった体,黒髪と濃い灰色の目を持ったジャック・ライダーがその人でした。夫を亡くしてから二年間26歳になったエヴァは,初め,このような知らせが信じられませんでしたが,母子にしかわからない暗号のような会話を告げられ,ジャックが息子と会ってその危険を知らせに来たことを知ります。一方,イギリス政府の依頼で,皇太子の母親をイギリスに連れてくる密命を帯びてモブールにやってきたジャックですが,大公妃が濃い茶色の髪で,整った目鼻立ち,美しい弧を描くほっそりした眉とふっくらした唇を持っていることを知り,こんな美しい人だと想像もしていなかったため,自分を押さえて,イギリスまで無事にたどり着けるか不安になります。イギリス政府からは大公妃が,理知的で頑固で高慢な上に,自立心が強く気むずかしいと聞かされていたので,てっきり年齢を経た女性だとばかり思っていたのでした。実はこの瞬間,二人は本当の恋に落ちていたのです。しかし,反ナポレオンの影響力を持つ国の大公妃と,一介のスパイとの恋は許されるはずはなく,イギリスへの旅の途中,他人の目をくらますために夫婦と名乗って同室で過ごす晩が幾日かあったにもかかわらず,ベッドの中央に枕をおいて,互いに自分の気持ちを偽って過ごしていたのです。しかし,いよいよイギリスへも近づいたある晩,野宿の寝袋で,二人はついに互いの気持ちを偽ることができなくなってしまうのです。
 しかし,無事イギリスに着き,息子と感動の再会を果たしたエヴァの元をジャックは別れも告げずに去っていくのでした。二人の愛は成就するのでしょうか。ここで,後の作品にも登場するジャックの妹ベリンダ(ベル)が登場します。エヴァ以上に気が強く兄思いのベルとエヴァはすぐに同じ思いを持ちます。ジャックがエヴァとの愛に気づかないでいることを・・・。そして,ついにはエヴァは息子を連れてモブールに帰るために旅立ってしまいます。二人の愛は実るのでしょうか。
 自尊心や地位,男女の立場の違い,さらには国境など,さまざまな違いを乗り越えて愛が成就されるのか。最後には感動の大団円が待っています。




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。