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伯爵の華麗なる復讐 [シルヴィア・アンドルー]

SHALOCKMEMO524
伯爵の華麗なる復讐 Perdita 1991」
シルヴィア・アンドルー Sylvia Andrew 井上碧





シルヴィア・アンドルーの,これはデビュー作でしょうか。とにかく初期の作品のようです。
 舞台となった年代は正式には表記されていませんが,ナポレオン失脚後の王政復古のフランスノルマンジーが舞台の大半を占めています。イギリスとフランス両方に領地を持つ貴族で,アンボーン伯爵(これはイギリス側)であり,ベルロワ侯爵(これはフランス側)であるエドワード・ロバート・ジャスティン・ド・カーズヴィル・ロザーフィールド,通称エドワード(本書55ページ)は,従妹のリネット(エリアーヌ・ダルクール)を破滅させ,精神的に多大な打撃を与えたピアズ・カーストンに復讐するため,アフリカで見つけた海賊の一味と思われる美女を真珠と交換にパシャの元から連れ出します。一言も口を利かないため名前すら聞き出せないので,パーディタという名で呼ぶことにし,知り合いの医師の元で手当てを受けさせます。
 パーディタという名は,ディズニー映画「101匹ワンちゃん」に出てくる犬の名前でもありますが,19世紀初頭にウオルト・ディズニーがいるわけもなく,この名は,シェークスピアの「冬物語」に登場するシチリア王リオンディーヌとその妻ハーマイオニの娘,王女パーディタを指しているのは明らかです。遠くに捨てられていた娘ということで,パーディタと名づけたようです。
 エドワードは汚れて,貧しい服装をしてはいるものの,パーディタの中に品と知性を感じ取り,復讐をしようとする相手ピアズを誘惑する道具としてパーディタを選んだのでした。しかし,パーディタは周囲を警戒し,なかなか口を開こうとしません。また,上流階級の裕福な娘という役柄を果たさせるため,ピアノや言葉,礼儀作法などを教え込むためそれぞれの専門家を雇いますが,パーディタはわざとできない風を装い,一向に効果が上がりませんでした。しかし,近くの森に散歩に出かけたパーディタがであったエリアーヌが,心の傷を負った原因がピアズにあることを知ったパーディタは,かつて自分をアフリカに追いやることになった原因を作った相手とエリアーヌを傷つけた相手が同じであることに気づき,エドワードの計画に積極的に関わろうとします。
 ここからが本当の復讐劇の始まりなのですが,エドワードはいつの間にかパーディタを愛していることに気づき,計画を中止しようとします。しかし,この計画とは別にパーディタもひそかに復讐の計画を実行しようとしていたのでした。この間のエドワードとパーディタ(本当はフェリシアですが)の気持ちのすれ違い,そしてそれに関わってくるエドワードの母親やその妹でエリアーヌの母親,復讐を手助けするエドワードの旧友の妻など,それぞれの思惑が入り混じり,生き生きとしたストーリー展開となっています。
 復讐を果たした後も,パーディタはエドワードの求愛を受け入れず,かつての自分の領地の再建に懸命に努め,すっかり疲労しきっていきますが,そこにエドワードがどのように関わって二人がゴールインするのかで,もう一波乱ありますので,余韻を十分楽しめる作品に仕上がっています。


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