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誘惑のエチュード [ニコール・ジョーダン]

SHALOCKMEMO542
誘惑のエチュード The Seduction 2000」
ニコール・ジョーダン Nicole Jordan nicolejordanauthor.com 水野凛





 ニコール・ジョーダンの「ローリング姉妹シリーズ」に続く,新シリーズ「Notorious」シリーズの第1弾です。
 1810年,ロンドンのメイフェア地区にある大豪邸を訪れたヴァネッサ。夫を失い,若く血気盛んな弟ラザフォード子爵オーブリーの借金を帳消しにしてもらうために訪れたのは,名うての放蕩者と呼ばれるダミアン・シンクレア男爵の屋敷。実は弟オーブリーはシンクレア男爵の妹オリヴィアに駆け落ちを持ちかけたものの,それは仲間との賭けに過ぎず,駆け落ちをドタキャンし,さらにショックで階段から落ちたオリヴィアは歩くこともできない傷を負ったのです。復讐を誓ったダミアンにコテンパに賭けに負け,すべての財産と家屋敷を失ってしまったのでした。罪もないオリヴィアに傷を負わせてしまった弟の不始末を恥じ,さらに住む家も取り上げられたヴァネッサはなんとかダミアンに交渉し,借金返済の猶予を願い出たのでした。その代わりにダミアンがヴァネッサに申し入れたのは,妹のコンパニオンという名目で,数ヶ月間ダミアンの愛人になるというものでした。
 ここまでは,なんとなく設定から筋が読めるところですが,オリヴィアはヴァネッサを姉のように慕い,次第に回復していったり,シンクレア邸の使用人たちもヴァネッサを女主人のように接したりするようになり,復讐のため愛人になるよう申し出たダミアンは,復讐どころかなんとなく逆にヴァネッサの計略にかかってしまったように,ヴァネッサに惹かれて行ってしまいます。
 ヴァネッサも名うての放蕩者のダミアンの女性に対する巧みな扱いにすっかりのめりこんでしまいますが,心の中では,自分に対する復讐心が根底にあることを忘れはしません。契約明けには,未亡人である自分が高級コールガールとして自活して行く道もあるのではと思いついたヴァネッサは,ダミアンに誘惑のエチュードを頼むのですが…。

 前半の物語の設定部分,中半の愛のレッスン部分,そして,終末の純粋な愛の物語の部分へと,目まぐるしく変化していくにも関わらず,登場人物たちの心の変化が無理なく,自然に語られ,読者をストーリーにくぎ付けにしてしまうニコール・ジョーダンの筆力に脱帽です。


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