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すみれ色の瞳に恋して [ソフトバンク文庫]

SHALOCKMEMO543
すみれ色の瞳に恋して To Love a Princess 2004」
パトリシア・グラッソ Patricia Grasso patriciagrasso.com 岡本桃子





 ロシアの貴族一族カザノフ兄弟姉妹をヒーロー・ヒロインにしたシリーズの第2弾です。パトリシア・グラッソの作品はこのカザノフ・シリーズがすでに4巻がソフトバンク文庫で邦訳されています。
 本作を読了してみて,グラッソの作品の軽妙洒脱で,アイロニーとペーソスにあふれた会話の面白さを感じました。ストーリー展開も決して不自然ではなく,ロシア貴族のイギリスでの生活というシリーズの設定も面白いのですが,ヒーローとヒロイン,それに執事や家政婦など,さらには子供たちの様子が生き生きと描かれ,貴族の複雑な姻戚関係やややこしい称号など,読みづらい要素があるにもかかわらず,



 例えば,「愛は知らないうちに忍び寄って人を支配してしまう。だが,相手を怖気づかせたくないなら「愛」という言葉はこの胸にしまっておく方がいい。」
 というような,シェークスピアもかくやと思わせるような言い回しやアイロニーが随所に現れるにもかかわらず,何となくほっとするような,また,「うん,ウン」とうなずいてしまうような説得力がある文章は,このグラッソという作家の飛びぬけた頭の良さ,しかも温かい人間らしさが感じられ,素晴らしい読み物になっています。



 というわけで,次はシリーズ第3弾,「愛は大空の彼方に」を読むことにします。


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