激情のパレット [シェリル・ホルト]
SHALOCKMEMO565
「激情のパレット Absolute Pleasure 2003」
シェリル・ホルト 佐藤志緒
音楽家や画家など芸術にかかわる仕事をする人物をヒーロー,ヒロインにしたロマンスは,たくさん書かれているのでしょうが,この作品のように,細部にわたって作品制作の場面や,画家の心情,モデルとなるヒロインの心の動き,さらには,パトロネージの問題などを描き切った作品は,そんなにないのではないかと思います。623ページという大部の中に,まさに作品制作やヒーロー・ヒロインの心の動きにこれほどのページを割いている,また,割けるのは,筆者がかなり芸術,画家としての仕事を体験しているとしか思えません。
また,作家として,暗黒の心情をあまり描きすぎると,作品として面白みに欠けてしまい,ロマンスとして,ましてやヒストリカルとしては成立しにくくなると思われますが,本書では,絵師と庶子,という語呂合わせのように,ヒーローの役割をうまく生かして,暗くならずにヒーローの心情を描ききり,さらにはユーモラスな雰囲気さえ感じさせることに成功しています。
大部のため読了までに時間はかかりますが,損した感じを抱かせない,かえって長編であるがゆえに得した感を感じさせる,印象に残る一冊です。
2010-08-04 23:43
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