100万ドルの魔法使い [テレサ・マデイラス]
SHALOCKMEMO625
「100万ドルの魔法使い Breath of Magic 1996」
テレサ・マデイラス 坂本あおい
魔女シリーズの第1弾。すでに第2弾「700年後の魔法使い」は読了しているので,前作がどうなっていたかを想像しながら読むことができました。
このシリーズは,SF,サスペンス,ファンタジー,シンデレラ物,ロマンス,ヒストリカル,魔女譚,タイムトラベルなどなど,とにかくありとあらゆるものが混然一体となった,まさにパンドラの箱を開けたような内容が盛り込まれている作品です。にもかかわらず,どんな時代,どんな状況,どんな生い立ちであろうとも,もっとも強いのは愛の力であるという,かなり強いメッセージが込められており,それが破たんなく語りつくされています。作者テレサ・マデイラスのストーリーテリングのすばらしさを生かしきった作品であるということ,それに尽きます。
しかも,20世紀末と17世紀末の300年という時を超え,エメラルドのペンダントというどこにでもありそうな小道具と,現代コンピュータ文化の粋を組み合わせるという奇抜なトリックにすっかり読者も騙されてしまい,騙された側がすっかりとりこまれてしまう気持ちのよさを味わえるなんて,とにかく素晴らしいの一言に尽きる作品です。
どこをとってもネタばれになりそうなので,ストーリーは読んでのお楽しみですが,ヒーローのトリスタンとヒロインのアリアンの周囲を固める,コパーフィールドやスヴェン,そして猫のルシファーがとてもいい味を出しており,本作に欠かせない魅力を加えていることも付け加えておきましょう。
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