プリンセスの恋愛レッスン [サンドラ・ハイアット]
SHALOCKMEMO1132
「プリンセスの恋愛レッスン Falling for the Princess
(サンフィリペ公国 1) 2011」
サンドラ・ハイアット 高山 恵
エーゲ海の島国サンフィリペ公国のプリンス,プリンセスの結婚騒動を描く三部作シリーズの第1作です。ただこの知り図は時間的にはほぼ同時進行なので,どれを第1作かというところは微妙ですが,とりあえず邦訳の出版順で読んでいきたいと思います。本作ではプリンセス,レベッカ・マルコーニとシステム・デザイン会社社長ローガン・ブキャナンのロマンスです。一言で言うと,とにかく氷のプリンセスと呼ばれるレベッカの完璧なプリンセスぶりに圧倒されます。HQディザイア本国版の表紙にはシルバーのドレスを着たレベッカのイメージが描かれていますが,そのスタイルの良さと高貴なイメージながら愛らしさをたたえたほほえみの表情が見事に表されています。しかも文中にあるように,Tシャツとジーンズ姿のレベッカもとても魅力的,そしてプリンセスゆえに求められているそのイメージそのままに笑みをたたえながらもマナーを重視し,縛られた生活を強いられてきたレベッカが,ローガンによって少しずつ枠からはみ出ていき,普通の女性がすることに挑戦していく,そして契約的に始められた偽恋愛が本物の恋愛に変化していく様子が見事に展開されていきます。実生活では想像しかできない王室の生活や考え方を疑似体験できるロマンス小説ならではの展開と,かくあるであろうことを予想どおり読者に示していく作者のストーリー展開のうまさが光る作品です。気取った,俗物的な上流社会意識と対極にあるローガンが,プリンセスに迫っていくのも真に迫っていながら,次々にルールを作り計画をたてていきながら,感情の流れがそのルールを破ってしまうことに戸惑いながらも互いに惹かれていく二人のやりとりが時に滑稽に読者の笑みを誘っていくのも本作の魅力です。ロマンス作品の王道を行く本作は,イチオシです。
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