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一度だけの誘惑 [ヒストリカル]

SHALOCKMEMO473
一度だけの誘惑 Wicked Pleasures 2007」
ヘレン・ディクソン Helen Dickson 飯原裕美





3月初めの1冊となりました。繁忙期の今週は,なかなか1冊読みこなせず,読了に1週間もかかってしまいました。
直訳すれば,「罪深い楽しみ」とでもなるのでしょうか。
ヒロインのアデリーン・オズボーンは資産家の娘。ヒーローのグラント・レイトンは実業家。
アデリーンは幼い頃に母を亡くし父との二人暮しですが,物心ついたころから家の切り盛りをしており,父に愛されたいと思っていましたが,厳格で嘘がつけない父から命令ばかりされており,自分は母ほど美しくなく,何のとりえもない女だと思い込んでいます。父が決めた婚約者であるポール・マーロウからも,愛よりも家庭の主婦としての心構えなどばかり云われ,少々うんざりしているところ。しかし,乗馬やフェンシングなど男勝りの教養は普通の男性よりうまくこなすだけの能力と高い身長,そしてグリーンがよく似合うすらりとした体型の持主でもあります。その魅力に気付き,一夜にしてその虜になったのは,ヒーローのグラントでしたが,その一夜が二人のロマンスの始まりだったのです。
女性からの人気が高く,傲慢そうな雰囲気とたくましい体つきのグラントは,母から頼まれてある屋敷を買い取る交渉をするためにオズボーン家のあるローズ・ヒルにやってきます。移動に汽車を使っているところや,資産家の家のパーティでクリスマスを祝うために大勢の人が集まるところから,そんなに昔の時代ではないようですが,おそらく19世紀の後半ではないでしょうか。しかし上流階級では,女性が足を見せたりすることははしたないことと思われており,紹介なしに男性と女性が簡単に口を利ける時代でもないようです。ハウスパーティに招かれた屋敷で,買い取り交渉が不首尾に終わったグラントは飲みすぎてしまい,古くからの付き合いのある女性ダイアナ・ウェイヴァリーから,リボンのついた部屋へ誘われ,そのまま女性のベットに入り込んでしまいます。ダイアナだとばかり思っていたグラントが寝間着を脱がせた女性はアデリーンだったのです。婚約者ポールが自分と婚約しているのに他の女性のもとに通っていることを知ったアデリーンは魅力的なグラントが間違って自分の部屋に来たのに気付いたものの,そのままグラントと関係をもったのでした。そして,互いにその関係に満足感を得たのでした。翌朝,ダイアナではないと気付いたグラントは,アデリーンと結婚しなければと言い出しますが,アデリーンはそれを受け入れません。父や婚約者から女性としての立場を言われれば言われるほど,それに反抗してしまうアデリーンなのでした。そんなアデリーンの気持ちを同じように感じてくれるのは,グラントの妹レティでした。レティは婦人参政権論者で,独立心の強い女性でした。しかし,そんなレティが魅力を感じたのは社会の最下層で陰の力をふるう暴力的な男ジャック・カニンガムでした。後に,その正体に気付き,妻帯者でありながら妻を精神病院に送り込んだことを知ったレティでしたが,その時にはレティはジャックの子供を身ごもっていたのです。自らの判断でお腹の子供を始末し,精神的にも肉体的にも衰弱していたレティを励ましたのはアデリーンでした。二人の間には強い結びつきがうまれ,互いを親友として意識したのでした。
そんな,周囲の人々との関係が語り継がれ,終末ではなかなか互いの気持ちを形にしようとしないアデリーンとグラントに対して,アデリーンの父とグラントの母,それにレティなどがクリスマス・シーズンにアデリーンをグラントの屋敷に招待し,二人を結び付けようと画策します。そんなところに,グラントの進言によって官憲に悪行を暴露されたジャックが復讐に訪れ,表情でスケートをしていたレティとアデリーンを襲おうとしますが,氷が割れてジャックは命を落としてしまいます。クリスマスの翌日はボクサー・デーと呼ばれていますが,グラント一家はここでアデリーンに大きなプレゼントを贈ろうとします。つまり,二人で遠乗りをしようと持ちかけ,村の教会に着いたところで,アデリーンの父も招待され,再度グラントがアデリーンに求婚したのです。不幸になりかかっていたレティも,グラントの愛人ではなかろうかとアデリーンが思い込んでいたダイアナとの間にも何もなかったことを知ったアデリーンは,グラントの求愛を受け入れ,ハッピーエンドとなります。
252ページには時代を表す事件がいくつか触れられています。「8月にウェッブ船長が英仏海峡を泳いで渡ったこと」,「クリミア戦争で戦ったグラントのおじである少佐」などです。前者は1875年のことであり,クリミア戦争が終わったのは1856年のことですから,この物語はその頃のお話ということでしょう。


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