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愛の眠りは琥珀色 [ヒストリカル]

SHALOCKMEMO499
愛の眠りは琥珀色 The Marriage Bed 2005 (Seduction 3)」
ローラ・リー・ガーク Laura Lee Guhrke lauraleeguhrke.com 旦 紀子





愛の調べは翡翠色(SHALOCKMEMO463)」につづく,Seduction(ギルティ・シリーズ)の第3作です。
原書表紙ではベッドが中心のイラストになっていますが,ラズベリーブックスの本書の表紙は,前作につづき金髪の美女を中心に描かれています。また,このシリーズを通して登場し,前作のヒーローでもあった作曲家ディラン・ムーアは本作にも登場し,本作のヒーロー・ヒロインが訪れるホールではディランの交響曲が,ディラン自身の指揮で演奏される場面がでてきます。これは,前作でディランが苦心しながら作り上げた例の曲なのでしょうか。そうだとすると,かなり前作との連作の要素が強い作品のような気がします。また,ディランがヒーローのジョン・ハモンドに「とにかく提案だけでもしてみろよ。友だちになるように説得できれば,ふたりがうまくやっていくうえで絶対に助けになるはずだ」とアドバイスするところなどは,前作を呼んだ人は,おもわずにんまりするところですね。斜麓駆は第1作は未読なのですが,本作に頻繁に登場するヒロインヴァイオラ・ハモンドの兄夫婦,アントニーとダフネのコートランド夫妻が主人公であることは明らかです。
さて,本作ですが,子爵のジョン・ハモンドはヒロイン,ヴァイオラと結婚していますが,数年間にわたり別居し,他の女性との浮き名を流し続け,ハモンド夫妻は社交界では同じ場所には決していないということが知れ渡っています。しかし,ジョンの領地を管理していた親友とその子供が病死したことにより,領地を任せたくない親類の手に渡ってしまう可能性が出てきました。それを阻止するには,ジョン自身に跡継ぎが生まれなくてはなりません。そこで数年間の別居をしていた妻のヴァイオラとの関係を修復し,なんとしても跡継ぎをもうけることを決意しました。しかし,ここ数年,何人もの愛人とくっつき,別れるということを繰り返してきたジョンを,ヴァイオラが許すはずもありません。二人の結婚当初は関係もよく,互いの好みもジョンはすっかり覚えていました。ヴァイオラとベッドをともにするため,ジョンはじっくりとあらゆる手段でヴァイオラの気持ちをこちらに向けようとするのですが・・・
全編を通じて大して大きな出来事が起きるわけではありません。ロンドンの社交界のとても狭い世界でのお話ですが,日常の中で起こるちょっとした出来事がいくつか登場し,ヴァイオラとジョンの気持ちの移り変わりを中心に物語は進行します。とても静かな感じのストーリー展開ですが,ヴァイオラの気持ちの変化,ジョンが次々に繰り出す新たな誘惑の手,そんな小さなことが,次第に読者をヒロインよりもヒーローの涙ぐましい努力の方に感情移入していくことになります。
やがて,おきまりの,欲望よりも愛,そしてその証明というロマンス小説の永遠のテーマ,さらには,愛に目覚め,ついにはジョンと愛人との間の子供を育てようとするヴァイオラの健気な姿に,また,愛とは何かということに気づいていくジョンの心の変化に,読者はすっかり取り込まれてしまうのです。
「愛情が伴わない欲望は風と同じ。実体をもたないから,つかまえておくことも不可能だ。そのことをつねに心にとどめておいたほうがいい。」などという警句の静かなトーンの中で,ストーリーの面白さより,主人公たちの心の変化の面白さに,気づいていける大人の味のヒストリカル・ロマンスです。




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