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瞳をとじれば [エロイザ・ジェームズ]

SHALOCKMEMO515
瞳をとじれば Much Ado About You ( Essex Sisters 1 ) 2005」
エロイザ・ジェームズ 木村みずほ





 アメリカのヒストリカル・ロマンス作家エロイザ・ジェームズのエセックス姉妹シリーズ第1作です。作者は1964年生まれといいますから40代半ば,まさに脂の乗り切ったバリバリの作家と言えるのではないでしょうか。このシリーズは邦訳では第2作の「見つめあうたび Kiss Me , Annabel 2005」の方が先に訳されていますので,作者の紹介はあとがきに詳しく紹介されています。それによると,現役のシェークスピア研究家として大学で教鞭をとっているそうですので,本作の原題「Much Ado About You」がシェークスピア喜劇「空騒ぎ Much Ado About Nothing」のもじりであることも頷けます。
 さて,エセックス姉妹シリーズのヒロインとなるのは,エセックス家の4人姉妹,テレサ(テス),アナベル,イモジェン,ジョセフィーン(ジョージー)ですが,母は早死にし,父は娘たちよりもこよなく馬を愛し,全財産を馬につぎ込んだため,父亡き後の姉妹は貧乏なまま後見人のホルブルック公爵レイフの基に身を寄せざるを得ませんでした。エセックス家はスコットランドの貴族であり,爵位はイングランド王から戴いたという由緒ある家柄ではありますが,男子がなく,4姉妹だけが残った状況であれば,いずれは姉妹のうちの誰かが結婚し,その夫か,その息子が爵位を継ぐことにならざるを得ないのでしょう。
 ホルブルック公爵の基に身を寄せた4姉妹ですが,長女のテスは,姉妹の母親代わりを務めていたため結婚よりも妹たちの幸せを優先して考えています。次女のアナベルは蜂蜜色の髪と美しい顔立ちで社交界デビューを待ち望んでいます。三女のイモジェンは美しい黒髪としとやかさを持った美女ですが,メイトランド卿ドレイブンに恋をしていて,しかもメイトランド卿は競馬と馬のことしか頭にない上に,すでに他の令嬢と婚約しています。四女ジョージーは,頭の回転の速い少女で,社交界にデビューするにはまだ間がありますが,自分がちょっと太り気味であることを気にしています。公爵のもとには,メイン伯ギャレット,裕福な実業家ルーシャス・フェルトンなどが出入りし,4人の姉妹との間に,結婚をネタにしたさまざまな駆け引きが行われ,いわゆる「空騒ぎ」状態に陥ります。そのうち,イモジェンとメイトランド卿が駆け落ちしてしまったり,テスに結婚を申し込んだメイン伯爵が式の前日に行方をくらましてしまったりと,トタバタ劇が演じられますが,姉妹は互いを気遣いながらもユーモラスな会話で決してくじけません。結局,長女テスが,最も結婚に遠いと思われていたルーシャスとの結婚に至り,二人は互いに恋に落ちることになります。さらにイモジェンとメイトランド卿が加わり,競馬場で落ち合うことになりますが,そこで,最大の事件が起こります。
 馬をこよなく愛した姉妹の父はそれぞれに遺産の代わりに馬を一頭ずつ残したのですが,その馬がもとで不幸な事件が起こります。そして,三女イモジェンと長女テスの間には,気持ちの上での大きな亀裂が入ってしまいます。一方テスとルーシャスはルーシャスの両親との和解のためにテスが仕組んだ企みをかろうじて乗り切り,家族としての幸せを手に入れていこうとします。
 本作の重要なテーマは馬と貴族社会のかかわり,イングランドとスコットランドの微妙な意識のずれ,19世紀の上流階級の結婚観など,さまざまが入り混じり,互いを尊重し,愛にあふれた結婚と家族という理想の姿を描ききっていると言えます。第2作では次女アナベルがヒロインのようです。どんな愛を見つけていくのでしょう。


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