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心の秘密を盗まれて [キンバリー・ローガン]

SHALOCKMEMO527
心の秘密を盗まれて A Kiss Before Dawn 2005」
キンバリー・ローガン 颯田あきら





「口づけは暗闇の中で」の続編で,第五代エリントン伯爵トリスタン・ナイトの妹,エミリー・ナイトと,路上生活少年たちの一団,ラグ・タグ団のリーダーだったピーターがヒロイン・ヒーローです。
前作からさらに数年後,ラグ・タグ団の少年たちは,オックスフォードシャーのウィロウ・パークで生活し,それぞれひとかどの人物になるために,愛情にあふれた生活を送っていました。リーダーのピーターはロンドンでボウ・ストリートの捕り手としての職を得て,若き売り出し中の捕り手として活躍しています。
オックスフォードシャーのエリントン伯爵の領地の近隣では最近貴族の館ばかりを狙う盗賊「オクスフォードシャーの怪盗」が暗躍し,貴重な宝石などが次々に奪われるという事件が頻発していましたが,当地の治安判事はウィロウ・パークの少年たちが,かつてスリや犯罪に手を染めていた貧しい出身の子供たちだったことから,少年たちの仕業であると決めつけ,事件の解決には進展がありませんでした。そこでトリスタンはボウ・ストリートの捕り手として活躍中のピーターを説得し,事件解決のために領地のナイトヘイヴンにつれてくるのです。
「オクスフォードシャーの怪盗」の正体は,実はエミリーと2人の仲間だったのですが,プロローグでそれは明かされており,そこにはミステリーはないのですが,そのことにピーターがいつ気づくのか,また,最近様子がおかしいといわれているかつての仲間ベンジー(あの前作では最年少の少年),そしてラグ・タグ団を追い出され,不気味な捨て台詞で行方をくらましたジャック,さらに,本作で登場するエミリーに思いを寄せる貴族の子息アダムなどが入り乱れて,複雑な人間模様が示されます。
しかし,中心となるエミリーとピーターの関係はついたり離れたりしながらも,二人の気持ちがときどきすれ違うと,読者はやきもきさせられながらも,ストーリーはあくまで二人の関係を太い柱として進行し,大団円を迎えます。

本二作の魅力はなんといっても,エミリーやラグ・タグ団の少年たちのビルドゥングス・ロマンである点でしょう。トリスタンやディアドリといった大人たちも,子供時代に親や家族との関係で心になんらかの傷を追った人々です。それらが一つ一つの事件をとおして,過去を乗り越え,現在の幸福と未来へ向かって生き抜こうとするたくましい心持ち,それを裏付ける深い愛情とに目覚め,育て,そして実現していく様子は,癒しであり,愛を失いかけている人にとっては,もう一度愛を取り戻していこうという勇気を与えてくれるすばらしい作品です。


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