最高の贈り物 [ヒストリカル]
SHALOCKMEMO529
「最高の贈り物 I Will (Wish List) 2001」
リサ・クレイパス Lisa Kleypas lisakleypas.com 平林 祥
放蕩の限りを尽くしている貴族の息子が,父親から遺産を相続できなくなると知ったら・・・
そこからさまざまな物語が紡ぎだされるだろうと思いますが,まずは裕福な女性と結婚しようとする,父親に取り入って生まれ変わった自分を見てもらい遺言を書き変えてもらう,などなどこれまでも多くのストーリーが書かれたと思います。放蕩息子の側からすると,自分が生まれ変わるのがもっとも難しいことでしょう。しかし,自分が全力をかけて一生愛することのできる人ができたなら,それも可能になるのではないでしょうか。本作は簡単にいってしまえば,そんな物語です。
リサ・クレイパスはライムブックスですでに18冊の訳書が出ていますし,この12月には19冊目,さらにラグジュアリーロマンスというレーベルで本書が出されています。中短編としては本書が初訳になるのかもしれません。26歳のオールドミス(当時は),キャロラインにロチェスター家の嫡男(腹違いの兄がいますが),ドレーク卿から,偽装結婚を持ち込まれます。とにかく,死にかけた父から爵位は譲るが遺産は残さないと言われたドレーク卿が,身持ちが固く,しっかり者のように見えるキャロラインと付き合っていることを示せば,父も思いなおしてくれるだろうということから,キャロラインの弟で放蕩もの仲間のケイドを通じて話を持ちかけます。代わりに成功すればケイドの借金を肩代わりしようという条件で。
はじめは互いに偽装のお付き合いと割り切っていたものの,次第に互いの美点,本来の姿に気付き,やがて互いに愛情を感じるようになります。そして,ロチェスター伯爵の死後,ドレーク卿からの結婚の申し込みを待っていたキャロラインのもとに届いた知らせは,ドレーク卿がキャロラインの従姉妹のジュリアーヌと婚約したというものでした。なぜそんなことに・・・。二人の関係は思わぬ方向に。
このあたりのひねり具合は,さすがストーリーテラー,リサ・クレイパスと思わせます。
スマートで洒落たストーリーですんなり楽しめる良篇です。
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