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女神に愛のレッスンを

SHALOCKMEMO563
女神に愛のレッスンを The Education of Mrs. Brimley 2007」
ドナ・マックミーンズ Donna MacMeans 寺尾まち子





ドナ・マックミーンズの初邦訳。ドナの作品はヒストリカル3作が年1作のペースで出版されているようです。訳者あとがきによれば,公認会計士のかたわら執筆をしているようです。本書がデビュー作ですが,この様子だと次の2作も邦訳が待たれる質の高い作品が期待できます。
時は19世紀後半,母を亡くし,おじによって意に沿わない結婚,つまり体の良い厄介払いをされようとしていたヒロインのエマ・ブリムリーは,他人の名前を使って紹介状をでっちあげ,未亡人と偽って,女学院の教師としてヨークシャーにやってきます。未婚のヒギンズ姉妹によって運営されているペティボーン女学院には,社交界のデビューを待つ上流の子女たちが学んでいますが,いずれ結婚市場に参戦する子女たちに,夫との生活について教えることができるのは未亡人に限るというヒギンズ姉妹の考えにより,エマが採用されたのでした。しかし本当は未婚のエマにとって,娘たちに夫との生活を教えられるはずもありません。そこで,女学院に来る途上で出会った紳士ニコラスのもとを訪れ,少女たちからの質問に答えられるよう教えを請うことにしました。それに対して画家でもあるニコラスは,一つの質問に答えるたびに一枚ずつ衣服を脱いでいき,絵のモデルになるという条件を出すのです。未亡人と偽っているエマは喪服のようなものを着用しているのですが,当時女性が男性の前で足首を見せることさえ上流階級でははしたないとされていることからして,とても受け入れがたい申し出でしたが,質問の答えを得られなければ,未亡人ではないことが明らかになり,女学院を首になればどこにも行くところがないという切羽詰まった状況から,ニコラスの申し出を受けることになるのですが.
ヒロインとヒーローの駆け引きと会話の内容が,コミカルで涙がでるほど笑える場面,ヒロインの不幸な出自や,父親から認められず世捨て人のように酒におぼれ,絵を描いて過ごすヒーローのいじけた気持ちが,二人の出会いによって次第に前向きになり,ついには傑作を生み出していく過程に,思わず拍手を送りたくなる傑作です。
初めはつんけんした教師然とした人物として描かれるヒギンズ姉妹が,次第にエマを学院にはなくてはならない人と思っていく様子や,ニコラスの執事がエマを好ましく思い,大切に接していく様子が巧みに描かれ,ほのぼのとした温かさに満ちた,読んでいて心が温められる作品です。


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