楽園の恋をもう一度 [スーザン・マレリー]
SHALOCKMEMO578
「楽園の恋をもう一度 TheSheik and the Bride Who Said No
(アラビアン・ロマンス 9) 2005」
スーザン・マレリー 高木明日香
アラビアン・ロマンス・バハニア王国編の最終巻です。皇太子ムラトのロマンスの相手は,なんと元婚約者。
そして,10年の歳月を経て再びバハニアを訪れることになったダフネ・スノーデン。スノーデン家はエグゼクティヴを志向して上流階級との交際を常に心がける両親のもと,ダフネの姉ローレルの娘,ダフネの姪がムラトとの結婚を言い出します。まだ18歳の姪と34歳のムラトでは釣り合いが取れず,皇太子妃になることは将来の王妃になることを十分に理解していたダフネは,自分だけがバハニアに残り,姪をアメリカに帰してしまいます。かつてムラトを愛してはいたものの,皇太子妃になる決心がつかないまま婚約を破棄してしまったダフネを,ムラトはかつてのハーレムに連れて行き,スノーデン家から嫁を迎えるという謎の言葉を残してハーレムを去っていきます。
ある日,乗馬の途中で落馬し,怪我で意識を失っている間に,ムラトはダフネとの婚姻を済ませ,スノーデン家からの嫁だと宣言します。誰しもが皇太子としての自分の言うことを聴くという育ちをしてきたムラトにとっては,ダフネもいずれは自分の言うことを聴くはずだと信じて疑いません。
砂漠への巡回にダフネを同行したムラトですが,二人の意見はすれ違うばかり。業を煮やしたダフネはヘリコプターで王宮に戻ってしまいます。結局盗賊の都へもたどり着きませんでした。奥方を花のように扱うべしという長老の進言を謎の言葉として受け取ったムラトは,ダフネへのこれまでの言動を振り返り,ダフネを自由にすると宣言します。
ムラトの孤独と,ムラトへの愛に板挟みになったダフネは,妊娠していないとわかるとアメリカへの帰国を決意します。そして,離陸する瞬間・・・
二人の心の動きが克明に描かれ,ロマンス小説としては丁寧すぎるほどの心理描写とストーリー展開がバランスよく構築されたシリーズ最高傑作です。一つ難を上げるとすれば,盗賊の都でムラトの妹たちやその夫たちとの心の交流が描かれれば,結末もずいぶん違ったものになっただろうと思われること。それにはあと30ページは必要だったのでしょうね。
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