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不埒な公爵のキスの作法 [ヒストリカル]

SHALOCKMEMO598
不埒な公爵のキスの作法 The Wicked Ways of a Duke 2008」
ローラ・リー・ガーク  Laura Lee Guhrke  lauraleegauhrke.com 森なおみ





 ローラ・リー・ガークのガール・バチェラー(女相続人)シリーズの第2弾です。
 ロンドンのお針子プルーデンス・ボズワースは,郷士の叔父たちの家族の元を離れ,11年間お針子の仕事を続けてきました。当時のお針子の給金はとても少なく,月に一度叔父から送金されてくる仕送りを足しても爪をともすような生活でしたが,モリス夫人の下宿で仲の良い友人たちと気安く心地よい生活を送っています。仕立屋マダム・マルソーのお店から派遣されて,パーティ会場で,わがままな貴族令嬢のドレスの裾のほつれを直しているとき,マナーを無視して入室してきた男性が,令嬢の蹴飛ばした針箱の中身を拾ってくれながら励ます言葉をささやいてくれ,仕事が終わって帰ろうとしたときに外の路地で貴族の男性から言い寄られていた女性を助けに来たのが,彼でした。すっかり彼の魅力に虜になったプルーでンスですが,相手は貴族,しかも公爵。お針子の自分とは身分違いであることは言うまでもありません。
 しかし,数日後状況が変わります。父親に捨てられ,母の没後叔父のもとに引き取られたものの,叔父夫婦や叔父の娘たちに大切にされなかったため,自活しようとロンドンで暮らしていたプルーでンスですが,下宿を訪れた紳士たちから聞かされたのは,自分を捨ててアメリカに行った父親が実はアメリカのデパート王になり,遺産を全部彼女に残したということでした。しかもその額は年に100万ポンドだというではありませんか。ただし,遺産を手にする条件は1年以内に管財人たちの認める人と結婚すること,ということでした。
 ここまで来ると,もう話の筋は見えてきますね。プルーでンスが虜にされた公爵,リース・ド・ウィンターとプルーデンスは果たして恋に落ち,結婚にこぎつけるかということですが・・・
 以下,ネタばれがあります。

 そこに大きく横たわっているのは公爵であるリースは,身分的には申し分ないのですが,数代にわたる当主たちの放蕩の結果,ド・ウィンター家の地所は荒れ放題。しかもリース自身が遺産を放蕩の限りを尽くして使い切ってしまい,銀行からの借金ももはやできない状況であり,地所の税金を払うことすらできない状況にあったからです。新聞にも大きく報道されたアメリカのデパート王の相続人が,自分が見染めたお針子だと気付いたリースは,なんとしてもプルーデンスの心を射止め,結婚にこぎつけるしかありません。さまざまな手練手管を費やして,ついにプルーデンスの了承を得て,二人は叔父夫婦同道でリースの地所を回る旅に出るのですが・・・
 プルーデンスの心を射止めるためについた嘘が,いずれプルーデンスの知るところとなり,二人の関係は破局・婚約は解消・・・と,筋書きどおりに進むのですが,どんなことから二人のゴールが見えてくるのか。ここが作者の腕の見せ所ですね。読了して,ふーむ。まさに正攻法の,とでも言えるでしょうか。
 モリス夫人の下宿屋に集まる女性たちとのおしゃべりや,リースの従者とプルーデンスの侍女の恋,前作でヒロインを務めたマーロウ子爵夫人,プルーデンスの叔父夫婦と又従兄弟の男爵ロバートなど,プルーデンスの周囲の人々もいきいきと描かれ,すんなり読み進められる良書です。各章の冒頭に新聞記事を配してリード文としていますが,第6章の新聞の日付が,1894年ではなく,1984年になっているのは誤植でしょう。(当時の新聞ですから誤植があるのは,逆にそれらしいのでしょうが。)


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